4. 中南米地域
(1) 独立国30カ国,人口約3億4,000万人を有する中南米地域は,広大な領土と豊富な天然資源に恵まれて,将来の発展性に富む地域であり,多数の中進国を擁する重要な地域として国際政治・経済上の地位と影響力を近年著しく増大させつつある。この地域は,わが国とは資源供給,貿易,投資など経済面で相互補完関係にあり,また同地域には90万人を超える邦人移住者及び日系人が居住している。
(2) わが国は,中南米諸国との間で,経済面での相互補完関係を基盤としつつ,政治,文化面をも含む広範な相互協力関係を増進すべく引続き積極的な外交努力を行った。80年には大平総理大臣が5月1日から4日までメキシコを公式訪問し,両国間の経済協力及び対日石油供給などを含む幅広い両国間の問題について実りある話合いが行われたほか,中南米からは,3月にロヨ=パナマ大統領を国賓としてわが国に迎え,特に両国間の技術協力の促進についての合意を見た。
なお,パナマにおいては,故大平総理大臣の功績をたたえ,80年7月パナマ市議会はパナマ市の53-B通りを「大平通り」と命名し,81年には同総理大臣の胸像が建立される運びとなった。
わが国と遠く隔っている中南米との間の相互理解を促進するためには,このような要人の交流と並行して,次代の日・中南米関係を担うべき青年層の交流を促進することも重要であり,このため,80年から中南米青年日本研修計画(80年は20名を招待)が開始された。
(3) 経済・経済協力分野においてわが国は,ブラジル,メキシコ,アルゼンティン,アンデス諸国,カリブ・中米諸国など域内のバランスに配慮しつつ,関係の緊密化と多角化に努めている。80年においては,中南米4カ国(メキシコ,ヴェネズエラ,エクアドル,ペルー)からの原油輸入が実現したこと,ブラジルに対し派遣された貿易交流促進ミッションが成功を収めたこと,わが国とメキシコ及びブラジルとの間で初めて包括的な技術協力協議が開催されたことが特筆される。また,79年10月のビデラ=アルゼンティン大統領訪日以来両国間で懸案となっていたアルゼンティンにおける製鉄所などのプロジェクト案件が官民両レベルにおける対話と交渉の結果,81年3月に至り,双方の間に予備的な合意が成立し,その実現について明るい見通しが生まれた。
このほか,ペルー,パラグァイ,ボリヴィア,ハイティ,ホンデュラス,ドミニカ共和国などに対する円借款あるいは無償資金協力の供与,ハイティ,セント・ルシアに対する災害援助の実施など,多様な形で対中南米協力が行われた。
なお,80年のわが国の対中南米貿易は,輸出約89億ドル,輸入約57億ドルで,79年に比べそれぞれ36%及び26%増加した。