6.インドシナ難民問題
(1)概況
(イ)75年のインドシナ政変を契機に発生したインドシナ難民問題は,ヴィエトナムのカンボディア介入翌年の79年当時の危機的状況から脱してはいるものの,毎月1,000~2,000人のヴィエトナム難民がボート・ピープルとして流出しているなど問題は長期化している。
(ロ)インドシナ難民は,これまでに約160万人が国外に流出しているが,この外にも脱出中に海上に没した者も多数いると言われ,これらを含めると相当数のインドシナ難民が祖国を脱出したことになる。流出した約160万人の難民のうち,これまでに(100万人以上が,米国,フランス,カナダ,豪州等に定住しているが,約16万人が依然としてタイ(約13万人)等の東南アジア諸国に滞留している。また,タイ・「カ」国境には約25万人のカンボディア人が避難しており,84年11月初旬からのヴィエトナム軍による乾期攻勢により,そのほとんどがタイ領に避難するなど難民問題は依然として東南アジア地域の不安定要因となっている。
(ハ)インドシナ難民問題の恒久的解決策としては,先ず,カンボディア問題の解決が必要であり,また,問題解決に至るまでの間では本国帰還,一次庇護国における定住,第三国定住が考えられるが,前二者の促進が困難な現在,第三国による定住引取りが当面の間インドシナ難民問題の解決策の根幹となっている。ただし,インドシナ難民問題の長期化と受入れ国の国内事情などの理由により,西側諸国による定住難民引取りも次第に困難になりつつある。
(2)我が国の対応
(イ)我が国はインドシナ難民が大量に発生した79年以来,資金協力,一次庇護及び定住難民引取り等の難民援助を積極的に進めてきている。資金協力については84年度に約4,500万ドルを実施したが,この結果,79年以降の累計援助総額は約4億6,000万ドルに達した。
(ロ)他方,我が国は一次庇護及び定住難民の引取りも行っており,84年中に約500人のボート・ピープルが新たに上陸した。この結果75年以降の上陸総数は約8,000人となり,このうち約1,000人(85年3月末)が今もなお我が国に滞留中である。
一方,我が国の定住難民の受入れについては,我が国に上陸したボート・ピープルの中から定住した者,東南アジア諸国のキャンプより定住した者等を含め85年3月末現在約4,100人に達している(なお,現在の定住難民引取り枠は5,000人)。