2.我が国と中南米諸国との関係
(1)全般的関係
(イ)我が国と中南米諸国との間には伝統的に友好親善関係が保たれ,経済面での相互補完関係,約100万人に上る邦人移住者及び日系人の活動,文化交流の活発化,さらには要人往来の活発化が,このような友好関係増進に寄与している。
(ロ)かかる状況を背景に,安倍外務大臣は84年9月及び85年1月の二度にわたり,おのおのメキシコ,コロンビアを公式訪問し,両国政府要人と会談した。
同大臣の訪問は両国官民の非常な歓迎を受け,両国との友好関係の増進のみならず,広く中南米地域と我が国との関係の一層の緊密化の上で大きな成果を収めた。また,中米問題を含めた国際情勢等についても幅広い意見交換を行い,我が国として中南米の抱える諸問題に積極的に取り組む姿勢を示した。
他方,中南米からは5月にフィゲイレード=ブラジル大統領が国賓として訪日し,我が国とブラジルとの友好親善関係,経済協力関係の促進が図られたほか,6月にサルディバル=パラグァイ外相,7月にバルレタ=パナマ次期大統領及びパス=ホンデュラス外相,12月にグティエレス=コスタ・リカ外相及びカプート=アルゼンティン外相がいずれも外務省賓客として来日した。
(ハ)中南米地域は,一部の国を除いては経済社会基盤が弱く,援助ニーズが高い等の事情があり,我が国として同地域の民生の安定と社会開発ひいては同地域の安定と繁栄に資するとの観点から経済技術協力を行う等できるだけ努力してきている。
(ニ)流動化する中米情勢については,85年1月の安倍外務大臣のコロンビア訪問の際,コンタドーラ・グループの一員として中米問題の平和的解決に向けての域内努力を探っているベタンクール大統領と同問題について意見交換を行い,域内における平和解決への動きを支援するとの我が国の立場を示し,我が国が積極的に中南米諸国の抱える問題に取り組むとの姿勢を明らかにした。
(ホ)近年の中南米地域の民主化の動きについては,我が国はかかる民主化の傾向は中南米との対話・協力関係の一層の強化の契機となるものとして歓迎している。
(2)経済関係
(イ)貿易
84年の我が国の中南米諸国に対する輸出は,85億4,860万ドルであり,対前年比+33.8%と大幅な増加となった。これは82年(対前年比-13.6%),83年(同-29.7%)と2年連続で大幅に輸出が減少したのに対し,ようやく回復の兆しが見られたものと言える。他方,我が国の中南米諸国からの輸入は,72億3,034万ドルであり,対前年比+11.9%を記録した。この結果,84年には,再び我が国の出超となった。
貿易の国別構成では,輸出がブラジル,メキシコ,コロンビア,ヴェネズエラ,アルゼンティン,パナマの上位6か国で全体の72%,輸入がメキシコ,ブラジル,ヴェネズェラ,アルゼンティン,チリ,ペルーの上位6か国で全体の86%のシェアとなった。
(ロ)投資
84年3月末現在の我が国の対中南米直接投資許可・届出実績は,累計で107億3,000万ドルとなっており,我が国の対外直接投資総額に占めるシェアは,17.5%で北米,アジア地域に次いで第3位となっている。
部門別には,製造業部門への投資が38.8%を占めており,逆に資源関連部門へは少なくなっている。
(ハ)金融
我が国民間銀行の対外貸付残高のうち,中南米諸国向けは,約3分の1を占めている。特に82年8月のメキシコの金融危機以降,我が国民間銀行は国際的な金融支援に応分の協力を行ってきており・また,政府としてもパリクラブ,国際通貨基金(IMF),国際決済銀行(BIS)等を通じ,できるだけの支援を行っている。
(ニ)民間レベルの経済交流
ブラジルについては,5月にデルフィン・ネット企画相が訪日し,その際,日伯経済合同委員会が開催され,11月には経団連ミッションがブラジルを訪問した。メキシコについては,7月に東京で目墨経済合同委員会が開催され,そのほか9月には日・チリ経済委員会及び日・アルゼンティン経済合同委員会がいずれも現地で開催される等,それぞれ二国間の貿易促進等について各国財界代表との間で意見交換を行った。
(3)文化関係等
我が国と中南米諸国との文化面等における交流も近年著しく緊密化している。84年度は,アルゼンティン,ドミニカ共和国,ホンデュラス,ボリヴィア,コスタ・リカ,メキシコ,パナマ,パラグァイ,ウルグァイ,ペルー及びコロンビアに対する文化無償協力の実施並びに国際交流基金による巡回日本劇映画会の開催,日本民族芸能団の派遣,日本語普及,日本研究の助成等多%な交流・協力が行われた。また,広報面では日本紹介広報映画の上映会,テレビ放映等が活発に行われた。
<要人往来>
<貿易関係>
<民間投資>
<経済協力(政府開発援助)>