2. わが国と中南米諸国との関係

(1) 全般的関係

わが国と中南米地域は,経済的相互補完関係を背景に主として経済関係を中心に友好協力関係が続いてきたが,地理的遠隔性もあり,アジアなどに比べると交流の度合いは,これまで必ずしも大きいものではなかった。

しかし,中進国を多く擁する中南米地域では,近年わが国の高い技術と資本を求め,単に貿易関係にとどまらないより幅広い経済交流を期待しており,わが国は,このような経済分野における期待にこたえるとともに要人の相互訪問,経済・技術協力の拡充,文化交流の促進などを通じ,より緊密な友好関係を確立する努力を行っている。幸い,わが国と中南米地域の間には,従来から困難な政治問題もなく,また中南米には90万人を超える邦人移住者及び日系人が居住し,善良な市民として各国の社会開発に大きく貢献していることなど,わが国と中南米諸国の結び付きを強化するための背景に恵まれている。

かかる状況を背景に,80年5月には大平総理大臣がメキシコを公式訪問し,ロペス・ポルティーリョ大統領との間で,80年代における日墨関係について話合いを行い,その際話し合われた内容は,その後メキシコの各種開発プロジェクトに対するわが国の協力,メキシコからの対日石油輸出となって具体化した。また79年10月のビデラ=アルゼンティン大統領の国賓としての訪日以来,両国官民レベルで続けられてきた鉄鋼などのプロジェクトに関する話合いは,81年3月一応まとまり,従来どちらかと言えば希薄であった日・ア関係が,飛躍的に拡大する素地が築かれた。また80年には,79年に独立したカリブ海のセント・ルシア及びセント・ヴィンセント両国とわが国との外交関係が開設された。

(2) 経済関係

(イ) 貿易(別表参照)

1980年の対中南米貿易は,わが国通関統計ベースで輸出89億1,700万ドル(対前年比36.0%増),輸入57億100万ドル(同26.2増%)と順調に伸びた。わが国の黒字幅は約32億ドルに拡大した(78年36億ドル,79年20億ドル)。貿易の国別構成については,従来からの特定国集中の傾向は変わらず,ブラジル,メキシコなど上位6カ国の合計は,輸出では68%,輸入では81%のシェアとなった。

国別動向では,輸出についてはアルゼンティンの大幅増(自動車,テレビなど),輸入については,エクアドル,メキシコ,ヴェネズエラの石油輸入に伴う増加と,こうりゃんの輸入大幅減によるアルゼンティンの減少が目立った。

(ロ) 投資(別表参照)

79年3月末現在のわが国の対中南米直接投資許可実績は,累計ベースで55億8,000万ドルとなっており,わが国の投資総額に占めるシェアは17.5%で,アジア,北米に次いで第3位となっている。79年度単年ベースでは,12億700万ドル(シェア24.2%)と78年(6億1,600万ドル)に比しほぼ倍増し,アジアを抜いて,北米に次ぐ高い実績を示した。これは,メキシコ(石油)及びブラジル(製鉄,アルミ精錬)に対する大型投資が行われたことによるもので,これら両国は,79年度のわが国投資先のそれぞれ第3位及び第4位を占めている。

(ハ) 各種レベルの経済交流

政府レベルの交流としては,80年7月に総勢129名から成る日・伯貿易交流促進ミッションがブラジルを訪問し,ブラジルとわが国の貿易拡大に大きな成果を収めたほか,5月にはメキシコにおいてメキシコ・日本機械・技術見本市が開催され,2月には東京において日・墨経済合同委員会が開かれた。また民間レベルでは,日・墨経済協議会(10月)及び日・玖(キューバ)経済懇話会(81年3月)が東京で,日・智(チリ)経済委員会(9月)がサンチャゴでそれぞれ開催されたほか,経済団体や民間企業から数多くのミッションが派遣された。

(3) 文化関係

文化面における交流も近年緊密化している。80年度は,メキシコ,パナマ,パラグァイ,ボリヴィアに対する文化無償協力の実施,わが国の有名なチェロ奏者の中南米巡回公演,わが国学者による日本文化紹介講演会の実施など多様な活動を行ったほか,6月にはメキシコにおいて,日・墨文化協定に基づく第3回文化混合委員会が開催された。また81年3月には,わが国とアルゼンティンとの間の文化協定が発効した。

<要人往来>

<貿易関係>

<民間投資>

<経済協力(政府開発援助)>

 目次へ