4.東南アジア諸国連合(ASEAN:AssociationofSouthEastAsianNations)
(1)域内協力の状況
ASEANは,地域協力機構として着実に発展してきており,東南アジアにおける平和と安定にとって欠くべからざる存在となっている。
(イ)政治面での協力
カンボディア問題に関して,ASEANは,引き続き民主カンボディアを支持し包括的政治解決を求めていくとの共通の立場を維持し,域内外相会議,高級官吏会合等の場を通じて政治的結束を示した。ASEANは,85年7月の域内外相会議で,民主カンボディアとヴィエトナム(「ヘン・サムリン政権」代表の参加もヴィエトナム代表団に加わる形なら可)との間接対話を提案した。しかし,この提案も具体的な進展は見ていない。またASEANは,域内外相会議,高級官吏会合等の場を通じて,カンボディア問題以外の諸問題についても,共通の立場の維持・確立に努めた。
(ロ)経済面での協力
(a)ASEANの域内協力は,個々のプロジェクトにおいては,必ずしも当初期待されたほどの進捗を見せていないものもあるが,全体としては工業プロジェクト,貿易等の分野にわたって着実に進展してきている。
(b)ASEAN工業プロジェクトについては,インドネシアの尿素肥料プロジェクトが84年1月に完成し既に操業に入っているのを始め,マレイシアの尿素肥料プロジェクトも近く完成の予定であるほか,シンガポールの肝炎ワクチンプロジェクトも実施の方向で進んでいる。しかし,フィリピンの銅加工プロジェクトは,フィージビリティー・スタディ実施後進展が見られず,タイのソーダ灰プロジェクトは計画を取り止める旨決定された。
(c)85年2月にクアラ・ルンプールで開催された第17回ASEAN経済閣僚会議では,ASEAN合弁事業の生産品リストに新たに3品目を追加し合計7品目としたほか,ASEAN域内特恵の分野では輸入価額が1,000万米ドル以上の品目の域内特恵関税率を原則一律25%の引下げとすることに合意した。また,ASEAN域内の観光を促進・拡大するとの見地から,ASEAN各国間で相互に運転免許証を認め合う協力に署名が行われている。
域外先進諸国との関係は,ASEAN拡大外相会議(日本,米国,EC,豪州,カナダ,ニュー・ジーランドが参加)の定期的開催に加え,関係国との個別会議(下表参照)における意見交換等を通じて進展した。
時期
会議名
開催地
85年4月
6月
7月
10月
12月
86年2月
第6回ASEAN・米協議
第2回日・ASEAN経済閣僚会議
ASEAN拡大外相会議
第1回ASEAN・EC経済閣僚会議
第7回ASEAN・ニュー・ジーランド協議
第10回ASEAN・豪フォーラム
ワシントン
東京
クアラ・ルンプール
バンコク
ブルネイ
グロードビーチ(豪)
(3)我が国とASEANとの関係
85年は,我が国とASEANとの友好協力関係が一層深まった年であった。
経済・技術協力の分野では,引き続きASEANが最重点地域となった。
ASEAN各国に無償資金協力で建設された人造りセンターは85年中にすべて開所式を終え,日本・ASEAN科学技術協力についても同年5月バイオテクノロジー,マイクロ・エレクトロニクス,マテリアル・サイエンスの3分野で発足することにつき正式合意された。また7月にはASEAN拡大外相会議の場で太平洋人造り協力につき32件のプロジェクトの実施が合意された(そのうち我が国は15件に参加予定)。
貿易面では,日本・ASEAN間の貿易総額は,往復約315億ドルに達した。85年6月には東京で第2回日本・ASEAN経済閣僚会議が開催され,貿易,投資,技術移転の促進が論議された。右会議の場でASEAN側は,我が国のASEAN関心品目にも配慮した市場開放措置につき評価を表明した。我が国がASEAN諸国と協同運営しているASEAN貿易投資観光促進センターに対しては,我が国は6億円拠出した。
また,文化面でも,我が国の拠出したASEAN文化基金(50億円)は,順調に運用され,さらに85年度もASEAN奨学金に対し100万ドルを拠出した。
なお,中曽根内閣総理大臣が83年のASEAN訪問の際提唱したASEAN青年を招へいする「青年交流」計画が順調に行われ,85年度に778名のASEAN青年が来日し,我が国の青年と交流を行った。