2.我が国と中南米諸国との関係

(1)全般的関係

(イ)我が国と中南米地域との間には従来困難な政治問題もなく,伝統的友好関係が保たれてきている。特に,経済面では,貿易・投資関係を中心にした相互依存関係がある。かかる経済的相互補完関係を基礎にしつつ,相互理解を深め,交流の幅を拡大するため,我が国は,要人の相互訪問の活発化,経済・技術協力の拡充,文化交流の促進等に努めている。また,中南米地域には100万人近い邦人移住者及び日系人が居住しているが,これら邦人移住者及び日系人の活動は各国の経済・社会開発及び中南米諸国と我が国との関係緊密化に大きく寄与している。このような人的紐帯も,日本と中南米の伝統的友好関係を支える重要な要素の一つとなっている。なお,最近中南米諸国は,我が国及びアジア地域に対する関心を高めつつあり,我が国との人物往来は極めて頻繁化している。

(ロ)6月,鈴木総理大臣はペルー及びブラジルを公式訪問し,ペルーにおいてはベラウンデ大統領及びウヨア首相と,また,ブラジルにおいてはフィゲイレード大統領と会談した。首脳会談を通じて表明された,両国の対日関係緊密化への期待にこたえ,鈴木総理大臣は引き続き両国の経済社会開発の努力に対し協力していく用意がある旨明らかにし,農業,水産業等種種の分野に対する経済技術協力の供与につき具体的に約束した。また,科学技術面での協力,文化交流の促進についても話し合われた。

ブラジル及びペルー両国は,中南米において重要な地位を占めており,我が国と経済的補完関係にあり,多数の日系人が在住しており,我が国との関係が極めて緊密であり,また我が国総理大臣の南米訪問は久々の出来事であったこともあり,同訪問は大きな意義を有したものであった。総理の訪問は両国官民の非常な歓迎を受け,両国との友好関係の増進のみならず,広く中南米地域と我が国との関係の一層の緊密化の上で大きな成果を収めた。

(ハ)中南米諸国からの要人の来訪も活発であり,3月にゲレイロ=ブラジル外相(第1回目伯外交事務レベル協議開催),9月マルシエルカ=キューバ外相,10月ウヨア=ペルー首相,83年1月セプルベダ=メキシコ外相がいずれも外務省賓客として来日した。

10月,我が国はアンティグァ・バーブーダと外交関係を樹立した。

(ニ)フォークランド紛争に関し,日本政府は一貫して国連憲章及びその他の国際規範に従い,公正な態度で対処するよう努めた。ラ米諸国からは,国により差はあるものの,我が国のかかる対処ぶりは,ラ米諸国の立場に理解を示したものであるとして高く評価されたが,このことにより,今後の日本・ラ米関係の発展にとり好ましい雰囲気が醸成された。

(2)経済関係

(イ)貿易

我が国の中南米に対する輸出は,ここ数年大幅な伸びを記録していたが(通関統計ベース,80年対前年比増36.0%,81年同増17.9%),82年は90億8,600万ドル(対前年比13.6%減)と著しい落込みとなり,ここ20年来で最低の伸び率を記録した。特に82年後半,メキシコ,チリ等において,我が国の輸出は81年同期に比し半減している。一方輸入も75年以来好調に伸びていたが,82年は62億6,800万ドル(対前年比6%減)と前年比マイナスに転じた。この結果,我が国の対中南米貿易の黒字幅はかなり縮小し,28億ドルとなった(80年32億ドル,81年38億ドル)。

貿易の国別構成は従来どおり,貿易額の主要部分が特定国との貿易に集中する傾向は変わらず,パナマ,ブラジル等上位6か国の合計は,対中南米貿易において輸出では78%,輸入では74%のシェアとなった。

(ロ)投資

3月末現在の我が国の対中南米直接投資許可実績は,累計ベースで73億4,911万ドルとなっており,我が国の対外直接投資総額に占めるシェアは16.2%でアジア(29%),北米(27.1%)に次いで第3位となっている。

81年度単年ベースでは,11億8,100万ドル(シェア133%)と80年度(5億8,800万ドル)に比し倍増した。

(ハ)金融

我が国民間銀行の対外貸付残高のうち,中南米諸国向け分は,その約3分の1を占めている。8月以来顕在化した中南米諸国の金融困難に際して,我が国民間銀行は国際的な金融支援に応分の協力を行ってきており,政府としてもIMF,BIS(国際決済銀行)を通じできるだけの支援を行ってきている。

(ニ)民間レベルの経済交流

2月には,日本・ヴェネズエラ経済協力懇談会が,両国の経済関係強化のためのミッションをヴェネズエラに派遣し成果を収めた。9月には,日智経済委員会がチリのサンチャゴで開催され,また同月輸銀,米州開発銀行(IDB)共催のラ米シンポジウムが東京で開催された。このほか各種経済団体や民間企業から数多くのミッションが派遣された。

(3)文化関係

我が国と中南米諸国との文化面における交流も近年著しく緊密化している。82年度は,ペルー,コロンビア,ドミニカに対する文化無償協力の実施,中南米各国における巡回日本映画祭及び日系人の協力を得た「日本文化週間」の実施,日本語普及,日本研究の助成など多彩な協力が行われた。また,6月の鈴木総理大臣のペルー訪問の際に,我が国と同国の間で文化協定締結交渉を開始することが合意され,同合意に基づき交渉が開始された。

<要人往来>


<貿易関係>(1982年,単位:百万ドル,( )内は対前年比増加率%)

(出所:大蔵省通関統計)


<民間投資>(単位:百万ドル)

(届出ベース)


<経済協力(政府開発援助)>(1982年,単位:百万円,人)

(約束額ベース)(DAC実績ベース)

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