6. インドシナ難民問題

(1) 概況

(イ) 75年のインドシナ政変を契機に発生したインドシナ難民問題は,これまでの国際的救援活動を通じ,79年当時の危機的状況からは脱しているものの,問題は長期慢性化している。

(ロ) 83年8月ホノルルで,日,米,加,豪の環太平洋主要4か国による閣僚級会議が開催され,インドシナ難民問題に関し,率直な意見交換が行われた。その結果,問題解決にとり,当面引き続き定住引取りが根幹であることが確認され,さらに自主帰還計画,ヴィエトナムからの合法出国計画など他の解決策の促進も同時平行的に進められることの重要性が強調された。

(ハ) 82年に激減した第三国による定住受入数は83年には若干ながら増加したものの,ヴィエトナム・ボート・ピープルを中心に新規流出は続き,タイを中心とした東南アジア諸国等には現在約16万人が滞留している。

他方,タイ・カンボディア国境地帯には20~30万人のカンボディア避難民が今も滞留しているなど,この問題は引き続き東南アジア地域の不安定要因となっている。

(2) 我が国の対応

(イ) 我が国はインドシナ難民が大量に発生した79年来,救済援助を積極的に進めてきているが,83年度もUNHCR等国際機関への拠出,世界食糧計画(WFP)を通ずる食糧援助,タイ政府に対する二国間援助として総額約6,000万ドルの協力を行った。この結果,79年以降の累計援助総額は約4億ドルに達した。

(ロ) 我が国への定住受入れは,84年3月末現在3,060名に達している。

他方,ボート・ピープルに対する一時庇護の面では,83年1月から84年3月までの間862人が新たに我が国に上陸した。この結果75年以降の上陸総数は7,533人となり,うち1,641人(84年3月末現在)は今も我が国に滞留中である。

一時滞在インドシナ難民数

(ハ) 83年4月,我が国に相当期間滞在しているボート・ピープルを収容し,処遇するため,東京都品川区に「国際救援センタ,(収容規模720名。建設費等約20億7,000万円)が開設された。さらに我が国定住インドシナ難民数が従来の定住枠の3,000人に達する見通しとなったため,11月,右定住枠は5,000人に拡大された。

これらの措置により,第三国により引き取られる見込みのない一時滞在ボート・ピープルの我が国定住・自活化が,今後一層促進されると考えられる。

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