2. 我が国と中南米諸国との関係
(1) 全般的関係
(イ) 伝統的友好関係の存在
我が国と中南米諸国は,伝統的に友好親善関係にあり,経済面での相互補完関係,約100万に上る邦人移住者及び日系人の活動,文化交流の活発化,さらには,83年には,中南米5か国から外務大臣を迎えたのをはじめ17か国から現職大臣(首相を含む)が来日したことに見られる要人往来の活発化が,このような友好関係増進に寄与している。
(ロ) 経済協力等を通じた貢献
中南米地域は,一部の国を除いては経済社会基盤が弱く援助ニーズが高いなどの事情があり,我が国として同地域の安定と繁栄に資するとの観点から円借款を供与する等できるだけ努力してきている。
(ハ) 中米情勢
流動化する中米情勢については,域内における平和解決への動きを支援するとの観点から,7月に外務大臣談話を発表し,「コンタドーラ・グループの平和的解決に向けての域内努力を評価するとともに,かかる努力と関係諸国の努力によって,中米問題の平和的解決がもたらされることを強く期待する」との考えを明らかにした。
(2) 経済関係
(イ) 貿易
83年の我が国の中南米に対する輸出は,63億9,100万ドルであり,対前年比-29.7%と大幅な減少となった。これは82年の対前年比-13.6%に引き続き2年連続の大幅な輸出減少である。他方,我が国の中南米からの輸入は64億6,200万ドルで対前年比3.1%増を記録し,83年には我が国の若干の入超となった。
こうした輸出の激減で,83年の我が国の対ラ米輸出は,81年に比較して,ほぼ6割の水準にまで縮小した。
貿易の国別構成では,輸出がブラジル,メキシコ,コロンビア,ヴェネズエラ,アルゼンティン,パナマの上位6か国で全体の72%,輸入がメキシコ,ブラジル,ヴェネズエラ,アルゼンティン,チリ,ペルーの上位6か国で全体の88%のシェアとなった。
(ロ) 投資
83年3月末現在の我が国の対中南米直接投資許可実績は,累計で88億5,200万ドルとなっており,我が国の対外直接投資総額に占めるシェアは16.7%で北米(28.6%),アジア(27.4%)に次いで第3位となっている。82年度は15億300万ドル(シェア19.5%)で,81年度の11億8,100万ドル(シェア13.2%)に比し増加した。
(ハ) 金融
我が国民間銀行の対外貸付残高のうち,中南米諸国向けは,約3分の1を占めている。特に82年8月のメキシコの金融危機以降顕在化した中南米諸国の経済困難に際して,我が国民間銀行は国際的な金融支援に応分の協力をしてきており,政府としてもIMF(国際通貨基金),BIS(国際決済銀行)及び政府機関から供与された債務の繰延べ等を通じできるだけの支援を行っている。
(ニ) 民間レベルの経済交流
5月サンチャゴ(チリ)で太平洋経済委員会が開催され,環太平洋経済連帯強化につき協議した。7月には経団連ミッションがブラジルを訪問し,また,メキシコからは6月,9月の2度にわたりSOMEX総裁が訪日し,我が国財界代表と懇談した。12月には,東京で日・チリ経済委員会が開催され,両国間の貿易促進について意見交換を行った。
(3) 文化関係
我が国と中南米諸国との文化面における交流も近年著しく緊密化している。83年度は,パラグァイ,エクアドル,ボリヴィア,コロンビア,パナマに対する文化無償協力の実施,中南米各国における巡回日本劇映画祭及び日系人の協力を得た「日本文化週間」の実施,日本語普及,日本研究の助成など多彩な交流が行われた。また,82年6月の鈴木総理大臣のペルー訪問の際の合意に基づいて,84年3月15日,リマで文化協定が署名された。
<要人往来>
<貿易関係> (1983年,単位:百万ドル,()内は対前年比増加率%)
<民間投資> (単位:百万ドル)
<経済協力(政府開発援助)> (1983年,単位:百万円,人)