2.我が国と西欧諸国との関係
(1)日・西欧関係全般
国家間の相互依存関係がますます深まり,国際情勢が複雑化するに伴い,先進民主主義諸国が一致協力して種々の問題に対処していく必要性が高まってきている。我が国と西欧は,第1部第3章第1節5に述べたように歴史的,地政学的,経済的にも多くの類似点を持っているほか,双方が,国際社会で占める重要な地位に照らし合わせても,日欧の友好協力関係を一層促進し,世界の平和と繁栄のため責任ある役割を果たすことが我が国にも期待されている。
かかる認識に基づき,我が国は,西欧諸国との関係を一層強化すべく地道な努力を重ねてきている。4月にはミッテラン=フランス大統領が訪日し,10月にはサッチャー英国首相の訪日が実現したほか,次表に示されているとおり,西欧諸国から多くの要人が訪日した。他方,我が国からは,9月に櫻内外務大臣がデンマーク(当時EC議長国)を訪問し,国際政治・経済問題につき幅広い意見交換を行ったほか,83年1月には安倍外務大臣が欧州各国を訪問し,日欧協力,とりわけ,政治分野での協力につき話し合った。
他方,我が国は対西欧外交を進めるに当たり,いわゆる大国のみならず,他の西欧諸国ともきめ細かい関係を発展させるよう努めている。このような我が国の政策はフレッシュ=ルクセンブルグ外務大臣,ザルヒャー=オーストリア大蔵大臣などの一連の要人往来に示されているとおりである。
(2)日・西欧経済関係(日・EC)
(イ)82年の我が国の対EC貿易は,輸出入とも減少した(輸出は170億7,300万ドル,前年比9.6%減,輸入は75億5,700万ドル,前年比11.6%減)。
この結果,73年以降81年まで拡大の一途をたどった我が国の対EC黒字幅は前年の103億4,200万ドルから95億1,600万ドルヘと若干の縮小を見た。
(ロ)EC側は,加盟国の深刻な経済困難もあって,対日貿易不均衡を問題とし,我が国に対し一層の市場開放及びセンシティヴ品目の輸出自粛を要求した。
(ハ)EC側は,3月,対日貿易不均衡の拡大の原因として,日本の複雑な輸入検査,通関手続等のほか,企業グループの存在,複雑な流通機構等独特の経済社会制度により日本の製品輸入が阻害されており,ECのガット上の利益が侵害されているとしてガット第23条協議を申し入れてきた。これに対し,我が国は,ガットの自由貿易体制は二国間において貿易の均衡が達成されることを目的としておらず,また,我が国の経済社会体制自体をガット上問題にすることはガット協議になじまないとの立場をとった。
このため,日・EC間の協議は,5月,7月及び10月と3回にわたり行われたが双方の主張が平行線をたどり,EC側は12月の外相理事会においてガット第23条協議を同条2項により,多数国間の場へ持ち出すことを決定した。
(ニ)市場開放については,EC側は関税引下げ,輸入数量枠の拡大,基準・認証手続の簡素化と改善,投資・金融面での環境改善等を具体的に要求した。これに対し我が国は,EC関心品目であるブランデー,チョコレート,ビスケットなどの関税引下げ等一連の措置をとった。EC側はこれを高く評価する一方,かかる市場開放努力の継続を希望している。
(ホ)センシティヴ品目の対EC輸出については,EC側はEC経済は停滞しており,EC域内の当該産業の再編構造調整に「息つぎの期間」が必要であるとしてVTR,カラーテレビ・ブラウン管,カラーテレビ,NC旋盤及びマシニングセンター,乗用車,軽商業車,フォークリフト・トラック,自動二輪車,クォーツ時計及びハイ・ファイ機器の10品目につき,我が国の輸出自粛を要請した。我が国は,83年2月のハーフェルカンプ及びダビニヨンEC委員会副委員長の訪日の際の話合いの結果,例外的かつ臨時のものとして,VTR及びカラーテレビ・ブラウン管については83年の対EC輸出数量を明示した輸出見通しを表明するとともに,83年3月18日からVTRの最低輸出価格制を導入した。また,カラーテレビ,NC旋盤及びマシニングセンター及び乗用車については,輸出がモデレートになるとの見通しを表明するとともに,その他の4品目については,我が国の集中豪雨的輸出を避けるとの基本方針を確認し,特段の問題があれば協議する用意がある旨を表明した。一方EC側は2月の外相理事会でこれを了承するとともに,日本製VTRについてのダンピング訴訟手続を83年3月18日に取り下げた。また,10月に導入された仏政府のVTRのポワチエ輸入通関集中措置も83年4月に廃止された。
(へ)このほか,一連の交渉の過程で日・EC間の協力促進の見地から新たに貿易拡大小委員会及び産業協力協議の設置につき合意された。また,科学技術,開発援助等の分野で幅広い協力を行うことについても合意された。
<要人往来>
<貿易関係>(1982年,単位:百万ドル,( )内は対前年比増加率%)
(出所:大蔵省通関統計)
<民間投資>
(あ)我が国の対西欧直接投資(単位:百万ドル)
(い)西欧諸国の我が国に対する直接投資(単位:百万ドル)
(届出ベース)