3.エネルギー以外の資源問題

(1)82年の主要資源の市況

(イ)80年以降,大幅に低迷していた一次産品価格は,82年央ごろから鉱産物を中心に回復の傾向を見せ始めた。まず金,銀等貴金属が6月から価格が上昇し,銅,アルミ,すず等の価格も,これに追随して回復基調に入った。また小麦,とうもろこし,大豆等の穀物及びココア等も米国の穀物減反等生産減の見通しなどにより,秋口から若干価格回復を示した。

他方,大きな過剰生産を抱える砂糖コーヒー,綿花,鉛,亜鉛などは83年に入っても市況回復は見られなかった。

(ロ)83年に入っても穀物,ココア等の価格回復基調は続いているが,その背景としては,(i)金利の低下傾向,(ii)市況底入感,(iii)米国等の景気回復兆候に伴う実需期待等が考えられる。

(2)一次産品総合計画(IPC: Integrated Programme for Commodities)個別産品協議の進捗状況

(イ)現在緩衝在庫ないし輸出割当制度を有するすべての一次産品協定(コーヒー,ココア,天然ゴム,砂糖及びすず)が82年中これらの価格安定措置を発動したが,ほとんどの協定が資金不足(ココア,すず等)ないし有効な輸出割当実施の困難(砂糖等)に直面した。

(ロ)IPCの下での最初の商品協定である国際天然ゴム協定が4月に確定発効し,10月には国際ジュート協定が採択された。国際熱帯木材協定については,82年中にそれまで6年間にわたった予備協議が終了し,83年3月協定交渉会議が開催されたが合意に至らず,83年中に次回交渉会議の開催が予定されている。

(ハ)また,82年には茶,バナナ,マンガン及びボーキサイトについての予備協議や政府間専門家会合が開催された。一方,砂糖については83年5月に新協定交渉会議が予定されているほか,ココアについても協定のレヴューの動きがある。

(ニ)我が国としては,一次産品貿易の安定を図ることは南北協力を進める上で重要な意義を有するとともに,輸入国として安定供給を確保する上でも重要であるとの認識に立ち,産品ごとの特性を重視しつつ一次産品協定及び各種協議に積極的に参加した。

(3)商品機関の現状

(イ)商品協定

(a)国際小麦協定

79年の国連小麦会議の中断後,国際小麦理事会の場で新たな小麦貿易規約の交渉が行われたが,その後交渉再開の目途がたたず,12月の政府間部会では現行協定を3年間延長することが決定された。国際小麦理事会では,新規約が作成されるまでの間,現行協定に基づく情報交換及び協議の機能を強化し,国際小麦需給の変化に対処することとしている。

(b)国際すず協定

81年6月に採択された第6次協定は,米国,ソ連,ボリヴィア等の主要産消国の参加が得られず,確定発効には至らなかったが,7月暫定発効した。すずの市況は,82年前半は大きな低迷状態にあったが,理事会は4月から輸出統制措置を導入するとともに緩衝在庫管理官による市場介入が活発に行われた。その後6月以降市況は強含みで推移したが,実需の回復が依然弱いことから83年6月末まで輸出統制が継続されることが決定された。

(c)国際ココア協定

生産過剰により低落状態にあったココア価格の回復を図るため,81年9月から協定に基づく緩衝在庫の購入が行われた。しかし,ココアの価格は依然低迷を続けている。他方緩衝在庫購入資金も不足しており,市中銀行からの借入資金による在庫積増し等につき検討が行われている。

(d)国際コーヒー協定

市況は供給過剰のため下落傾向にあったが,80年10月以降,協定に基づき輸出割当てが発動されていることによりコーヒー価格は,なお低水準ながらも安定的に推移してきている。現行協定は10月から1年間延長されたが,9月に現行協定を踏襲する新協定が作成され,83年10月を発効の目標としている。

(e)国際砂糖協定

国際需給の一層の緩和により82年は引き続き国際価格が低迷したため,83年に入っても輸出割当て及び特別在庫の貯蔵による価格安定措置が継続された。また現行協定は5月の理事会決定により84年末まで2年間延長されたが,価格安定のため期待された効果を十分に果たしていないため,新協定の早期作成の方向で12月以降3回にわたり準備委員会が開催され,83年5月には新協定の交渉会議が予定されている。

(f)国際天然ゴム協定

本協定は80年10月に暫定発効,4月に確定発効した。国際価格の下落のため5月には価格帯が1%下方に引き下げられるとともに,3月以降も緩衝在庫資金への拠出要請が4回にわたって行われた。83年2月から価格は上昇に転じている。

(g)国際ジュート協定

本協定は国際天然ゴム協定に次ぎ,10月にIPCの下で第2番目の協定として採択された。これまでの商品協定は緩衝在庫や輸出統制という価格安定措置を基本としていたのに対し,本協定は「研究及び開発」等を中心としたIPCでいう「その他の措置」を中心とした新たな協定である。83年7月からの発効が予定されている。

(ロ)商品研究会

(a)国際鉛・亜鉛研究会

10月第27回総会がジュネーヴで開催され,需給見通しや財政問題等につき討議が行われた。また,83年9月には再生鉛・亜鉛に関する特別会合がワシントンで開催される予定である。

(b)国際綿花諮問委員会

10月カイロで第41回総会が開催され,82年の綿花の生産,需給動向及び綿製品の動向が討議された。

(c)国際ゴム研究会

5月にメキシコ・シティーで第27回総会が開催されたほか,ゴムの生産・消費・貿易などの動きに影響を及ぼす諸要因を分析するため新たに「生産・消費・市場委員会」を設置することが合意された。

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