第6節 科学技術問題

 

1. 国連環境計画(UNEP)の活動

 

 国連環境計画は,1973年以降,ナイロビ(ケニア)に本部事務局をおいて世界的及び地域的レベルの環境保全のために広範な活動を行つている。

 わが国は,UNEP環境基金に73年から77年までの5年間に1,000万ドルの拠出誓約しており,76年には250万ドルの拠出を行つた。

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(1) 第4回管理理事会

 第4回管理理事会は,わが国を含む58理事国中51ヵ国参加の下に,76年4月から5月にかけてナイロビで開催された。同理事会では,人間居住と人の健康,地上の生態系,環境と開発,海洋,エネルギー,地球監視(EARTH WATCH),技術訓練及び情報交換等の支援措置,環境法等の各分野にわたつて審議が行われ,今後のプログラム活動についての決定がなされた。そのほか,76年ヴァンクーヴァーで開催の国連人間居住会議(後述),77年開催予定の国連砂漠化防止会議についても審議が行われた。

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(2) 第31回国連総会での審議

 76年秋の国連総会では,第4回管理理事会報告の審議を行い,同理事会報告,国連砂漠化防止会議,国連人間居住会議,パレスチナ人民の居住状況,国際環境協力機構,社会的弱者の居住環境,人間居住の地域社会間協力,国連人間居住視聴覚情報センター,人間居住の国際協力機構取極に関する合計9つの決議を採択した。

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(3) UNEP主催の会合に対するわが国の参加

 わが国は国際情報源照会制度専門家会合,有害化学物質国際登録制度専門家会合,自動車及びアグロインダストリー(農業産業廃棄物)の特定産業セミナーに参加し積極的に協力した。

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2. 国連人間居住会議

 

 国連人間居住会議(HABITAT)は5月31日より6月11日までヴァンクーヴァーにおいて132ヵ国及び国際機関代表等参加の下に開催され,原則宣言,国際協力計画,国内行動勧告の3つの基本文書及び5つの個別決議を採択した。

 本件会議は居住問題につき知識,情報,経験等を交換し,居住分野にかかわる国内政策の促進を図り,国際協力のあり方を探求することを目的とするものであつたが,わが国は豊富な知識と経験を生かし積極的に会議に参加し,所期の役割を果たした。

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3. 宇宙空間の平和利用

 

(1) 最近の宇宙開発は,通信衛星,放送衛星を中心とする実用衛星に重点が置かれてきている。また,米ソ以外の国においても両国の援助を得て活発に開発が進められており,宇宙開発における世界的かつ急速な進展には顕著なものがみられる。

(2) 国連宇宙空間平和利用委員会(加盟国は37ヵ国)は,76年には72年以来の懸案である「月条約案」の審議を引き続き行つたが,月の天然資源の帰属,管理方法等をめぐりソ連とラ米等が対立し,コンセンサスが得られなかつた。他方,「直接テレビ放送衛星の利用に関する原則の起草」に関しては,13項目のうち9項につきコンセンサスが得られ著しい進展がみられたものの,基本的対立点である受信国の「事前の同意」の要否については未だ合意が得られていない。さらに衛星による地球の探査(リモートセンシング)に関しては,技術,組織,財政及び法律の各側面からの検討が行われたが,探査データ・情報配布の自由の有無をめぐり南北間に対立があり,未だ妥協はみられない。国連第31回総会は,以上の諸問題の検討の継続を内容とする「宇宙平和利用における国際協力」と題する決議(宇宙オムニバス決議)を採択した。

(3) 国際海事衛星機構(インマルサット)

 政府間海事協議機関(IMCO)の招請による国際海事衛星機構設立に関する条約を採択する第3回政府間会議は,76年9月開催され,9月3日「国際海事衛星機構に関する条約」が採択され,即日,署名のために開放された。

 本機構は,船舶と陸地との間,船舶相互間の主として短波によつて行われている海事通信の混雑緩和及び品質改善のため,海事通信に衛星通信技術を導入することを目的としている。

 わが国は,世界的な規模で運用される海事衛星機構を設立することにより,海事通信業務の改善並びに需要の拡大に対処できるとの考えにより,上記会議においては,本機構が国際協調の精神に則り,速やかに設立されるよう,積極的な発言・提案を行つた。

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4. 南極をめぐる国際協力

 

(1) 南極地域においては,61年以来,南極条約原署名12ヵ国を中心に,科学調査,環境保全等の分野での国際協力が実施されている。上記12ヵ国は,南極地域での共通の利害関係事項について協議し,必要な措置を勧告するために,約2年ごとに南極条約協議会議を開催している。従来の会議が南極地域の環境保全,科学調査のための国際協力を主要問題としていたのに対し,最近では,南極鉱物・生物資源問題に各国の強い関心が示されるようになり,75年の第8回協議会議では,鉱物資源開発問題について活発な討論が行われた。

(2) 第8回協議会議の勧告に基づき,76年6月,鉱物資源の探査,開発問題を検討する特別準備会議が開催され,わが国も参加した。

 本会議では,鉱物資源の探査・開発の規制措置を早急に設定すべしと主張する国と,これを時期尚早とする国との間で見解が対立したほか,その他の問題についても議論が平行線をたどつたため,結果的には自由討論の域を出ないものとなつた。

 鉱物資源問題は,生物資源問題とともに,77年10月に予定されている第9回協議会議で,重要な問題として議論されることとなると予想される。

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