5. 西欧地域

(1) わが国は,従来から基本的な政治・社会理念を同じくする西欧諸国との関係緊密化に努めてきたが,最近の困難な国際情勢の下で,日欧対話を強化し,日欧協力関係を更に進展させることが必要であるとの認識が,日欧双方においてとみに高まっている。80年においては,かかる日欧協力は,例えば,在イラン米国大使館占拠問題に際し,イラン大統領に対し在テヘランのわが国とEC諸国の大使とが共同申入れを行ったり(4月),あるいはルクセンブルグでのEC外相会議の際に大来外務大臣が同地を訪問する(4月)などの具体的な行動において示された。また,伊東外務大臣は,かかる日欧対話の一環として12月に訪欧し,EC5カ国(フランス,英国,ベルギー,オランダ,西独)及びEC委員会の首脳,外相と国際情勢など共通の関心事について話し合い,これによって日欧間の協議・協力関係は更に強まった。

(2) 日欧間の協力関係を緊密化するためには,このような政治分野を含む様様な分野での協力関係を強化するとともに,あらゆるレベルでの人的交流が不可欠である。なかんずく,従来,ともすれば看過されがちであった次代の日欧関係を担うこととなる青年層の交流を促進することが重要であり,かかる観点から,8月中旬から9月下旬にかけて第2回目の欧州青年日本研修計画が実施された。本計画はEC加盟国の青年50名を論文により選抜して日本に招待し,2週間にわたりわが国の政治,経済,社会,文化などについて実地に見聞する機会を提供し,わが国の現状を最も効果的に学んでもらうことを目的とするものであり,日欧間の交流のすそ野を「草の根」レベルにまで広げるという点で大きな成果を収めた。

(3) 1979年には比較的穏やかであった日・EC経済関係は,80年に入って,わが国の対EC黒字幅が大幅に拡大(88億ドル。対前年比73%増)したほか,自動車,カラーテレビ,工作機械などの分野で日本の対EC輸出が急増したため,11月にはEC外相理事会が日・EC貿易関係に深刻な懸念を表明するに至った。その背景には,EC域内の経済情勢が,インフレの高進,失業率の増加,成長率の低下などに見られるように厳しさを増していたとの事情がある。

ECはわが国の輸出の12.8%,輸入の5.6%を占めるにすぎないが,ECの輸出入は,世界貿易の約40%を占め,その動向は世界経済に大きな影響を与える。したがって,ECにおいて保護主義圧力が高まれば,世界貿易全体に大きな影響を及ぼすことは避けられない。この観点から,貿易上の諸問題については,今後とも自由貿易の原則にのっとり,かつ話合いを通ずる相互理解に基づいて解決を図っていく姿勢が重要である。

このような考え方に基づき,わが国は特に年央以降積極的にEC側と対話を進めながら,わが国の立場を説明する努力を行った。10月には大来政府代表がEC委員会を訪問,11月には「日・EC経済関係に関する伊東外務大臣談話」を発表,12月には伊東外務大臣がEC諸国及びEC委員会を訪問,81年1月には日・ECハイレベル協議を開催するなど,様々な機会を通じてEC側との意思疎通が図られた。

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