3. 北米地域

(1) 米国

(イ) 激動する国際情勢の下にあって,日米安保体制に基盤を置く我が国外交の基軸である日米関係の持つ意味は,ますます大きくなっている。83年は,中曽根総理大臣の訪米によって明け,レーガン大統領の訪日によって暮れ,日米両国間の関係が一層緊密になった年と言える。大統領が訪日した際に国会で行った演説―日米両国が協力し合えば,達成できないことはない―に見られるように,日米関係は米国にとっても極めて重要な関係と位置付けられている。このことは,近年における米国国内での産業や人口の重点の移動と絡み合い,米国のアジア・太平洋重視の政策に象徴される。11月の日韓訪問に加えて,84年4月の訪中で,レーガン大統領は約半年間に2度にわたりアジア・太平洋地域を訪問した。

(ロ) 日米関係の円滑化は,世論調査にも現れ,84年1月の調査では日本を信頼できる国とする米国人は57%(前年より13%増)となった。この背景には,83年1月ころからの米国経済の回復及び中曽根政権下でとられた種々の分野における摩擦解決への努力がある。83年においては,自動車輸出の自主規制(年間185万台),電電公社の調達(84年1月に取決め延長),農産物(84年4月に合意),関税(84年4月に対外経済対策を決定),金融・資本市場の開放(84年5月に報告書)といった案件で摩擦が生じたほか,VAN(付加価値通信網)やコンピューターのソフトウェアといった先端技術分野での摩擦も見られた。他方,防衛費については,84年度予算として2兆9,346億円(前年度比6.55%増)が計上され,対米武器技術供与に関する交換公文が11月に署名された。

(ハ) 日米両国首脳間の会談としては,総理の1月訪米,大統領の11月訪日

世界の平和と繁栄のための日米協力

(緊密化する日米首脳・外相間の協議)

米国における対日世論の動き

1. 対日信頼度

質問「日本を米国の信頼できる友邦と見なすか。」

2. アジアにおける米国のパートナー

質問「アジアの安定と平和が米国の関心事であるとの見地から、米国にとりより大切なパートナーは日本、中国、ソ連、それ以外の国のいずれであるか。」

 のほか,5月のウィリアムズバーグ・サミットの前日にもワシントンで会談が行われた。これらを通じて明確化されたテーマは「世界の平和と繁栄のための日米協力」である。安倍外務大臣とシュルツ国務長官との間では,1月訪米の際,年に少なくとも4回は会合する旨の合意が見られたが,結果的には9回の会合をワシントン,東京,パリ,バンコック,ニュー・ヨークで行った。これらの高いレヴェルにおける個人的関係の緊密化は,両国間の個別の摩擦案件が政治問題化することなく回避できたことの大きな要因である。なお,「日米諮問委員会」は,大統領訪日や外務大臣訪米といった両国関係の節目に当たり,有効かつ適切な勧告を行った。

(2) カナダ

(イ) 我が国とカナダは,共に他の先進民主主義諸国と政治・経済理念を共有する自由主義諸国の一員であり,国際社会における共通の理念と目標を追求する上での重要なパートナーである。日加両国関係は,経済貿易面を中心に近年ますます緊密化の度合いを増しているが,こうした側面のみならず安定し成熟した関係を築いていく上で重要な政治,経済協力,文化,科学,技術等の各分野でもその関係強化が図られている。

(ロ) 83年においても日加間において要人の往来や各種協議が盛んに行われた。トルドー首相は,1月にASEAN歴訪後訪日したのに続き,11月にも自らの「平和イニシアティブ」推進のために再び訪日し,中曽根総理大臣に自らの核軍縮提案を説明した。また,両国外相は,6月バンコックで開催されたASEAN拡大外相会議の機会に協議を行った。事務レベルでも経済協力に関する定期協議が初めて開催されたほか,各種協議(経済,国連,文化等)が行われた。さらに,ローヒード=アルバータ州首相が外務省賓客として8月に来日したほか,議員交流の分野でもペロー上院議員一行が参議院議長の招待により訪日した。

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