第2節 報道広報関係

 

1. 報 道 関 係 活 動

 

(1) 国内・国外に対する報道事務

 情報文化局報道課は,外務省と内外報道機関との接点となり,国内的には主として,外務省常駐の霞クラブ(新聞,テレビ,ラジオ,計38社が加盟)を通じて国内報道機関に対し,対外的には外国プレスセンターを通じ在京の外国人記者及び在京大使館に対し,また外国にあつては在外公館を通じて現地報道機関に対し,常時わが国の重要外交問題や主要国際問題に関する発表や解説を行つている。このため,

(イ) 霞クラブに対しては,外務大臣及び事務次官による記者会見,記者懇談のいずれかを毎日行つているほか,情報文化局長による国際情勢全般についての背景説明を随時実施し,更に経済局長,経済協力局長,経済局次長による経済記者との懇談を毎週1回行つている。また重要案件については随時,主管の局部課長等によるブリーフィング(解説)を行つている。

(ロ) 外国報道関係者に対しては,情報文化局長が外務省スポークスマンとして毎週1回記者会見を実施しているほか,各種ニュースについての照会・解説依頼等に対し,随時応接している。

(ハ) 他方,文書による発表として,外務大臣談話,情報文化局長談話,情報文化局発表,記事資料(以上76年度総数451件)のほか,随時主管局部課作成の記事参考資料を内外報道機関に配布している。

(ニ) 内外報道機関のみならず,在京の外国公館の報道関係者とも常に連絡を密にし,外交案件の説明あるいは照会に対する回答を行つている。

(ホ) 本邦での諸会議取材についても会議場でのカメラ取材,会議に関する新聞発表,会見,ブリーフィングの斡旋等を行つている。

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(2) 報道関係者に対する便宜供与

(イ) わが国の報道関係者が海外取材をする際には,本省と在外公館の双方で各種の便宜を供与し,海外諸事情の国内報道の充実を図るため側面的協力を行つている。また天皇陛下,総理大臣,外務大臣等の外国訪問に同行したり,海外での重要国際会議を取材する報道関係者に対しても必要に応じ報道担当官が同行し,取材上の各種便宜を図つている。

(ロ) 外国報道関係者に対しては,わが国で取材活動をする際の便宜のため「外国記者証」を発給しているほか,内外の報道関係者の総理大臣,外務大臣等との会見の斡旋などを行つている。また,その取材活動を更に積極的に支援するため,76年10月1日に財団法人フォーリン・プレスセンターが設立された。

(ハ) 外国からの国賓及び公賓の訪日に際しては,これらの同行の記者団に対し,取材上の便宜を与えているほか,訪日意義の国内報道を容易にするための諸援助を行つている。

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(3) 海外における対日論調収集及び編集

 わが国に関する海外紙誌の報道,論評は,ここ数年来激増しており,これら海外紙誌に現われた対日観を把握しておくことは,政策立案,国内啓発,あるいは対外広報上極めて重要であるので,引き続きこれらを広範に収集し,その傾向をとりまとめている。

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2. 国 内 広 報 活 動

 

(1) 総  説

 ますます複雑化し,国家間の相互依存関係が深まつている今日の国際社会において,わが国が平和外交に徹し,国際間の対話と協調を進めながら国益を確保してゆくためには,何よりも,わが国外交政策に対する国民の理解と幅広い支持が必要である。

 加えて最近では,国際経済問題あるいは海洋法問題に見られるように,国際情勢の動向が国民の日常生活に直接影響を与える度合いが深まつており,国民の外交に対する関心も大きな高まりを見せている。

 このような状況の下では,国際情勢やわが国の外交政策について,客観的で整理された情報を国民に迅速に伝達し,国民の理解を得ることが不可欠となつている。

 また,最近のわが国の海外渡航者の増加にはめざましいものがあるが,それに伴い,一部邦人の現地事情の理解不足などから,さまざまな摩擦が海外で生じている。今日のような国際化時代においては,わが国と異なつた文化や習慣をもつ世界各国の事情を紹介し,国民の国際感覚の向上に寄与することも,国内広報の重要な課題である。

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(2) 国内広報活動

 外務省国内広報の手段としては,主として,(a)情報文化局の発行または編集による刊行物,(b)民間団体などに開催を委託し,あるいは外務省員を講師として派遣する講演会,(c)テレビ,ラジオ番組に対する協力などがある。

 刊行物については,定期刊行物として「月刊国際問題資料」,「世界の動き」,「われらの世界」(いずれも月刊)があり,他方その時々の重要な外交問題の解説,諸外国の紹介等を目的とした不定期刊行物を発行している。51年度に発行されたものとしては,「日本とブラジル」,「日本とカナダ」,「日本と韓国」,「変貌する国連と日本」,「世界の原子力発電事情」などがある。

 講演活動については各種民間団体主催の国際問題講演会や研修会に対し,外務省員を講師として派遣するほか,「外交知識普及会」「国民外交協会」「日本国際問題研究所」「国連協会」などの団体に国際情勢に関する講演会開催を委託している。これらの講演会の開催地域は全国に及んでおり,開催回数は年間延べ600回余に達している。

 更に,今日テレビ,ラジオの情報伝播力に鑑み,諸外国の実情の紹介,国際情勢あるいは外交問題の解説を目的とするテレビ,ラジオ番組については,正確な情報が国民に伝わるよう可能なかぎり協力している。

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3. 海 外 広 報 活 動

 

(1) 総  説

 わが国の国際的地位の向上に伴い,海外においては,わが国の国情とともにわが国の内外諸政策に対する関心が著しく高まつてきている。しかしながら依然としてわが国について誤解,不正確な認識が見受けられ,時としてこれが無用の対日批判・警戒心を招くことがある。こうした動きに対しては,そのもとになつている誤解を是正し,真の日本の姿を紹介するよう努めねばならない。

 特に,今日の相互依存の世界においてわが国が海外との交流を円滑に推進していくためには,何よりも諸外国がわが国の外交政策,主要問題における立場,及びそれらの背景にあるわが国の事情につき十分かつ正確な認識を有することが肝要であり,このためには能動的かつ積極的にこれらについて広報を行うことがますます必要となつている。

 このような海外広報活動を行うに当つて,諸外国において国民世論の動向がそれぞれの国の外交政策決定に大きな影響力を有する今日,世論の動きに常に注意を払い,単に政策決定者のみにとどまらず,世論指導層及び報道機関に対して常に最新かつ正確な情報を積極的に提供する持続的,機動的啓発活動の必要性は大きい。

このような認識に基づき,

(イ) わが国が平和国家であること。

(ロ) わが国が政治,経済等各分野で国際協力を推進すべく応分の責任を負つていること。

(ハ) わが国が歴史及び伝統に支えられた文化国家であること。

(ニ) わが国の発展を支えてきた基礎的諸要素。

(ホ) わが国が世界経済のルールに従い秩序ある経済活動を行つていること。

等に重点を置きつつ,わが国が理解不能な特殊な民族ではなく,他国と共通の基盤の上に立ち同様の問題を抱えた仲間であるとの認識を得させると同時に,地理的・文化的背景に基づく相違は相違として正しく認識させ,もつてわが国に関する全体的理解を促進することを目的として海外広報活動を行つている。

 海外広報活動は大別すると,特に強力な広報努力が必要な場合に特定国又は特定地域に対し,あるいは特定問題に関して機動的集中的に実施する「特別広報活動」及びわが国の政治,経済,社会,文化等全般的国情紹介を目的とする「一般広報活動」の2本建となつている。相手国との関係,問題点の所在に応じ両活動を適宜組み合せて,最も適切と思われる広報活動を広報文化センター(注参照)を中心に全在外公館において展開している。

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(2) 特 別 広 報

 70年代初期,米国との間にわが国からの繊維輸出規制の問題や,日米貿易の甚だしい不均衡の問題などが生じた際,米国における正しい対日理解を深めるため,米国に対し特別広報活動を開始した。その後,対米特別広報活動の一層の拡充を図る一方,アラブ産油国による対日石油供給削減,東南アジアなどにおける対日批判の高まり等重大な諸問題が続出したため,特別広報活動はほぼ全世界に拡大した。

 76年秋には,日・EC諸国間の貿易不均衡問題をめぐり欧州各国で対日批判が起つたが,これに対し,実体面で問題の解決に努力するとともに,この対日批判の裏にある対日理解の不足や誤解を取り除き,またわが国の事態改善への努力を理解させるため,欧州に対し種々の特別広報活動を展開した。

 このように,特別広報活動を必要とする問題に関しては,今後とも集中的,機動的に対処していく方針である。

特別広報の手段のうち主なものは,

(イ) シンポジュウム,セミナー,講演会,地方講演旅行

(ロ) 経済協力プロジェクト視察

(ハ) テレビ等視聴覚メディアを通じる広報

(ニ) 新聞,雑誌への啓発記事掲載

(ホ) 特別広報資料の作成配布

(ヘ) オピニオン・リーダー招待

等がある。

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(3) 一 般 広 報

 一般広報活動は,諸外国における対日理解の程度が未だ必ずしも十分でないことに鑑み,対日理解増進を図るため,従来より行つている一般的国情紹介の広報活動である。特別広報が比較的短期,中期の広報効果を得ることを目的として実施されるのに対し,一般広報活動は,中・長期の観点からわが国と諸外国間の相互理解の増進を図ることを目的としている。

 一般広報の手段としては,(イ)報道関係者招待,(口)広報資料(一般的国情紹介資料及び個々の事情に関する各種資料)の作成及び配布,(ハ)広報映画,スライド,写真等視聴覚資料の作成及び配布があり,これらの諸手段を通じてわが国の姿を正しく理解してもらい,もつてわが国に関する誤つた認識や報道がなされないよう努めている。

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(注)

 下記の在外公館には広報文化センターを設置し,専任の担当官を配置して報道機関との緊密な連絡と協力をもつて講演会の開催,広報資料の配布,広報映画の上映などの視聴覚活動,わが国諸事情に関する照会への回答等あらゆる広報手段を活用して,海外広報活動を行つている。広報文化センター設置場所は次の28ヵ所である。

 ニューヨーク,ロンドン,バンコック,ジャカルタ,ブエノスアイレス,ジュネーヴ,ニューデリー,カイロ,シドニー,ラゴス,ウィーン,マニラ,リオデジャネイロ,メキシコシティ,香港,ウェリントン,サンフランシスコ,パリ,クアラルンプール,ソウル,テヘラン,トロント,カラチ,シンガポール,ナイロビ,ベイルート,ブラッセル及びシカゴ(昭和52年10月開設予定)。