4.東南アジア諸国連合(ASEAN:Association of South East Asian Nations)
(1)域内協力の状況
ASEANは,設立以来初めて,84年1月に新たな加盟国(ブルネイ)を迎え入れる等,地域協力機構として着実に発展してきており,東南アジアにおける平和と安定にとって欠くべからざる存在となっている。
(イ)政治面での協力
カンボディア問題に関して,ASEANは,引き続き民主カンボディアを支持し包括的政治解決を求めていくとの共通の立場を維持し,域内外相会議,高級官吏会合等の場を通じて政治的結束を示した。また,カンボディア情勢が膠着化する中で,一致して前線国家たるタイを支援するとともに,直接の当事者たる民主カンボディア連合政府の立場を強化すべく努める一方,インドネシアを主たる窓口としてヴィエトナムとの対話も維持した。またASEANは,域内外相会議,高級官吏会合等の場を通じて,カンボディア問題以外の諸問題についても,共通の立場の維持・確立に努めた。
(ロ)経済面での協力
(a)ASEANの域内協力は84年も工業プロジェクト,貿易等の諸分野にわたって着実に進展した。5月にジャカルタで開催された第16回ASEAN経済閣僚会議では,各種委員会(貿易・観光,工業・鉱業・エネルギー委員会等)から,それぞれの活動について報告を受け総括を行った。この会議では,ASEAN合弁事業の生産品の第1リストとして,自動車・電気部品等が承認された。また,シンガポールによるB型肝炎ワクチン製造プロジェクトをASEAN工業プロジェクトとして認定した。このほか,ASEAN域内特恵の分野では,輸入価格が1,000万米ドル以上の全ての品目につき,新しい例外リストを設定した上で,一律20~25%関税を引き下げるとの申請を承認した。
(b)さらに,85年2月にクアラ・ルンプールで開催された第17回ASEAN経済閣僚会議では,ASEAN合弁事業の生産品リストに新たに3品目を追加することに合意したほか,輸入価額が1,000万米ドル以上の品目の域内特恵関税率を前回の同会議で承認した20~25%の引下げに代えて,一律25%の引下げとすることに合意した。また,ASEAN域内の観光を促進・拡大するとの見地から,ASEAN各国間で相互に運転免許証を認め合う協定に署名するなど,多くの分野で成果を挙げている。
(2)域外諸国とASEANとの関係
域外先進諸国との関係は,ASEAN拡大外相会議(日本,米国,EC,豪州,カナダ,ニュー・ジーランドが参加)の定期的開催に加え,関係国との個別会議(下表参照)における意見交換等を通じて進展した。
時期
会議名
開催地
84年1月
4月
7月
11月
11月
85年1月
2月
3月
第8回ASEAN・豪州フォーラム
ASEAN・米国通商大臣会議
ASEAN拡大外相会議
第7回日本・ASEANフォーラム
第5回ASEAN・EC閣僚会議
太平洋協力(人造り)に関する高級事務レベル会議
第9回ASEAN・豪州フォーラム
豪・ASEAN科学技術ハイレベル協議
キャンベラ
マニラ
ジャカルタ
ジャカルタ
ダブリン
ジャカルタ
ペタリンジャヤ(マレイシア)
キャンベラ
(3)我が国とASEANとの関係
84年は,我が国とASEANとの友好協力関係が一層深まった年であった。
経済・技術協力の分野では,引き続きASEANが最重点地域となった。
84年1月には,我が国の資金協力によるASEAN工業プロジェクトとして,インドネシア肥料工場が完成し,また85年には,ASEAN人造りプロジェクトの関連で沖縄に人造り協力のための国際センターがJICAの付属機関として設置された(85年4月開館)。
貿易面では,日本・ASEAN間の貿易総額は,往復約362億ドルに達した。また,我が国は関税の引下げ,輸入制限の緩和等市場開放措置を実施し,ASEAN産品の輸入拡大に努力したほか,ASEAN諸国との協同運営によるASEAN貿易投資観光促進センターに対しても6億円を拠出した。
また,文化面でも,我が国の拠出したASEAN文化基金(50億円)は,順調に運用され,さらに84年度もASEAN奨学基金に対し100万ドルを拠出した。
なお,中曽根総理大臣が83年のASEAN訪問の際提唱したASEAN青年を招へいする「青年交流」計画が順調に行われ,84年度に748名のASEAN青年が来日し,我が国の青年と交流を行った。