2.大洋州地域

(1)大洋州諸国と我が国との関係は,歴史的に見て,比較的新しいものと言えるが,特に,戦後40年の間に著しい関係の強化が見られた。

日豪関係は,1952年のサン・フランシスコ条約締結後,両国間の関係緊密化が順調に進み,57年には,以後の日豪関係の基礎となった日豪通商協定が締結された。この頃から豪州で鉱物エネルギー資源の発見開発が続き,我が国が豪州の豊富な鉱物エネルギー資源,農林水産物等を輸入し,我が国の工業製品を輸出するという互恵・相互依存の貿易パターンによる日豪貿易が飛躍的に増大した(84年の往復貿易額は約125億ドルで,これは通商協定締結当時の約4億ドルの30倍強)。また76年にはこのような貿易上の相互依存・補完関係の重要性を認識すると共に,両国関係を政治,科学,社会,文化等幅広い分野に拡大することを目指して日豪友好協力基本条約が締結された。このように日豪両国は,共にアジア・太平洋地域の先進民主主義国として,また主要貿易相手国として友好協力関係を発展させてきている。

日・ニュージーランド(NZ)関係は,第二次世界大戦後,貿易,経済関係を中心に発展した。特に,1958年の日・NZ通商協定締結以来,産業構造の相互補完的関係を背景に日・NZ貿易は順調に伸長してきている。また,NZは,英国のEC加盟(73年)を契機に伝統的対英依存の姿勢からアジア・太平洋諸国との関係,就中対日関係重視の立場を強めている。日・NZ関係は今日においては単に,貿易,経済分野にとどまらず,人的交流の活発化ともあいまって,政治,文化の分野においても緊密になっている。

南太平洋島嶼諸国との関係は,60年代末以降にこれら諸国が独立して以来本格化した新しい関係である。これら諸国は,新興独立国として国造りに自助努力を傾けるとともに,南太平洋フォーラム(SPF)などの地域協力機構の場を通じて経済,社会開発を主眼とした域内協力を推進している。我が国は,これら諸国との関係を重視し,その自助努力を支援するために無償資金協力及び技術協力を中心とする経済協力を積極的に行ってきている。

(2)今日,アジア・太平洋地域は,その経済的ダイナミズム,そして今後の世界経済の活力の源泉として近年世界の注目を集めており,我が国とこの大洋州地域諸国との関係も一層深まりを見せている。

このような状況下において,85年1月中曽根総理は,日本の首相として5年振りに大洋州諸国を訪問し,21世紀に向けての我が国と大洋州諸国の関係の基礎固めを行った。総理の大洋州歴訪により,豪州,ニュージーランドとの間のパートナーシップが強化されたこと,及び,パプア・ニューギニア,フィジーとの間の相互理解が深まり友好協力関係が増進したことは,日本外交の幅と奥行きを拡げるものであり,その意義は大きい。我が国としては,今後とも総理の大洋州歴訪によりもたらされた新たなモメンタムを維持しつつ我が国にとりますます重要度を増してくる大洋州の友邦諸国との関係緊密化に努力を傾けることが重要である。

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