(5) NATO閣僚理事会(春季)最終コミュニケ(仮訳)

(1980年6月26日,アンカラ)

I

1. 北大西洋理事会は,1980年6月25日及び26日アンカラにおいて閣僚レベルで会合した。

2. 国際情勢を振りかえり,閣僚は,過去6ヵ月間世界の安定の基盤に挑戦する展開によって暗い影を投げかけられたことにつき懸念を表明した。国家間の関係を律する法は,国連憲章において「これらの法の侵害は,国家間の関係を律すべき理解と信頼を損う緊張に通ずる。」旨定義されている。閣僚は脅威に対する彼等の政府の反対又は武力行使に対する反対を強調し,国際紛争の平和的解決に対する誓約を再確認した。閣僚は,「国家の独立,安全保障・人権,民主主義及び法の支配」という大西洋同盟の基本的な理想と目標の達成のために共に努力するとの決定を再確認することが現下の情勢において特に重要であると考慮した。かかる観点から,閣僚は,同盟内の緊密な政治的協議の重要性を強調した。

3. 閣僚は,ソ連軍によるアフガニスタンの継続的占領に対し深い懸念を表明した。第三世界における伝統的に中立,非同盟の国家の占領は,アフガニスタン人民の抵抗を喚起し,約100万人の難民の脱出をもたらし,国連総会,国連人権委員会・イスラム会議及びその他の会議において国際社会の圧倒的多数により非難されている。閣僚は右軍事介入及び大量の軍事力によりアフガニスタン国民の民族的抵抗を粉砕せんとする企図を容認できないものと見なし,その行動を正当化するためにソ連政府によってなされている議論が全く納得できないものであることに留意した。104カ国によって採択された1980年1月14日の国連総会決議の声明を再確認しつつ,閣僚はアフガニスタンからの外国軍隊の即時,無条件且つ全面的な撤退の必要性を強調し,ソ連政府がアフガニスタンの主権,領土保全及び自らの将来を自由に決定するアフガニスタン国民の権利を尊重するよう訴えた。

閣僚は,ソ連のアフガニスタン占領が全般的戦略情勢に対し極めて重大な影響を伴うものであることにつき留意した。ソ連政府は,今回,非同盟国に対してその意志を直接押しつけるために自らの軍事力を行使したことによって,軍事力バランスを自己に有利に転換させるための機会を活用せんとの用意があることを明らかに示した。かくしてそれはソ連の将来の意図に関する重大な懸念を惹起し,世界の平和と安定によって死活的な地域の安全保障を脅やかしている。閣僚は,右地域の安全保障は第1にその地域の諸国の関心事であることを確認する一方,それら諸国との関係に鑑み,同盟諸国が同地域の平和と安定に貢献し得るとの事実を歓迎した。

閣僚は,ソ連の介入により生じた国際危機のために同盟側における断固とした継続的且つ協調的な対応が必要であることにつき合意した。ソ連政府は,NATO同盟諸国がかかる事態を世界平和を損うものとみなしているというその極めて重大な関心につき,如何なる疑いをも抱くべきでないことが重要である。閣僚は,武力行使により生じた既成事実を容認することが論外である旨再確認した。アフガニスタンは何人にとっても人質又は脅威となるべきではない。閣僚は,アフガニスタン国民が完全な自由により且つ如何なる外部圧力にもよらず平和的にその将来を決定し得るためソ連軍の全面的且つ即時の撤退を必ずもたらさなければならない政治的解決の必要性を強調した。若干のソ連軍部隊がアフガニスタンから撤退しつつあるとの最近の発表は,それが全面撤退の開始である場合に意味を持つに過ぎない。閣僚は,イスラム会議及び非同盟運動が政治的解決を求めて担っている重要な役割を歓迎した。閣僚は,1980年5月15日のワルシャワ条約諸国宣言の中で提示された考えを含めて,ソ連により明示されあるいは示唆された種々の提案がある一方,それらの何れも基本的事項に言及しておらず,全ての提案がアフガニスタン国民の国家的独立及び自決権を国際法では容認できない程制限していることにつき留意した。

閣僚は,ソ連のアフガニスタン侵入が彼等がその遵守を再確認したデタントに重大な損失をもたらしたことにつき留意した。閣僚は,彼等の見解を明らかにし,誤解を防ぎ,現在の危機の解決を容易にし,且つ状況が許す範囲内で建設的協力を醸成するために,東西関係の改善のために努力する用意と,東西諸国間でコミュニケーションのチャネルを開いておきたいとの希望につき再度声明した。しかしながら閣僚は,デタントが他の地域における動向に関係なく世界のひとつの地域で追求され得ないことを再確認した。更に,閣僚は,協力的な関係の回復が相互信頼の基盤に立たなければならず,これが最近のソ連の行動によってゆさぶられていることにつき合意した。ソ連政府が主張する平和的意図に従って行動するためには,ソ連政府側の積極的行動によって再建されることが必要であろう。

4. アフガニスタン侵入により生じた懸念に加えて,閣僚は,軍事的優位を求めないとのワルシャワ条約声明にもかかわらず,特に欧州において現下の軍事的不均衡を増大させるおそれのあるソ連及びワルシャワ条約軍の質と即応体制と兵力の著しい増強が弱まる徴候のないことに関し留意した。従って閣僚は,全ての分野にわたり抑止と防衛の適切な水準を個別的にあるいは集団的に維持するために必要な全ての措置を講ずるとの彼等の政府の決意を再度強調した。

閣僚は,協力的装備計画,兵器システムの強化された標準化及びインターオペラビリティーを通じて資源を一層有効に使用することが通常戦力近代化の重要な要素であることを再確認し,この点での一層の進捗につき満足の意を以って留意した。閣僚は,装備の開発及び生産面における欧州と北米の同盟諸国間の一層均衡した関係を目ざして,並びに新しい防衛装備の向上された有効性と優秀性を目ざして,大西洋をはさんだ対話を通じ努力し続けることについても再確認した。これに関連して,閣僚は各国装備代表会議(CNAD)の作業を歓迎した。同時に閣僚は,独立欧州計画グループ(IEPG)の作業の重要性,並びに彼等が期待しているグループの進展の重要性を評価した。閣僚は装備協力の改善の過程において同盟内の後発工業諸国の関心を銘記することの必要性を再度強調した。同時に閣僚は,NATO諸国が保有する技術的優越を維持することの重要性を強調した。

5. 閣僚は,その防衛能力を維持,強化するとの彼等の政府の努力と併行して,効率的で均衡し且つ検証可能な軍縮及び軍備管理の手段の追求に対する諸政府の誓約を再確認した。それにもかかわらず閣僚は,成功の見とおしが国際的な信頼と安定の回復に依存するであろうことを留意した。閣僚は彼等の政府が競争的な軍備レースを回避せんと希望している旨強調した。しかしながら,彼等が追求する軍事力水準の実質的削減は,交渉が全参加国が安全保障を達成せんとの純正な意向を有する場合,並びにワルシャワ条約諸国が防衛能力の適切な水準を維持するとの同盟の決定を納得する場合にのみ可能であろう。閣僚は軍備管理分野における同盟諸国の多様なイニシアティブに対し特別の関口を傾注した。閣僚はこれらの提案に対し積極的な対応がなされていないことに留意した。閣僚は,国連軍縮会議及び他の国連の機関と同様にジュネーヴ軍縮委員会の最近の軍縮努力に充分な役割を演ずるとの彼等の政府の決定を再確認した。閣僚は,軍備管理及び軍縮問題について同盟の常設機構内で行われた頻繁且つ積極的な協議に彼等が関与することの重要性を強調した。

6. 閣僚は,軍備管理競争の抑制のために又同盟の安全保障及び東西関係の安定を確実にするために重要な貢献をなすSALT1条約に対し,彼等の支持を再確認した。彼等は,最近の国際危機が同条約批准のプロセスを今日まで遅延したことにつき遺憾の意を表明した。閣僚は,状況により最も早い機会に双方による批准が可能になることへの希望を表明した。閣僚は,同盟内の一層緊密な協議に基づくSALTプロセスの継続によって,米国とソ連の間の核分野における一層の削減と質的制限が可能になり,軍備管理の他の分野の進展に関し良好な傾向が生まれる旨希望した。

7. 相互均衡兵力削減(MBFR)交渉に参加している諸国の閣僚は,双方に関し地上軍兵力につき共通集団上限(COMMON COLLECTIVE CEILING)の形で,又地上軍及び空軍兵力につき合同共通集団上限(COMBINED COMMON COLLECTIVE CEILING)の形で,軍事兵力における真の均衡に基づき中欧での一層安定した軍事力関係を達成する手段として,同交渉における進展の継続的重要性を確認した。進展を達成しまた早期に結果を得るための右交渉における西側参加国の決定は,暫定的第1段階合意及び1979年12月のより早期にこれら閣僚によって承認された軍備管理イニシアティヴ計画の一環としての関連措置に関する,1979年12月のウィーンにおける重要な新提案の呈示によって示された。今までのところ東側によって未回答のままとなっているこれらの提案は,ウィーン交渉において提出された最も最近の実質的提案である。これらの提案は,人員に関し合意されたデータ基準に基づく同地域における米国及びソ連の地上軍兵力の削減と制限,並びに削減と制限の検証を助け,軍事的安定を増大し,他方の軍事体制と軍事活動に関する相互理解を強化し,かつ誤解と誤算の危険を減じる関連措置を含めて,最初の交渉成果を達成するための現実的な枠組をもたらすものである。

これら閣僚は,ワルシャワ条約諸国の最近の声明の中に,ウィーン交渉における一層の進展を希望する旨表明されていることにつき留意した。閣僚はワルシャワ条約諸国に対し,データ問題に関する実際的な動向を通じまた1979年12月の西側新提案に対する早期の,建設的かつ実質的な東側の反応を通じて,右声明に対する具体的表明を行うよう要求した。

8. 欧州安全保障・協力会議(CSCE)によって創始されたプロセスに転じて,閣僚は,この分野においてもソ連のアフガニスタン介入が本件の進展に必要な信頼に重大な影響を及ぼしたあとを留意した。閣僚は,CSCE最終文書の中で参加国がその諸国自身間の関係を律する原則の精神で他の全ての諸国との関係を進展させる旨の意図につき宣言したことを想起した。従って,ヘルシンキにおいてソ連がその最高レベルで誓約した原則を侵害する方法でアフガニスタンで行動し,現在も行動していることは特に懸念される重大事である。同時に閣僚は,特定の諸国において人権及び基本的自由が強く抑圧されていること,並びに最終文書の履行に努力する人々の悩みに関し,又それらの人々の拘束,国内流刑及び追放が行われていることを遺憾とした。閣僚は,ある種の積極的進展がみられるにもかかわらず,人的交流の分野における履行が未だ一様に行われていないとの懸念を表明した。同時に,閣僚は,情報の一層自由な流通に向けて進展が見られないことにつき遺憾の意を以って留意した。

かかる背景に対し閣僚はマドリッドにおける来たるべきCSCE再検討会議に対する準備につき考慮した。閣僚は最終文書の本来の姿を維持することの重要性を強調した。閣僚はその原則と条項の完全な履行が強調されなければならないことにつき合意した。従ってマドリッドでは同盟の代表が画期的な改善を目的として履行状況の一貫した,率直かつ慎重な再検討に取り組むであろう。

閣僚は,マドリッドでの進展の見通し特に新提案が考慮される見通しがかかる再検討の経過により,左右され,またその時期における国際情勢に依存することを留意した。このことを銘記し,参加国間の交流及び交渉を促進するためのCSCEプロセスの重要性を認識しつつ,閣僚は,均衡のとれた一連の提案を発展させ続けること,並びに最終文書の全ての分野にわたって均衡しかつ重要な進展を目的として他の参加国により提出された具体的提案を依然討議し考慮する準備のあることにつき合意した。

閣僚は,信頼醸成措置(CBM)の分野で,並びに安全保障及び軍縮のある局面の分野で,これまで進展してきた多様の提案を再検討した。この関連で閣僚は,均衡のとれた結果の一部として,仏政府により提案されたように,ソ連の欧州部分全体を含む欧州全域に適用できる軍事的に重要でかつ検証可能なCBMに関しCSCEの後援の下で一層の交渉を行うためのマンデートがマドリッドCSCE会議期間中に採択されるよう努力するとの,1979年12月の北大西洋閣僚会議の合意を想起した。閣僚は上記に留意した状況によりこの点に関する具体的成果が得られるであろうとの希望を表明した。閣僚はこれらの必要条件に適合する軍事活動に関連するCBMにつき同盟内で作業が継続されていることを留意した。閣僚は,現在の状況では常設理事会が一定の基準に基づき動向を評価するとの必要性を確認する一方,この分野における共通の努力を継続すべきことにつき合意した。

9. 閣僚はベルリン及び全体としてのドイツに関し1979年12月の前回会合以降の動向を検討した。閣僚は1971年9月3日の4カ国協定の作業に満足の意を表明し,ベルリン及びその周囲の状況が相対的に平穏に推移していることにつき意見の一致をみた。閣僚は,ベルリン及びベルリンへのトランジット道路の平静な環境が欧州における安全保障と安定に基本的に重要であることを強調した。

閣僚は1980年4月30日におけるドイツ連邦共和国とドイツ民主共和国間の合意及び協定の結果につき満足の意を以って留意した。閣僚はこれらが特にベルリンに対してもたらす良好な効果を歓迎した。

ボン協定及びパリ協定の発効25周年記念に関連して,閣僚は,これらの会議がドイツ連邦共和国をして北大西洋同盟の平等な一員となし,相互信頼に基づき同盟のパートナーとして緊密な協力のための基盤をもたらし,従って同盟の強化と欧州における平和及び安全保障の維持に貢献していることを想起した。同時に閣僚はこの機会に,ドイツ連邦共和国のドイツ民主共和国との条約と同様に,そのソ連,ポーランド,チェッコスロヴァキアとの条約の欧州における状況改善に関する重要性を想起した。これらの条約がベルリンと全体としてのドイツに関係する4大国の権利及び責任に影響を及ぼさないことを想起しつつ,閣僚はその中でドイツ国民が自由な自決により一体性を回復する欧州での平和な国家を目ざして努力するとのドイツ連邦共和国の政治的目標に対する支持を再確認した。

10. 閣僚は彼等の訓令に基づき準備された地中海の状況に関する報告に留意し,地中海全域における軍事力の均衡を維持することの必要性を再度強調した。閣僚は常設理事会に対し,本件問題に関する協議を継続し,次回の会合時に彼等に報告するよう要求した。

閣僚は,南西アジア地域における最近の動向が,同盟の安全保障と同地域の全般的軍事力の均衡に関し南東翼の多大な戦略的重要性に対して更に一層鮮明に焦点を当てさせていること,並びに南東翼の維持が国際的安定にとって不可欠であることを留意した。閣僚はそのため,これら同盟諸国の経済及び防衛の態勢を強化することの緊急性が一層増大している旨声明した。加えて閣僚は,同盟の集団防衛のために,南東側面の団結を強化するため実行されるイニシアティヴの重要性を強調した。この関連で閣僚は,同盟の集団的防衛のために関係諸国間の充分かつ低下することのない結束の回復が特別の重要性を呈していることについても強調した。

11. 閣僚はギリシャとトルコ間の対話が継続していることを歓迎し,両国が2国間の意思の相違を平和的に解決するための双方の努力を続行することにつき希望を表明した。

12. 閣僚は,事務総長による報告に照らして経済的に後進の同盟諸国が直面している特別の問題を再検討した。現下の状況において同盟の結束を明確に示すことの必要性が更に一層重要となっていることを留意しつつ,閣僚は,彼等が北大西洋条約第2条の精神を遵守すること並びにこれら諸国の経済強化のプロセスに対し継続的な政治的支援を行うことを再確認した。この関連で閣僚はそれを行い得る立場にある同盟諸国から,適切な2国間及び多国間のチャネルを通じ財政的援助及び経済的協力を増大することの緊急な必要性を更めて強調した。閣僚は,最近の努力が充分に有効なものとなるためには時間が必要であり,それらの努力が何年間にもわたって継続される必要性のあることを認識しつつ,トルコの経済問題の解決を見い出すために行われている努力を歓迎した。

13. 閣僚は1979年春季会合において,科学委員会が協力活動を通じ同盟諸国間の科学的技術的不均衡を減じる可能性に対して大きな考慮を払っていることにつき歓迎したことを想起した。閣僚は同盟の他の諸国の科学団体との協力によってギリシャ,ポルトガル,トルコの科学的技術的能力を強化し,またその結果としてこれら3カ国の経済的発展に貢献することを目的として,科学委員会により提案された特別5カ年計画「安定のための科学」の設定を承認した。右計画の履行方式は常設理事会によって決定されよう。

14. 中東問題に関し,閣僚はアラブ―イスラエル紛争の公正な,持続的且つ包括的な解決の重要性を再確認した。閣僚は,相互関係の発展においてエジプトとイスラエルにより達成された進展を含め,中東地域の情勢をレビューした。閣僚は,そのような解決が安全保障の中で生存せんとする同地域のイスラエルを含む全ての国家の権利を確実なものとすべきことを確信し,パレスチナ人民の正当の権利の達成についてと同様に国境についてもこれを確認し且つ保証した。閣僚は,パレスチナ人民代表を含めた全ての当事者が交渉による解決に参加すべきであることを確認した。閣僚は,上記の原則と共に安全保障理事会決議242及び338がそのような解決のためのフレームワークを形成すべきであることにつき考慮した。閣僚はこのフレームワークが全ての関係者により受諾されることが不可欠とみなした。

15. 世界的な安定及び安全保障を強化することの必要性に関する討議の関連で,閣僚は,一層公正な国際経済システムをもたらすために,全ての諸国が世界の経済問題の解決を求めるため,また発展途上国の経済的社会的進展に貢献するため責任の分担を負うよう要求した。閣僚は,原料品,エネルギー,貿易,開発,金融,及び財政問題に関し国連内で提案されているグローバル・ネゴシエーションから得られる肯定的な成果が先進諸国と同様発展途上国の関心にかなうものであることを認識した。

II

16. 長距離戦域核(LRTNF)の近代化とTNFを含む軍備管理に関する二つの並行的且つ補完的なアプローチを追求するとの1979年12月12日の決定に参加した諸国の閣僚は,軍備管理討議での進展に関する報告を受け,関係同盟諸国間の充分な協議に基づいて,双方間の平等な原則にかなう米国及びソ連の陸上基地LRTNFの検証可能な制限を行うことを目的とするSALTIIIのフレームワークによってソ連と重要な交渉を行うとの米国により繰り返し行われた努力を歓迎した。特にこれらの閣僚は,米国が前提条件なしで且つ遅滞なく右制限に関する予備的意見交換に入るべく準備を行っていることにつき,SALTIIIのフレームワークでのTNF交渉のための有効な出発点として支持した。これらの閣僚は,ソ連の反応が均衡した状況を回復すべく策定された実質的措置を構成する何ものも含んでいないことにつき遺憾の意を表明した。これまでソ連は重大な交渉に入るとの如何なる意向も,あるいは予備的意見交換に加わるとの如何なる意向も,あるいは予備的意見交換に加わるとの如何なる意向も示していない。閣僚は,SALTIIIがTNFを含む交渉のための適切なフォーラムとなり得る旨ソ連が認識しているとのいくつかの徴候があるにもかかわらず,ソ連が最も最近ではワルシャワ条約宣言において,不平等を永続させる非現実的且つ容認できない前提条件を継続して繰り返していることにつき留意した。

従ってこれらの閣僚は,交渉を行い且つ如何なる前提条件なしでSALTII条約の批准以前に予備的意見交換に入るとの米国提案に対して,ソ連が迅速に且つ積極的に反応するよう再度要求した。

これらの閣僚は現在まで展開されたLRTNFシステムにおけるソ連の優越に関し懸念を表明し,展開されたシステムが既に危険な程の高水準に達していることにつき留意した。SS4及びSS5のLRTNF450の現存戦力に加え,現在ソ連は150のSS20発射機に約450の弾頭を展開している。SS20の展開は,急速な速度で継続されている。ソ連はSS20戦力のみに関し,1979年12月に合意された全般的近代化計画として計画された弾頭数以上の弾頭を展開している過程にある。対照的に,同盟諸国における展開は1983年後期までは開始されないであろう。

これらの閣僚は,LRTNFを近代化するとの彼等の政府の決定を惹起したソ連優位の現状におけるLRTNF格差の背景として同盟の抑止能力を維持することが必要であること,並びにソ連が新たなSS20ミサイルの展開を継続しているため右格差が一層拡大するであろうことを指摘した。

閣僚は更に,近代化計画がソ連の核能力における質的量的増強に比較しで慎重に抑制されたものであることを留意した。この点に関し,閣僚は,LRTNF近代化と軍備管理の決定の不可欠な部分としての米国核弾頭1,000個の欧州からの撤収が開始されたことについても留意し,また1979年12月12日に決定された新たなLRTNF弾頭が減じられた水準の範囲内で調整されることにつき想起した。

これらの閣僚は,軍備管理がソ連の増強を抑制することによって,同盟の安全保障を強化することができ,NATOのLRTNFの所要の規模を修正することができ,且つNATOの抑止,防衛及び緊張緩和の基本的政策に調和して欧州における安定と緊張緩和を促進することができるとの1979年12月12日の声明を想起した。閣僚は,NATOのLRTNFの所要の規模が交渉を通じて達成される具体的結果に照らして検討されるであろうことを更めて強調した。

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