第4節 文化・社会・人権問題

 

 

1. 社会人権問題

 

 国連の人権分野においては2つの大きな動きがあつた。

 まず,国連は,第28回総会において,1973年12月10日からの10年を「人種差別との闘争の10年」に指定するとともに,そのための行動計画を採択し,その後も人種差別撤廃に関する審議を続けているが,第30回総会は,同問題を審議して,「シオニズムが人種差別の一形態であると決定する」趣旨の決議を採択して,同問題に新たな波紋を投げかけた。この結果,今後国連として人種差別の問題を審議する場合は自動的にこれにシオニズムが含まれることになつたとも解し得,同決議には,余りにも政治的要素が強いため西欧諸国が反対し,アジア・アフリカのかなりの諸国も,西欧諸国の不参加により人種差別撤廃闘争そのものが頓座することを懸念して,同決議に反対ないし棄権する等複雑な動きを示したことと相俟つて,今後の国連による人種差別問題の取扱いが注目される。

 また,国連の人権分野における一大成果として第21回総会で採択された国際人権規約は,1975年10月3日のジャマイカによる批准により,「経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約」が1976年1月3日発効し,また,1975年12月23日のチェッコスロヴァキアによる批准により「市民的及び政治的権利に関する国際規約」及び「同規約の選択議定書」が1976年3月23日発効することとなつた。

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2. 国連大学

 

 73年の第28回国連総会で東京首都圏内への設置が決定された国連大学本部は,75年6月東京の帝国ホテルから渋谷の東邦生命ビル29階に仮事務所を移転し,同年9月にはへスター学長が東京に正式着任し,以来大学の活動は本格化しつつある。

 75年1月の第4回国連大学理事会において,大学の優先研究領域として,(1)世界における飢餓,(2)天然資源の管理,使用,及び配分,(3)人間,社会開発の3分野が決定されたが,これらの分野につき更に具体的な研究活動内容を策定するため,大学は同年秋東京で専門家会議を開催した。76年1月の第6回国連大学理事会は,専門家会議の報告に基づき,前記(1)の分野については,収穫後の食糧保存等,前記(2)の分野については,新エネルギー源等,前記(3)の分野については開発途上国への技術移転等の問題を大学の優先研究事項として決定し,飢餓の分野についてはグアテマラ及びインドの研究機関と提携することにより研究を行うことになつている。

 大学本部は,76年5月現在,学長以下2人の副学長を含む44名の職員で活動しており,同年末までに職員数を67名に充実する計画である。財政面で

は,76年5月現在,約4,250万ドルの拠出が行われている(このうち4,000万ドルはわが国の2回分の拠出である)。また,76年5月14日,日本国政府と大学本部の諸関係を定めた国連大学本部協定の署名が行われた。

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3. 国際婦人年

 

 第27回国連総会(72年)は,75年を国際婦人年にすることを宣言した。同年を記念する最大の国際行事として国連主催により「国際婦人年世界会議」(6月~7月,於メキシコ・シティ)が開催され,婦人の地位向上をめざし,婦人年の3大テーマでもある平等・発展(開発)・平和への婦人の役割を増すために219項目からなる「世界行動計画」を採択した。その後第30回総会(75年)において,婦人年の趣旨,就中行動計画フォローアップのため76~85年を「国連婦人の10年」とすべきことが決定された。

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