4.その他の主要機関を通ずる協力
(1)国際農業研究協議グルーブ(CGIAR: Consultative Group on International Agricultural Research)
CGIARは,開発途上国にとって特に重要な意味を持つ農業開発・食糧問題に長期的かつ組織的に対処するため,農業研究の促進を目的として71年に設立された国際的フォーラムである。開発途上国の食糧増産に役立つ農業研究,農畜産物等の需要の把握・検討,各国の農業研究と国際的な農業研究の間の調整・交流促進,農業研究活動のための資金源の確保・配分などの活動を行っている。
(イ)傘下には「緑の革命」で有名な国際稲研究所(IRRI: International Rice Research Institute)など13の国際農業研究機関があり,運営機関として事務局及び補助機関として技術諮問委員会(TAC: Technical Advisory Committee)がある。
(ロ)CGIARのメンバーは,我が国を含む援助国21,開発途上国10,国際機関11,民間団体5である。我が国はCGIARに対し,82年に950万ドルを拠出した。
(2)東南アジア開発閣僚会議
東南アジア開発閣僚会議は,我が国の提唱で66年に創設された東南アジア諸国の経済・社会開発のための地域協力を目的とする閣僚レベルのフォーラムである。75年の第10回会議以降は,インドシナ情勢の急変など諸般の状況変化により開催されていない。
本会議の決議により設立され,現在活動している主要な地域協力機構として次のものがある。
(イ)東南アジア漁業開発センター(SEAFDEC: The Southeast Asian Fisheries
Development Center)
SEAFDECは,66年4月の第1回閣僚会議で提案され,67年12月に閣僚会議の最初の地域協力プロジェクトとして設立された政府間国際機関であり,地域の漁業開発を目的とする。加盟国は,日本,マレイシア,フィリピン,シンガポール,タイの5か国であり,加盟国等の研修生に対する漁業・航海訓練,資源調査,水産加工技術の研究,養殖技術の研究などの活動を行っている。
我が国は,同センターに対し,82年度において総額2億7,267万円の資金協力を行ったほか,82年度末現在18名の長期専門家を派遣中である。
(ロ)アジア租税行政及び調査に関する研究グループ(SGATAR: Study
Group on Asian Tax Administration and Research)
SGATARは,第5回閣僚会議(70年)における提案に基づき,域内各国の税制,税務行政の改善・強化と投資受入れ促進のための税制環境整備を目指し,各国間の意見交換を行うために設けられた。6月には第12回会合がマレイシアで開催された。
(ハ)東南アジア運輸通信開発局(SEATAC: Southeast Asian Agency for Regional
Transport and Communications Development)
SEATACは,第2回閣僚会議(67年)において設立が決定された東南アジア運輸通信高級官吏調整委員会(我が国はオブザーバー)の常設事務局で,マレイシアにある。東南アジア諸国の共同努力により,地域的重要性を持つ運輸通信部門の開発を進めることを目的としており,その活動内容は運輸通信部門での優先度の高い地域的開発計画及びプロジニクトの選定と評価,上記プロジェクトなどの研究,フィージビリティ調査の実施や財源の確保などを行っている。
我が国は,SEATACに対し,82年度に7万ドルを拠出し,長期専門家2名を派遣している。
(3)アジア生産性機構(APO: Asian Productivity Organization)
APOは,アジア諸国の生産性向上を目的として61年に設立された国際機関で,我が国などアジア16か国が加盟し,事務局は東京にある。
訓練コース,シンポジウムなどを開催するほか,専門家の派遣,視察団受入れなどにより,加盟国の中小企業を主な対象として経営改善,生産技術の向上などにつき助言・協力を行っている。
我が国は,APOに対する最大の拠出国として,82年度は分担金3億3,806万円及び拠出金1億5,396万円を拠出したほか,我が国で実施される事業費の一部として2億198万円を支出した。
(4)アジア工科大学院(AIT: Asian Institute of Technology)
AITは,アジア地域の工学分野における高度の専門家(博士及び修士)の養成を目的とする高等教育機関として,67年にバンコク郊外に設立された。
社会・地域開発,環境工学,農業工学,水資源工学,構造工学など9学科にほぼアジア全域から約500名の学生が就学している。教授・助教授陣は,日本,米国,西独,カナダなどから派遣された約70名である。
我が国は,AITに対し,奨学金,運営費及び機材費として82年度1億5,540万円を拠出したほか,82年度末現在教授7名を派遣している。
(5)国際下痢性疾病研究センター(ICDDR,B: International Centre for Diarrhoeal Disease Research, Bangladesh)
ICDDR,Bは,79年に従来のコレラ研究所が改組され発足した国際的機関であり,下痢性疾病の予防,治療により,開発途上国の公衆衛生計画の改善を図ることを目的としている。
ダッカに本部があり,研究調査活動,研修・訓練・普及活動及び治療活動を行い,世界的にも高い評価を受けている。
我が国は,81年度末(3月)に初めてICDDR,Bのプロジェクトに対し20万ドルを拠出したほか,1,532万円の機材供与を行った。