第7節 その他
1.環境問題
(1)日米間の環境問題
75年8月に署名された「環境の保護の分野における協力に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」(80年8月に有効期間が5年間延長された)に基づく第6回合同企画調整委員会の東京開催は,米側の都合により,83年後半(秋ごろ)まで延期されることとなった(なお,第5回委員会は81年11月,ワシントンにおいて開催された)。
(2)OECDにおける環境問題
(あ)OECD環境委員会
同委員会は,79年の第2回環境大臣会議宣言を踏まえ,予見的環境政策を推進する基本方針の下に,82年は経済と環境,エネルギーと環境,化学品規制,環境の状況調査を重点分野として活発な活動を行った。同委員会の下部グループである大気,水,エネルギー,廃棄物,化学品,環境の状況及び経済専門家グループにおいては上記基本方針のもとに具体的事業を実施しているが,82年からは新たに交通と環境特別グループ及び騒音低減政策特別グループが活動を開始した。
(い)地球的規模の環境問題
81年4月の環境委設立10周年記念パネル会合を契機として地球的規模の環境問題への取組みが開始され,82年には各下部グループにおいてプロジェクトの具体化に向けて検討が行われた。
(う)化学品問題
11月には第2回化学品ハイレベル会合が開催され,81年に採択されたデータの相互受入れに関する決定を補完する各種勧告案等について基本的合意を得たほか,既存化学品対策等80年代に向けての主要活動項目について合意した。
2.国際投資問題
(1)我が国の投資概要
(イ)81年度の我が国の海外投資の状況を見ると,大洋州及び中近東地域において減少は見られたものの,アジア地域を中心に大幅に増加し,対外直接投資届出額は89億600万ドルとなり,80年度(46億9,300万ドル)に比べて42億1,300万ドル(89.8%)も増加し,過去最高の79年度(49億9,500万ドル)をしのぐものとなった。
(ロ)81年度の届出額を業種別に見ると,製造業は木材・パルプ,化学が減少したものの,輸送機,機械,電機等で増加したため,全体では対前年度比33.6%増の22億8,000万ドル(構成比25.6%),鉱業は同348.5%増の25億3,400万ドル(同28.5%),商業は同47.3%増の11億7,400万ドル(同13.2%)となっている。
投資先を地域別に見ると,北米は対前年度比を56.5%増の24億9,700万ドル(うち米国は同56.9%増の23億2,900万ドル),欧州は同38.1%増の7億9,800万ドル,アジアは同181.5%増の33億3,800万ドルとなっているのに対し,大洋州は同5.4%減の4億2,400万ドル,中近東は同39.2%減の9,600万ドルとなっている。
(ハ)81年度末現在の対外直接投資届出累計額は454億300万ドルとなっている。
業種別に見ると,製造業148億5,300万ドル(構成比32.7%),鉱業96億600万ドル(同21.2%),商業65億8,300万ドル(同14.5%)等となっている。
地域別に見ると,アジア131億6,700万ドル(構成比29.0%),北米122億9,500万ドル(同27.1%),中南米73億4,900万ドル(同16.2%),欧州52億7,000万ドル(同11.6%),大洋州29億4,900万ドル(同6.5%),中近東23億5,500万ドル(同5.2%),アフリカ20億1,800万ドル(同4.4%)となっている。
また,我が国の主要投資先国を累計額で見ると,米国,インドネシア,ブラジルの順に多く,この3か国で全体の46.9%を占めている。
(2)投資保護協定の締結の促進
(イ)我が国の対外直接投資は,70年代から急激に増加してきており,今後とも一層活発に行われることが予想される。こうした背景もあって,近時いわゆるカントリー・リスク問題についての認識が深まっている。
海外投資は,投資母国の経済に貢献するのみならず,資本・技術等の移転,雇用創出効果等により投資受入国の経済発展にも資するものであり,また,経済的・人的交流を通じて両国関係を緊密化する。こうした効果を有する海外投資を今後とも更に促進していくことが望ましいが,海外投資に関しては,投資家にとって予見可能性及び法的安定性が限られる可能性があり,この意味で投資環境は国内投資の場合と異なると言えよう。
(ロ)こうした投資環境への対応は,一義的には海外投資を行う民間の責任と判断に委ねられているものであるが,投資母国及び投資受入国の役割は,この投資環境をできる限り良好なものに整備することであろう。
投資保護協定は,投資保険,税制等の施策と並んで,こうした投資環境の整備のための諸施策の一環として重要である。我が国は,かつては海外投資が必ずしも活発でなかったこともあり,海外投資については通商航海条約中の投資関連規定で対応するとの考え方をとっていたが,海外投資が近年急増している状況の中で,投資のみを対象として実体的及び手続的規定を共に詳細に定める投資保護協定の必要性が認識されるに至っている。
(ハ)我が国は,既にエジプト及びスリ・ランカとの間に投資保護協定を有しているが,上述の認識の下に,80年12月の日中閣僚会議及び81年1月の鈴木総理大臣のASEAN諸国訪問の際,中国及びASEAN諸国とも,それぞれ投資保護協定の締結交渉に入ることにつき合意に達し,現在,鋭意交渉を行っているところである。
(3)OECDにおける討議
国際投資・多国籍企業委員会は,76年にOECD閣僚理事会が採択した「国際投資及び多国籍企業に関する宣言」(79年に一部改定)の各国における適用ぶり等をレビューした「中間報告書」を6月に完成させた。これを踏まえて「第2回目のレビュー」を84年春を目途に実施することとなっており,これに向けての作業を行った。
また,同委員会の下に設置されている次の作業部会では,それぞれ関係分野の検討を行った。
(1)ガイドライン作業部会
「多国籍企業の行動指針」の各国の遵守ぶりのフォローアップ。
(2)国際投資政策作業部会
内国民待遇関係では,各国の例外措置を評価分析し,内国民待遇適用拡大の方途を検討すること等。
国際投資政策関係では,加盟国が導入している国際投資促進及び抑制措置の一層のトランスパレンシィの確保を目指し,「貿易関連投資措置」をも検討。
(3)会計基準作業部会
会計基準の比較と調和化の検討。
これらの作業を進めるに際し,OECDの民間諮問機関である経済産業諮問委員会(BIAC: Business and Industry Advisory Committee)
及び労働組合諮問委員会(TUAC: Trade Union Advisory Committee)との協議も行われた。
また,国連及びその他の国際機関における多国籍企業と国際投資に関する動きについても意見交換を行った。