7. 太平洋協力
(1) 全般
近年,太平洋地域のダイナミックな経済発展を背景として,太平洋地域に対する関心が高まっている。また・域内諸国間の相互依存関係の進展に伴なって,多数国間で解決に努めなければならない諸問題が増大しているため,太平洋協力が一層注目されつつある。
86年は,PECC,PBEC等民間における諸活動が活発に展開された。特にPECCにおいては,中国と台湾が同時に正式メンバーとなった。また,従来太平洋協力に批判的であったソ連の態度に変化が見られた。
(2) 主な民間フォーラムの動き
(イ) 太平洋経済協力会議(PECC)
政府・経済界・学界の三者で構成されるPECCにおいては,85年4月のソウル総会で設置された5つのタスクフォースが,86年3月から7月にかけて域内各地で国際会議を開催し,個々の分野における地域協力のあり方について討議が行なわれた。
11月には,カナダのヴァンクーヴァーにおいて,第5回総会が開催された。
右総会には,これまでの正式メンバーである日,米,加,豪,NZ,韓国,ASEAN6か国,太平洋島興国に加え,中国及び台湾(Chinese Taipei)の委員会が新たに参加し,合計13か国2地域の代表が参加した。会議では,貿易,投資,貿易と投資,漁業,畜産・飼料,鉱産物・エネルギーの各分野で討議が行われたほか,PECC活動の原則を初めて文書にまとめた「太平洋経済協力に関する声明」が採択された。また,次回総会を,88年5月に大阪で開催することにつき合意され,これを受けて日本委員会は,同総会に向けて,太平洋協力のレヴュー太平洋地域における経済展望及び「太平洋協力研究基金」構想の3つの提案を行い,今後推進・検討していくことが合意された。
(ロ) 太平洋経済委員会(PBEC)
財界人により構成されるPBECは,86年5月にソウルにおいて「保護主義との闘い」のテーマの下で第19回総会を開催した。
また,日本委員会は,87年3月に東京で「太平洋協力の現状と将来」と題する国際シンポジウムを開催したほか,9月には,官民協調してメンバー国の人材育成に協力すべくJICAの技術協力スキームの下で「太平洋協力民間中堅実務研修」の実施を予定している。
(ハ) その他の主要な民官活動
(a) 太平洋地域の著名な学者で構成される太平洋貿易開発会議(PAFTAD)は,87年1月ウェリントンで「太平洋地域のサービス分野における貿易と投資」をテーマとして,第16回会議を開催した。
(b) 87年3月には,外務省・通商産業省及び民間5団体の共催で「第2回太平洋エネルギー協力会議」(SPEC)が,「太平洋エネルギー協力―21世紀のシナリオ」をテーマとして,東京で開催された。
(3) ソ連の動き
(イ) ソ連は故大平総理の環太平洋連帯構想等太平洋協力に対し従来より反対する態度をとってきたが,85年に登場したゴルバチョフ政権はこの態度を変化させる動きを見せた。
(ロ) 86年7月,ゴルバチョフ書記長はウラジオストックで演説し,太平洋協力に対する従来の態度を変え,次のとおりこれへの参加の意思を表明した。
「…太平洋共同体のもくろみが排斥された後,太平洋経済協力構想が論議されている。我々は,偏見を持つことなくこれに対応している。かかる協力のための基礎となり得る考え方に加わる用意がある。…」
(ハ) かくしてソ連はPECCへの参加を具体的に関係各国に希望表明するに至り,同年11月のヴァンクーヴァー総会においては,カナダ駐在のソ連大使館員のオブザーバー参加が認められた。