1. 近年における海外在留邦人の特徴
邦人の海外渡航者数は，73年に前年比約65%の大幅増を記録した後，74年以降は伸び率が鈍化しているが，76年には前年を約39万人上回り，約285万人となつた。また，長期滞在者と永住者とからなる海外在留邦人の数は，73年約36万3,000人，74年約37万8,000人，75年約39万6,000人，76年は約40万9,000人となつている(いずれも10月1日現在)。
在留邦人の内訳をみると，永住者が73年以後ほぼ横ばい状態であるのに対し，長期滞在者は9～15%の割合で増加しているのが注目される。
在留邦人の地理的分布状況をみると，まず長期滞在者約15万人のうち最も多い地域は北アメリカの約5万人，次いで西ヨーロッパ3万5,000人，アジア3万3,000人であり，これらの3地域で全体の約79%を占めている。永住者については，25万9,000人のうち最も多いのが南アメリカで約17万5,000人，次いで北アメリカ約7万3,000人となつており，この2地域で全体の約96%を占め，長期滞在者に比して地域的偏在の傾向が強い。
長期滞在者の構成ないし活動状況を地域的にみると，長期滞在者全体に占める商社，銀行，メーカー等の社員及びその家族が世界全体で67.2%であるのに対し，これを下回つているのは北アメリカ(61.8%)，西ヨーロッパ(50.3%)，東ヨーロッパ(61.7%)のみで，他の地域はいずれも70～90%と高い割合を占めている。また上記北アメリカ，西ヨーロッパでは，留学生，研究者，教師及びその家族が高い割合を占め，東ヨーロッパ及びアフリカでは，政府関係職員及びその家族が比較的高い割合を占めているのが特徴である。
海外の各地に設立されている日本人会の数は247，日系人会は121，商工会議所等日系企業団体は65を数え，その地域別分布は次表のとおりである(76年10月現在，ただし，一部は75年の調査による)。
日本人会は会員数2,600人を擁するニューヨークの日本クラブ，会員数2,555人のタイ国日本人会から会員数4人のコビハ日本人会(ボリヴィア)まで大小さまざまである。日本人会は一般に会員相互の親睦を主たる目的としているが，あわせて，子女の教育のため日本人学校又は補習授業校の運営を行つているものも少なくない。また，日本文化紹介のための行事，慈善事業等により，現地社会との融和に努めている。
わが国からの進出企業が組織する商工会議所等についても，会員数298社(75年10月現在)を有するバンコク日本人商工会議所から，会員7社の在タナナリヴ商社会(マダガスカル)まで，その形態はさまざまであるが，それぞれの規模に応じ，現地労働事情及び投資活動等の調査，講演会の開催等の活動を行つている。