8.アフリカ地域

(1)サハラ以南のアフリカの独立国は,現在45か国(国連加盟国の約3分の1)を数え,国際場裡において大きな影響力を持っている。また,アフリカは稀少金属を含む豊富な資源を有し,世界経済上も重要な役割を担っている。

60年以降に独立を達成した大部分のアフリカ諸国にとって最大の課題は国造りであるが,現在アフリカ諸国は構造的食糧不足を始め,低成長,累積債務問題などの深刻な経済困難に直面している。

我が国は,アフリカの重要性とその国際的役割の増大,また相互依存関係の深まった今日の国際社会における我が国の国際的責務という観点から,これら諸国との人物交流を促進して相互理解を深め,また,幅広い分野で経済技術協力を行うことによりその経済社会開発に寄与するよう努めている。

(2)人物交流の面では,マリの外務国際協力大臣,エティオピアの外務大臣及びザンビアの統一国民独立党書記長をそれぞれ外務省賓客として迎えたほか,アフリカ諸国の17名の閣僚が相次いで我が国を訪れた。一方,我が国からは7月,森山外務政務次官がカメルーン,ケニア及びウガンダを訪問した。

(3)経済技術協力の分野では,84年の二国間政府開発援助(支出純額ペース)は2億3,961万ドルであった。我が国は,特に70年代後半から対アフリカ援助の拡充に努めてきており,我が国二国間ODAに占めるアフリカのシェアは74年の4.1%から84年の9.9%へと約2.4倍に,ドルベースの絶対額では約6.6倍になった。また85年度には,アフリカ諸国の窮状に鑑み,二国間贈与(無償資金協力及び技術協力)は対前年度比約80億円増の約600億円を目指すとともに,円借款供与に関しても,世銀等国際金融機関との協調,技術協力との連携に留意しつつ約1億ドルを目途として弾力的に対応することとしていたが,これらについてはほぼ達成の見込みである。

特に,アフリカ諸国の食糧不足に対しては,引き続き食糧援助や食糧の輸送,貯蔵の分野の援助等,緊急性の高い援助を実施していくほか,その根本的解決のためには,中長期的視点に立った農業基盤の整備が必要との認識から,食糧増産援助を始め,食糧農業関係分野の援助を強化していく方針である。また,85年5月のボン・サミットにおいても対アフリカ援助が主要な議題の一つとして取り上げられ,我が国としても,そのフォローアップとして農業研究の強化,植林運動の展開等を内容とする「アフリカ緑の革命構想」を提唱し,その実現に向け努力している。

(4)アフリカ諸国が一致して解決を求めている南部アフリカ問題(ナミビアの独立達成と南アフリカ共和国の人種差別政策の撤廃)については,85年においても問題解決に向けての進展はなく,むしろ南ア情勢は国内における黒人暴動の激化によって一層悪化した。

我が国は従来より,南アフリカ共和国の人種差別政策については,これに強く反対し,同国との関係を制限的なものとしている。また,我が国は,南部アフリカ地域の諸問題が公正かつ平和裡に解決されるよう,可能な範囲で積極的に協力を行うことを基本的立場としており,ナミビア問題解決のために,国連のナミビア独立支援グループ(UNTAG)が派遣される際には,我が国としても民政部門に協力する用意がある旨明らかにしてきている。

近時の南ア情勢の急速な展開に鑑み,我が国は,10月諸外国との協調の下に南ア政府に対しアパルトヘイトの撤廃を促すべく,安倍外務大臣談話をもって従来の対南ア制限措置に加え,以下の対南ア追加措置を発表した。

我が国の対南ア追加措置(85年10月9日)

(イ)南アの軍隊,警察等アパルトヘイト執行機関に対するコンピューター輸出禁止

(ロ)クルーガーランド金貨その他南ア産金貨の輸入自粛を要請

(ハ)黒人の地位向上のための南部アフリカに対する人造り協力の拡充

(ニ)南アに事務所を有する企業に対し平等かつ公正な雇用慣行の遵守を要請

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