2.OECDにおける援助関係活動

(1)OECD開発援助委員会(DAC: Development Assistance Committee)

(イ)OECDの3大委員会の一つであるDACには,現在,日本,米国,英国,フランス,西独など先進17か国及びEC委員会が加盟している。主な活動は,援助理念,援助政策などに関する討議・検討,各加盟国の開発援助実績統計の収集・分析(その概要はDAC議長報告書として発表される)などである。

82年1月~83年3月にDACで討議された課題には,混合借款,援助と環境保護,ノンプロジェクト援助,人造り援助,多国間援助,援助評価,開発における婦人の役割,低所得国における輸出振興,UNCTADVI準備などがある。6月にDAC諸国全体の援助の動向をレヴューする合同審査,10月には日本の援助実績,政策を審査する対日援助審査,12月にはDAC各国の援助担当責任者による上級会議が開催され,日本及びDAC諸国全体の今後の援助を方向づける上で貴重な提言が数多く出された。その他,アラブ/OPEC援助機関や米州開発銀行との合同会合等も開催され,活発な意見交換が行われた。

(ロ)合同審査,対日援助審査及び上級会議の概要は次のとおりである。

(a)第3回合同審査

合同審査では,DAC諸国の81年の援助実績と将来の展望を中心に討議が行われ,81年のDAC諸国のODA実績が減少した理由として各国通貨の対ドル交換率が大幅に低下した国が多かったこと,IDA等国際開発金融機関に対する出資・拠出の時期の変更等による影響があったことの2点が指摘された。また,各国とも厳しい経済状況ではあるものの,開発途上国に対する援助を維持・強化していくことの重要性は少しも変わらないという点が強調された。そのほか,商品借款など柔軟な形態の援助の活用に関し,特に困窮の著しい低所得国においてかかる援助の必要性が高まっていること,国際機関援助に関するDACの今後の作業については,共通の問題点を今後議論すべきであること等が指摘された。

(b)対日援助審査

DACの対日援助審査は隔年ごとに開催されており,今回はポーツ議長の下,英国及びスウェーデンを審査国として行われた。会議は近年の我が国の援助に対する積極的姿勢を評価し,建設的な雰囲気の下に進められ,議長は,我が国の姿勢について,援助を巡り全体的に暗い状況の中の明るい要素である旨述べた。質疑応答では,特に我が国のODA倍増新中期目標の達成見通しに対し強い期待と関心が寄せられ,我が国が一般会計予算の中でODAに高い伸びを与えることを委員会として強く要請する旨の記述が会議後の新聞発表に盛り込まれた。そのほか会議においては,総合安全保障と援助政策,低所得国向け援助,援助条件の改善,ノンプロジェクト援助,政策対話等について討議が行われた。

(c)第21回上級会議

(i) 援助政策に関する現下の主要問題について,冒頭ポーツ議長から,開発途上国の資金需要が急増している一方,DAC諸国は財政的困難から援助量をなかなか伸ばせない状況にあること,特に困窮の著しい低所得国向けの多国間援助機関の融資財源が伸び悩んでいること,ODA資金が短期的輸出振興に使われる傾向があること等の指摘がなされた。また,ヴァン・レネップOECD事務総長から,現在の世界不況の下で開発途上国の見通しが非常に暗く,DAC諸国からの長期的な条件の緩やかな援助が求められていること等の指摘がなされ,各国からは,援助量拡充,政策対話,援助国間の調整,援助に対する国内的支持の獲得,負担公平の原則等について,その重要性が表明された。

(ii) 低所得開発途上国向け援助に関しては,これら諸国の多くが当面の国際収支困難,累積債務問題を含め危機的な状況に直面しており,他方,これら諸国は民間資金を利用する道が限られ,ODA資金に頼らざるを得ないことから,今次会合の中心テーマとして取り上げられることとなった。

  ここでは,国際収支困難に陥っている諸国に対し緊急支援の必要性が強調され,また低所得国に対する援助形態としては,新規プロジェクト借款よりも既存のプロジェクト,施設についての維持・補修(メインテナンス,リハビリテーション)のための援助など柔軟な形態の援助をもっと拡充すべしとの意見が支配的であり,メインテナンス援助のガイドラインが79年のローカル・リカレソトコスト・ガイドラインの追加として採択された。

(iii) そのほか,援助評価,混合借款,83年作業計画が討議された。

(2)OECD開発センター

本センターの主な活動は開発問題の調査・研究であるが,その他にOECD加盟国と途上国の研究機関等の協力促進,開発経験の交換,出版等を行っている。

(3)技術協力委員会(TECO: Technical Cooperation Committee)

ここでは,OECD加盟国,特に開発途上加盟国(ギリシャ,トルコ,スペイン,ポルトガル及び準加盟国のユーゴースラヴィア)に対し技術協力を行うほか,OECD加盟国全体の関心テーマにつき研究調査等の共同活動を行っており,最近のテーマとしては行政の効率性,農村地域経済開発,産業政策などが取り上げられている。

 目次へ