(4) 中東に関する欧州理事会宣言(仮訳)

(1980年6月13日,ヴェニス)

1. 国家元首,政府首脳及び外務大臣は,1979年3月エジプト,イスラエル間で署名された条約に起因する交渉の状況を含め,中東の現状に関するあらゆる局面につき,包括的な意見交換を行った。首脳及び外務大臣は,同地域に影響を及ぼす増大しつつある緊張が重大な危機をもたらし,イスラエル・アラブ紛争の包括的な解決を前にもまして必要かつ緊急なものとしていることに意見の一致をみた。

2. EC9カ国は,欧州と中東を結ぶ伝統的な紐帯と共通の利益は,欧州が特別な役割を果たすことを義務付け,今や和平に向けてより具体的な方途を探求することを要求している。

3. この点に関してEC9カ国は,安保理決議242及び338,更に種々の機会において既に表明したECの立場・特に1977年6月29日,1978年9月19日,1979年3月26日及び6月18日の宣言・及び1979年9月25日の第34回国連総会においてECを代表して行ったアイルランド外務大臣の声明を基礎とするものである。

4. このように表明された基本的立場に基づき,国際社会において一般的に受け入れられている二つの原則の承認と実施を促進する時が来た。すなわち,イスラエルを含むすべての域内諸国の生存と安全保障の権利,すべての諸国民にとっての正義,すなわちパレスチナ人の正当な権利の承認を含むものである。

5. すべての域内諸国は,保証され承認された安全な国境内で平和に生存する権利を与えられる。平和的な解決のために必要な保証が,安全保障理事会の決定に基づき国連により,また,もし必要であれば他の相互に合意された手続きに基づき与えられねばならない。EC9カ国は包括的解決の枠組の中で具体的かつ拘束力ある国際的保証のための制度に現地における保証を含め参加する用意がある。

6. 公正な解決がパレスチナ問題につき最終的に見い出されねばならないが,それは単なる難民問題ではない。パレスチナはそれ自体の存在を自ら認識しており,包括的平和解決の枠組の中で定められた適切な過程により,その自決権を全面的に行使する立場に置かれなければならない。

7. これらの目的を達成するためには和平解決に関係するすべての当事者の関与と支持が必要であり,EC9カ国は上記の宣言で述べられた諸原則に沿ってこれを推進するよう努める。これらの原則はすべての当事者,従ってパレスチナとPLOに対しても適用されるものであり,PLOは交渉に関与する必要があろう。

8. EC9カ国は,ジェルサレム問題がすべての当事者にとって特別の重要性を有するものであることを認める。EC9カ国はジェルサレムの地位を変更しようとするいかなる一方的措置も認めることはできず,またジェルサレムの地位に関するいかなる取極もあらゆる人々の聖地への自由なアクセスを保障するものでなければならないことを強調する。

9. EC9カ国は,イスラエルがシナイ半島の一部に対して行われたごとく1967年紛争以来継続している領土の占領を終結せしめる必要性を強調する。EC9カ国はイスラエルの入植地が中東和平プロセスに重大な障害となるものであることを深く確信する。EC9カ国はアラブ被占領地域における人口構成と土地所有権の変更と同様これらの入植地が国際法違反であると考える。

10. EC9カ国は暴力に終止符を打つためすべての当事者が武力又は武力行使の威嚇を放棄することが当該地域に信頼の雰囲気を醸成する唯一の道であり,中東紛争の包括的解決の基本的要素となると考える。

11. EC9カ国はすべての関係当事者と必要な接触をすることを決定した。これら接触の目的は本宣言に盛り込まれた諸原則にして各当事者の立場を調査し,右協議の結論に照らしてEC9カ国のイニシヤチブかとりうる方式も決定することにある。

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