第5節 有償資金協力
2国間政府借款(いわゆる円借款)は,わが国の政府開発援助の過半(74年総支出額の61%)を占め,開発途上国への重要な協力手段となつている。
75年については,金利,期間等条件の緩和,開発途上国(LDC)アンタイイングの進展等,質及び内容に若干の改善がみられたものの,供与総額そのものは,前年に比し約23%の減少となり,72年の実績にほぼ近い水準まで後退した。この理由は大型案件の減少等種々掲げられるが,石油危機以降のわが国の経済,財政事情の悪化が,かかる供与額低下の大きな背景となつていることは否めない。
さらに,質についてみても,若干改善されたとはいえ,これを国際目標,あるいは先進援助諸国の実績と比較する時,まだまだ国際水準に至つていないのが現状であり,量,質,とも今後一層拡大,改善の努力が要請される。
(1) 供与額-減少した実績-
借款供与額は,74年が対前年比69%増と大幅な増加を示したのに対し,75年は逆に前年比23%の減少となつた(第1表参照)。この理由としては主として供与の意図は表明したものの,交換公文締結が76年にずれ込んだものが一部あること,および大型案件が減少したことがあげられる。
交換公文締結ベースで1件当り300億円(約1億ドル)を越える,いわゆる大型案件は,72年4件,73年2件であつたのが,74年には,一挙に6件計2,968億円に達し同年の総供与額の73%を占めた。これが75年には,インドネシアの枠供与(410億円)及びエジプトに対するプロジエクト借款(380億円)の2件に減少している。この結果,年間交換公文締結額は,74年の4,000億円台から,3,000億円台と,72年実績を若干上廻る水準にとどまつた。
(2) 援助条件-ソフト化の漸進-
過去わが国の援助条件は漸進的な緩和が図られてきたが,75年についても借款の平均条件は金利3.20%,償還期間26.1年,うち据置期間8.1年と前年(金利3.45%,償還期間25.1年,うち据置期間7.6年)に比し,相当の改善をみている(第2表参照)。
わが国の政府開発援助を他の先進諸国の援助と比較してみると次の通りである。74年のわが国政府借款の平均条件(貸付契約締結ベース)は,金利3.55%,償還期間23.5年,うち据置期間7.2年で,グラント・エレメント(GE)は47.1%となる。また,贈与を含めた政府開発援助全体のGEは62%となつている。
一方,政府開発援助の援助条件に関する国際目標としては,政府開発援助全体のGEを84%以上とするよう求めたDACの条件勧告(72年採択)がある。主要援助国のGEをみると,スウェーデン99%,カナダ97%,米国90%,仏,英,西独84~88%という緩和された状態にあり,既に74年においてDAC加盟諸国全体の平均では86%と目標を越えている。他の援助国のGEが高い理由は,贈与比率の高いことに求められるが,借款のみをとりあげてもDAC平均で60%に達している。かかる状況からみればわが国の援助条件については,なお相当の緩和努力が必要とされている。
(3) 地理的配分
わが国の政府開発援助は,従来から地理的,歴史的,経済的に密接な関連を有するアジア地域に重点が置かれてきたが,政府借款についても,支出ベースでは全体の81%(75年)がこの地域に供与されている。
しかしながら,これを先行指標である交換公文締結ベースでみると,非アジア地域の占める比率は,72年には14.6%であつたのが,73,74年にはそれぞれ28.3%,27.8%,75年には28.8%へと増加している。このような援助対象地域の拡大は近年のわが国の海外との交流の多岐化,とくに中近東,アフリカ,中南米諸国との関係緊密化を示すものであるとともに多角的な外交を世界的規模で推進するというわが国外交の基本方針を反映したものである。
75年については,74年に比し大きな変化はなく,アジアが71%と依然大宗を占めている。また,中近東については,73年秋の中東戦争,石油危機を契機とし三木特使,中曽根通産大臣,小坂特使の訪問等により,わが国との関係強化,経済協力促進に努めた結果,74年には73年の4%から全体の1/4に達するまで急増したが,75年においても引き続きその水準を維持し,23.9%を占めた。一方,中南米・アフリカは両者あわせて5%にも満たず,伸び悩んでいる。それぞれの伸び悩みの理由は若干異なる。アフリカの場合は,これまでわが国との関係がそれほど深くはなかつたことに主たる理由があり,また中南米の場合は,比較的発展した途上国が多いため,対象国選定の一つの基準として,1人当たり所得水準の高低を重視するこれまでのやり方に主たる理由がある(第3表参照)。
わが国の75年の国別借款供与状況は第4表のとおりで,同年初めて借款を供与したガボン,リベリア,ボリヴィアの3カ国を含め17カ国とほぼ前年(18ケ国)並の供与国数となつた。またわが国の借款対象国は合計45カ国となつた。
国別供与額でみると,やはりアジアの国が多く,とくにインドネシア,インド,韓国,フィリピンの4カ国でアジア全体の72%を占め,これにエジプトを加えると,この5カ国で全体の68%に達する。
第4表 1975年国別政府直接借款供与実績(交換公文締結ベース)
(4) 形態別供与状況-プロジェクト援助中心-
2国間直接借款供与の方式は各種あるが,わが国の行つている借款は,プロジェクト借款,商品借款及び債務救済の3形態に分類される。
プロジェクト借款は,発電所,通信施設,港湾等産業開発基盤整備のための個々のプロジェクトを対象とするものである。商品援助は,国民生活維持に必要な基礎的物資や,経済運営に必要な原材料,機械設備,部品を借款ベースで供与するもので,短期間のうちに実行し得ること,機動的である点が特徴である。債務救済は,開発途上国の国際収支が悪化し,債務の償還が困難となつた際適用されるもので,商業債務の場合は,相手国中央銀行に対し債務返済用の借款を供与し(リファイナンス),既往の政府借款による債務の場合には,その返済期間が延長される(リスケジュール)。
わが国の形態別借款供与状況は第5表に示されるとおり,プロジェクト援助が過半を占めている。75年については,全体に占める比率が前年の86%から65%に急減し,商品援助が10%から25%へと急増しているが,その主たる原因は,プロジェクト借款は内容が固まるのに時日を要するため,かなりの案件の交換公文締結が76年にずれ込んだのに対し,商品援助は手続が比較的簡単に済むため,後者が先行したことによるものと考えられる。
なお,債務救済も増加しているが(4%から10%),これは,インドに対し2年度分(74,75年度)の債務救済を本歴年中に実施したことが主たる原因である。
(5) 供与方式-LDCアンタイイングの進展-
援助のアンタイイングとは,2国間政府借款の場合には,借款を行なう際に資材及び役務の調達先を借款供与国に限定しないことを一般的に意味するものである。アンタイイングにより,被供与国は国際競争価格による調達が可能となり援助資金を効率的に使用できるほか,開発途上国が落札した場合には,当該国の輸出促進にもつながるので,従来より開発途上国から強い希望が出されていた。
わが国は,既に国際機関拠出については全面アンタイ化しているほか,2国間政府借款についても積極的にとり組んできた。実績をみても第6表に示される如くLDCアンタイ化(注)は急速に進展している。とくに74年6月締結されたDAC覚書に従い,75年1月1日から新規にコミットする案件については,全面的にLDCアンタイをオファーすることとなつたこともあり,アンタイイング比率は一層高まつて行くものと予想されている。75年においては全体の39%の案件がタイドとなつているが,これらはいずれも前年までに供与方式についても既に先方と合意済であつたことによるものである。
(6) 実施機関別供与状況
75年実績(交換公文締結ベース)でみると海外経済協力基金が全体の65%,日本輸出入銀行が35%をそれぞれ占めている。
なお,75年6月,基金と輸銀との分野調整に関する覚書が成立し,プロジェクト借款及び商品借款については,継続案件等を除き,50年7月1日以降新規の案件はすべて基金が担当することとなつた。従つて,76年以降輸銀案件は減少するものと思われる。
2. 国別主要案件
(イ) 韓 国
韓国は従来から最も重要な円借款供与対象国の一つであるが,75年には234.2億円の借款が供与されている。これは74年に比較すると約70億円の減少となるものであるが,既に中進国の域に達している韓国に対する経済協力は民間主体の経済協力へ移行すべきであるとの要請が反映されたものといえよう。
わが国の新規借款は農業基盤の拡充及び北坪港の建設に使用されることに合意をみている。前者は,食糧及びその他農業生産の振興に必要な資機材を調達するとともに,見返資金をもつて灌漑事業を行うものであり,後者は,主としてセメント積出を目的とする港の建設を行うものである。これらの事業は,韓国政府が今後の経済諸施策のうちの重要な柱としている食糧増産及び社会間接資本の拡充の目標に沿うものである。この他,75年10月韓国側から,農業振興計画,通信施設拡張計画,忠北線複線化計画及び電動車導入計画につき総額約1.6億ドルの新たな円借款協力要請が行われている。この韓国側要請については日韓実務者の間で検討されることとなつている。
(ロ) インドネシア
インドネシアも従来からわが国の最も重要な援助対象国の一つである。インドネシアに対するわが国の援助は,毎年国際会議(IGGI;Inter-Governmental Group on Indonesia)を通じて行なわれており,IGGI会議で適正な援助所要額と認められる額のうちから国際機関の供与額及び食糧援助額を差引いた部分,即ち二国間非食糧援助の1/3をわが国が分担している。75年5月わが国は上記の方式に基づきIGGIにおいて140百万ドルの借款供与の用意がある旨明らかにした。その後インドネシア側と2国間交渉の結果,10月に至りそれまでにIGGI会議で協力意図を表明した額と併せ616.2億円供与の交換公文を締結した。
(ハ) フィリピン
フィリピンに対する75年の新規円借款供与は,222.9億円となつているが,これは74年12月に開催された第4回フィリピン援助国会議でわが国が協力を約束した商品借款(75億円)及びプロジェクト借款(147.88億円)であり,前者については75年2月,後者については7月及び9月にそれぞれ交換公文の締結を行つた。プロジェクト借款はバターン輸出加工区建設,パシグ河洪水制御及び日比友好道路建設等に使用される予定である。第5回援助会議が75年10月にパリで開催されたが,わが国は今後の借款供与方式については両国で十分検討することとして具体的新規供与額については約束していない。
(ニ) タ イ
わが国は,タイの第3次5カ年計画の実施に協力するため,72年4月に総額640億円にのぼる第2次円借款を供与した。しかるに先の石油危機によるインフレーションの昂進等のため,同計画の実施に必要な外貨の当初見積り9億ドルが14億ドルへと大幅に増加したことに伴いタイ政府は74年10月,わが国に対し応分の円借款の供与方要請を行つた。わが国はタイ側要請を検討の結果75年4月総額168.4億円の第3次円借款を供与する旨タイ側に意図表明を行い10月これに関する公文交換が行われた。対象事業は長距離電話施設拡張,サートン橋建設,チェンマイ上水道建設等である。
(ホ) バングラデシュ
バングラデシュに対する75年の新規円借款の供与は115億円(商品借款)である。本借款は同国経済の窮状に鑑み条件を前回と同様金利1.875%返済期間30年(うち据置10年)とわが国がこれまでに供与した借款のうちで最も緩和されたものとなつている。また75年6月に開催された第2回バングラデシュ援助国会議においても130億円の商品借款を供与する旨約束しており,目下交換公文締結のため両国の関係当局間で協議中である。この他にわが国は71年3月のバングラデシュ(旧東パキスタン)の独立戦争のため一時中断されていたわが国借款による事業計画に対しその継続のための必要所要資金を供与する旨約束している。なおパンダラデシーの独立の結果生じた旧パキスタンに係る債務の引受につき折衝してきた結果、74年12月に至りバングラデシュはわが国に対して74年7月1日以降の時点で自国内に所在するプロジェクトに係わる総額約245億円の円借款残高を同国の債務として引受けることに同意した。その後同債務引受けに係る具体的な取極案文につき両政府間で話合つて来たが75年3月に合意に達し,3月28日にそのための公文の交換が行われ,本件問題は全面的解決をみることとなつた。債務引受けに際して,わが国は債権国会議における合意に従い同債務金額をGE84%の条件で債務繰延べを行つた(具体的な条件は,金利が1%,返済期間が据置期間16年を含む50年である)。
(ヘ) ビ ル マ
ビルマに対する75年の新規円借款の供与は65億円となつている。これは,74年10月に来日したウ・ルイン副首相兼計画財務大臣の援助要請をふまえ,同年11月の田中前総理の訪緬を機会に供与する旨意図表明したもので,75年6月に交換公文の締結を了し,現在貸出実施中である。ビルマに対する商品借款の供与は72年,73年(各年46.2億円)についで3回目である。この借款は近年の石油危機による諸物価の高騰及び深刻な外貨不足による同国経済の窮状に鑑み,金額については前回よりも約19億円増額し65億円に,条件についてもバングラデシュ,ラオスにつぐ最も緩和された金利2.75%,返済期間30年(うち据置10年)となつている。なお主な対象品目は前回と同様,繊維品,機械部品,建設材料,化学品,鉄鋼等である。
(ト) スリランカ
スリランカに対する75年の円借款の供与は45滝円(商品借款)となつている。これは同年4月にパリで開催された対スリランカ援助国会議においてスリランカ側からの援助要請及び同国の深刻な外貨不足の実情,更にスリランカがMSAC(近年の石油価格の高騰を背景とし,最も深刻な経済的影響を受けている国)である点を勘案し供与する旨約束したものであり,前回よりも3億円多い。75年6月30日に交換公文の締結を了し現在貸出実施中である。なお主な対象品目は前回と同様,肥料,鉄鋼,機械類,繊維,電気機器等となつている。
(チ) イ ン ド
インドはパキスタンとともに多額の累積債務をかかえていることに鑑み,わが国は国際収支負担軽減,経済の安定成長達成等の見地から,74年及び75年の対印債権国会議の合意に基づき75年中に121億円と123億円の2回にわたる債務救済措置を行なつた。また,インドの農業工業開発に占める肥料の役割を重視する見地から,74年に引き続き,第14次借款としてパニパット肥料工場に110億円,更に15次分として肥料工場計画に109億円の借款を供与したほか,第14次商品借款として70億円を供与した。これは農機具,肥料,化学製品,機械部品,鉄鋼等の購入に使われることになつている。なお,わが国は75年6月の対印債権国会議で第15次商品借款として70億円の供与を意図表明しており,交換公文締結のため両国政府関係当局間で協議中である。
(リ) パキスタン
わが国はパキスタンに75年中,70億円の商品借款及び約64億円の債務繰延べを行なつた。商品借款は74年12月,アーメド外相が訪日した際,プロジェクト借款(セメント工場)105億円とともに供与を意図表明していたものである。借款は肥料,鉄鋼,機械等,パキスタンの経済開発に必要な資機材の購入に充てられることとなつている。債務救済措置は,74年の債権国会議で合意された74年度より4年間にわたる債務救済スキームに基づくものである。また,バングラデシュの独立に伴う旧東パキスタンに係わる円借款債務について,75年3月,約245億円の債務負担免除の交換公文が締結され,債務振分け問題の最終的解決をみた。
なお,わが国は75年5月の対パキスタン債権国会議で商品借款70億円の供与を意図表明しており,交換公文締結のため両国政府関係当局間で協議中である。
(イ) イ ラ ク
わが国とイラクの間に74年8月,経済技術協力協定及び借款供与に関する交換公文が締結され,混合借款総額2,980億円(円借款745億円,民間借款2,235億円)を加重平均条件5.25%,13年(うち,据置4年)で,イラクの経済開発事業計画のうち,優先六大プロジェクト(化学肥料,セメント,石油化学,アルミニウム,液化石油ガス及び輸出用石油精製)に供与することを約束した。
75年9月,わが国はイラクに初めて円借款を供与することとなり,経済技術協力協定の具体化第1号として,コール・アル・ズバイル化学肥料工場に約873億円(円借款218億円,民借款655億円)を供与した。同肥料工場は,わが国が中近東で実施する大型プロジェクトの第1号であり,イラクの基幹産業育成のため重要な地位を占めるものである。
(ロ) エ ジ プ ト
75年においてわが国はエジプトに対し,73年の第1次商品借款(30.8億円)及び74年の第2次商品借款(75億円)に引続き,4月に第1期スエズ運河拡張計画に対し380億円の円借款を供与した。75年6月スエズ運河が再開されたが,同運河拡張計画は単にエジプト1国の復興,経済開発としての意味にとどまらず,世界経済全体の拡大発展に寄与し,また同運河近隣の中近東諸国にも多大の利益をもたらすものと思われる。
また,75年のエジプト経済は対外赤字が10億ドル程度になると予測されるなど極めて重大な危機に直面したので,わが国のほか米国,西独,サウディ・アラビア及びイラン等の諸国が,エジプト政府の要請をうけて当面する国際収支及び国内経済の危機を打開するため緊急に同国を援助する気運が盛り上つた。わが国は,対中近東外交の重要性及びエジプトの経済安定が日本とエジプト間ひいては中近東諸国との経済関係の増進に必須であるとの観点から,エジプト政府の要請を検討した結果,緊急援助を行うこととした。このため,既に74年2月に三木副総理がハテム同国副首相宛書簡をもつて意図表明を行つたプロジェクト借款150億円,商品借款150億円計300億円の円借款供与のうち商品借款未使用分の75億円(約束済150億円中75億円は前記第2次商品借款として使用済)に新規分75億円を上積みした計150億円の円借款供与に加えて,同じく前記約束済のプロジェクト借款150億円の早期実施に努力する旨意図表明した。これによつて緊急援助として300億円が実施されることとなるが,このうち150億円の商品借款の供与については,75年10月第3次商品借款として交換公文が締結された。
150億円のプロジェクト借款については,エジプト政府より74年9月アレキサンドリア港拡張計画(デヘイラ新港建設)及びカイロ市上下水道計画に充当したい旨要請越した。前者に関し先方は75年11月本件計画を変更し,アレキサンドリア港改修計画に円借款を充当したい旨正式に再要請越したので,現在わが方政府部内で検討中である。また後者に関しては,75年11月カイロ上水道のマスター・プラン作成と緊急対策事業計画策定のため調査団が派遣された。
わが国のアフリカ諸国(サハラより南のいわゆるブラック・アフリカ地域)に対する円借款は,66年にウガンダ,タンザニア,ケニア及びナイジェリアに始めて供与され,その後中断した後,72年以降毎年若干ずつ新規供与が行なわれてきている。しかし,一般に,わが国とアフリカ諸国との政治的経済的関係は,わが国とアジア諸国のそれに比較し必ずしも深いものではないことから,有償資金協力の実績は全体からみれば大きなものではない。
75年においてはリベリア,ガボン,ケニアの3カ国に対し,交換公文締結ベースで合計97億円の円借款を供与した。同年の円借款総額に占める割合は3.1%であり,これは74年のそれぞれ73億7百万円,1.8%と比較して大きな変化はない。
リベリアに対しては,わが国初めての借款として18億円を供与した。この借款は,国連電気通信連合(ITU)が国連開発計画(UNDP)の援助の下に推進しているパン・アフリカン・ネットワーク・プロジェクトの一環であるマイクロ通信施設整備にあてて,国内・国際通信の飛躍的な改善を目的とするものである。
次に,ガボンには,初めての借款として,トランス・ガボン鉄道建設計画に対し,30億円の供与を行つた。同鉄道建設計画は,木材,マンガン,鉄,ウラン等資源の豊富なガボン国内を横断する最終的には延長約1,015キロメートルにわたる鉄道の建設を内容とするもので,同計画に対しては,わが国のほか,仏,米国,西独,カナダ・FED(欧州開発基金)等が借款供与を約束している。なお,わが国借款は,同計画の第1期分のうちの貨車購入計画を対象としている。
また,ケニアについては,第3次借款49億円をモンバサ島とケニア本土北部間を連絡する新ニアリ橋建設計画に対し供与し,ケニア経済開発のための交通基盤の強化に資することとしている。
75年中交換公文が締結された対中南米借款は,パラグアイの通信施設建設プロジェクト及びボリヴィアの道路建設プロジェクトを対象とするものである。
パラグアイの通信プロジェクトはマイクロウエーブ網建設と衛星通信地上局建設の2つのプロジェクトを内容としている。前者は,首都アスンシオンとブラジル及びアルゼンティン各々の国境との間に延長約660kmの2回線のマイクロウエーブ網を建設し,パン・アメリカン・マイクロウエーブ網の一環として国際接続される。後者は,アスンシオン郊外に大西洋衛星向け地上局及び首都に国際電話交換システムを建設するものである。
ボリヴィアの道路プロジェクトは,首都ラパスの北東部にあるベニ州開発を目的としラパスから同州へ延びる路線の延長上に約184kmの開発道路を建設するものである。ボリヴイアでは,豊かな天然資源を埋蔵しているとされながら開発が遅れている低地平原地域を総合的に連結する道路網の整備が,今後の同国経済発展の重要なポイントの一つとされており,同国政府は,このため14本の開発道路建設計画を策定している。本件プロジェクトはこの中でも最もプライオリティーの高いものである。なお,ボリヴイアに対する今回の借款は中南米地域におけるわが国最初のLDCアンタイド借款である。
調達先をすべての先進国,開発途上国に開放するための中間的措置として考えられたもので,調達先を供与当該国及びDACの定める開発途上国又は地域とするもの。 |