1. 査証と査証に関する2国間取極
通常わが国に入国しようとする外国人は,その旅券にわが国の在外公館で査証(ビザ)を受けなければならない。つまり査証は入国許可を得るための要件の1つであり,わが国に上陸することが好ましくない者にこれを拒否することにより,来日を禁ずることができる。他方,査証を与えられた者でも,その入国が好ましくないことが判明すれば,上陸が拒否されることがある。
近代国際社会では人の往来はますます頻繁となつている。特に日本のように対外貿易によつて経済を支えている国は必然的に人の往来が多い。そこでわが国は人の往来を容易にするため,一定条件の入国希望者には査証を免除し,あるいは1回の査証で一定期間何度でも入国を認める取極を諸外国と結ぶことが多くなつてきている。
わが国は77年1月1日現在次の43ヵ国と査証免除取極を結んでいる。査証が相互に免除されるのは,短期滞在(通常90日以内。ただし180日とか30日という国もある)で収入や報酬を伴わない活動(たとえば観光,通過,商談,アフターサービスなど)を目的とする入国である。短期でも就職,興行などは免除の対象とならない。
欧州ではフィンランド,オーストリア,ユーゴースラヴィア,マルタ,アイスランドを含む西欧諸国(22ヵ国)。うちオーストリア,西独,英国,アイルランド,スイス,リヒテンシュタインは滞在180日まで査証免除。
アフリカではテュニジアのみ。
アジアでは西からトルコ,キプロス,イスラエル,イラン,パキスタン,バングラデシュ,シンガポール。
大洋州ではニュー・ジーランド(滞在30日まで)のみ。
南北アメリカ州では北からカナダ,メキシコ(滞在180日まで),グァテマラ,ホンデュラス,エルサルヴァドル,コスタリカ,ドミニカ,コロンビア,ペルー,チリ,ウルグアイ,アルゼンティン。
以上でわかるとおり,わが国と関係の深い米国,オーストラリア,ブラジルとは査証免除取極がない。これら諸国はその国の移民法とのかねあいで外国と査証免除取極を結んでいない。
また,わが国は77年1月1日現在次の12ヵ国と,一定資格の相手国民にそれぞれ1年ないし4年有効の数次入国査証を相互に発給することを取り決めている。
スウェーデン,英国,アイルランド,アイスランド,カナダ(以上すべての者に1年間)。西独(就職を意図しない者1年間)。フランス(会社代表者,報道関係者,その家族4年間。就職又は永住を意図しない者1年間)。オーストラリア(外交・公用,会社役員,その家族,業務訪問4年間。通過,観光1年間)。ニュー・ジーランド(外交・公用,会社役員,その家族,業務訪問3年間)。米国(外交・公用,通過,観光,商用,留学,報道等4年間)。メキシコ(外交・公用旅券所持者1年間)。ブルガリア(駐在大使と家族に在任期間中,他の駐在外交官と家族に1年間など)。
76年の地域別の査証発給件数は,各種の査証取極にもかかわらず次のように著しい増加を見せている。
76年後半に韓国及びフィリピンで組織的な日本入国査証の偽造が発覚した。韓国の偽造団については76年10月,日韓両国で関係者多数が逮捕され,フィリピンの偽造関係者も77年に入つて一部がフィリピンで逮捕された。わが方としても偽造の再発を防止する措置をとりつつある。