(10) 第19回OECD閣僚理事会コミュニケ(仮訳)

(1980年6月4日,パリ)

1. 経済協力開発機構(OECD)の閣僚理事会は,1980年6月3日,4日の両日,デンマークのケール・オルセン外相及びイヴァ・ヌアゴー経済相の議長の下に開催された。

I . 経済情勢とエネルギー情勢

2. 閣僚は,1978年に加盟国により採択された協調的行動計画が,特に国際収支不均衡是正に関して,過去12ヵ月にわたり,有益な結果を引き続きもたらしたことに留意した。しかし,多くの国において,失業は容認できない程に高く,インフレは深く根をおろしたままであり,そして,より均衡のとれた,インフレがより低い経済成長への前進は世界石油価格の大幅上昇により妨げられてきた。

3. 閣僚は,1年前の閣僚理事会においてより高い石油価格のインフレ効果に対する適切な対応は,妥協を排した金融政策および財政緊縮政策であり,また,これは石油価格の上昇があらゆる社会グループにとり,より高い実質所得の可能性を減ずるものであるとの事実を容認させるという重要な努力を伴うものであるということにつき合意した。

4. かかる政策は,いくつかの積極的な結果をもたらしつつある。大多数の加盟国においてインフレの最近の波はそのピークに近付いているかも知れず,(もし,さらに石油価格の上昇がないかぎり)今後12ヵ月間にわたり,ゆるやかではあるが,着実な改善があろう。相当数の国において,石油価格の上昇に起因した不可避的な実質所得の損失が,名目所得増を著しく促進することなく,漸進的に吸収されているようであることは心強い特徴である。しかしながら,石油価格の上昇と所要の抑制的な金融財政政策の組合せは今後12ヵ月間にわたって,OECD地域において経済のスローダウンと失業の増加を必然的にもたらすことになる。

5. 閣僚は,今後の見通しを検討した後,基本的な目標は,価格安定を回復し,生産及び雇用面で投資主導による供給指向の成長のための短期及び中期の諸条件を促進することであると合意した。

これは次のことを含む。

―石油に誘発されたインフレの大きな波をコントロールし,投資を十分に有利ならしめるようなコストと価格の相関関係を維持し,又はもたらすこと。

―これが達成されかつ基調的インフレ率を低下させるための持続的な努力が効果を現わすに従い,生産的投資が必要とされ,かつ収益を生むような水準の経済活動を確保するための政策。

―GNPにおける貯蓄及び生産的投資の割合を増加させ製品,資本及び労働市場の機能を改善することを通じ,生産性とインフレ・パーフォーマンスを改善し,より多くの職を提供するための積極的な供給指向の政策

需要サイド

6. 閣僚は,OECD地域の経済が予期されるスローダウンに向うことに留意した。それにも拘らず,閣僚は,当面次の手段を通じて石油価格上昇によって誘発されるインフレを抑制し,雇用増加のための条件を回復すべく生産的な投資の収益性を保護することにプライオリティを引き続き置くべきことに合意した。

―石油価格の上昇が基調的インフレ率を押し上げるのを防ぐための金融財政政策。

―石油価格の上昇が実質所得に及ぼす影響を受入れる必要性及び投資環境と雇用情勢を改善するための労働市場政策や他の政策の役割についての労使間の又は労使との対話。

7. 閣僚は,現在のインフレーションの高まりが明白にコントロールされ,石油価格の上昇の実質所得への影響が完全に吸収されないうちに引締的な金融財政政策をゆるめることは,重大な誤ちであることについて合意した。これらの点が達成されるにつれて借入れ需要の緩和とインフレ期待の低下に伴い,貨幣供給量の目標が堅持されている限り金利が相当の低下をみるはずであり,特にこうした展開のために民間需要の盛上りが期待できるはずである。しかし多くの国では完全に自律的な回復が,現在の政策のもとで現われるかどうか疑問である。第2次石油ショックがうまく吸収されるにつれて中期的な均衡成長軌道に合致した,抑制の度合がより低い財政スタンスに立戻ることが望ましく,かつ可能となるかも知れない。しかし,基調的インフレ率が主要な問題として残るような国では,抑制的な金融財政スタンスを維持しなければならないが,他方,石油ショックが吸収され,基調的インフレ率が満足すべき状態にある国においては,回復の自律的要素が不充分であることが明らかとなった場合には,政策スタンスの変更を遅らせるべきではない。

8. 基調的インフレ率を低めるための努力を続けるに当たって,財政上の措置の余地が時間とともに現われる程度に応じ,コストを低め,また投資,特にエネルギー生産,燃料転換及び節約のための投資を促進する措置が優先されるべきである。

9. 閣僚は,加盟国がグループとして,OPECの黒字のうちこれら諸国の分に相当した大幅ではあるが漸減しつつある経常赤字を今後しばらくの間受け入れねばならないと合意した。全ての国は,インフレを軽減し,かつ,より高いエネルギー価格に対する構造的な適応を促進するための諸政策を追求しなければならない。対外的ファイナンスに困難を有していない国は,経常赤字を軽減することを特定の目的とする政策措置をとることを差し控えるべきである。

10. 閣僚は,国際収支のパターンの主要な変化に対処する手段として,為替レートの過度の変動や経済の国内的ニーズに対応しない金利変動を回避するための金融政策及び為替市場への介入について引き続き緊密な協力が重要であることを強調した。

供給サイド

11. 閣僚は,歪みと硬直性の除去,制限的商慣行に対する強力な措置並びに国際的な貿易及び投資に対する開放体制の維持を通じて投資を奨励し,かつ,市場メカニズムの機能を改善するための供給面の措置の重要性につき合意した。

12. 閣僚は,より活発な生産的投資を中期に亘って高めていくための政策が,次のようなものであるべきことにつき合意した。

―財政支出の増加が速すぎる国において,資金源と担税力に対する圧力をやわらげるべきであること。

―政策の方向が急激に,また予測できない程変化してしまうことを避け,これにより不確実性を減ずるようにすること。

―適当な場合には,資本の使用にとって不利な現在の制度的歪みを取り除く改革を促進し,資本市場の機能を改善し,危険資本の資金供給を増加させる措置を推進すること。

―投資の効率的な国際配分を確保する必要に留意すること。

13. 閣僚は,労働市場の硬直性を除去又は減ずる措置が,生産性及びインフレパフォーマンスを時間とともに改善し,成長が回復する際のボトルネックの早期の出現を防ぎ,そして,短期的には雇用が失われることがあっても中期的な雇用見通しを増大させるであろうことに合意した。

14. 閣僚は,雇用問題の満足のいく解決が短期的には達成されないとしても,現状の下で有効に対処し得るような失業状況のかかる側面を緩和するため多大なる努力が払われるべきであることに合意した。特に,若年層において顕著にみられる持続的に高度で,かつ上昇しつつある失業水準の先行きは,職業訓練や労働体験の目標を定めたプログラム及び,適当な場合には,不利な立場にあるグループ及び移民労働者の雇用見通しを改善するための,雇用創出又は促進策のようなアプローチの必要性を強めている。

15. 供給面を強調するに当たって,閣僚は,労働および資本を最も生産的な用途に向けるため出来るだけ市場諸力に依存するという1978年6月に採択された積極的調整政策の指針の重要性を再確認し,本分野においてなされたOECDの心強い作業の進展を歓迎した。

エネルギー

16. 1979/80年の石油価格の上昇は,世界経済に厳しい損害を与えつつある。更に,1973年以降2回の大幅かつ急激な価格上昇の発生は,将来の世界的な経済社会発展にとって継続的な危険があることを示している。その危険の程度は,1980年初頭以来の何回かの価格上昇が石油需要の減少にもかかわらず起ったという事実及びそれが世界経済へ及ぼす悪影響を考慮することなしに行われたと見られるという事実によって強調される。

17. 前記の危険,特に,現在の世界経済の脆弱な状態及び今後の大幅かつ急激な石油価格の上昇によって引き起こされるであろう深刻な損害にかんがみ,閣僚は,短期的な市場撹乱がもたらす有害な影響をくいとめるための適切な取決めが実施され,かつ,かかる取決めが状況の進展に伴って,それら状況に適応されなければならない旨合意した。

18. 閣僚は,経済成長のための満足のいく条件を回復するため,中期的なエネルギーの需給パターンを改善するための強力な政策措置が緊急に必要であることに合意した。閣僚は,この目的のためには,価格メカニズムがより合理的なエネルギー利用の進捗の促進,石油からの転換及び代替エネルギー資源の生産量増加に重要な役割を果し,その結果として必要な構造変化をもたらすものであることに合意した。このため,エネルギーの生産者と消費者の双方として,OECD諸国が,必要な行動を強化し促進するため,価格メカニズム,財政措置及びその他のエネルギー政策措置を適切に利用することが重要である。

19. OECD諸国によって,種々の枠内で,次の目的のために決定がなされた。

―エネルギー経済における構造変化がエネルギー,特に石油の必要性を減じながら,中期にわたって実際に生ずることを確保するようなやり方で,エネルギー政策を強化すること。

―石油市場で生じ得る短期の撹乱の有害な影響をくいとめるための短期の手段を適切に利用すること。

この観点から,閣僚は,1980年5月22日のIEA閣僚理事会の会合での決定に留意した。閣僚は,かかる方向に沿った措置が経済的かつ社会的安定を維持するために不可欠であることに合意した。

貿易

20. 開放的な多角的貿易体制は,OECD加盟国政府のマクロ経済上の目標達成のための前提条件であること,及び保護主義に抵抗する精力的な努力の重要性を認識し,OECD加盟国政府は,別添の新たな「貿易政策に関する宣言」を採択した。これら政府は,特に,開放的かつ多角的な貿易体制を維持,改善し,多角的貿易交渉においてなされた約束を完全かつ有効に実施し,開発途上国との貿易関係を強化し,また貿易分野及びその他の経常取引における制限的な措置を回避するとの決意を宣言した。これら政府は,更に,開放貿易体制が有するすべての者にとっての利点についての一般大衆のより一層の理解を確保する努力を継続することに合意した。

21. 閣僚は,世界貿易を拡大させるとの共通の目的を念頭に一おき,輸出信用アレンジメントにおける開発途上国に対する異なった取扱いを認識しつつ,同アレンジメントの諸条件を現在の市場条件に近づけ,輸出競争における歪みを減少させるべく同アレンジメントを適応させるため現在なされている努力に対し,全面的な支持を与えた。閣僚は,最近金利の分野において採られた当面の措置を歓迎し,アレンジメント参加国が,既に合意されているように,1980年12月1日までに,相互に受諾可能な解決案を見出すための努力を継続するよう奨励した。

22. 閣僚は,一次産品政策の分野における開発途上国の特別な利益を認識しつつ,この分野におけるすべての生産国および消費国の利益となるような国際協力を重視することを再確認した。閣僚は,国際的な一次産品貿易,特に長期的需給見通し,の改善のために,共通基金に関する交渉会議が好結果をもたらし,また,一次産品及び一次産品取極めに関する話合いと交渉が進捗をみるよう貢献する旨の決意を表明した。

23. 閣僚は,更に次のことが必要であることについても合意した。

(i)  貿易政策の分野での措置も含め,特定セクターの問題を取扱うための諸措置が,既に合意されている積極的調整政策の方針に適合するものとなるよう確保し,また,それら措置がインフレを抑圧し,生産性を向上するという目的に沿い,かつ先進国と開発途上国との間の貿易の増大からもたらされる相互利益にも沿うものとなるよう確保すること。

(ii)  1980年3月の農業委員会の閣僚レベル会合で合意された目的,就中,世界的規模での農業資源のより効率的な利用と世界貿易の秩序ある拡大を促進すること,また,市場へのアクセスと供給保障を改善すること,そして市場の歪みを導くような貿易慣行を回避することという目的を達成するため,農業分野における努力を強化すること。

II . 開発途上国との関係

24. 閣僚は,世界的な経済の趨勢が開発途上国との関係に与える影響について検討し,今後の困難な時期における開発途上国の種々のニーズに対して,積極的に応える決意を確認した。また,閣僚は,相互依存関係にある世界経済の機能を改善し,かつ,開発途上国による急速な経済・社会開発の達成を助長するために国際経済関係を再構成する目的をもって,来たる国際交渉において開発途上国と建設的な協力を行うことの重要性を強調した。

25. 閣僚は,OECD地域の経済のスローダウンが開発途上国の成長に及ぼす影響は最小限のものとされねばならず,かつそれが可能であること,及びこの目的のために大いに政策努力がなされることが,先進国のみならず開発途上国にとっても極めて重要であることを強調した。閣僚は,現状においては,OECD加盟国が,インフレを抑制し,消費より投資を奨励し,それにより1980年代におけるインフレを伴わないより速い成長の基礎を据える政策を追求することが,すべての者にとって最善の利益であることを強調した。

26. 石油価格の上昇とOECD地域における経済のスローダウンとが開発途上国に及ぼす直接の影響は,その経常収支赤字の大幅な増加と,国際収支の調整問題である。閣僚は,こうした状況では,開発及び国際収支のファイナンスのための有効なメカニズムと,確固たる政策との結合が必要とされていると考えた。すなわち,開発途上国側においては,インフレを抑制し,外的な制約に対する調整を行い,そして一貫した調整とより長期的な開発努力の一部として生産的投資を拡大することであり,OECD諸国側においては,開発資金面の努力に加えて,開発途上国による輸出拡大努力を容易にするため開放市場を維持することである。

開発と国際収支ファイナンスの為の有効なメカニズム

27. 閣僚は,リサイクリング過程が枢要な役割を有していることを認識した。閣僚は,世界経済情勢の悪化によって増大した開発途上国の開発および国際収支ファイナンスの困難を認識した。閣僚は,開発と国際収支ファイナンスのニーズに対処するための既存の諸取決めを常にレビューすることの重要性につき合意した。閣僚は,メカニズム,政策及び資金が適切であるよう確保することが重要であると信じている。閣僚は,これらの問題が国際通貨基金及び世界銀行において検討されていることに留意し,OECD内における開発途上国へのりサイクリング問題に関する補完的作業が引き続き行われるべきであるとの希望を表明した。

28. 閣僚は,特に一部開発途上国にとっては商業的融資を導入することが困難であることにかんがみ,国際金融機関が,効果的な調整政策を奨励しつつ,構造変革のための融資を含んだ適切な資金援助を提供する上で,重要な役割を果さなければならないことを強調した。閣僚は,これら機関が効果的な政策及び資金面の支援を受けるべきこと,また,増資措置における立法上の遅延は可及的速やかに解決されるべきことに同意した。閣僚は,国際金融機関において現在進行中の調整を全面的に支持する。

29. 閣僚は,困難な調整及び開発のファイナンス問題を抱えるこの時期において,公的開発援助の水準の向上は開発途上国,就中,もっとも不利な立場にある国々にとって,特に重要であることに合意した。閣僚は,国際的援助目標に対する約束に従って,国際的な援助努力に対して適切かつその能力の限りを尽して貢献するとの各国政府の決意を確認した。閣僚は,最大限可能な開発効果を達成し,世論の支持を維持するため,援助の効果及び質の改善が重要であることを強調した。閣僚は,OPEC諸国が主要な援助の源となったことを歓迎し,これら諸国がその所得増大の一部を新たなODAの拡大に振り向けることを決定するよう希望する。閣僚は,コメコン諸国が国際的な開発援助努力への貢献を強化するよう希望を表明した。

直接投資

30. 閣僚は,開発途上国に対する直接投資の流れの拡大を達成するため,投資環境の改善が重要であることを強調した。多国籍企業の行動規範に関する国連の交渉は,早期に,積極的な成果をもたらすべきである。閣僚は,かかる成果を得るために貢献するとの決意を表明した。

貿易

31. 開発途上国との貿易関係を強化するというOECD加盟国政府の決意は,新たな「貿易政策に関する宣言」および本会合における他の関連結論(上記パラ20~23参照)に反映されている。閣僚は,多角的貿易交渉が開発途上国に対して持つ潜在的な利点を強調し,また,多角的貿易交渉が提供するメカニズムを使用し,参加することを決定する国の数が多ければ多いほど先進国と開発途上国間の貿易関係改善の見通しはより大きくなることに留意し々閣僚は,更に,開発途上国の輸出所得にとって一次産品が有する重要性をも認識した。上記のパラ22において述べられている通り,閣僚は,開発途上国の特別な利益を念頭におきつつ,共通基金に関する交渉をも含め,一次産品分野における国際協力促進の努力を継続する決意を表明した。

エネルギー協力

32. 閣僚は,共通の利益に係る諸問題を検討するために,開発途上国との間でのエネルギー問題に関して話合うことを重視していることを確認した。閣僚は,開発途上国の固有のエネルギー資源の探査および開発を支援し,それにより,それら諸国自身の経済発展と世界エネルギー市場の一層の均衡に貢献するため,関心を有する開発途上国との協力を強化する必要があることを強調した。閣僚の見解によれば,これは,工業国と石油輸出国間の協力にとり特に将来性のある分野である。OECD諸国は,更に石油輸出開発途上国が強靱かつ多様な経済を建設する努力を支援するために,それら諸国との産業及び技術協力を強化する用意がある。

食糧供給及び食糧安全保障

33. 閣僚は,適切な食糧供給と一層の食糧安全保障を確保する措置は,高い優先度を有する国際目標であることにつき合意した。食糧増産の国内計画,特に低所得の食糧輸入国のかかる計画に対する国際的な支援措置が緊急に検討されるべきである。閣僚は,この関連で,穀物協定の改善と農業市場における変動を減ずるための措置が望ましいことを強調した。

難民

34. 閣僚は,難民の数と問題が著しく増大しつつあることに留意し,また,より強力かつ時宜を得た救済努力が必要であることを強調した。

ブラント委員会報告

35. 閣僚は,より均衡のとれた世界経済の進歩に対する共通の利益と責任,並びに,広範囲にみられる極度の貧困と窮乏が世界の平和及び進歩と両立しないこと,に対する認識を増大させることにより,行動への多大な刺激を与える国際開発問題に関する独立委員会の報告を歓迎した。

新国際開発戦略とグローバル・ネゴシエーションズ

36. 閣僚は,来るべき開発の10年のための新国際開発戦略が,開発途上国,特に最も不利な立場にある開発途上国,における経済の生産性と人々の福祉を改善させ,より衡平な国際経済関係に向けて作業するという,開発の基本的な目的をめざして進歩を図るとの国際共同体の決意の表われとして,来るべき国連総会特別会期において採択されることを極めて重視する。この新戦略は,現実的に野心的であること,かつ包括的であること,改善された開発協力のための有効な枠組を提供するものであること,が重要である。

37. 閣僚は,開発のための国際経済協力に関する来たるべきグローバル・ネゴシエーションを,共通の懸念となっている諸問題に取組むための主要な機会として,歓迎した。閣僚は,すべての参加国の共通の利益を反映すべきかかる交渉の成功のため,適切な準備を行った上で,貢献をするとの決意を表明した。閣僚は,総会決議34/138に対する加盟国政府のコミットメントを再確認すると共に,次の諸点を踏まえて議題および手続につき合意する必要があることを強調した。

―世界経済および開発にとって重要な問題に集中すること。

―一貫したかつ統合的なアプローチが確保されること。

―既存の専門機関の能力が十分に利用されること。

―全ての国の貢献が動員されうること。

(仮訳)

付属文書

1980年6月4日にOECD加盟国政府により採択された貿易政策に関する宣言

OECD加盟国政府は※

インフレ圧力・低成長及び高水準の失業という根強い問題,世界経済に生じている需要と生産における構造変化及びセクター上の困難の重要性,石油価格の大幅な上昇,その結果としての石油輸入国の国際収支赤字及び,特に開発途上国について,か

※欧州共同体を含む。

かる赤字のための資金調達の問題,に照らして貿易及び貿易政策に関する諸問題を検討した上,

開放的かつ多角的な貿易体制に対するリスクは,1974年に貿易宣言の採択をもたらしたものと多くの点で類似しているものの,一般経済情勢の動向によって増大していることを考慮し,多角的貿易交渉の結果を考慮するとともに,それが貿易体制の改善に貢献することを認識し,次のとおり合意する。

貿易政策は,世界経済の持続的かつインフレなき成長のための総合的な戦略の枠組みの中で主要な役割を担っていること。

開放的かつ多角的な貿易体制の強化は,特に世界経済における経済効率,経済成長,完全雇用,インフレに対する闘い,国際収支の調整及び生産的な投資に関し,マクロ経済上の目的の達成に重要な貢献をなしうること。

開発途上国との貿易拡大は全ての貿易相手国にとって互恵的な効果を有すること。

OECD条約の中で表明されているように,出来る限り高度の経済成長及び雇用を達成すること,多角的な基礎の上に世界貿易の拡大に貢献する政策を推進すること,並びにこのために財貨及び役務の交換に対する障害を軽減し又は除去するための努力を続けること,と言う加盟国の目的を再確認する。

上記に鑑み,工業製品及び農業製品の貿易に関し,次のとおり決意を宣言する。

―開放的かつ多角的な貿易体制を維持し改善するとともに,このために,特にGATTの役割を強化すること。

―多角的貿易交渉においてなされた約束をその精神及び字義に則って完全かつ有効に実施すること。同交渉の成果を阻害するような措置を回避すること。並びに同交渉で取扱われなかった分野ないし妥当な成果が未だ得られなかった分野における一層の改善に向けて努力を継続すること。

―開発途上国の特別のニーズ,就中,最貧国のそれ,開発途上国にとっての輸出所得の決定的な重要性,及びこれらの諸国における高い成長が世界経済に及ぼす好ましい影響を念頭に置きつつ開発途上国との貿易関係を強化すること。並びに,開発途上国の経済発展に貢献し,かつ,これら諸国の開放的かつ多角的な貿易体制への漸進的な統合を促進する政策を追求すること。

―連鎖的な効果をもたらしうるような,またはインフレ,生産性及び成長ポテンシャルに対して悪影響を与えるような,ないしは世界貿易のダイナミックな発展及び,特に開発途上国の貿易に関し,そのための資金調達を阻害するような,貿易分野及びその他の経常取引における制限的な措置を回避すること。

―輸出金融の分野を含め,輸出競争を歪めるような政策及び措置を回避すること。

―1978年の一般方針に沿って,世界経済の需要及び生産における構造変化に対する積極的な調整を促進し,もって開放貿易体制確保の目的を推進する政策を追求すること,並びに保護主義的効果を有する国内措置を回避すること。

更に,次のとおり合意する。

―本宣言の目的達成を推進し,かつ広範な国際経済協力の枠組みの中で,今後生じるかも知れない重大な事態に対して迅速に対処するため,現存の相互的な情報及び協議のメカニズムを十分活用すること。

―国際貿易及び貿易政策の分野における主要な動向及び問題点について,本宣言の目的に照らしつつOECD内で定期的にレビューすること。

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