1. 国連総会(第2委員会)
76年9月下旬より約3カ月間開催された第31回国連総会第2委員会では,新国際開発戦略,新国際経済秩序等多くの重要な諸問題が審議され,54の決議が採択された。
第2委員会の一般討論において,多くの国が1980年代の開発問題に対する国際協力の枠組みを提供するIDSへの関心を表明し,これを受けて,12月13日,新IDS策定に必要なデータ及び情報の収集を求める決議が投票に付されることなく採択された。第32回総会においては,かかる基礎的データをもとに新IDS準備の明確な方向づけが行われる予定である。
開発途上諸国(G77)は,第32回総会においてNIEOを単独議題として審議することを目指す決議案を提案したが,各国の合意が得られず,結局,NIEOに関する決議のみでなく,第7回国連特別総会決議及び現行国際開発戦略をもあわせとりあげるとの修文が行われ,11月22日,賛成105,反対1,棄権7(日本を含む)にて採択された。
5月,ナイロビにおいて開かれた第4回UNCTAD総会の成果が審議され,同総会で採択された諸決議の実施促進を図る決議がコンセンサスにて採択されたが,一次産品共通基金,特恵,MTN,債務,SDRと開発援助とのリンク等に関する条項については,日本を含む西側先進国の十分な同意を得るまでには至らなかつた。
12月にCIEC閣僚会議が予定されていたため,開発途上国側は,同会議の審議促進を図る決議案を提案した。しかし,同案はCIECがこれまで具体的成果を挙げることに失敗したことに失望を表明する等バランスを欠いたものであつたため,各国の合意を得ることができず,11月18日,投票に付され,賛成96,反対0,棄権30(日本を含む)にて採択された。同決議では,第31回会期中に,CIECの成果を検討することとされたが,結局CIEC閣僚会議が延期されたため,12月22日,第2委員会をCIEC閣僚会期後に再開し,本問題を検討するとの決定が行われた(したがつて,第31回総会は12月22日終了せず,中断として再開会期が開催されることとなつた)。
わが国は,第60回(76年4~5月)並びに第61回(同年7~8月)経済社会理事会の両審議に参加した。第61回会期は前半をアビジャンにて,後半をジュネーヴにて開催し,アビジャン会期においては,南北問題一般に関するアビジャン宣言が採択された。
76年経済社会理事会では,人権,麻薬,多国籍企業,ザンビア援助,モザンビーク援助,科学技術,国連水会議,国際開発戦略(IDS)改訂等の諸問題が審議され,多くの決議が採択された。このうちIDS改訂問題に関しては,単に,IDS実施の遅延に対する先進国の責任,第4回UNCTAD及びCIECへの不満等を表明する一般的決議が採択されたにとどまつた。
(1) 第2回国連多国籍企業委員会が3月初旬,リマにおいて開催され,懸案となつていた同委員会の作業計画が採択された。この結果,委員会としては多国籍企業に関する行動規範の作成を最優先作業とすることとなつた。この作業を行うために設立された政府間作業グループは1978年年央を目途に行動規範の草案を作成することとなつた。
(2) 第30回国連総会で採択された多国籍企業等による腐敗行為非難決議を受けて,8月,第61回経済社会理事会において本問題を検討するための政府間アド・ホック作業グループ設立につき合意をみた。同グループは腐敗行為防止のための方策を検討し,第63回経済社会理事会に報告書を提出することになつている。
(1) わが国は,アジア太平洋地域諸国との協力拡充を目指し,第32回総会をはじめとする諸会合に積極的に参加し,また,ESCAPのほとんどすべての分野にわたる事業活動に各種の協力を行つた。
(2) 第32回総会は,76年3月,バンコックで開催され,総合農村開発計画に関する決議ほか9本の決議を採択した。
総合農村開発は,同総会の中心テーマとされたものであるが,ESCAP地域の人口の大部分を占める農村地域の貧困層に焦点をあて,農業生産力の増大,雇用の拡大,産業・生活基盤の整備などを進めようとするものであり,わが国のほか多くの諸国の積極的支持を受けて今後ESCAPが重点的に取り組むべき活動と決定された。総会においては,このほか開発途上国間技術協力問題,ESCAPの財政・機構の問題等に関心が集まつた。
(3) 76年中に開催された常設委員会は,天然資源,運輸通信,貿易,人口,統計,及び産業住宅技術の6委員会であり,そのほか数多くのアド・ホックの政府間会合,専門家作業グループなどが開催された。この中で,総合農村開発政府間専門家会合は77年2月に東京で開催され,多数の国際機関の参加も得て,ESCAP地域の総合農村開発の推進につき,審議した。
(4) この1年間にわが国がESCAPの諸活動に対して行つた協力としては次のようなものがある。
(イ) メコン・プロジェクトについてはメコン委員会事務局へ引き続き専門家を派遣,沿海探査プロジェクトについては専門家派遣のほか資金拠出,要員訓練,また台風プロジェクト,アジア・ハイウェー・プロジェクトについては専門家派遣,アジア鉄道網計画については調査団派遣を行つた。
(ロ) 更に,農業機械ネットワーク,鉱物資源センター,ESCAP事務局農業部強化資金,アジア開発研修所,アジア開発行政センター,アジア社会福祉開発訓練調査センター,技術訓練計画などに拠出を行い,東京にあるアジア統計研修所にも施設,職員役務の提供に加え資金拠出を行つた。そのほか,事務局の行う調査研究活動などに協力するため,多くの専門家を事務局に派遣した。
76年5月3日から31日までナイロビで開催された第4回UNCTAD総会は,一次産品総合プログラム,債務問題,多角的貿易交渉,技術移転などに関する13の決議を採択した。同総会において,わが国は南北間の対決を避け,対話と協調に基づき,開発途上国との協力関係の強化を図つていくとの基本方針の下に,積極的に参加した。
第4回UNCTAD総会では,「一次産品総合プログラム」が最大の焦点となり,開発途上国側は,同プログラムの実現のため一致団結して先進国側の譲歩を求めた。一方,先進国側は,南北間の対話の糸を保つ必要があるとの配慮から開発途上国側との歩み寄りを図り,コンセンサスによる決議採択に応じた。わが国は,他の主要先進国と異なり,決議採択にあたり何らの留保や意見表明も行わなかつた。
同決議により,(イ)共通基金について77年3月までに交渉会議を開催すること及びそれに先立ち準備会議(複数)を開催すること,(ロ)個別産品については,78年2月以前までに準備会合,それ以後78年末までに交渉会議を終了する旨のタイムテーブルが合意された。一次産品総合プログラムにおける開発途上国のねらいは,まず各国からの拠出20億ドルを含む60億ドルの資金を有する共通基金を設立して,この共通基金から,個別産品協定において設立された国際緩衝在庫に対する融資及び貿易・生産面の多角化等のための融資を行うことによつて,総合プログラムの対象18品目の価格安定と輸出所得の改善等を図ろうとするものである。
なお,同総会において,米国より,資源開発投資促進を主眼とした「国際資源銀行」案が提案されたが,少差で否決された(わが国は賛成)。
(イ) 製品・半製品に関し,下記主要諸点を含む決議がコンセンサスで採択された。
(a) 開発途上国関心品目の関税再分類の可能性に関する研究を継続すること。
(b) 非関税措置分野での一般的な特恵的取扱い原則の採用,先進国が維持している数量制限を特恵ベースで軽減撤廃すること,ガット国際繊維取極にみられる輸出自主規制は例外とし,他部門に波及させないこと。
(c) 開発途上国の製品輸出を促進するための援助措置を実施すること。
(d) 制限的商慣行を規制するための原則及び規則作成に関する交渉を行うこと,また,制限的商慣行のモデル・コードを作成すること。
(ロ) 開発途上国の製品・半製品貿易に悪影響を与えるおそれのある多国籍企業の活動を規制する措置を主たる内容とする決議が賛成84,反対0,棄権16(わが国を含む)で採択された。
第4回UNCTADにおいては,(イ)できる限り特恵対象品目の拡大を図る,(ロ)原産地規則を簡素化するとともに各国間の調和を図る,(ハ)できる限り製品・半製品に対する課税は一切行わず,適当な場合にはシーリング及び関税枠の実質的拡大を図る,(チ)特恵制度を当初の10年経過後も継続する等の内容を含んだ決議が採択された。
(イ) 政府開発援助の対GNP比0.7%目標については,第4回UNCTAD及びその後開かれた第16回貿易開発理事会(以下TDBと呼ぶ)においても,大きな前進はなかつた。一方,条件緩和については,開発途上国のうちでも後発国に対してはその経済的後進性に鑑み,第4回UNCTADで基本的に贈与の形態で援助を行うことに合意した。
(ロ) 援助のアンタイング化に関し,第16回TDBにおいて,政府開発援助は原則としてアンタイング化し,また,そのために相互アンタイングのための多角的な取極を検討することに合意した。
(ハ) 開発税の導入,SDR創出と開発援助のリンク等いわゆる援助の自動移転メカニズム構想については,進展がみられなかつた。
(ニ) 開発途上国の債務累積問題に関し,第4回UNCTADで,77年の閣僚レベルTDBにおいて本問題を取り上げることに合意した。その後,第16回TDBにおいて,後発開発途上国(LLDC)等に関する第4回UNCTAD決議が問題となり,「77年の閣僚レベルTDBで同決議の履行状況をレヴューすべし」との決定が採択されたが,同決議にはLLDC等に対する債務撤廃等が含まれているため,わが国を含む主要先進国は同決定を受諾できない旨意見表明を行つた。
76年4月,開発途上国の港湾を中心に深刻化している船混み問題の解決策探求のための専門家会合が招集され,同会合の勧告を受けて,目下,開発途上国にタスクフォースが派遣されている。
本分野においては,技術の国際的移転を促進し,技術移転取引における制限的商慣行の排除を主たる目的とした行動規範を作成することが最大の懸案となつている。第4回UNCTADにおいては,規範の法的性格をめぐる議題が中心になつたが,結局,本問題を棚上げにしたまま,78年の早い時期を目途に規範の草案を作成するための政府専門家グループが設立され,目下,同グループにより具体的な草案作成作業が進められている。
第4回UNCTADにおいて,「第16回TDBにおいてUNCTADの常設委員会として開発途上国間経済協力委員会を設立する」との合意がなされ,同理事会(76年10月)において同委員会が設立された。
(1) UNDPは国連システムの中心的な援助機関として発展途上国に対する技術援助に多大の貢献をしてきたが,第1次5カ年計画(72~76年)の後半に入つて多くのプロジェクトが一斉に実施に入つたこと等により,75年末には4,000万ドル以上の資金が不足し,流動性危機が表面化した。このためUNDP資金により技術援助を行つていた専門機関は多数のプロジェクトの実施が大幅に削減される等各方面に大きな影響を与えた。
(2) 76年のUNDPの活動はかかる財政危機の建直しと,77年から始まる第2次5カ年計画(77~81年)の策定が中心となつた。前者については76年1月より就任したモース新事務局長(米国人)の下で,各国に対する追加拠出の要請,専門機関等への支払い延期,庁費節約,職員採用の凍結,旅費の削減等の措置をとる一方,国連総会に対し短期資金の借入れ権限を求めてこれが承認された。また,上記追加拠出の要請に応えて北欧諸国等は2,600万ドルの拠出を行い,また一部開発途上国によるIPF返上等の結果,76年末には現金ポジションは3,500万ドルの黒字となるまでに改善された。
(3) 76年で終了する第1次5カ年計画に引き続くべき第2次5カ年計画の検討については,76年6月の第22回管理理事会において第2次5カ年計画の援助総額として24.5億ドルが承認され,各国の年間拠出伸び率14%を目標とすることが合意された。
(4) 76年11月に開催された77年のための拠出誓約会議においては102カ国により総額3億9,900万ドル(前年比増約11%)が誓約された。わが国は前年度比10%増の2,200万ドルを第23回管理理事会において誓約した。
(1) 事 業 活 動
76年においては第10回工業開発理事会及び第8回常設委員会が開催されたところ,主要検討事項はUNIDOの改訂予算,工業開発基金(IDF)の諸規則の検討,協議システムの実施及びUNCTAD IVの技術移転に関する決議のフォローアップであつた。協議システムについては鉄鋼及び肥料について行うことが合意されていたが,77年1月に肥料,2月には鉄鋼の協議が行われ各々の分野の専門家による有意義な討議が行われた。
75年第2回総会においてUNIDO専門機関昇格のための勧告が採択されたことにより,76年1月以来11月まで計4回憲章起草政府間全体委員会が続けられている。UNIDOは,国連総会の決議によつて設立された国連内の1機関であるが,本件憲章が制定・発効をみ,更に国連との連携協定が成立すれば,独立の専門機関となることになる。4回までの審議では,開発途上国,先進国,社会主義諸国との間で憲章条文につき未だ合意に達しておらず,第5回会期を77年3月に開催し,同年後半開催予定の全権会議で憲章起草を終了することにしている。
76年の具体的な協力としては,ASEAN諸国の輸出産業振興のためのプロジェクトの実施及び国内企業における研修事業として輸出向工業製品の品質保証コース(11名)と機械工業生産管理コース(9名)を行つた。
本基金は開発途上国の農業開発のために緩和された条件で資金援助を行うことを目的として,74年の世界食糧会議で設立が決定されたもので,設立協定は76年6月に採択された。関係拠出国の努力により署名開放要件たる10億ドル以上の拠出誓約が満たされた結果,76年12月20日署名に開放された。本基金は設立後,国連の専門機関となることが予定されている。