2.国際エネルギー機関(IEA)を巡る動き
82年,IEAにおいては,石油市場がここ数年来なかったほど軟化した状況の中で,これまでの政策努力のモメンタムをいかに確保していくかという点が議論の中心となった。
また,上記との関連で,これまでの短期的供給攪乱対策に加え,今後の脱石油戦略を中長期的にいかに進めていくかについても議論がなされ,上記2点を総合した安全保障という観点からエネルギー政策を進めていく視点が示された。
(1)5月に開催された第8回1EA閣僚理事会では,以下のとおり合意した。
(イ)省エネルギー,新たに代替エネルギーの開発導入の進展はあったが,石油需給の緩和下においても,気を緩めるべきでない。
(ロ)天然ガスの重要性を認識しつつその供給撹乱に対する脆弱性を低減するための諸施策を検討する。
(ハ)産油国と消費国との間での相互理解を深めるための接触強化,開発途上国のエネルギー開発への協力,援助を行うこと。
(2)ヴェルサイユ・サミットにおいては,エネルギー安全保障を高めていくため,危機管理対策に加え市場機能の強化,代替エネルギーの開発導入に努めるとともに産油,非産油開発途上国との協調,相互理解を進めることが合意された。
(3)その後10月に開催されたIEA理事会において,以下の決定が行われた。
(イ)各国の天然ガス利用,生産,貿易の長期動向を把握しつつ,供給攪乱に伴う影響等を客観的に分析する作業を83年春までに行う。
(ロ)エネルギー研究開発について,その活動の見通しと方向付けを行うこと,具体的には,(i)核融合分野における協力強化,(ii)石炭の「クリーン利用」面の協力を推進していくこと。
(ハ)第4回融通スキーム演習(AST-4)を83年5月~6月に実施する。
(4)82年10月には事務局の作業として,西暦2000年までのエネルギー情勢をまとめた「世界のエネルギー展望」がまとめられ,当面石油需給の緩和が続くとしても,世界経済が石油に依存した脆弱な構造から脱却していないことが警告された。
(5)一方東西経済関係の一環として,OECD諸国の2000年までのエネルギー供給構造の脆弱性を洗い出し,それへの対応策を検討する「エネルギー必要量,安全保障研究」が行われることとなり,83年5月までに研究を終了することとなった。
(6)83年に入ってからのOPEC基準原油価格の引下げは,世界経済の負担を軽減したものとして歓迎されたが,より長期的には市場が逼迫化に向かう潜在的傾向があることにかんがみ,これまでのエネルギー政策を引き続き遂行することとなった。