2.我が国と中南米諸国との関係
(1)全般的関係
(イ)我が国と中南米諸国との間には,伝統的に友好親善関係が保たれ,経済面での相互補完関係,約100万人に上る邦人移住者及び日系人の活動,文化交流の活発化,さらには要人往来の活発化が,このような友好関係増進に寄与している。
(ロ)かかる状況を背景に,安倍外務大臣は,85年9月から10月にかけてブラジルを公式訪問するとともに,大地震直後のメキシコを見舞い訪問し,両国政府要人との会談等を行った。
同大臣のブラジル訪問は日伯修好90周年という記念すべき年に当たったほか,同訪問の機会に,日伯科学技術協力協定第1回合同委員会の開催,田本外交と21世紀に向けての日伯協力関係」と題する大臣講演等が行われ,同国との友好協力関係の拡大・強化において大きな成果を収めた。
また,メキシコ訪問については,大地震直後に安倍外務大臣自らが被災地を訪問し,同国支援のための経済協力を約束したことは,同国官民より高く評価された。
他方,中南米からは,5月にモンヘ=コスタ・リカ大統領,7月にセアガ=ジャマイカ首相,及び9月にイグレシアス=ウルグァイ外相がそれぞれ筑波科学万国博覧会賓客として,また6月にラミレス=コロンビア外相が外務省賓客として来日したほか,従来要人の来訪の少なかった東カリブ諸国よりもチェンバース=トリニダッド・トバゴ首相(85年7月),シモンズ=セント・クリストファー・ネイヴィス首相(85年10月),コンプトン=セント・ルシア首相(86年5月),ミッチェル=セント・ヴィンセント首相(86年5月)が来訪するなど,閣僚クラスの政府要人が多数訪日した。
(ハ)流動化する中米情勢については,我が国は,中米問題が早期に平和的に解決されることを希望するとともに,引き続きコンタドーラ・グループの和平努力を強く支持している。
(ニ)近年の中南米地域の民主化の動きについては,我が国はかかる民主化の傾向は中南米との対話・協力関係の一層の強化の契機となるものとして歓迎している。
(2)経済関係
(イ)貿易
85年の我が国の中南米諸国に対する輸出は,84億8,580万ドル(対前年比マイナス0.7%)と若干の減少となった。他方,我が国の中南米諸国からの輸入は,石油,一次産品価格の低下の影響もあり,62億4,220万ドル(同マイナス13.7%)と大幅な減少となった。
我が国からの輸出は,重化学工業品が大半を占め,また我が国の輸入は,金属原材料,石油及び同製品,食料品等が大半であり,我が国と中南米との貿易は相互補完的なものとなっている。
(ロ)投資
我が国の対中南米直接投資許可・届出実績は,85年3月末累計で130億2,000万ドルで,我が国の対外直接投資総額に占めるシェアは約18.2%で,北米,アジア地域に次いで第3位となっている。
(ハ)金融
我が国の民間銀行の対外貸付残高に占める中南米向けの比率は高く,82年のメキシコの金融危機以降,国際的な金融支援に応分の協力を行ってきている。また,政府としても,IMFやパリ・クラブ等を通じて可能な限りの支援を行っている。
(ニ)民間レベルの経済交流
86年3月に経団連ミッションがブラジルを訪問したほか,日・アルゼンティン経済合同委員会(85年5月),日・チリ経済委員会(同11月),日・キューバ経済懇話会合同会議(86年2月)がいずれも我が国において開催され,それぞれ二国間の貿易促進等について,各国財界代表との間で活発な意見交換が行われた。
また86年2月には,中米・カリブ投資環境調査ミッションが,同地域に対する官民合同の経済ミッションとしては約10年振りに,グァテマラ,ジャマイカ,トリニダッド・トバゴ,ドミニカ共和国の4か国を訪れ,投資を通じて同地域との経済交流を活発化するべく,活発な調査を行った。
(3)経済技術協力関係
(イ)中南米地域は,一般に中進地域と見られているが,一部の国を除き経済社会基盤が弱く,援助のニーズは高い。我が国は,同地域の民生の安定と経済社会開発を支援することにより同地域の平和と安定に資するべく,経済技術協力に努めてきている。
(ロ)85年に中南米で発生したメキシコ地震(9月),コロンビア火山噴火(11月)という2つの大きな自然災害に対しては,我が国は地震国,火山国としての経験を生かしつつ,いずれも過去最高額に上る緊急災害援助,医薬品供与や国連救急医療チーム,地震等専門家チームの派遣等の迅速かつ大規模な援助を実施したほか,メキシコに対し緊急融資として119億3,800万円の商品借款を供与した。
(4)パナマ運河代替案調査
我が国はパナマ及び米国とともに,82年より2年半にわたり,パナマ運河代替案調査の準備に係る政府間協議を行ってきたが,85年9月にはパナマ運河代替案調査委員会を設立するための取極を日本・米国・パナマ3国外務大臣間で署名交換した。これにより,爾後5年間にわたって,建設後約70年を経て老朽化している現行運河の各種代替案の実行可能性,最適代替案の選択等につき,日本・パナマ・米国の3国共同で調査を行うこととなった。
(5)文化関係等
我が国と中南米諸国との文化面等における交流も近年著しく緊密化している。85年度は,コスタ・リカ,グァテマラ,チリ,ドミニカ共和国,コロンビア,ペルー,パラグァイ,ジャマイカ,パナマ,アルゼンティン,ウルグァイに対する文化無償協力の実施並びに国際交流基金による現代舞踊等の公演,人物の派遣・受入れ,日本語普及,日本研究の助成等多彩な交流・協力が行われた。また,広報面では日本紹介,広報映画の上映会,講演会,展示会,資料配布等の各種活動が活発に行われた。
<要人往来>
<貿易関係>
<民間投資>
<経済協力(政府開発援助)>