6. モンゴル及び香港

(1) モンゴル

(イ) 内政・外交

86年5月末に5年振りに第19回党大会が開催され,今後5年間(86~90年)の党指導の基本方針が示されたが,基本的体制には変化なく,従来の路線が継承された。行政面で省庁の統廃合による機構改革及び教育システムの改革等の変化が見られたが,国情は基本的には安定裡に推移した。

ソ連との関係強化の方針は第19回党大会でも表明されたごとく基本的に変化はないが,86年7月のゴルバチョフ・ソ連書記長によるウラジオストック演説において表明された通り,駐モンゴル・ソ連軍の一部撤退につき,両国政府間で話し合いが行われ,87年1月には,同年4月~6月の間に一部撤退を実施する旨発表される等の新しい動きが見られた。

対中関係は,劉述卿中国外交部副部長が訪「モ」して領事条約への署名(8月),長期貿易協定(4月)及び文化交流年次計画(6月)の締結,前年11月の合意に基づく夏期の飛行便の再開等,特に実務面での進展が顕著であった。

87年1月には,長年の懸案であった米国との外交関係が樹立され,外交関係を有する国は全部で101か国となった。

(ロ) 経済

86年は第8次5か年計画最初の年であったが,モンゴル政府発表によれば,基本指標をおおむね達成し成功をおさめた。基幹産業である牧畜は83年以降家畜数が減少し,不振であったが,86年にはやっと増加に転じた。穀物収穫高も史上2位と順調であったので,農牧業総生産は81~85年平均比12%増(計画11.3%)となった。工業総生産は前年比6.2%増(計画6.0%)であり,国民所得の伸びは同5.6%増(計画4.5%)であった。

(ハ) 我が国との関係

86年も両国関係は安定的に推移した。人的交流は,ハシバト外務省文化局長等が来日(87年2月)した。

文化交流は,毎年締結されている政府間年次計画に基づいて,留学生・教師の交換,学者の相互招待,日本写真展の開催等が実施された。

また,技術協力は前年に引き続き,研修員の受け入れ並びに専門家の派遣が実施された。

<要人往来>


<貿易関係>

(2) 香港

(イ) 政情

中国の提唱する「一国二制度」構想の下に,外交・防衛の両分野を除き高度の自治を香港に付与するとの中英合意を盛り込んだr香港特別行政区基本法」を1990年に公布すべく,香港側メンバーを含む基本法起草委員会で起草作業が進められている。

また,香港の主権移行を円滑に行うため設置された「中英合同連絡委員会」は,これまでに,ロンドン,北京,香港において計6回開催され,97年以降のADB,ガット等いくつかの国際機関への継続加盟問題や香港住民の旅券,身分証の取扱い問題等について中英間で合意され,その他の国際機関や国際条約の継続加盟問題等について引き続き協議が行われている。

(ロ) 経済

(i)  香港経済は極めて対外依存度が高く,1986年は輸出の好調な伸びに支えられ,GDPは374億米ドルに達し,経済成長率は8.7%となり,政庁の予測伸び率5.6%を大幅に上回った。

(ii)  対外貿易は1986年には輸出入とも大幅な伸びをみせ,総額は前年比18.4%増,輸出17.6%増,輸入192%増となった。この主な原因は,米ドルにリンクする香港ドルが,他の主要通貨に対して切り下がった結果,香港の輸出競争力が強まって輸出が伸び,また輸入も輸出の伸びに導かれて伸びたものとみられる。

(iii)  対中国貿易については,中国は香港の再輸出相手国及び輸入相手国として第1位,地場輸出相手国として第2位のシェアーを占め,引き続き重要な貿易相手国となっている。

(ハ) 我が国との関係

在留邦人は,短期滞在者を含めると・平均約1万人と推定されており,日系企業は約800社となっている。

香港の全輸入額に占める日本のシェアは,中国に次いで第2位で23.6%となっており,我が国にとって香港は重要な輸出市場となっている。香港の対日貿易インバランスは,1986年には対日輸出が前年比29.3%と大幅に伸びたため改善され,香港の対日輸入と輸出の比が5.4対1(1985年)から4.4対1(1986年)となった。

<貿易関係>


<民間投資>

(3) マカオ

(マカオ返還に関する中・ポ合意)

(イ) 中国・ポルトガル間のマカオ返還交渉は86年6月から,北京において4回行われたが,本年3月23日,1999年末の返還で合意され,引き続き,「マカオ問題に関する中・ポ共同宣言」が4月13日,北京において,両国首相によって正式署名された。

(ロ) マカオについては,1979年の中・ポ国交樹立の際,両国間において「中国領土であり,中国に返還される」ことが合意され主権問題につき解決をみ交渉は早期の妥結が予想されていた。

(ハ) 本件共同宣言の合意内容は・基本的に香港の場合と類似したものとなっており,「一国二制度」構想の下に,外交・防衛分野を除き,高度の自治をマカオに付与することが基本となっている。

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