4. その他の重要外交文書等

 

(1) エジプト・イスラエル兵力引離し協定(仮訳)

1974年1月18日調印

 

A.  エジプトとイスラエルは,国連安全保障理事会によって要求された陸,海,空における停戦を忠実に守り,本文書に調印した時から,相互のすべての軍事または準軍事的な行為を抑制する。
B.  エジプトとイスラエルの軍隊は,次の原則に従って引離される。
1.  スエズ運河東岸の全エジプト軍は添付した地図に明示されたA線の西側に展開する。スエズ運河とビター湖の西側にいるイスラエル軍を含む全イスラエル軍は,地図に明示されたB線の東側に展開する。
2.  エジプトとイスラエルの軍隊の間にある地域は兵力引離し地帯とし,国連緊急軍(UNEF)が駐留する。UNEF は,ひき続き安全保障理事会の非常任理事国である諸国からの部隊で構成する。
3.  エジプト前線とスエズ運河の間の地域は武器および兵力を制限される。
4.  イスラエル前線(付属地図のB線)と付属地図でC線と指示されたギディおよびミトラ峠のある山の西側に沿って走っている線との間の地域は,武器および兵力を制限される。
5.  第3項および第4項で言及した制限は国連緊急軍によって査察される。エジプトとイスラエルの連絡将校を緊急軍に付属させることを含む現行手続きは継続される。
6.  双方の空軍は,相手方の干渉をうけることなくそれぞれのラインまで行動することができる。

C.

 兵力引離しの細目にわたる実施は,エジプトとイスラエルの軍事代表がこの作業の各段階について合意した上で行われる。両軍事代表はこの目的のために国際連合の庇護の下に(カイロースエズ間道路)101キロメートルの地点においてこの協定の調印後48時間以内に会合する。

 両軍事代表は,この作業を5日以内に終了する。兵力引離しは,両軍事代表の作業終了後、48時間以内に始め、かつ,どのようなことがあっても本協定調印後,7日を越えてはならない。引離し作業は,開始後,40日を越えないで終了する。

D.  本協定は,エジプトとイスラエルによって恒久的な平和協定とは見做されない。これは,安全保障理事会決議338の規定に従い,かつジュネーブ会議の枠内で,最終的な公正かつ,永続的な平和へ向かっていく第一歩をなすものである。

 

目次へ

 

 

(2) イヌラエル・シリア間兵力引離し協定(仮訳)

 

1974年5月31日調印

 

A.  イスラエルおよびシリアは,1973年10月22日の国連安保理事会決議338を履行するため,この文書の調印の時点から陸,海,空における停戦を忠実に守り,相互すべての軍事行動を抑制する。

B. イスラエル軍とシリア軍は以下の原則に従って引離される。
  1.

 全イスラエル軍はこの文書の付属地図にラインAと明示されたラインの西側に位置する。ただしクネイトラ地域では例外としてラインA-1の西側に位置する。

  2.

 ラインAの東側領域はシリアの行政下におかれ,シリア住民はこの領域に復帰する。

  3.

 ラインAと,付属地図にラインBと明示されたラインとにはさまれた地域は引離し地域となる。この引離し地域には付属議定書に従って設立される国連引離し監視軍が駐留する。

 

4.  全シリア軍は付属地図にラインBと明示されたラインの東側に位置する。
5.  合意された如くラインAの西側およびラインBの東側にそれぞれ同面積の軍備および兵力の制限地域を設定する。
6.  双方の空軍は相手方の干渉を受けることなくそれぞれのラインまで行動することが許される。
C.  付属地図のラインAとラインA-1の間の地域には軍隊をおいてはならない。
D.  本協定および付属地図は,イスラエルおよびシリアの軍事代表によって遅くとも1974年5月31日までにジュネーブで調印される。調印は国連主宰のエジプト・イスラエル軍事作業部会で,まずシリア軍代表の同部会加入後,米国およびソ連の代表の参加を得て行われる。正確・詳細な地図の作成および兵力の引離し実施計画はエジプト・イスラエル軍事作業部会においてイスラエルおよびシリアの軍事代表により作成され,その過程の各段階で合意するものとする。同作業部は,本協定署名後24時間以内に,ジュネーブにおいて国連主宰のもとにこの目的のための作業を開始する。同部会はこの仕事を5日以内に完了する。兵力引離しは軍事作業部会の仕事の完了後24時間以内に開始する。兵力引離し作業は開始後20日以内に完了するものとする。
E.  A,BおよびCの各項の規定は,本協定に基づく国連兵力引離し監視軍を構成する国連要員によって査察されなければならない。
F.  ジュネーブにおける本協定の署名後24時間以内に,双方が抑留し,国際赤十字委員会によって証明されている戦傷捕虜はすべて送還される。軍事作業部会の仕事が完了した翌朝,残余の捕虜全員が送還される。
G.  双方が保管する戦没兵士の遺体はすべてそれぞれの本国に埋葬するため,本協定調印後10日以内に送還される。
H.  本協定は平和協定ではなく,1973年10月22日の安保理事会決議338に基づく公正かつ永続する平和への第1歩である。

 

目次へ

 

(3) 「大西洋関係に関する宣言」テキスト(仮訳)

 

(1974年6月19日オタワにおけるNATO閣僚理事会にて採択,6月26日ブラッセルにおけるNATO加盟国首脳会議で正式署名)

 

1.

 北大西洋同盟加盟国は,加盟国の自由と独立を守るため25年前に署名された条約は加盟国が共通の運命を有することを確認して来たことを宣言する。

 同条約の保護の下で,同盟国は安全保障を維持して来た。これにより同盟国がその文明の遺産である諸価値を保存し,かつ西欧がその荒廃から立直り,西欧統合の基礎を築くことが可能となった。

2.  同盟加盟国は北大西洋条約が加盟国の安全保障のための不可欠の基盤を提供し,それにより緊張緩和の追求が可能となっているとの信念を再確認する。加盟国は,緊張緩和と国家間の調和に向ってこれまでに遂げられた進歩と,現在欧州及び北米の35カ国の会議が欧州における安全保障と協力とを増大させるための指針を定めるべく努めつつある事実を歓迎する。加盟国は全面的,完全な且つ管理された軍縮一これのみがすべての国に真の安全保障をもたらし得るーを実施し得る情勢が生まれるまでは,加盟国を結ぶ絆を維持しなければならないと確信する。加盟国は軍事支出が加盟国国民に課す負担を軽減したいとの共通の願望を有する。しかしながら,平和の維持を望む諸国が,自らの安全保障を軽視してかかる目標を達成し得たためしはないのである。
3.  同盟加盟国は加盟国の共同防衛は一体かつ不可分であることを再確認する。北大西洋条約適用地域における1ないし複数の加盟国に対する攻撃は全加盟国に対する攻撃とみなされる。共通の目的は同盟加盟国の独立又は領土保全を脅かす外部勢力のいかなる企てをも防止することである。このような企ては同盟の全加盟国の安全保障を危険に陥れるのみならず,世界平和の基礎をも脅かすものである。
4.  加盟国は同時に,加盟国の共同防衛に影響を与える情勢がこの10年間に大きく変化したことを認識する。即ち,米国とソ連の間の戦略上の関係はほぼ均衡点に達した。この結果,全同盟諸国は攻撃に対し依然として脆弱ではあるが,全同盟諸国がさらされている危険の性格は変化した。こうして,欧州防衛における同盟の諸問題は従来と異なり,かつますます独特の性格を帯びるようになった。
5.  しかしながら,北大西洋条約を生み出した情勢の基本的要因は変化していない。全同盟国が共同防衛に当たるとの約束が外部からの侵略の危険を減少させてはいるが,欧州と米国におかれた米国の核戦力と北米軍の欧州駐留が同盟全体の安全保障に対し果す貢献は依然として不可欠である。
6.  それにもかかわらず,同盟は同盟が欧州地域でさらされている危険に対し十分注意を払い,かつかかる危険を避けるために必要なあらゆる措置を執らねばならない。北大西洋同盟に加盟する欧州諸国は欧州における同盟の在来兵力の4分の3を提供し,かつ同盟諸国の2国は,抑止力としての独自の役割を果しえ,同盟の抑止力の全面的強化に貢献する核戦力を保有している。かかる力を持つ同盟欧州諸国は,同盟加盟国の独立と領土保全に対するあらゆる行動を抑止しかつ必要な場合これを撃退し得る水準に共同防衛を維持するために必要な貢献を行うことを引受ける。
7.  米国としては,米国の同盟諸国の自由を剥奪するような政治的又は軍事的外圧にその同盟諸国をさらすこととなる如何なる事態をも容認しないとの決意を再確認し,かつその同盟諸国と共同して,抑止戦略の信憑性を維持するために必要な水準に在欧兵力を維持し,また抑止が失敗した場合には北大西洋地域を防衛し得る軍事能力を維持するとの決意を表明する。
8.  この関連において,同盟加盟国は,いかなる防衛政策の究極的目的も,潜在的敵性国が武力紛争を通じて種々の目標を達成せんとするのに対して,かかる試みを拒否することにある以上,必要な全兵力がこの究極的目的のために使用されることを確認する。従って,同盟国は同盟国の政策の主要な目的は戦争の危機を減少するような諸協定の作成に努めることであることを再確認する一方,かかる協定は攻撃を受けた場合に同盟諸国が自らの有する全兵力を共同防衛のために使用する自由を制限するものではないことを表明する。同盟諸国は,かかる兵力使用の行動を賭するとの決意が依然として全ての形の戦争を防止する上での最善の保証であると強く確信する。
9.  同盟の全加盟国はカナダ軍と,相当程度の米軍が引続き欧州に駐留することは欧州のみでなく北米の防衛にもかけ替えのない役割を果すことに意見の一致を見ている。同様に,同盟の欧州諸国の相当程度の兵力は欧州のみでなく北米の防衛にも役立っている。また,欧州共同体加盟国が実現への決意を固めている統合に向っての一層の進展は,同盟の共同防衛に対する欧州共同体加盟国の貢献にやがて有益な効果をもたらすであろうことが認識された。さらに,同盟加盟国が国際的安全保障並びに世界平和に対し果す貢献は非常に重要なものであると認められる。
10.  同盟加盟国は,その共同防衛確保のための努力を結集しようとの意志を持っている以上,その兵力の能率を維持,改善しなければならず,また各加盟国は同盟の機構内で各々が果して来ている役割に応じて,全体の安全保障を維持するための負担の適正な割合を分担すべきであると考える。逆に,同盟加盟国は,現在進行中の交渉又は将来の過程において,各国の安全を低減するようなことは一切受入れるべきでないと考える。
11.  加盟国は共通の目標達成のためには緊密な協議,協力,相互信頼を維持することが必要であり,これにより防衛に必要であり緊張緩和にとり好ましい諸条件一両者は補完的であるーを育成し得ると確信する。加盟国間の関係を特徴づける友好,平等及び連帯の精神により,加盟国は,同盟の加盟国としての共通の関心に関係する事項について,これらの関心事項が世界の他の地域の事件によって影響され得ることに留意しつつ,適当とみられるあらゆる方法で,相互に充分に通報し合い,また率直かつ時宜に合った協議の慣行を強化するとの決意を固めている。加盟国はまた,加盟国にとって枢要な安全保障関係が調和のとれた政治的,経済的関係によって支えられるようにして行くことを希望する。とりわけ加盟国は,各自の経済政策の間の紛争の原因を除去し,相互の経済的協力を促進するため努力する。
12.

 加盟国は加盟国の共有の精神的遺産の成果である,民主主義,人権の尊重,正義と社会発展の諸原則に対する忠誠を宣言して来たことを想起し,加盟国はそれぞれの国内におけるこれらの諸原則の適用を発展,かつ深化させる意図を宣言する。これら諸原則は本質的に世界平和の増進と相容れない手段に訴えることを禁ずるものであるから,同盟加盟国は自らの独立を守り,安全保障を維持し,国民の生活水準向上を目指す努力は,何人に対するものであれ,あらゆる形の侵略をも排除するものであり,また如何なる他の国にも敵対するものではなく,かつ国際関係の全般的改善をもたらす意図に出るものであることを再確認する。

 欧州においては,同盟加盟国の目標は依然として欧州のすべての国との理解と協力を探求することである。世界全体においては,同盟各加盟国は発展途上国を援助する義務を有することを認める。いずれの国も開放的かつ公平な世界体制において技術的進歩を享受し得ることはすべての国の利益である。

13.  加盟国は,同盟の団結が同盟加盟国政府間の協力においてばかりでなく,同盟諸国民により選出された代表者間の自由な意見交換においても,表明されてきたことを認める。従って,加盟国は議会人間の関係強化に対する支持を宣言する。
14.  同盟加盟国は,北大西洋条約署名25周年のこの年にあたり,条約の目的及び理想への献身を改めて誓う。加盟国は,加盟国国民が直面する挑戦に耐え得る十分な活力と創造力を有しているとの確信を持ちつつ,未来を指向するものである。加盟国は,自らが建設を決意している永続的な平和構造の基本的要素として,北大西洋同盟が機能し続けるとの信念を宣言する。

 

目次へ

 

 

(4) ニクソン大統領訪ソの際の米ソ共同コミュニケ(要旨) 

 

(1974年7月3日)

 

I

 米ソ関係改善での進展

 双方は,両国首脳間の会合が確立された慣行になりつつあり,二国聞及び国際間の諸問題解決に貢献している旨指摘した。

 双方は,平和共存と同等な安全の原則に立ち米ソ関係を再形成し,かつ両国関係改善の過程を逆転しがたいものにするとの決意を確認した。

 双方は,今後とも戦争,特に核戦争の危険の除外,全面完全軍縮を最終目的とする軍備,特に戦略兵器競争の停止,国際緊張源の除去,全世界の緊張緩和促進,貿易・経済・科学技術・文化の分野における協力の発展を促進する。

II

 戦略兵器の一層の制限及びその他の軍縮問題

 双方は戦略攻撃兵器に関する暫定協定が戦略兵器の制限に関する合衆国とソ連邦との間の新しい協定により継続されるべきとの結論に達した。双方は,かかる協定は1985年までの期間を対象とし,量的及び質的両方の制限を取り扱うべきである旨意見の一致を見た。双方は,かかる協定は暫定協定の期限満了前の出来る限り早い期期に締結されるべきである旨意見の一致を見た。双方の代表団は,首脳会談による指示を基礎に,極く近い将来に,ジュネーブにおいて,再会する。

 双方は,1972年5月に締結されたABMシステムの制限条約により2地域認められていたABMの配備を1地域に制限する議定書に署名した。同時に,  「戦略攻撃兵器の再配置,解体又は破壊,及びそれらの通告に関する手続」と「ABMシステムとその構成部分の再配置,解体又は破壊,及びそれらの通告に関する手続」の2つの議定書が署名された。

 双方は,1963年の核実験禁止条約の歴史的意義を指摘し,包括的核実験停止の目的達成のための重要な一歩として,地下における一定規模以上の核実験を1976年3月31日以降制限し,その他の地下核実験を最少限とする条約を締結した。

 双方は,NPTの重要性を強調し,その効果の増大に賛意を表明した。

 双方は,軍事目的のための環境改変技術の使用の危険を克服するための有効な措置をとるとの共同声明に署名した。

 双方は,化学兵器のごとき大量破壊兵器を除去すべき国際条約に関心を示し,その一歩として,軍縮委員会において,化学戦争の最も危険な,致死的手段を対象とした国際取極の締結に関して共同イニシアティヴを取るよう考慮することに合意した。

 双方は,適当な時期における世界軍縮会議の開催が,戦争を除去し,世界平和を保証するために積極的役割を果すであろう旨を再確認した。

III

 国際問題の解決における進展

 双方は,緊張緩和,平和の強化,互恵の協力が国際情勢の発展の中で顕著になってきたことに満足の意を表明した。

 双方は,完全なる平等と互恵に基づき,大小すべての国家間の幅広く,実りある経済協力に賛意を表明し,このために個別に,かつ,共同して貢献する決意を確認した。

欧 州

 双方は,全欧安保会議の成功裡の終了は,恒久平和の達成にとり大きな出来事となるとの確信を表明し,会議の最終段階の早期開催に賛意を表明した。

 双方は,欧州の安定と安全強化のために,同大陸における政治的緊張の緩和が,軍事的緊張を減少させる手段を伴わなければならないと信じ,中央欧州における兵力相互削減交渉に重要な意義をおくとともに,同交渉が全ての国の安全を確保し,一方的な軍事的優位を阻止する具体的決定を生むようにとの希望を表明した。

中 東

 双方は,中東における戦争と緊張の危険を除去することは,最高に重要かつ緊急なものであることを確信し,その唯一の措置は,国連安保理決議第338号に基づき,パレスチナ人民を含む中東の全人民の合法的な利益及び同地域の全国家の生存権を考慮に入れた公正かつ恒久的平和解決の達成であると確信する。

 双方は,このためにジュネーブ和平会議が出来るだけ早く再開されることが重要であると考える。

 双方は,中東の平和的解決に向けた両国の努力を調整するため密接な接触をとり続けることに合意した。

インドシナ

 双方は,ヴイエトナム情勢に関する意見交換において,同地域における平和と安定は,1973年1月27日付パリ協定の諸規定及び1973年3月2日付のヴイエトナム国際会議決議のすべての関係国による厳格な遵守に基づいてのみ確保され強化されることを強調した。

 ラオスに関し,双方は,連合政府の形成の結果による情勢の正常化の進展に注目した。双方は,また関係協定の厳格な実施に賛意を表明した。

 双方は,また外部よりのいかなる干渉なしに自由及び独立の発展へのカンボディア人民の主権的権利の尊重に基づいたカンボディア問題の早期かつ公正な解決が必要であることを強調した。

国連の役割の強化

  双方は,憲章の遵守に基づき国連の機能向上のための努力を継続する。

IV

 貿易経済関係

 両首脳は,米ソ貿易経済関係が米ソ関係全体の重要な一部分である旨を再確認し,昨年来の米ソ貿易の急増に満足の意を表明した。

 双方は,大規模なプロジェクト遂行のための米ソ当事者間の長期的協力の分野での一定の進展を指摘し,この協力が両国の経済関係の重要な一部分であるとの確信を表明した。双方は,米ソ当事者間でトラック工場,貿易センター,化学肥料等の若干のプロジェクトに関して進展がみられたことを考慮し,米ソ当事者間で然るべき取極が締結,実施されることを促進(エンカレッジ)することに合意した。双方は,パルプ・製紙,木材,鉄及び非鉄金属,天然ガス,機械工業,高エネルギー含有鉱物の採取及び精製等の分野における然るべき契約の締結の可能性を指摘した。

 双方は,引続き貿易,経済関係の成功裡の発展のための好ましい条件をつくるとの希望を表明し,1972年10月の米ソ貿易協定の出来る限り速やかな発効に関心を有する旨確認した。

 双方は,今回締結された長期経済産業技術協定が両国関係強化の重要な要素である旨確信している。

 双方は,1972年10月の海運協定の失効の前に新協定を結ぶ意向を表明した。

V

 両国関係の他の分野における進展

 双方は,1972年から73年に結ばれた諸実務協定による協力が米ソ関係の発展に寄与したことに満足の意を表明し,これをさらに拡大,深化するため努力するとともに,新しい分野で協力することとした。

 エネルギー開発研究,住宅等建設,人工心臓開発に関する3の協定が締結された。

 宇宙協力(1975年7月に予定されているアポロとソユーズのドッキングの後も諸々の協力を進める),運輸(磁力浮上列車の開発等での協力),環境保全(動植物保護区等の設置),文化交流(博物館の相互交流等),新領事館の設置(二,三の領事館の増設に合意,第一歩としてニューヨークとキエフに開設)の諸分野で協力を進めることに合意した。

 双方は,首脳会談を定期的にまた緊急必要な場合に行うとの合意を再確認し,密接な接触と協議を続ける用意を表明した。

 ニクソン大統領は,ブレジネフ書記長に1975年に訪米するよう招待し,招待は受諾された。

 

目次へ

 

 

(5)  地下核兵器実験の制限に関するアメリカ合衆国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の条約(仮訳)

(74年7月3日モスクワにて署名)

 

 アメリカ合衆国とソヴィエト社会主義共和国連邦(以下締約国という)は,できる限り早い期日に核軍備競争の停止を達成し,戦略兵器の削減,核軍縮及び厳重かつ効果的な国際的管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小に向って効果的な措置をとるとの意図を表明し,

 1963年の大気圏内,宇宙空間及び水中における核兵器実験を禁止する条約の締約国がその前文において表明した,核兵器のすべての実験的爆発の永久的停止の達成を求め,その目的のために交渉を継続する旨の決意を想起し,

 地下核兵器実験を更に制限するための諸方法を採用することがこれらの目的の達成に貢献し,又平和の強化の利益と国際緊張の一層の緩和に合致することに注目し,

 大気圏内,宇宙空間,及び水中における核兵器実験を禁止する条約と核兵器の不拡散に関する条約の目的と原則を遵守することを再確認し,

 以下のとおり協定した。

第1条

1.  各締約国は,1976年3月31日以降,その管轄又は管理の下にあるいかなる場所においても,150キロトンをこえる威力を有する地下核兵器実験を禁止及び,防止すること,並びに実施しないことを約束する。
2.  各締約国は,自国の地下核兵器実験の回数を最少限に制限する。
3.  締約国は,すべての地下核兵器実験停止の問題の解決を達成するため交渉を継続する。

第2条

1.  本条約の規定を遵守することの保障を確保するために,各締約国は,一般的に認められた国際法の諸原則の範囲内で,国内的技術検証手段を用いる。
2.  各締約国は,他の締約国が第1項に従って実施している当該他の締約国の国内的技術検証手段を侵害しないことを約束する。
3.  本条約の規定の目的と実施を促進するために,締約国は,必要に応じて相互に協議し,照会し,かかる照会に応じて情報を提供する。

第3条

 本条約の規定は,締約国によって平和目的のために実施される地下核爆発には拡大適用されない。平和目的のための地下核爆発は,出来る限り早い時期に締約国によって交渉され且つ締結されるべき協定によって規定される。

第4条

 本条約は,各締約国の憲法的手続に従って批准されなければならない。本条約は,批准書の交換の日に発効する。

第5条

1.

 本条約は5年間有効である。

 第1条第3項に規定された目的を実施するための協定によって早期に代替されない限り,本条約は,引き続いて5年の期間ずつ延長される。ただし,条約の有効期間満了に先立つ6カ月以前に,いづれかの締約国が他の締約国に対して条約の終了を通告するときは,この限りでない。

 この有効期間満了前に,締約国は,必要に応じて,本条約の本質に係る状況について考慮するため,及び本条約の条文に対して可能な修正を提起するために協議を行うことができる。

2.  各締約国は,本条約の対象である事項に関連する異常な事態が自国の至高の利益を危うくしていると認めるときは,その主権の行使として,本条約から脱退する権利を有する。当該締約国は,他の締約国に対し本条約からの脱退に先立つ6カ月前にその決定につき通知するものとする。その通知には,これを通知する締約国が自国の至高の利益を危うくしていると認める異常な事態についても記載しなければならない。
3.

 本条約は,国連憲章第102条の規定に従って登録する。

 1974年7月3日モスクワにおいて,いずれもひとしく正文である英語,及びロシア語による本書2通を作成した。

 

  アメリカ合衆国のために 

アメリカ合衆国大統領

リチャード・ニクソン

ソヴィエト社会主義共和国連邦のために   ソ連共産党中央委員会書記長

L.I.ブレジネフ

        

   目次へ

 

 

(6)  地下核兵器実験の制限に関するアメリカ合衆国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の条約の議定書(仮訳)

(74年7月3日モスクワにて署名)

 

 アメリカ合衆国とソヴィエト社会主義共和国連邦(以下締約国という)は,地下核兵器実験を制限することに合意して,以下のとおり協定した。

1.  条約に基づく締約国の義務の遵守の検証を国内的技術手段によって確保するために,締約国は,相互主義に基づいて,以下のデータを交換する。
a  各実験場の境界及びそのなかにおける地球物理学的に明確な実験区域の境界の緯度・経度
b  実験場の実験区域の地質に関する情報(地質構造の岩石特性及び岩石の基本的物理属性,即ち密度,地震波速度,水の飽和度,有孔性及び地下水面の深度)
c  実施された地下核兵器実験の緯度・経度
d  地下核兵器実験が実施されてきており,今後も実施されることになっている地球物理学的に明確な各実験区域についての検定を目的とする2回の核兵器実験の威力,日付,時刻,深度及び緯度・経度。これとの関連で,検定を目的とするかかる爆発の威力は,条約第1条に規定されている上限に可能な限り近く,その上限の10分の1以下のものであってはならない。検定を目的とする2回の実験についてのデータが明らかでない実験区域の場合には,既に入手可能であれば,上に述べた如き1回の実験に関するデータを交換するものとし,今一つの実験に関するデータについては,上述の範囲の威力をもった別個の実験が行われた後,可能な限り速やかにこれを交換するものとする。本議定書の規定は,締約国が検定のみの目的で実験を行うことを要請するものではない。
2.  締約国は,相互主義に基づいて批准書交換の前に第1項a,b及びdにいうデータに習熟する機会を相互に提供することを念頭におきつつこれらのデータの交換が条約第4条に規定されている条約批准書の交換と同時に行われるべきことに合意する。
3.

 もし一方の締約国が条約の発効後に新たな実験場又は実験区域を設定するときは,第1項a及びbによって要請されているデータは,当該実験場又は区域の使用に先立って,これを他の締約国に通報するものとする。第1項dによって要請されているデータについても,既に入手可能であるならば,当該実験場又は区域の使用に先立ってこれを通報するものとする。

 もしそれらのデータがまだ不明であるならばそれらが取得された後,出来る限り速やかにこれを通報するものとする。

4.  締約国は,各締約国の実験場が自国の管轄又は管理の下にある地域に設定されること及び,すべての核兵器実験が第1項に従って特定された実験区域内でのみ実施されることに合意する。
5.

 条約の目的のために,特定された実験場におけるすべての地下核爆発は,核兵器実験とみなされ,かつ核兵器実験に関する条約のすべての規定に従う。条約第3条の規定は,特定された実験場以外で実施されるすべての地下核爆発に適用され,かつ,かかる爆発についてのみ適用される。

 この議定書は条約の不可分の一体であると見做される。

   1974年7月3日にモスクワで作成した。

アメリカ合衆国のために

  アメリカ合衆国大統領

  リチャード・ニクソン

ソヴエィト社会主義共和国連邦のために   ソ連共産党中央委員会書記長

    L.I.ブレジネフ

 

目次へ

 

(7)  弾道ミサイル迎撃ミサイル・システムの制限についてのアメリカ合衆国とソヴィエト社会主義共和国連邦の間の条約に関する議定書(仮訳)

(1974年7月3日モスクワにて署名)

 

 アメリカ合衆国及びソヴィエト社会主義共和国連邦(以下締約国という)は,1972年5月29日に署名されたアメリカ合衆国とソヴィエト社会主義共和国連邦の間の関係に関する基本原則に引き続いて,

 1972年5月26日に署名された弾道ミサイル迎撃ミサイル・システムの制限についてのアメリカ合衆国とソヴィエト社会主義共和国連邦の間の条約(以下条約という)の目的を発展させることを願望して,

 戦略兵器の制限のための一層の措置を採ることが国際の平和と安全の強化に貢献するという両締約国の信念を再確認して,弾道ミサイル迎撃ミサイル・システムの一層の制限が戦略攻撃兵器を制限するより完全な措置に関する恒久的な合意を得るための作業の完成に対してより好ましい条件をつくり出すとの前提に立って,次のとおり合意した。

 第1条

1.  各締約国は,将来いずれかの一つの時点で,弾道ミサイル迎撃ミサイル(ABM)システム又はその構成部分の展開を条約第3条で規定されている2地域から1地域へと制限されるものとし,従って,この議定書の第2条に従って行われる認められた1地域の他の地域への転換の場合を除き,ABMシステム又はその構成部分を条約第3条によって認められた2つのABMシステム展開地域のうちの他方の地域に展開する権利を行使しないものとする。
2.  従って,この議定書の第2条で認められる場合を除き,アメリカ合衆国は,ABMシステム又はその構成部分を条約第3条(A)で認められている首都を中心とした地域に展開しないものとし,ソ連邦は,ABMシステム又はその構成部分を条約第3条(B)で認められている大陸間弾道ミサイル(ICBM)のサイロ発射基の展開地域に展開しないものとする。

 第2条

1.  各締約国は,1977年10月3日から,1978年10月2日までのあいだ,又はその後は,条約第14条で定められている条約の定期的再検討の年であって,5年の間隔で始まるいずれの年においても,建造の開始に先立って,常設協議委員会によって合意された手続に従って通告が行われるという条件のもとに,現在展開されている地域のABMシステム及びその構成部分を解体又は破壊し,ならびにABMシステム又はその構成部分を条約第3条で認められた代替地域に展開する権利を有する。この権利は一回だけ行使することができる。
2.

 従って,そのような通告に際しては,合衆国はICBMサイロ発射基の展開地域にあるABMシステム及びその構成部分を解体又は破壊し,ならびにABMシステム又はその構成部分を条約第3条(A)で認められているその首都を中心とする地域に展開する権利を有し,ソ連邦は,その首都を中心とする地域のABMシステム及びその構成部分を解体又は破壊し,ならびにABMシステム又はその構成部分を条約第3条(B)で認められているICBMサイロ発射基のある地域に展開する権利を有する。

3.  ABMシステム又はその構成部分の解体若しくは破壊及び展開ならびにそれらの通告は,条約第8条及び常設協議委員会で合意される手続きに従って実施されるものとする。

第3条

  条約によって定められた権利及び義務は引き続き効力を有し,この議定書によって変更された範囲を除き,締約国によって遵守されなければなならい。特に,選定された地域内でのABMシステム又はその構成部分の展開は,条約で定められた基準及びその他の要件によって引き続き制限される。

 第4条

 この議定書は,各締約国の憲法上の手続きに従って批准されなければならない。この議定書は,批准書の交換の田こ効力を生じ,その後は,条約の不可分の一体であるとみなされる。

  1974年7月3日モスクワでいずれも等しく正文である英語及びロシア語の2通を作成した。

     アメリカ合衆国のために

   アメリカ合衆国大統領

   リチャード・ニクソン

  ソヴィエト社会主義共和国連邦のために

  ソヴィエト共産党中央委員長

  L.I.ブレジネフ

 

   

   

目次へ

 

(8) フォード米大統領の訪韓に際しての米韓共同声明(仮訳)

 

(11月22日ソウル)

 

 朴正煕韓国大統領の招請により,ジェラルド・R・フォード米国大統領は,現下の国際情勢に関し意見を交換し,両国が共通の利益と関心を有する事項について討議するため,1974年11月22日と23日,韓国を訪問した。

 訪問中,両大統領は2回にわたり会談した。この会談には金鍾泌国務総理,ヘンリー ・キッシンジャー国務長官,金東祚外務部長官,金正濂大統領秘書室長,リチャード・L・スナイダー大使,咸乗春大使およびその他の両国政府高官が出席した。フォード大統領は,また韓国に駐屯している米軍を訪問した。フォード大統領は,顕忠塔に献花した。同大統領は,また故朴正煕大統領夫人の墓地を参拝し,朴大統領に対し同夫人の悲劇的,かつ,不慮の逝去につき,深甚な弔意を表した。

 両大統領は,両国間の強い友好と協力のきずなを再確認した。両者は,韓米両国の関係を特徴づけている安全保障問題およびその他の共通の利益を有する諸問題についての緊密な協力と定期的な協議を引き続き行うことに合意した。

 両大統領は,近年のアジア情勢における著しい政治的および経済的変化に留意した。両者は,この地域の盟邦国がより強力かつ豊かになりつつあり,この地域の安全保障のみならずそれぞれの国の安全保障のためにますます貢献していることを認めた。フォード大統領は,米国は太平洋国家としてアジアおよび太平洋地域に大きな関心を有しており,この地域の平和と安全を確保するため,最善の努力を継続する旨を説明した。朴大統領は,そのような目的を指向する米国の政策に対し,理解と全幅的な支持を表明した。

 朴大統領は,朝鮮半島の緊張を緩和し,平和を確立し,窮極的には朝鮮の平和的統一をもたらす目的で行われている北朝鮮との対話を維持するための韓国の努力について説明した。朴大統領は,北朝鮮当局がこれまで誠意をもってこれに応じていないにもかかわらず,韓国は引き続き対話を追求する意向であることを確認した。フォード大統領は,米国は韓国のかかる努力を引き続き支持することを保証し,韓国の建設的なイニシアティヴについて,すべての関係者による積極的な反応が得られるようにとの希望を表明した。

 両大統領は,現在の国連総会における朝鮮問題の討議について討論した。両者は,米国およびその他の加盟国によって提出された決議案に対する総会の好意的な措置の重要性につき意見が一致した。両者は,国連総会が,過去20余年間朝鮮半島において平和を維持してきた安全保障体制の重要性の認識を基礎として朝鮮問題を討議することを希望した。

 朴大統領は,朝鮮半島情勢について詳細に説明し,非武装地帯の南側部分における地下トンネルの構築によって極く最近例示されたような北朝鮮の敵対行為による平和と安定に対する脅威を説明した。

 両大統領は,韓国軍と駐韓米軍が侵略を防止するため高度の戦力と準備態勢を維持すべきことに合意した。

 フォード大統領は,1954年の韓国と米国との間の相互防衛条約に基づき,韓国に対する武力攻撃を撃退するため,迅速かつ効果的な援助を提供するとの米国の決意を再確認した。これに関連してフォード大統領は,米国は現水準の駐韓米軍を縮小するいかなる計画もない旨朴大統領に保証した。

 両大統領は,韓国軍の近代化計画の進捗状況について討議し,同計画の実施が韓国の安全と朝鮮半島の平和のために,極めて重要であることに意見が一致した。フォード大統領は,韓国が防衛分担の増大しつつあるシェアを負担する能力と意思を有することに留意し,韓国の防衛産業を一層発展させるため,米国が適切な支援を継続する用意があることを確認した。

 フォード大統領は,十分な賦存天然資源の欠如およびこの地域における継続的な緊張を含む多くの障害にもかかわらず,韓国が成し遂げた急速かつ持続的な経済発展に対し,称賛の意を表した。朴大統領は,韓国の経済,科学および技術分野に対する米国の寄与に対し,謝意を表明した。

 両大統領は,最近の国際経済事情の影響について検討した。両者は,両国が相互利益のため,緊密な経済協力を引き続き増進すべきであり,両国は,すべての国家間におけるより緊密な相互依存の精神に立脚して,それぞれ他方に対する経済政策を導くべきであることに合意した。両者は,国際社会が直面している新しい問題に対する政策の調整の必要性について意見が一致した。両大統領は,両国にとって有益であった相当な規模の二国間経済関係が引き続き増進してきたことに対し,ともに満足の意を表明した。両者は,米国およびその他の外国からの継続的な対韓民間投資が望ましいことに意見が一致した。また,国際的な努力は貿易障害の減少,安定した食糧の供給を保障するための体制の確立および適正価格によるエネルギーの安定した供給の実現に集中されるべきであることに意見が一致した。

 朴大統領は,世界平和を確立し,世界経済秩序を回復するためのフォード大統領の諸般の努力に対し,大きな期待と敬意を表した。

 フォード大統領は,その一行と米国国民に代わり,訪韓期間中に寄せられた暖かい歓待と厚意に対し,朴大統領と韓国国民に深甚な謝意を表明した。

 フォード大統領は,朴大統領に米国を訪問するよう丁重に招請し,朴大統領は,この招請を喜んで受諾した。両大統領は,この訪問が相互に都合の良い時期に行われることに合意した。

 

目次へ

 

 

(9) フォード米大統領の訪ソに際しての米・ソ共同コミュニケ(仮訳)

 

(74年11月24日,ウラジオストックにおいて)

 

 先に発表された取決めに従い,ジェラルド・R・フォード米合衆国大統領とソヴイエト連邦共産党中央委員会書記長L・I・ブレジネフの実務会談が1974年11月23日及び24日,ウラジオストック地区で行われた。会談にはヘンリー・A・キッシンジャー米合衆国国務長官・国家安全保障問題担当大統領補佐官とA・A・グロムイコ・ソ連邦共産党中央委員会政治局員・外務大臣が参加した。

 双方は米ソ関係と国際情勢の現状に関する広範な諸問題を討議した。

 会談にはほかに,米側からウォルター・J・ストーセルJr駐ソ・米大使,ヘルムート・ゾンネンフェルト国務省審議官,アーサー・A・ハルトマン欧州担当国務次官補,ブレント・スコウクロフト陸軍中将・国家安全保障担当大統領補佐官及びウィリアム・ハイランド国務省員が参加,ソ側からはA・F・ドブルイニン駐米・ソ連大使,A・M・アレクサンドロフ・ソ連邦共産党中央委員会書記長補佐官,及びG・M・コルニエンコ・ソ連邦外務省参与が参加した。

I

 米合衆国及びソ連邦は,共同の原則的諸決定と最近の数年間に両国間で締結された基本的な諸条約及び諸協定によって律せられる方向に,両国の関係を一層発展させる決意を再確認した。

 双方は,世界平和の強化をめざし,国際緊張の緩和を深め,社会体制を異にする諸国家の互恵の協力を拡大するという米ソ関係の方向が両国の国民と他の諸国民の最も重要な利益に合致するものであることを確信している。

 双方は,両国間で締結された諸協定に基づき,平和的共存と平等な安全保障を基礎として米ソ関係を根本から新たに築き上げることを通じて重要な成果が達成されたと考えている。これらの成果は米ソ関係を新たに築く上で前進のための強固な基礎となるものである。

 したがって,双方は,米ソ間の関係改善の過程が中断せずに継続しまた逆行することのないよう,署名された諸協定に定められたすべての領域において双方の協力の規模と強さをモメンタムを失うことなく拡大しつづける意図を有する。

 両国間に締結された諸条約と諸協定に従って米ソが負った相互の義務を厳格かつ全面的に遂行するとの共通の決意が表明された。

II

 会談において,米ソ関係の中心的側面,すなわち戦争の脅威を排除し,軍備競争を停止するための措置について特別の考慮が払われた。

 双方は,米ソ間で到達された核戦争の防止と戦略兵器の制限に関する合意が核紛争及び戦争全般の勃発を阻止する保障を作る過程での良き端緒であることを再確認した。双方はこの過程を促進する必要性に対し深い信念を表明し,また他の諸国も同様にこれに貢献するであろうとの期待を表明した。米国及びソ連としては,この歴史的課題を達成するために真撃な努力を払いつづけよう。

 戦略的攻撃兵器制限の問題についての共同声明は別に公表される。

 双方は,世界中に核兵器が拡散されることにともなう危険を防止することを目的とする真剣な努力が重要であり,かつ必要であることをあらためて強調した。これに関連して,双方は,核兵器拡散防止条約の有効性を高めることの重要性を強調した。

 先に達成された諸協定にしたがい,平和目的のための地下核爆発,軍事目的のための環境変造技術が使用される危険を除去するための諸措置,かつまた化学戦という最も危険で破滅的な手段に対処する諸措置に関連した諸問題について,米・ソ両国代表間の最初の接触が行われたことが指摘された。これらの諸問題について相互に受け入れ得る解決のための積極的な探求を継続することが合意された。

III

 会談の過程において,多くの国際問題についての意見交換が行われた。すなわち,現存する緊張の源を除去し,国際安全保障及び世界平和の強化をもたらすことを目指し,双方が参加して行われている継続中の交渉に特別の決意が払われた。

 欧州安全保障・協力会議の状況を検討し,双方はこの会議を早期に成功裏に終らせる可能性があるとの結論に達した。双方はこの会議で達成された成果が最高レベルでの会議の終了を可能とし,そうすることにより欧州の平和な未来を確保する上で会議がもつ重要性に合致するものであるとの仮定から出発している。

 米ソ両国はまた,中部欧州における兵力・軍備及び関連手段の相互削減についての交渉に高い重要性を付している。双方は,当事国のいずれの安全をも損なわないこと及び一方的な軍事的優位を予防するという原則の基礎の上に,相互に受容可能な解決を探求することに積極的に貢献することに合意した。

 東部地中海の現状を討議して,双方はサイプラスの独立,主権及び領土の保全に対する確固たる支持を表明した。双方はこの方向であらゆる努力をするであろう。双方は,サイプラス問題の公正な解決はサイプラスに関する国連安全保障理事会並びに総会によって採択された決議の厳格な履行を基礎にしなければならないと考えている。

 中東に関する意見交換の過程で,双方はこの地域の危険な状況に関して憂慮を表明した。パレスチナ人民を含むこの地域のすべての人々の合法的な利益とこの地域のすべての諸国家の存立の権利に対する尊重を考慮に入れつつ,国連決議338号に基づきこの地域における公正かつ永続的平和についての基本的諸問題の解決を推進するためあらゆる努力を行うことの意図を再確認した。

 双方は,ジュネーブ会議が中東における公正かつ永続的平和を確立する上で重要な役割を演じ,またできるだけ早く会議の作業が再開されるべきであると信じている。

IV

 商務,経済,科学及び技術の分野における米ソ両国関係の状況が検討された。双方は,これらの分野における一層の進展が米ソ関係にとって大きな重要性を有することを確認し,互恵的協力を引続き拡大し深めていくとの確固たる意図を表明した。

 双方は,相互に利益となる大規模プロジェクトを含め,商務,経済面での協力の長期的な発展が特に重要であることを強調した。双方は,かかる商務,経済面での協力が米ソ関係の安定を増す要因になると信じている。

 双方は,科学,技術及び文化の分野における米ソ間協定の実施の進展と両国間の関係と協力の発展を満足の念をもって指摘した。双方は,かかる協力の継続的拡大が両国民の利益となり,また全世界的な科学・技術問題の解決に重要な寄与をなすものであると確信している。

  米ソ間の平和的協力関係を一層強化・発展させ,又,平和の維持・強化のために,主要な国際問題の解決への進展を確保するとの双方の建設的な願望を反映して,会談は率直かつ相互理解の雰囲気の中で行われた。会談の結果は,米ソ首脳会談の実務的価値と米ソ間の新しい関係を形づくる上で果している首脳会談の重要性を明確に示すものであった。

 フォード大統領は,1975年に米国を公式訪問するようにとのブレジネフ書記長に対する招待を再確認した。訪問の正確な日取りはおって合意される。

 アメリカ合衆国のために

  ジェラルド・R・フォード 

  アメリカ合衆国大統領

ソヴイエト社会主義共和国連邦のために

 L.I.ブレジネフ 

 ソ連邦共産党中央委員会書長 

1974年11月24日

 

目次へ

 

 

(10)  フォード米大統領の訪ソに際してのSALTに関する米ソ共同声明(仮訳)

 

 

(74年11月24日ウラジオストックにおいて)

 

 1974年11月23日,24日の両日ウラジオストック地域で行われた実務会談において,フォード米大統領とブレジネフ・ソ連共産党中央委書記長は,戦略攻撃兵器の一層の制限に関する問題について詳細な討議を行った。

 両者は,米ソ両国が戦略攻撃兵器の制限に置いている大きな意義を再確認した。両者は,この問題に関する長期協定が米ソ関係の改善,戦争の危険の減少及び世界平和の増進に大きく貢献すると確信する。1972年5月26日の暫定協定を含めこの問題に関するこれまでの諸協定の価値に注目しつつ,両者は,1985年末まで有効な戦略攻撃兵器の制限に関する新協定を締結する意図を再確認する。

 かかる新協定の実質的内容に関し意見を交換した結果,米大統領とソ連共産党中央委書記長は,同協定の作成を1975年に完了するための好ましい見通しが存在しているとの結論に達した。

 今後の交渉は以下の諸条項に基づくことで合意が達せられた。

1.  新協定は,1977年10月まで効力を有する1972年5月26日の暫定協定の関連条項を含むものとする。
2.  新協定は,1977年10月から1985年12月31日まで有効とする。
3.  平等と相等しい安全保障の原則に基づき,新協定は以下の制限を含むものとする。
A,  双方は,合意された一定の総量の戦略的運搬手段を保有する権利を有する。
B,  双方は,個別誘導複数弾頭(MIRV)を装備した一定の総量の大陸間弾道ミサイル及び潜水艦発射弾道ミサイルを保有する権利を有する。
4.  新協定は,1985年以降の時期における戦略兵器の一層の制限とそり可能な制限の問題に関し,1980年ないし1981年より遅くない時期に更に新しい交渉を開始するとの条項を含むものとする。
5.  前記の諸点を含んだ新協定を作成するための米ソ両代表団間の交渉は,1975年1月ジュネーヴにおいて再開されるものとする。

 

目次へ

 

 

(11) キッシンジャー米国務長官の訪中に際しての米中共同声明(仮訳)

 

(74年11月30日 北京)

 

 アメリカ合衆国国務長官兼大統領国家安全保障問題担当補佐官ヘンリー・A・キッシンジャー博士は,1974年11月25日から11月29日まで中華人民共和国を訪問した。アメリカ側と中国側は,率直で広範囲にわたり,かつ,双方にとって有益な話合いを行なった。双方は,上海コミュニケの原則をあくまでも遵守することを再確認した。両国政府は,ジュラルド・R・フォード大統領が1975年に中華人民共和国を訪問することに合意した。

 

目次へ

 

(12) ECパリ首脳会談共同コミュニケ(仮訳)

(74年12月10日 パリ)

 

1.  フランス共和国大統領の招待によってパリに会合した共同体9カ国の政府首脳,外務大臣および委員会委員長は欧州が直面している諸問題につき検討を行なった。加盟国政府首脳以下(首脳と略す)は外務大臣が作成した諸報告に留意し,これらの報告で提起されている種々の点につき外務大臣の間で達成された合意は記録された。
2.  首脳は欧州統合に伴う課題および欧州が直面している対外問題につきグローバルなアプローチを執る必要を認めつつ,共同体の諸活動および政治協力に関する作業の進展および両者の間の全体的な一貫性を確保することが必須であると考える。
3.

 従って,首脳は,外相とともに,年3回およびその他必要な都度,共同体理事会としてかつ政治協力のため会合することを決定した。

 現行の慣行と手続とを斟酌して,事務局は適当な方法により設立されるものとする。

 外務大臣は,共同体の諸活動の一貫性と作業の継続性とを確保するため,本共同体理事会において推進および調整者としての役割を果たす。外務大臣は同時に政治協力のための会合をすることができる。

 これらの措置は,ローマ条約またはルクセンブルグおよびコペンハーゲン会議の際の政治協力に関する報告により定められた諸規則および手続に対しいかなる影響も与えるものではない。委員会は,前項記載の各種会合において同委員会に帰属する権限を行使し,上記諸規定によって与えられた役割を果たす。

4.

 首脳は欧州統合の促進を目指し,共同体の利害に影響をおよぼす国際政治のあらゆる分野で漸進的に共通の立場を形成しかつ協調した外交を行なう意思を確認する。共同体議長は9カ国のスポークスマンの役割を果たし,外交面で9カ国の見解を代弁する。同議長は必要な協調が適宜行なわれるよう配慮する。

 欧州建設における政治協力の役割の増大にかんがみ,例えば政治協力に関して欧州議会議員が本議長にあてた質問に対する回答等を通じて,欧州議会をより緊密に参加せしめることが重要である。

5.  首脳は,おって決定されるべき分野において共同体の手続を改善し,また新しい共通政策を進展させ,更に諸機関に対し必要な権限を与えることによって,9カ国の結束を強化することが必要であると考える。
6.  首脳は,共同体理事会の機能を改善するため,1968年1月28日ルクセンブルグでなされた合意につき各国それぞれの立場がどのようなものであったにせよ,あらゆる問題に関する決定を加盟国の全会一致で行なうという慣行を廃止することが適切であると考える。
7.  閣僚理事会では最も重要な問題のみを審議することができるよう,常駐代表に対してより大きな行動の自由を与えることとする。本目的のため,各加盟国は常駐代表の役割を強化し,かつ常駐代表を欧州問題に関する各国の意思決定過程に参加せしめることが必要であると考える。
8.  更に,首脳はローマ条約の諸規定により委員会に与えうる施行および管理の権限は実際に行使するだけのメリットがあることを認める。
9.  ローマ条約の適用外の分野における加盟国間の協力を引続き促進し,本協力を可能な度毎,理事会における加盟国政府代表の会合によって新たな分野に拡充することとなろう。
10.

 旅券同盟設立の可能性およびこの旅券同盟の設立以前にも共通旅券の導入を検討するために作業部会を設置する。

 本問題に関する草案は,可能ならば1976年12月31日までに加盟各国政府に提出されねばならない。本草案においてはとりわけ,外国人に対する法律の段階的調整ならびに共同体内部での旅券コントロールの廃止が規定されるであろう。

11.  もう一つの作業部会は加盟9カ国の国民に対し共同体メンバーとしての特別な権利を賦与しうる条件および時期につき検討する。
12.

 首脳はローマ条約の掲げる目標の一つである欧州議会の普通選挙が可及的速やかに実現されるべきであると認める。この点に関し,首脳は欧州会議が提案を行なうことを期待しつつ,右提案につき理事会が1976年に決定を下すであろうとの希望を表明する。かかる仮定の下で,直接普通選挙は1978年以降実施さるべきであろう。欧州共同体加盟国代表から構成され,欧州議会において,各国民は適切な方法により代表されねばならない。欧州議会は欧州統合の発展に関与する。首脳は1972年10月本件に関し議会の見解を求めた点につき留意する。

 欧州議会の権能は,とりわけ共同体の立法過程におけるいくつかの権限の賦与により拡充されるであろう。

 (英国代表の声明-英国政府首相は同政府は英国以外の8加盟国が欧州議会の普通選挙に関し前進することを妨げないであろう旨,および同政府は再交渉の過程が完成し,かつ本再交渉の成果が英国民の承認に付されるまでは本件提案について明瞭な態度をとり得ない旨述べた。)(デンマーク代表の声明-デンマーク代表は現段階では1978年に普通選挙を導入することを約束し得ない)

13.

 首脳は,1972年10月パリでの決定に従い,加盟国間の関係団体の関係全体を変える過程は既に端緒についており,さらに右分野における新たな進展を行なう決意である旨確認する。かかる観点から,首脳は9カ国が可及的速やかに欧州同盟の全体像につき合意する時期にいたっていると考える。従って,1972年10月のパリ首脳会談でなされた要請に従い,首脳はこの点に関する共同体諸機関がなすべき報告の重要性を再確認する。首脳は欧州議会,委員会,欧州裁判所に対し,1975年6月末までに右報告を提出するよう要請する。首脳はベルギー王国のティンデマンス首相が1975年末までに各国政府首脳宛てに共同体諸機関の報告および同首相が共同体内の各国政府および世論を代表する各界と行なう協議を基礎とした報告のとりまとめを行なうことに合意した。

 経済・通貨同盟

14.  首脳は,経済・通貨同盟につき当初予定されたすべての進展が国内および国際的環境の変遷により完全に達成しえなかったことを認める一方,本問題に対する熱意は衰えていないことおよびパリ会議で決定された目標を堅持することを確認した。
15.  首脳は世界経済情勢および共同体内部の経済情勢につき討議した。
16.  首脳はエネルギー価格の引上げがインフレーションおよび国際収支赤字傾向を悪化させ,また一般的景気後退の脅威を強めていることを認めた。この点に関し交易条件の変化にともない加盟国は自らの生産構造の再調整を行なうことを余儀なくされている。
17.

 首脳は経済政策の目標は,インフレーション対策および雇用維持にあることを再確認する。また社会的パートナーの協力が本政策の成功にとって一つの基本的に重要な要素となろう。加盟国政府首脳は現状においては,安定の中の景気回復策一経済全体の景気後退を防ぐとともに経済の安定化を目指した行動-が優先されねばならないことを強調した。またその際には,連鎖反応を生み景気回復を危くするすべての保護主義的措置を排除することが重要である。

 国際収支黒字国は新しいインフレーションの要因を作りだすことなく,国内需要を刺激するとともに高雇用水準を維持する経済政策を遂行せねばならない。かかる黒字国の態度は,国際収支の重大な赤字国が保護主義的措置に訴えることなく,満足すべき雇用水準,物価安定および国際収支改善を,保障する政策を,継続することをより容易にするであろう。

18.

 国際収支黒字国のなすべき努力に関し,首脳はオランダ政府により既に採用されている経済政策が期待された方向に沿っていることに対し満足の意を表明するとともに,ドイツ連邦共和国政府が採用を検討している短期経済プログラムー特に私的および公的投資の促進に関する部分-およびベルギー政府もまた有している同様の意図につき満足の意を表しつつ了知した。

 首脳はまた国際収支赤字国が,国際収支均衡および雇用水準の改善達成を目指し,国際競争力の維持のため行なっている努力を満足の意を表しつつ指摘した。

19.  統一政策の実施を困難とするような,加盟各国の特殊事情をすべて考慮しつつ,首脳は今後共同して諸政策を遂行するとの合意が緊急に必要であると主張した。これらの斉合性ある諸政策は,共同体連帯性の目標に合致するとともに有効かつ常設の協議機構によって支持される場合にのみ有意義である。経済・大蔵大臣は,共同体手続の枠内で,上記政策を実施する責任がある。
20.

 上記政策はすべての主要先進工業国が景気後退の傾向を防止する措置をとった場合にのみ十分その目的を達成することは明らかである。

 これに関して,首脳は,ドイツ連邦共和国首相の合衆国大統領との会談結果についての報告を満足の意を表しつつ留意した。

 首脳は,仏共和国大統領がフォード大統領との会談の際に,共同体の名において,上記の基本的な考えに従い,先進工業国全体の経済政策の斉合性が重要である旨強調することを期待するとの希望を表明した。

 首脳は,また,共同体および加盟諸国が今後国際会議および国際機関の場において,同様に行動するとの希望を表明する。

21.

 共同体は世界貿易,特に対開発途上国貿易の調和のとれた発展に引続き貢献するとともに,このために,きたるべきGATT交渉に建設的な精神をもって参加する。

   地域政策

22.  首脳は,共同体内において,とくに農業偏重,工業発展および構造的不完全雇用の結果生じた地域的不均衡の是正を目的とする欧州地域開発基金を1975年1月1日から共同体の一機関として発足させることを決定する。
23.  同基金の資金規模は,当初の3年間合計13億UCとし,同基金は75年3億UC,76,77年および年それぞれ5億UCずつ授権する。
24.

 上記13億UCについては,現在FEOGA(欧州農業基金)の未使用資金から,1億5,000万UCの範囲までを融資する。

  委員会の立案計画に従い,本基金の加盟国別受益率は次の通り。

ベルギー      1.5%

デンマーク     1.3%

フランス      15.0%

アイルランド    6.0%

イタリア        40.0%

ルクセンブルグ   0.1%

オランダ      1.7%

ドイツ       6.4%

英国          28.0%

 しかしながら,アイルランドは上記の受益率に加えイタリアを除く加盟国の割当額から控除される600万UCを割当てられることとなろう。

   雇用問題

25.

 上述のインフレーション,不況対策および失業等の問題に対処するためにとられる努力は,進歩と公平をめざす社会政策の実施目標をも尊重するものでなければならない。さもないと,各国および共同体レベルにおいて,社会的パートナーの参加および協力を得ることはできないであろう。

 かかる観点から首脳は,経済・社会委員会が,共同体の経済的および社会的目標の策定に際し,社会的パートナーを参加させるための重要な役割を果たすことができると強調した。

 なかんずく,雇用問題について共同体レベルでの熱心なかつ協調的行動がとられることが重要である。かかる行動は,加盟国が,関係諸機関と自国の雇用政策につき必要な協調のため連絡し,到達すべき第一の目標を設定することを含むものである。

26.  共同体理事会は,失業が最も深刻な地域およびセクターを考慮しつつ欧州社会基金の増額必要性の適否およびその範囲につき適当な時期に経験にもとづき検討する。
27.  経済的に困難なこの時期においては首脳は社会面における特別な措置が講ぜられねばならないと確信しつつ理事会が1974年1月21日の決議によって承認した社会行動計画に盛られた政策の実現の重要性を再確認した。
28.

 首脳は各加盟国の現行の社会制度が各々固有の価値を有することを認めつつ,各加盟国によってなされる社会保障の発展の程度を調和させることをその目標として掲げる。

   エネルギー

29.  首脳はエネルギー問題およびこれに関連して共同体より広範な範囲の世界および世界全体が直面する基本的な財政問題を討議した。
30.  更に,共同体加盟国のエネルギー問題担当大臣が,12月17日に会合することを指摘した。
31.  首脳は,世界経済にとってエネルギー問題がもっている基本的重要性を認識し,石油輸出国,石油輸入国との間の協力の可能性を討議し,この問題に関するドイツ連邦共和国首相の報告を了知した。
32.  首脳は合衆国大統領とフランス共和国大統領との来るべき会談を極めて重要であると考える。
33.

 首脳は,共同体機関に対し1974年9月17日の理事会の決議に関連し,可及的速やかに共通エネルギー政策を画定し,かつ実施するよう指示する。

   共同体への英国の加盟維持

34.  英国首相は,″共同体への英国の加盟維持につき,英国政府が交渉を継続している根拠゛を示し,英国政府が極めて重要であると考える特別な問題につき説明した。
35.  首脳は,英国の加入交渉の際共同体によってなされた゛受入れ困難な事情が生じたならば共同体自身は同機関に対し公正な解決を見出すよう要求するであろう″旨の宣言を想起する。
36.  首脳は固有の財源制度が共同体の経済統合の基本的要素の一つを構成することを再確認する。
37.  首脳は共同体機関(理事会および委員会)に対し,固有財源制度およびその通常機能の枠内で,客観的基準にのっとりまた特にこの点に関する英国政府からなされた提案を考慮し,加盟諸国の経済の調整過程で加盟国にとって受諾不可能たるべき,また共同体の円滑な運用と相容れない状況を回避するための一般的な是正メカニズムにつき可及的速やかに立案するよう指示する。

 

目次へ

 

 

(13) OPEC総会コミュニケ(仮訳)

 

 (74年12月13日 ウィーン)

 

 1974年12月12,13日ウィーンにおいて招集されたOPEC第42回総会

 総会は,満場一致で,ヴエネズエラの鉱山・炭化水素大臣であり,同国代表団長DR.VALENTIN HERNANDEZ-AUCOSTAを総会議長に,ガボンの鉱山大臣で同国代表団長H.E.EDOUARD ALEXIS M′POUY-DOUTZITを代理議長に選出した。

 総会は,経済委員会の報告を討議し,1974年11月10,11日のアブダビ決議の財政的効果を基礎にした新価格体系を採用することを決定した。

 この決定により,操業中の石油会社からとられる平均政府取り分は,基準原油(MARKERCRUDE)につき,バーレル当り,10.12ドルとなろう。

 この決定は1975年1月1日から75年9月30日まで有効である。

 これに関し,かつ当分の間は,サウディアラビアは,カタール,アラブ首長国連邦と共に,遡及適用され得る新取極な外国石油会社と交渉中であるということが留意されるべきである。

 加盟各国の代表は,石油相・外相合同会議を1975年1月24日,アルジェリアにおいて開催することを,それぞれの政府に対して提案することを決定した。

 総会は,対話を歓迎するという総会の従来の立場を想起し,開発途上国,工業国を含むいろいろな国家グループ間の協議を目指すすべてのイニシアティブを支持し,対決を目的とするすべての行動および術策を非難する。総会は,1975年のOPECの予算を承認した。総会は,クウェイトのOPEC代表MR.ALI KHALIFA AL-SABAHを1975年の理事会議長に,またリビアのOPEC代表MR.OMAR MUSTAFA MUNTASSERを1975年の理事会の代理議長に任命した。

 総会は,ナイジェリアのCHIEF M.O.FEYIDEを1975年1月1日から2年間,OPECの事務局長に任命した。

 総会で採択された決議は1975年1月13日に公表される。

 ガボン政府の招へいにより,総会は次回定期会合を,1975年6月9日(月)に,ガボンのリーブルビルで開催することを決定した。

 

目次へ

 

 

(14) 米仏首脳会談共同コミュニケ(仮訳) 

 

(74年12月16日 マルティニック)

 

 ジェラルド・R・フォード・アメリカ合衆国大統領と,ヴアレリー・ジスカール・デスタン仏共和国大統領はマルティニック島で1974年12月15,16日に両国が共に関心を有する当面の諸問題につき会談した。この会談には,キッシンジャー国務長官・国家安全保障問題大統領補佐官およびジャン・ソーヴアニャルグ外務大臣ならびにウィリアム・サイモン財務長官およびジャン・ピエール・フルカード大蔵大臣が出席した。また,上記閣僚は個別的な会談を行なった。

 会談は,友好かつ相互信頼の雰囲気の中で行なわれた。フォード大統領とジスカール・デスタン大統領は,両国が共に関心を有する問題全般の細部にわたり,実質的な話合いを行なう機会を得たことを歓迎した。伝統的な友邦および同盟国として,両国は,共通の価値観と目的とを有するところ,両大統領は,かかる基盤に立って共通の諸問題の解決努力に当たり協力する決意を表明するものである。

 両大統領は経済・金融および通貨の分野における国際情勢を検討した。

 両大統領は,米国政府および欧州共同体の各国政府(仏大統領は,本件に関してはECの名において発言した)はインフレと闘う一方,失業を有効に回避するために斉合性のある経済政策を採用すべきことに合意した。なかんずく,保護主義的な性格を有する措置を回避することの重要性につき合意した。また,両大統領は先進工業国間に求められる基本的経済政策の調和を達成するために必要な場合には,新たな政府間協議を招請するイニシアティブをとることを決定した。

 今日の国際金融情勢の急激な変化にかんがみ,両大統領は,IMFの内において,またその他の補助的措置を通じて,より緊密な金融協力を行なうべきであるとの認識を維持していくことの必要性につき合意した。既存の金融体制を強化するためのひとつの方策として,両大統領は,希望する政府がすべてその保有金の評価の基準として,現在の市場価格を採用することが適当であることに合意した。

 両大統領は,エネルギー問題とそれが世界経済に及ぼす深刻かつ攪乱的影響を詳細に検討した。両大統領は,米,ECおよびその他の工業国がエネルギーの保存,既存および代替エネルギー源の開発,ならびに財政的団結の新しいメカニズム設定のための政策を実施することの重要性を認め,これら諸問題に関する石油輸入国の団結の重要性を強調した。

 両大統領は消費国と産油国との間の対話が望ましいことにつき意見交換を行ない,この点に関し,10月24日仏大統領が行なった石油輸出国と輸入国の会議のための提案を討議し,かかる会合ができるだけ早い日に行なわれることが望ましいことにつき合意した。両大統領は,すべての関係国がそれぞれ利害と関心を有する事項をよりよく通報しあうこと,および世界経済の健全な発展を促進するため,これら関係諸国間に調和ある関係が樹立されることが重要であると考える。

 両大統領は,これらの問題についての両者の見解は補完的なものであることに留意し,この意味において次のような相互に関連した段取りが順次にとられるべきことに合意した。

 両大統領は,双方が当事者となっている既存の機構および協定の枠内で,またその他の関心を有する消費国と協議しつつ,その協調強化のため追加的措置がとられるべきことに合意した。特に,この協調は既存エネルギー,代替エネルギー源の開発,エネルギー保存および金融面での団結のための計画を含めるべきである。前記分野の実質的進展にもとづき,消費国・産油国会議のための議題および手続を策定するため消費国と産油国との間で準備会合を行なうことを提案することが望ましいことにつき合意した。このような準備会合の目標日は1975年3月とするべきである。

 これらの準備討議に次いで,消費国は会議のための立場を準備するために集中的な協議を行なう。

 両大統領は,最も迅速な方法で,かつこの深刻な事態に対処するため,米,仏およびその他のすべての関連諸国が有する共通の利益を十分認識しつつ,上に掲げた行動がとられることに合意した。

 フォード大統領とジスカール・デスタン大統領は東西関係における最近の進展を検討した。両大統領は,ブレジネフ書記長と行なったそれぞれの会談について話合い,またキッシンジャー長官は中華人民共和国指導者との会談内容について報告した。両大統領は欧州安保協力会議(CSCE)を含む東西間の諸交渉の進捗状況につき意見を交換した。両大統領は緊張緩和の面で進展がみられたとの確信を表明した。

 両大統領は現在の中東情勢につき意見を交換した。両大統領は同地域において公正かつ永続的な平和への急速な進展が重要であることに合意した。

 ジスカール・デスタン大統領はフランスおよび他のEC諸国によって現在行なわれている欧州統合促進の努力について説明した。フォード大統領は,欧州統合達成努力に対し米国は引続き支持を与えることを再確認した。

 両大統領は,インドシナ情勢について話合った。両大統領は,ラオスにおける和解と再統一への進展ぶりが望ましい方向にあることを認めた。

 両大統領は,すべての当事者がヴイエトナムに関するパリ協定を全面的に支持すべきことに合意した。カンボディアに関しては,紛争当事者が戦闘を継続するよりもむしろ近い将来に交渉を開始するであろうとの希望を表明した。両大統領は,ラオスに続き,カンボディアおよびヴイエトナムもまた,政治的に国内平和達成の道を見出すよう希望を表明した。

 両大統領は,両国が北大西洋同盟のメンバーとして防衛問題につき緊密な関係を維持するとの誓約を再確認した。両大統領は,フランスとNATOの間の協力は,欧州の安全保障上,重要な要素である旨合意した。

 双方は,ウラジオストク米ソ首脳会談でのSALT交渉において前向きの進展が図られたため核兵器競争の脅威が縮小されたことを満足の意をもって留意した。両大統領は,核物質および核技術の輸出国として,両国が核物質の改善された保障措置を確保するためいかにして双方の努力を協調せしめうるかにつき検討した。

 仏大統領は,仏政府が1967年のNATOに属した米軍および米軍基地の仏国外への移転にかかわる財政問題解決の用意がある旨明らかにした。フォード大統領は,本問題の完全な解決のために仏側が申しでた1億ドルの支払いを公式に受諾した。

 両大統領は,結論として今次会談における個人的接触と討議を通じて多くの問題につき合意が見られたことを認め,両国が共に関係する分野での広汎な協力のために緊密な接触を維持する決意を表明した。

 

目次へ

 

 

(15) OPEC頂上会議宣言要旨

 

(1975年3月4日~6日)

(於アルジェ)

 

第1項  自国民の正当な権利と利益を守るためOPEC諸国が団結することを確認し,あらためて,天然資源に関する主権的権利を宣言する。OPEC諸国は国連特別総会で採択された国際経済新秩序確立のための宣言及び行動計画に合致する世界における経済発展と安定という目標に貢献する所存である。
第2項

 現在の世界経済危機は諸国民の間の経済社会進歩の不平等の状況の中で生じたものであり,その不平等は外国によるさく取,発展のための協力の欠如による開発途上国の未開発状態を特徴づけるものである。現在の国際経済の不均衡は経済危機を更に悪化させるものであり,先進国が稀少資源を浪費する傾向やその不適当かつ近視眼的経済政策による長年の積へいによるものである。

 かかる認識に基づき,石油価格に現在の世界経済が不安定であることの責任を押しつける議論を排除する。

第3項  OPECに対する威嚇及びOPECが先進国の経済をくつがえそうとしているうんぬんの宣伝キャンペーンを非難する。かかる動きは対立を招くのみである。また,対立を目指す消費国のグループ化ならびに経済的または軍事的侵略の目的を持つすべての計画または戦略を非難する。かかる威嚇に対してOPEC諸国は連帯を再確認し,必要に応じ直ちに有効な措置をとる。
第4項

 国内の発展と世界経済の繁栄との密接な関係を十分に意識し,世界経済の問題を解決するための対話,協力及び共同の行動に賛同する。

 かかる精神により,OPEC加盟諸国は,1974年に先進国が与えた援助の数倍にのぼるこの10年間における年間対GNP比率の金融援助を開発途上国に与え,また国際収支赤字になやむ先進国に金融的便宜を与えたし,国際貿易の拡大にも貢献した。

第5項

 先進国と開発途上国との間の国際会議を開催する原則に同意するが,会議の目的は世界経済の主要な困難を軽減するための行動ないちぢるしく進めることにあるべきである。

 従って会議の議事日程にはエネルギー問題に限らず一次産品問題,国際通貨制度の改革及び開発のための国際協力を含まなければならない。

 同会議は,能率の関係から限られた構成国によって行うことにしてもよいが関係国の全部が適当で正確に代表されるよう保証されなければならない。

第6項  再生不可能な資源である石油の開発はなによりもまず産油国国民の利益に基づくべきものであり,石油は産油国の発展のためのかけがえのない要素である。石油供給の世界経済における極めて重要な役割を認めるが,石油資源の保存も未来の世代のための基本的な要請であると考える。従って,この有限で再生不可能な資源の最も適正な利用の方策をとるよう勧告する。
第7項  石油は,その価格が過去において人工的に安くすえ置かれたため過剰に開発された。かかる政策の継続は世界経済の保存の見地からは破滅をもたらすものである。石油の保存の重要性,その涸渇,エネルギー源としてでない石油の価値,代替エネルギー資源の入手可能性,利用条件及び価格を考慮して石油価格が決定されることがOPEC諸国と世界の利益になる。更にOPEC諸国の発展のための資材,技術の移転の条件を含む,客観的な基準を関係づけて石油価格を決めなくてはならない。
第8項  OPEC諸国が世界経済の主要問題の解決に積極的な貢献を続け,かつ国際経済新秩序の確立のカギである真の協力を促進するものであることを宣言する。かかる国際協力を進めるため一連の措置が他の開発途上国及び先進国によって採用されることを提案する。
第9項

 OPEC諸国と,他の発展途上国との連帯を再確認し,1975年2月のダカール原料会議で宣言された如く,他の発展途上国のOPECに対する支持をアプリシェートする。

 世界経済危機に最も影響されたのは,発展途上国であることを認め,これらの諸国への協力を強化する措置を実施する。OPECは,これら諸国の発展のため特別クレジット借款,贈与を供与することを再確認し,また国際収支困難克服を援助することに同意し,かつ,肥料を有利な条件で供給するためOPEC諸国の肥料増産の推進を決定した。

 OPECは原料及び他の一次産品輸出国である他の発展途上国とその公正で利益の上る輸出価格を獲得する努力に協力することを再確認する。

第10項

 OPEC諸国は先進国の経済困難を緩和することを援助するため,これらの国のニーズにつき特別の努力を続ける。

 石油供給に関し,OPECは消費国が供給・需要の法則の正常な活動を防害しないことを条件に先進国経済に不可欠のニーズを満たす供給を確保する用意がある。

 石油価格に関しては,OPECは,(イ)インフレの上昇率及び通貨価値の下落により,価格再調整の実質的価値の大きな部分が失なわれたこと,及び,(ロ)現在の価格は代替エネルギー資源の開発から生ずる価格よりも明らかに低くなっていることを指摘する。

 それにもかかわらず,消費国が自国の経済に必要な調整が出来るよう石油価格安定の条件を交渉し,また最も影響を受けた先進国と金融援助につき,パイラテラルに,また国際機関を通じて交渉する用意がある。

第11項

 OPEC諸国の努力に対応して,先進国は発展途上国の利害を考慮に入れた経済及び通貨の安定を特に実現するため,これらの国の進歩・発展に貢献せねばならない。

 この意味で第6回国連特別総会で採択された行動計画を実施するため,次のことを強く要請する。

(イ)  先進国が,途上国の原料及び他の一次産品の公正で利益の上がる輸出価格に関しとった措置を支持すること。
(ロ)  「第二次国連開発の10年」のための国際約束を,先進国が最小限の貢献として実施すること。
(ハ)  先進国,特に食料生産,輸出国が途上国に贈与と援助を行う食料プログラムを作成し,実施すること。
(ニ)  先進国の近代的な技術を,資源の枯渇のリズムに応じて途上国に移転させること。
(ホ)  先進国が石油化学コンビナート,石油精製工場,肥料工場をOPEC諸国内に建設し,かつ,その製品の市場を確保すること。
(ヘ)  OPEC諸国の対外準備の価値の下落及びその先進国での投資安全に対し保証すること。
(ト)  先進国が途上国の炭火水素,他の一次産品及び工業産品に対し,市場を開放し,OPEC諸国を含む途上国に対し差別的輸入制限を行わないこと。
第12項

 国際通貨制度の混乱と,途上国の交易条件及びその通貨資産の価値を守るために不可欠の規則及び機構が欠けていることを確認し,途上国の正しい利益を守るための措置をとる緊急の必要性を強調する。

 これまで国際通貨制度改革のためとった措置は通貨体制措置の固有の不正を除去し得なかったから失敗したことを認め,この分野における改革のための基本的かつ緊急な措置をとる必要性を強調する。

 準備通貨,SDR,金の価格及び役割に影響をもたらす決定は先進国側だけで一方的に行われてはならず,途上国の利益を保証するため代表,決定手続及び管理の点で途上国の発言権が増大するような改革が行われるべきである。このためOPEC諸国内で協議と調整の機構を推進させることを決定した。

第13項  OPECの強化,特に国営石油会社の活動の調整及びOPECが国際経済に果す役割を重要視する。OPEC諸国間に調整を要する分野は,特に石油の生産と保存,その価格と販売,国際的発展及び安定のための協議及び協力である。
第14項

 安定と平和に脅威である現在の国際経済危機に気をかけ,OPECが国際間協力の新しい時代への道を開くことを目的とするイニシアティヴをとることを合意する。

 すべての国民が正義と友愛に基づいた新しい経済秩序を実現する能力を持っていると確信し,他の諸国政府にアッピールを行い,この目的実現のためのOPEC諸国民が全面的に支持することを宣言する。

 

目次へ