6.インドシナ難民問題
(イ)概況
(a)75年のインドシナ政変を契機に発生したインドシナ難民問題は,これまでの国際的救済活動を通じ,79年当時の危機的状況はなくなっているが,問題は長期化している。また,83年初頭タイ・カンボディア国境で戦火が発生し,新たな難民の流入も危惧されるなど,本問題は引き続き東南アジア地域の不安定要因となっている。
(b)83年2月末現在,タイなど各国には約20万人の難民が滞留しているほか,ヴィエトナム・ポート・ピープルを中心に今も新規流出が続いている。
他方,米国など主要各国による定住受入れは,失業者の増大等の国内的困難もあり,82年に入りますます鈍化傾向を示すようになった。また,難民の本国帰還も遅々として進まず,特に大量の滞留難民を抱えるタイや香港などは,その対応に腐心している。
(c)カンボディア難民の自主帰還問題については,6月シンガポールで行われたASEAN拡大外相会議において,櫻内外務大臣が,「カンボディア西部に国際機関管理下の自主帰還難民受入センターを設け,主に空路による帰還を図ってはどうか」との新提案を行った。右提案はタイをはじめASEAN各国の賛同を得,現在UNHCR等を中心に検討が進められている。
(ロ)我が国の対応
(a)我が国はインドシナ難民が大量に発生した79年来,救済援助を積極的に進めてきているが,82年度もUNHCR等国際機関への拠出,WFPを通ずる食糧援助,タイヘの医療チーム派遣,フィリピン難民収容センター(RPC)への医療・職業訓練協力など総額約6,700万ドルの協力を行った。この結果,79年以降の援助累計総額は約3億4,000万ドルに達した。
(b)我が国への定住受入れについては,83年3月末現在2,290名が定住するに至っている。
他方,ポート・ピープルに対する一時庇護の面では,82年1月から83年3月までの間1,083人が新たに我が国へ上陸した。この結果75年以降の上陸総数は6,724人となったが,うち1,822名(83年3月末現在)は今も我が国に滞留中である。
(c)従来これら一時滞在難民は民間団体の施設に収容されていたが,2月には初の政府運営施設「大村難民一時レセプション・センター」が開設された。しかし,既に述べたような各国による引取り鈍化傾向から,我が国の一時滞在難民の滞留数は漸増傾向を示し始め,収容先の確保にも苦慮することとなった。かかる事情から,11月,収容規模720名の新滞在施設「国際救援センター」の開設が決定された(建設費等は20億7,000万円)。同センターは83年4月開設の予定であり,運営についてはアジア福祉教育財団に委託することとなっている。