第2節 報道協力・広報活動の現状
1.概況
国際情勢が国民の生活に直接・間接の影響を与え,国民が外交問題に大きな関心を抱いている今日・我が国の外交を進めるには,国民各層の理解と支持を得ることが必要である。他方,国際社会において我が国の果たすべき役割がますます大きなものとなってきているのに伴い,諸外国国民による正しい対日認識と理解は,我が国外交の推進及び諸外国との協調のために不可欠なものとなっている。
このような状況にかんがみ,外務省としては,内外の報道機関による外交問題及び国際情勢の報道に対する協力,内外の広報・啓発活動の積極的展開,諸外国の世論指導者や報道関係者の招へい,NHKの国際放送「ラジオ日本」の拡充強化に対する協力等,種々の努力を積極的に推進している。84年7月に従来の情報文化局長に替わる高いレベルのスポークスマンとして外務報道官のポストが新設されたのもこうした努力を一層強化するためである。
2.報道活動への協力
外務省は,外務省詰め記者等国内の報道機関に対して,記者会見・記者懇談等の形式により,外務大臣以下外務省幹部から我が国の外交政策,国際情勢に関する情報等を提供するとともに,在京特派員等外国の報道機関に対しては,外務報道官による週1回の定例外国記者会見やそのほか随時の説明会(いずれも英語)を実施して我が国の外交上の立場を正しくかつ迅速に伝えており,さらに我が国政府首脳の記者会見やインタビューのあっ旋を行っている。総理大臣・外務大臣の外遊の際にも,同行記者団,訪問先国及び第三国の報道関係者に対する説明や内外記者会見等を実施している。
外務省は,また,「外務大臣談話」,「外務報道官談話」,「外務報道官発表」,「記事資料」等の発表文を即時配布(英訳も)している。
報道活動への協力の第2の柱は,取材活動に対する便宜供与である。これには,日常的な取材への協力のほか,皇族,総理,外務大臣など,我が国要人の外国訪問及び国賓,公賓そのほか外国要人の訪日の際の内外報道関係者に対する便宜供与が含まれる。
また,言語や生活習慣の違いから取材に多大の困難が伴う外国人記者についても,最大限の協力が行われている。外務省所管の公益法人「フォーリン・プレス・センター」は,このような認識に基づいて設立されたもので,資料提供,国内視察,取材あっ旋等のサービスが,在日外国特派員や来日する多数の外国人記者の高い評価を得ている。
3.国内広報活動
国際情勢及び国際社会における日本の立場や日本の外交活動について,国民の正しい理解と幅広い支持を得ることは,国際社会において日本がその地位にふさわしい積極的な役割を果たしていく上で不可欠である。また,国家間の相互依存関係が深まり,国際化の波が日常生活の隅々にまで押し寄せている今日,国民一人一人が国際理解を深め,日本の外交を支えているとの意識を持つことが必要である。
こうした観点から外務省では,国際情勢・我が国の外交政策に関し,国民の理解を求める各種努力を行うと同時に,民間・地方自治体の行う各種国際交流活動に績極的に協力している。
(1)視聴覚,講演及び出版物を通じる広報・啓発事業
外務省は,テレビ番組「地球トーク&トーク」や84年4月から新たに青年層を対象に開始したディスクジョッキー風ラジオ番組「地球はまぁーるいよ」への制作協力を行っている。
さらに,草の根レベルでの啓発活動を目的として,各種団体の国際情勢・外交問題に関する講演会に外務省幹部や有識者を講師として派遣している。出版物では,「世界の動き」,「われらの世界」,「月刊国際政経情報」等の定期刊行物のほか,要人の往来等の各種の機会をとらえ,国際情勢や我が国の外交政策を紹介したパンフレット・資料類等を発行している。
(2)地方自治体や民間と密接に協力し,幅広い国民外交の展開を目的とする各種活動
外務省では,国民各界各層との緊密な対話を目指し,外務大臣及び外務省幹部が全国主要都市に出掛け国際情勢の説明を行い,地元の各界の人々と活発な意見交換を行う「一日外務省」(4月に札幌,8月に名古屋で開催),実務の第一線に立つ外務省の課長クラスが参加し,地元有識者と討論を行う「ミニ外務省」(7月に青森,9月に宮崎及び神戸)を開催している。
また,地方自治体の姉妹都市提携などの各種国際交流活動に積極的な支援を行うとともに,毎年「都道府県及び政令指定都市に対する国際情勢及び外交問題説明会」や都道府県との「国際交流推進連絡会議」を開催する等,自治体の国際交流活動の展開に協力している。
このほか,次代を担う青少年を対象に,国際問題討論会「ザ・フォーラム」を日本外交協会との共催により開催している。
さらに,84年から7月を「共に語ろう外交」月間と定め,各種行事を通じ,より幅広い国民各層の国際情勢や我が国の外交政策に対する理解と支持を得るための活動を積極的に推進している。
4.海外広報活動
我が国の政治,経済,社会等の実情及び我が国の外交政策について諸外国の理解を促進するため,次のような多岐にわたる海外広報活動を行っている。最近の傾向としては,かつての資料中心の広報に加え,テレビ,ビデオ等,視聴覚を通ずる広報活動も積極的に実施してきており,広報内容も我が国の国際的地位の向上による諸外国の対日関心の高まりに伴い,一般的国情の紹介に加え,経済摩擦等個別問題に関する我が国の立場についての理解促進のための活動を含むものへ複雑,高度化している。
(1)広報環境調査及び世論調査
海外広報活動の対象地域の世論動向などを把握するため,諸外国の広報環境(世論形成過程,マスメディア事情等)調査及び対日世論調査を随時行っている(84年は米国及び豪州で実施)。
(2)広報資料作成事業
各種資料を英語,仏語,スペイン語等,各国語版で年間約百数十万部作成,配布している。基本的資料として「今日の日本」,我が国の総合雑誌等に掲載された識者の論説,解説を紹介する「ジャパン・エコー」誌やグラフ誌「ジャパン・ピクトリアル」誌などを定期的に在外公館に送付している。さらに南北問題・日米経済問題等特定の問題についても随時資料を作成している。また在外公館の多くは,それぞれの国に合わせた内容で「インフォーメーション・ブリテン」を発行している。
(3)視聴労事業
「日本の教育」等一般広報用映画のほか,開発途上国の社会形成・人造りに資するような我が国経済,社会の諸分野の紹介映画,南北問題広報映画等を作成している。
(4)人物交流事業
諸外国の対日世論形成に直接・間接に関与し得る立場にある世論指導層(オピニオン・リーダー),マス・メディアを通じ一般大衆に大きな影響力を有する報道関係者(テレビ関係者を含む)を我が国に招待し,各界の人物との意見交換のほか,我が国の実情を見聞・取材させている。さらに,我が国各界の有識者を諸外国に派遣し,講演会,シンポジウム等を通じ諸問題に関する相互の対話を図っている。
(5)特別広報事業
通常の広報活動に加え,特定問題もしくは特定地域に対し,あるいは総理外遊,サミット出席等の機会をとらえ,集中的な広報活動を実施している。
また,シンポジウム,講演会,展示会等各種催し物を通じ,政治,経済,社会,文化等幅広い分野にわたり総合的に我が国を紹介する田本総合紹介週間」を83年度から実施している(84年度は米国4か所,カナダ1か所,英国,フランス,西独,ベルギーで各1か所,タイ,インドネシア,韓国で各1か所の計12か所で開催)。
(6)教育広報事業
教育の場を通じ,対日理解の促進を図る目的で,小中高校社会科教師を対象とするワークショップを在外公館等の主催で開催している(84年度は世界各地計25か国303回)。
(7)外国教科書・地図等の調査・是正
国際教育情報センター等を通じ,外国教科書,百科事典,地図などを調査し我が国につき誤った紹介をしているものの是正に努めている。
(8)広報文化センターの運営
広報上,特に重要な地域の広報文化活動を推進するため28の在外公館に広報文化センターを設置し,映画会,講演会等の開催,各種照会に対する回答,日本紹介資料の閲覧等,広報活動の拠点として運営している。