第2節 軍縮問題

1. 軍縮委員会及び国連における軍縮問題審議

(1) 軍縮委員会(CD: Committee on Disarmament)

81年の軍縮委員会は,冒頭から80年の会期で設置された四つの作業部会,すなわち,(イ)化学兵器禁止,(ロ)非核兵器国の安全保障,(ハ)放射性兵器禁止,(ニ)包括的軍縮プログラムの再設置が合意され,実質的審議が行われた。核実験禁止問題については,一連の非公式会合を通じ,作業部会の設置を目指して審議が続けられた。

(2)第36回国連総会

第36回国連総会においては,82年6月に開催が予定されている第2回国連軍縮特別総会に対する関心を反映して,従来の決議事項のほかに,第1回軍縮特別総会以降国連によって進められてきた軍縮関連研究の第2回特別総会での検討を要請する諸決議,宇宙における軍備競争の回避に関する審議を要請する決議など新たな問題を取り扱った決議が加わり,これまでの最高の49件の決議が採択された。

我が国は,核実験全面禁止条約及び化学兵器禁止条約の審議促進を求める決議に関し,原提案国の一つとして両決議の案文作成及び各国の支持取付けに積極的な貢献を行ったほか,更に,兵器用核分裂性物質の生産停止,軍縮と開発の関係の研究,宇宙における軍備競争回避に関する決議を含む合計5件の決議の共同提案国となった。

(3)国連軍縮委員会(UNDC: United Nations Disarmament Commission)

国連軍縮委員会は5月~6月,国連本部で開催され,(イ)軍事費凍結・削減問題,(ロ)通常兵器軍縮研究を中心に審議が行われた。

軍事費凍結・削減に関しては,そのために国家のとるべき原則を定めようとする立場と本問題解決のためにはまず各国軍事費の公正な算定・比較が前提であるとの立場等の対立があり,次回UNDC会合で引続き検討されることとなった。

通常兵器軍縮に関しては,本問題の専門家研究のための付託事項につき検討を行ったが,核軍縮を優先すべきであるとする一部非同盟諸国の反対もあり,結局合意に至らなかった。

2. 主要軍縮問題

(1) 核実験の全面禁止(CTB: Comprehensive Test Ban)問題

(イ) CTBに関する米英ソ3国間交渉は,英国が80年7月の軍縮委員会に経過報告を提出した後中断され,その後再開されるに至っておらず,進展を見ていない。

(ロ) 81年の軍縮委員会においては,我が国をはじめ多くの国がCTB作業部会設置を求めたが,核兵器国の反対により合意が得られなかった。

(ハ) 第36回国連総会において,我が国は,豪州・カナダ等と共同して,米英ソの交渉当事国に対し,CTB3国間交渉を早期に再開し,交渉を妥結させるよう要請し,また,軍縮委員会に対し,82年会期当初にCTBの実質的交渉を開始するための作業部会を設置するよう要請する決議案を提出し,同決議案の採択に努力した。同決議案は総会本会議において圧倒的多数で採択された。

(ニ) また,軍縮委員会の枠内で実施中の地震専門家グループによる国際的地震探知データ交換制度の技術的検討作業には,我が国専門家が引続き積極的に貢献した。とりわけ,我が国が提唱してきた国際地震データ交換の第2回実験的実施が,我が国を含め21か国の参加の下に11月から12月にかけて行われた。

(ホ) 82年の軍縮委員会(春会期)において,米国がCTBの「検証」と「遵守」に関する下部機構の設置に同意する旨発言したことにより,CTBの作業部会の設置を目指し,同作業部会の付託事項に関して検討が行われるに至った。我が国は,同作業部会の設置を積極的に支持している。

(2) 核不拡散問題

我が国は,核不拡散体制強化のためには,核兵器不拡散条約(NPT: Non-Proliferation Treaty)の普遍的加盟の達成が重要であるとの観点から,未加盟国の条約加盟促進を呼び掛けてきた。

2月にはエジプトが,6月にはソロモン諸島がそれぞれ加盟し,82年3月現在のNPT締約国数は115か国となった。

(3) 化学兵器禁止問題

81年の軍縮委員会においても作業部会が設置され,化学兵器禁止条約に盛り込まれるべき要素に関し,これが網羅的に列挙され,言わばその全体像が初めて明らかにされた。また,禁止すべき化学剤の範囲及び検証問題を中心に検討が進められた。82年の軍縮委員会(春会期)において,各国の合意が既に得られている事項については,条約起草が可能となるよう本件作業部会の付託事項を改正することについて合意が得られ,それに基づき審議が行われた。

(4) 包括的軍縮プログラム

(イ) 81年においては,軍縮委員会における作業部会で本件が検討された。

プログラム実施のための期限設定問題及び同プログラムの法的性格に関して合意が得られず,これらの問題を棚上げにしたまま,専らプログラムに含まれるべき措置についての検討が行われた。

我が国は,西独等とともに本件審議の促進に資するため作業文書を提出した。

(ロ) 82年においても作業部会が設置され,措置に関する検討作業が行われた。

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