第2節 報道協力・広報活動の現状

1. 概況

国際情勢が国民の生活に直接・間接に影響を与え,国民が外交問題に大きな関心を抱いている今日,我が国の外交を進めるには,国民各層の理解と支持を得ることが必要である。他方,国際社会において我が国の果たすべき役割がますます大きなものとなってきているのに伴い,諸外国国民による正しい対日認識と理解は,我が国外交の推進及び諸外国との協調のために不可欠のものとなっている。

このため外務省は,内外報道機関に対し,正確かつ迅速な情報提供を行い,また,これら報道機関の取材に所要の便宜を供与することを通じて,内外の新聞,テレビ,ラジオなどによる外交問題,国際情勢の報道に協力している。

さらに,外務省は,各種啓発資料の作成・配布,講演会の開催,テレビ・ラジオなど視聴覚メディア等の多角的な活用によって,内外の広報・啓発活動を積極的に行っているほか,特に諸外国における対日理解増進のため,これら諸国の世論指導者や報道関係者を招へいする事業を展開している。また,我が国の国際放送「ラジオ日本」については,郵政省,NHKと協力し,その拡充強化に努めている。

2. 報道活動への協力

外務省は,外務省詰め記者等国内の報道機関に対して,記者会見,記者懇談,インタビュー,解説などの形式による外務大臣,事務次官,各局局長など外務省幹部及び担当課長等の直接的,日常的接触を通じて我が国の外交政策,国際情勢に関する情報等を提供するとともに,在京特派員等外国の報道機関に対しては,情報文化局長による週1回の定例外国人記者会見やその他外務省幹部等による随時の説明会(いずれも英語)を実施して我が国の外交上の立場を正しくかつ迅速に伝えており,さらに通訳付きによる我が国政府首脳の記者会見やインタビューのあっ旋を行っている。総理大臣・外務大臣の外遊の際には,同行記者団に対する記者説明を行い,さらに,訪問先国及び第三国の報道関係者に対する説明を行うほか,必要に応じ内外記者会見及びテレビ・インタビュー等を実施し,我が国の見解,立場を説明している。

外務省は,また,「情報文化局発表」,「記事資料」などにより事実関係を,「外務大臣談話」,「情報文化局長談話」などにより外交問題に関する外務省の見解,評価を文書で発表している。これら文書は,外務省詰めの記者に即時配布されるほか,英訳の上,外国報道関係者にも配布される。

報道活動への協力の第2の柱は,取材活動に対する便宜供与である。これには,日常的な取材応接,資料提供のほか,皇族,総理大臣,外務大臣など,我が国要人の外国訪問及び国賓,公賓その他外国要人の訪日の際の内外報道関係者に対する便宜供与が含まれる。

また,言語や生活習慣の違いから取材に多大の困難が伴う外国人記者については,最大限の協力を行っている。外務省所管の公益法人である「フォーリン・プレス・センター」は,このような認識に基づいて設立されたものであり,同センターによる資料提供,国内視察,取材あつ旋などのサービスは,在日外国特派員のみならず,来日する多数の外国人記者の高い評価を得ている。

3. 国内広報活動

国際情勢及び国際社会に置かれた日本の立場,さらには日本の外交活動について,国民の正しい理解と幅広い支持を得ることは,国際社会において日本がその地位にふさわしい積極的な役割を果たしていく上で不可欠である。

また,国家間の相互依存関係が深まり,国際化の波が日常生活の隅々にまで押し寄せている今日,国民一人一人が国際理解を深め,日本の外交を支えているとの意識を持つことが必要である。

こうした観点から外務省では,国際情勢・我が国の外交政策に関し,国民の理解を求める各種努力を行うと同時に,民間・地方自治体の行う各種国際交流活動に積極的に協力している。

(1) 視聴覚・講演及び出版物を通じる広報・啓発事業

視聴覚を通じる広報・啓発活動は,幅広い国民各層を対象とすることができることから,その重要性を増してきているが,外務省では,毎週1回放映されるテレビ番組「地球トーク&トーク」への制作協力を行っている。

また,草の根レベルでの啓発活動を目的として,各種団体の依頼に応じ,国際情勢・外交問題に関する講演会に外務省幹部や有識者を講師として派遣している。

出版物では,「世界の動き」「われらの世界」「月刊国際政経情報」等の定期刊行物のほか,要人の往来等の各種の機会をとらえ,国際情勢や我が国の外交政策を紹介したパンフレット・資料類等を発行している。83年は,写真を中心とした分かりやすいパンフレット「日本外交'83―中曽根・安倍外交の軌跡」を発行し,国民の外交活動に対する理解の増進に努めた。

(2) 地方自治体や民間と密接に協力し,幅広い国民外交の展開を目的とする各種活動

外務省では,国民各界各層との緊密な対話を目指し,外務大臣及び外務省幹部が全国主要都市に出掛け国際情勢の説明を行い,地元の各界の人々と活発な意見交換を行う「一日外務省」を全国主要都市で開催するとともに(7月に大阪・10月に福岡で開催)それを補完するものとして実務の第一線に立つ外務省の課長クラスが参加し,地元有識者と討論を行う「ミニ外務省」も開催している(8月に札幌で開催)。

また,地方自治体の姉妹都市提携などの各種国際交流活動に積極的な支援を行うとともに,毎年「都道府県に対する国際情勢及び外交問題説明会」,並びに国際交流に関する都道府県間の情報交換を推進するための「国際交流推進連絡会議」を開催するなど,自治体の国際交流活動の展開に協力している。

このほか,次代を担う青少年を対象に,国際問題討論会「ザ・フォーラム」を日本外交協会との共催により開催し,また,東京都近辺の高校生を招き,外務省見学を実施し,外交の重要性,国際情勢に関する理解の増進に努めている。さらに,83年度から広報・文化活動に功績のあった個人・団体の労に報いるため,外務大臣表彰を行い,民間の行う広報・文化活動の側面からの促進にも努めてきている。

4. 海外広報活動

我が国の政治,経済,社会等の実情及び我が国の外交政策について諸外国の理解を促進するため,次のような多岐にわたる海外広報活動を行っている。最近の傾向としては,かっての資料中心の広報に加え,テレビ,ビデオ等視聴覚を通ずる広報活動も積極的に実施してきており,広報内容も我が国の国際的地位の向上による諸外国の対日関心の高まりに伴い,一般的国情の紹介に加え,経済摩擦等個別問題に関する我が国の立場についての理解促進のための活動を含むものへ複雑,高度化している。

(1) 広報環境調査及び世論調査

海外広報活動の対象地域の世論動向などを把握するため,諸外国の広報環境(世論形成過程,マスメディア事情等)調査及び対日世論調査を随時行っている(83年度は米国及びASEAN5か国において実施)。

(2) 広報資料作成事業

各種資料を英語,仏語,スペイン語など各国語版で年間約百数十万部作成・配布している。基本的資料として,「今日の日本」,我が国の政策・実情を紹介する「インフォメーション・ブレティン」などがあり,また我が国の総合雑誌等に掲載された識者の論説,解説を紹介する「ジャパン・エコー」誌やグラフ誌「ジャパン・ピクトリアル」誌などを定期的に在外公館に送付している。さらに南北問題,日米経済問題等特定の問題についても随時資料を作成している。

(3) 視聴覚事業

「日本の先端技術」,「日本の近代音楽」等一般広報用映画のほか,開発途上国の社会形成・人造りに資するような我が国経済,社会の諸分野の紹介映画,南北問題広報映画などを作成している。また各種広報写真,ポスター,カレンダー等も作成・配布している。

(4) 人物交流事業

諸外国の対日世論形成に直接,間接に関与し得る立場にある世論指導層(オピニオン・リーダー),マス・メディアを通じ一般大衆に大きな影響力を有する報道関係者(テレビ関係者を含む)を我が国に招待し,各界の人物との意見交換のほか,我が国の実情を見聞・取材させている。さらに我が国各界の有識者を諸外国に派遣し,講演会,シンポジウム等を通じ諸問題に関する相互の対話を図っている。

(5) 特別広報事業

通常の広報活動に加え,特定問題若しくは特定地域に対し,集中的な広報活動を実施している。83年度は中曽根総理大臣のウィリアムズバーグ・サミット出席(5月),中国訪問(84年3月),安倍外務大臣の中東・東欧訪問(8月)などの機会に総理大臣,外務大臣紹介資料,我が国と当該国との関係紹介資料等を収録したプレスキットを作成し,在外公館を通じ関係国報道関係者,議会関係者等に広く配布するなど,各種の広報活動を集中的に行った。

また,シンポジウム,講演会,展示会等各種催し物を通じ政治,経済社会,文化等幅広い分野にわたり総合的に我が国を紹介する「日本総合紹介週間」を83年度から実施している(83年度は米国3か所,英,仏各1か所,計5か所で開催)。

(6) 教育広報事業

教育の場を通じ対日理解の促進を図る目的で教師を対象とするワークショップを在外公館等の主催で開催している(83年度は世界各地計46か所)。

(7) 外国教科書・地図などの調査・是正

国際教育情報センター等を通じ,外国教科書,百科事典,地図などを調査し我が国につき誤った紹介をしているものの是正に努めている。

(8) 広報文化センターの運営

広報上特に重要な地域の広報文化活動を推進するため28の在外公館に広報文化センターを設置し,映画会,講演会等の開催,各種照会に対する回答,日本紹介資料の閲覧等広報活動の拠点として運営している。

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