第3節 国際通貨・金融問題

1. 国際通貨情勢

80年の国際通貨情勢は,先進国間の経常収支不均衡が是正の方向をたどったことなどから,一時的な騰落は見せつつも相対的に落ち着いた動きとなった。すなわち,79年に大幅な回復を見た米国の経常収支が80年も引続き改善基調をたどる一方,わが国,西独などの経常収支が悪化傾向を強めたため,基軸通貨である米ドルが相対的に堅調に推移し,為替相場の安定がもたらされた。他方,短期的には通貨変動が見られたが,その要因としては,各国のインフレ抑制策の結果としての金利水準の格差などが考えられる。特に米国の金利が高騰したため,米国とその他主要国との間に金利水準の大幅な乖離が生じ,これが2月から3月にかけての米ドル急騰の要因となった。

一方日本円は,わが国の経常収支の赤字などにより年初来軟化を続け,4月初めには1ドル=260円台まで下落したものの,その後わが国の物価の鎮静化や経常収支の改善などから総じて堅調に推移し,81年初めには1ドル=200円を割る場面も見られた。

2. IMFを巡る動き

(1) IMFでは,80年11月に第7次増資が発効した。これにより,加盟国の出資割当額は合計で約398億SDRから5割増の約596億SDR(80年12月末現在)となり,わが国の割当額も16億5,900万SDRから24億8,850万SDRに増加した。また,81年3月にはサウディ・アラビアの単独増資が理事会で承認された。これは同国の割当額が同国の相対的な経済力から乖離していることに加え,同国の過去及び今後における資金協力の額が極めて大きいことなどが勘案されたものである。なお,この増資が総務会で承認されれば,サウディ・アラビアはわが国に次ぎ第6位の出資国となる。

(2) 一方,80年12月には補完的融資制度に対する利子補給金勘定の設立が決定された。これは,借入れを原資とする補完的融資制度の金利が高いため,3%を上限として補完的融資制度と通常資金との金利差分を補填するものである。

(3) 更に,上記補完的融資制度の貸付枠がすべてコミットされる見込みとなったため,81年3月,IMF資金に対するエンラージド・アクセスに関する決定を行い,大幅かつ深刻な国際収支不均衡に直面している加盟国を引続き援助するため,81年に60~70億SDRの融資枠を設定することとした。

(4) 国際通貨制度改革の面では,SDRの利用促進の観点から,SDRの価値決定方式を従来の16カ国通貨の加重平均から,米国,西独,日本,英国及びフランスの5大国通貨の加重平均に変更することが決定され,81年1月から実施された。

3. オイル・マネーのリサイクリング

オイル・マネーのリサイクリングは,引続き国際金融市場を中心に総じて順調に行われた。しかしながら,民間金融機関の一部には,非産油開発途上国の債務累積や,特定国への貸付の集中などを背景に慎重な貸出姿勢をとるものも見られる。このため,今後はIMF・世銀などの国際機関による民間市場の補完,及び産油国による非産油開発途上国向けの直接融資の増大が期待されている。

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