3.北米地域

(1)米国

(イ)我が国外交の基軸である日米関係は,今やグローバル・パートナーシップと呼ばれるまでに発展を遂げ,両国は,単に安全保障上の結び付きや,経済・貿易,科学技術,文化その他二国間のあらゆる分野における交流・協力にとどまらず,東西関係における西側の結束維持,また,経済援助分野等での協調等,世界の平和と繁栄のために・極めて広範囲の分野で緊密な協力関係を維持するに至っている。さらに,日米両国は,今や全世界のGNPの3割以上を占め,世界の貿易量の2割以上を占めている。国際社会における両国のこのような大きな地位と影響力に鑑み,日米友好協力関係を強化・発展させる必要性は,ますます高まっているといえよう。

(ロ)緊密化する日米両国関係を象徴するのは,頻繁なハイレベルの会談である。中曽根内閣総理大臣は,83年1月の訪米以来,86年4月の米国訪問に至るまで,過去約3年間に8回にもわたってレーガン大統領と緊密な意見交換を重ね,また,安倍外務大臣は,シュルツ国務長官とこれまでに22回の会談を行っている。85年初頭から86年4月までの間だけでも,85年1月のロス・アンジェルスにおける会談,同年5月ボン・サミットの際の会談,同年10月国連創立40周年記念総会出席の際の会談,86年4月のキャンプ・デービッド会談と,実に4回の日米首脳会談が行われている。

(ハ)85年1月のロス・アンジェルスにおける日米首脳会談においては,会談後発表されたプレス・リマークスにおいて,中曽根内閣総理大臣は,日米関係が信頼,責任,友好の3つの柱によって構成されており,世界の平和と繁栄のために相携えて活力ある協力を進めるための枠組を両首脳が設定したことを確認するとともに,日本が,米ソ間の軍備管理交渉に向けての大統領の努力を完全に支持することを明らかにした。総理はまた,同会談においてレーガン大統領より,SDI(戦略防衛構想)は,非核の防御兵器であり,究極的には核兵器の廃絶を目指すものとの説明を受け,米国のSD1研究について理解するとの立場を表明した。さらに,同年5月のボン・サミットの際の日米首脳会談において,総理は,このSDIに関する我が国の基本的立場を再確認するとともに,日米経済問題を中心とする二国間問題等に関しレーガン大統領と意見交換を行った。

(ニ)85年10月の国連創立40周年記念総会出席の際行われた日米首脳会談では,主として経済問題につき意見交換が行われ,両首脳は,保護主義と断固戦っていくためにお互いに協力していくことにつき意見の一致を見た。

(ホ)86年の4月には,両首脳間の不動の友情と相互信頼関係の深さを象徴するものとしてワシントン郊外のキャンプ・デービッドの大統領山荘にて日米首脳会談が行われた。同会談では,貿易経済問題を始めとする日米関係全般に関し,幅広い意見交換を行うとともに,5月の東京サミットの成功に向け日米間の協力を確認し,さらに世界的な広がりを有する日米両国間の協力関係につき話し合った。

特に,経済問題に関しては,レーガン大統領以下米政府首脳より,MOSS協議や円ドル・レート等に関するそれまでの成果に対する積極的評価と,「国際調和のための経済構造調整研究会」報告書について,日本経済を国際経済に調和させるための歴史的一歩としてこれを高く評価するとともに,同報告書の諸提言の実施への強い期待感の表明があり,また,レーガン大統領より,再び議会における保護主義と断固戦っていくとの強い決意の表明があった。これに対し中曽根内閣総理大臣よりは,レーガン大統領のかかる姿勢を最大限支援する旨表明し,「経済構造調整研究会」報告書を参考として我が国の経済構造調整を推進すべく,推進本部を設けて積極的に検討を行っていく旨説明した。

また,同会談では,平和と軍縮の問題につき,中曽根内閣総理大臣より,東西関係の安定と核兵器の大幅削減を目指すレーガン大統領の強い決意に敬意を払い,85年11月の米ソ首脳会談により弾みを与えられた米ソ対話が,今後着実に進展することを強く希望する旨表明した。両首脳は,この関連で,自由主義諸国が引き続き緊密な意思の疎通と協調を維持していくことの重要性を再確認するとともに,中曽根内閣総理大臣より,アジア地域に十分配慮しつつINFのグローバルな全廃を目指す大統領の努力を高く評価している旨表明した。

さらに,総理より関係省庁の担当者及び民間の技術専門家より成りSDIの技術的側面につき調査のため派米された官民合同調査団の報告を良く研究の上,我が国の対応につき慎重に検討していく旨述べた。

(ヘ)一方,安倍外務大臣は,日米関係運営の総覧者としての立場より,機会ある度にシュルツ国務長官と会談を重ね,緊密な意思疎通を図ってきた。

安倍外務大臣は,シュルツ長官と,85年4月にはパリで行われたOECD閣僚理事会出席の帰途ワシントンで会談,同年7月には,クアラ・ルンプールにおけるASEAN拡大外相会議出席に際して会談,同年9月の国連総会出席に際してもニューヨークで会談するなど,多くの機会に,日米関係全般に関し幅広い意見交換を行った。さらに86年1月のワシントンでの会談では,MOSS協議につき,懸案の木材関税を含め,テレコミ,エレクトロニクス,林産物,医療品・医療機器の4分野にわたり一応の決着が見られ,その結果,同会談においては,1年間にわたるMOSS協議の進展が保護主義と戦う上で有益であることが日米間で確認され,共同報告が採択されるに至った。また,4月の総理訪米の際行われた日米外相会談では,経済問題を中心とした日米二国間関係及び国際情勢等につき有意義な意見交換が行われた。

(ト)これらの諸会談は,日米関係運営(マネージメント)の中核となってきており,また,それを通じて培われた日米両国首脳,外相間の個人的信頼関係は,懸案の迅速な解決と,日米関係円滑化に大きく貢献している。

(チ)日米両国の緊密な関係は,両国が自由と民主主義という共通の価値観を有し,それを基礎として政治,経済等広範な分野にわたって利害を共有しているとの共通の認識から生まれ,維持されてきているものである。他方,両国は,地理的,歴史的,文化的背景を異にしており,また,緊密な関係であるが故に,時として摩擦が生じることもある。揺るぎなき日米関係の維持,発展は,我が国の安全のみならず,アジア,ひいては世界の平和と安定にとっても重要であり,我が国は日米間の相互理解と友好の増進に今後とも一層の努力を払う必要があろう。

(2)カナダ

(イ)我が国とカナダとの関係は,単に貿易,経済の分野のみならず,政治,経済協力,文化等の各分野においても順調に進展している。日加両国は,共に西側先進民主主義諸国の一員であり,太平洋国家であること,自由貿易体制を支持していることなど国際社会において共通する点が多く,84年9月成立したマルルーニー政権は,米国に次ぐ第2位の貿易相手国である我が国との関係強化を重視している。

(ロ)かかるカナダの対日関係の重視の姿勢を受け,中曽根内閣総理大臣は86年1月にカナダを訪問し,マルルーニー首相との間で日加両国間の国際社会における共通点を再確認するとともに,将来に向けて(あ)平和と軍縮の追求,(い)保護主義との戦い,(う)南北問題への対処,(え)太平洋協力の推進,(お)日加経済関係の拡大,(か)日加両国民の草の根理解の促進という日加協力のための6つの基本テーマを設定し,新たな日加協力関係の樹立を目指し共に行動していくことに意見の一致を見た。

(ハ)また,中曽根内閣総理大臣は,カナダを訪問した際に,連邦議会にて演説を行い,我が国とカナダとが国際社会において多くの共通点を共有していることを指摘するとともに,真の相互依存の世界を築くための日加間の協力を呼び掛けた。

(ニ)東京サミット後にはマルルーニー首相の我が国への公式訪問が予定されているが,この機会を通じて日加友好協力関係が一層強化され,その幅と深みを増すことが期待される。

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