第3節 邦 人 の 渡 航

 

1. 旅券の発行状況

 

 76年(1~12月)の旅券発行数は,156万6,912件で対前年比18.4%の増加をみせた(過去5年間の旅券発行数の推移は,付表1のとおり)。

 これは,景気の沈滞が一段落し,景気の回復基調や国内運賃の値上り等による海外旅行の割安感等海外渡航を巡る環境が好転の兆しをみせはじめたことに伴い,海外渡航者の急激な回復(285万2,584人,対前年比16%増)がもたらされたことの反映と思われる。74年の前年比13.8%減,75年の1.5%減と停滞気味であつた旅券の発給件数が76年において上述のごとく著しい増加を示し史上最高の数字を記録したことは,国民の潜在的な海外渡航志向が依然根強いものであることを示すものとして注目される。

 一般旅券の発行数を効力別にみると,71年以来,数次往復用旅券の占める割合は漸増し,これを76年についてみると,総数の79%,122万5,672件となつている。これを実際に海外渡航した者との関係で観察すると,76年の海外渡航者が285万2,584人であるのに対し旅券の発給件数が156万6,912件となつており,これは数次往復用旅券をもつて2度以上にわたり海外渡航を行つている者の海外渡航者全体に占める比率が着実に増加していることを示すものである。

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2. 渡航者の態様

 

(1) 最近の一般旅券の発行数を渡航目的別に分類すると,一般旅券発行総数のうち観光渡航の占める割合が圧倒的に高く,76年は,90.0%に達している。これに次いで経済活動のための渡航者が多数を占め,総数に対する割合は,8.3%となつている(付表2参照)。

(2) 一般旅券発給申請書に記載された主要渡航先を地域別にみると,従前のパターンのとおりアジア地域が全体の半数近く(49.3%)を占め,次いで北米(37.6%),欧州(10.5%)の順となつている(付表3参照)。

(3) 渡航者の大部分は短期渡航者であるが,永住,赴任,長期にわたる業務,留学,学術研究など渡航先において3ヵ月以上滞在する予定の長期渡航者は,76年の旅券発行数の約2.2%となつている。地域別では,北米が41.5%,次いで欧州(17%),アジア(16.4%)の順になつている。

(4) 一般旅券の発行数を年令別に分類すると20才代の渡航者が,70年以来,旅券発行数において首位(36.2%)を占め,次いで30才代(21.8%),40才代(17.8%)の順となつている(付表4参照)。

(5) また,一般旅券の発行数を性別に分類すると,発行総数に占める女性の割合は漸増の傾向を示し,76年は33%を占めている。

〔付表1〕 旅券発行数の推移(暦年)

〔付表2〕 渡航目的別一般旅券発行数(暦年)

〔付表3〕 主渡航先地域別一般旅券発行数(暦年)

〔付表4〕 年齢別一般旅券発行数(暦年)

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