第4節 国連における経済関係

 

1. 第6回国連特別総会(原料及び開発の諸問題の検討)

 

 第6回国連特別総会は,「原料及び開発の諸問題の検討」を議題として,74年4月9日より5月2日までニュー・ヨーク国連本部にて開催された。

 同総会では,資源や原材料の輸出国としての立場を挺子に,開発途上国は天然資源に対する恒久主権の排他的行使,資源・原材料の輸出国同盟の結成,開発途上国の輸出する産品の価格と先進国からの輸出品価格とのリンク付けなどの急進的な諸要求を行つた。これに対し,わが国を含め西側先進国は,現下の国際経済社会における相互依存の高まりに相応して,一層の対話と協調の必要なことを強調した。その結果,資源保有国と消費国の間の対決が回避され,新国際経済秩序の樹立に関する宣言及び行動計画がコンセンサスにより採択された。

 前記文書は,新国際経済秩序の樹立の必要性につき合意するものであり,また,資源に恵まれない開発途上国に対し,先進国や産油国が,連帯の精神のもとに援助することが合意された。

 なお,新国際経済秩序の内容は次のとおり。

(1) 目的

(イ) 開発途上国の国際社会での地位の改善

(ロ) 国際経済の安定と発展

(2) 概要

(イ) 「宣言」

(a) 各国は,自国の天然資源を保護するため国有化及び所有権を自国民に移転する権利を有する。

(b) 生産者同盟は開発途上国の発展に役立つ。

(c) 開発途上国の交易条件改善のための価格リンク(開発途上国輸出品価格の輸入品価格とのスライド)。

(d) 経済全分野における開発途上国のための特恵的取扱い。

(ロ) 「行動計画」

(a) 最近の経済変動により最も影響を受けた諸国に対する救済策として,特別基金の設置及び国連緊急事業の発足を決定。

(b) 上記宣言の諸原則を実施するための分野別(貿易,金融,食糧,原料などの諸分野)の諸措置を具体的に規定。

 わが国としては,他の西側先進国とともに,開発途上国との対決を避け,対話と協調の精神で臨んだところ,「宣言」及び「行動計画」に対するわが国の態度は次の通りであつた。

(1) 宣     言

 わが国は,以下の諸事項に関する意見表明を行つて,宣言のコンセンサスの採択に応じた。

(イ) 天然資源に対する恒久主権は,国際法に則して行使されるべきである。

(ロ) 価格リンクが果して開発途上国の交易条件の改善のための適当な方法かどうか,また,それが可能かどうか疑問である。

(ハ) 国際経済の諸分野において特恵的取扱いを賦与することに関しては,それが実現可能であり,かつ妥当である場合に限り供与することとする。

(2) 行 動 計 画

(イ) いくつかの条項に問題があつたので,もし表決に付されていたなら,全体に棄権したであろうとの留保を付した。

(ロ) ただし,最近の経済変動により最も影響を受けた諸国のための緊急援助及び特別基金の設立には賛成した。

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2. 国連総会(第2委員会)

 

 第29回国連総会における経済関係議題の審議は,9月下旬から約3カ月間,同総会第2委員会で行われ,その結果に基づき,国連工業開発機関,国連環境計画,開発事業活動など(それぞれの問題については該当箇所参照)に関するもののほか,下記の主要問題について決議が採択された。

(1) 世界食糧会議報告

 本件会議は,近年の食糧需給の逼迫を背景に,74年11月5日より16日までローマにおいて133カ国の出席のもとに開催された。同会議では,「飢餓,及び栄養不良解消宣言」をはじめ備蓄,食糧援助,開発途上国での増産対策,情報システム,肥料問題等広範な実質的問題及び会議のフォロ-アップのための国際農業開発基金や世界食糧理事会,食糧安全保障委員会,食糧援助政策計画委員会等機構問題等に関する21の決議が採択された。

 12月17日,国連総会は,世界食糧会議報告を満足をもつて,テーク・ノートし,「飢餓及び栄養不足解消宣言」を承認するとともに,同会議の諸決議の早急な履行を各国に求める旨の決議を採択した。また,同決議は,世界食糧理事会の構成数を36カ国とすることを決定した。わが国は,同日,77年末までの任期で,この理事会のメンバーに選出された。

 わが国は,世界食糧会議及び第29回総会において,開発途上国の食糧問題の解決及び世界の食糧需給の安定に貢献するため,同会議に積極的に参加し,食糧情報システムの整備,強化を主唱してこれを実現に導いたほか,食糧,肥料の緊急援助の面では,国連緊急事業への具体的な拠出の用意があることを明らかにしている。

 なお,世界食糧会議における重要決定事項は,次のとおり。

1. 世界食糧理事会の設立

 食糧増産・栄養事情の改善・食糧安全保障・食糧貿易・食糧援助などの諸問題を検討するために「世界食糧理事会」を設立する。

2. 国際農業開発基金の設立

 開発途上国における食糧増産のための資金援助を目的とした「国際農業開発基金」を,先進国及び産油国などの援助能力を有する諸国による自発的拠出により設立する。

3. 食糧・農業情報システム

 重要な食糧生産物につき,その生産・消費・在庫などの見通しに関する情報を収集し,これを加盟国に定期的に通報する「食糧農業情報システム」を国連食糧農業機関(FAO)のもとに設立する。

4. 食糧援助

 1975年より,毎年,最低限1,000万トンの食糧援助を行い得るよう努力するとともに,開発途上国の自然災害等の事態に備え,緊急援助用の備蓄ないし資金のイヤマークを行う。

5. 食糧安全保障と備蓄

 一定のガイドラインに基づき,各国が在庫目標を定めて,在庫を形成し,運用するための食糧安全保障の国際的約束を実施に移す。また,そのための国際的協議を行う。

 

(2) 諸国家の経済権利義務憲章

 72年春,チリにおいて開催された第3回UNCTADにおいて,メキシコのエチェベリア大統領が提案した「諸国家の経済権利義務憲章」は数次の草案作成作業を経たが,いくつかの重要な個別項目については各国間の合意が得られなかつた。にも拘らず,憲章全体は,74年12月12日,第29回国連総会本会議において投票に付され,賛成120,反対6,棄権10により採択された。また,これに先立ち,同第2委員会では,米国などの要求により憲章全体のみならず各条項も投票に付された。

 同憲章の採択を決定した総会決議3281(XXIX)は,「すべての国,とくに開発途上国の諸権利を保護する憲章が策定されないかぎり,公正な秩序と安定的な世界は建設しえない」旨を謳つており,憲章の採択は,かかる分野における法典化の第一歩であることを明記している。また,本憲章が第6回特別総会で採択された新国際経済秩序に関する宣言及び行動計画をも勘案したものであり,憲章が衡平,主権平等,先進国と開発途上国間の相互依存に基礎をおいた新しい国際経済関係制度の樹立の手段となることを強調している。

 わが国は,エチェベリア大統領が提唱した本憲章の作成については,開発途上国の利益の保護と国際経済上の国家間の公平な権利義務関係の実現を目的としていることに鑑み,これに賛同し,普遍的に受諾可能な文書作成を目指して,国連における作業に積極的に参加してきた。しかしながら,第29回総会では,開発途上国は,自らの一方的主張を憲章中に盛込むことを意図したため,憲章が果してすべての国の間の経済関係の発展を促すものとなるかどうか疑問が生じたので,全体の採択に棄権した。

 なお,諸国家の経済権利義務憲章は,前文,第1章国際経済関係の基礎,第2章経済的権利及び義務,第3章世界共同体の共同責任,第4章終章からなつており,本文は34条を含んでいる。わが国として受諾が困難であつた条項は次の通り。

(イ) 天然資源に対する恒久主権

(ロ) 多国籍企業及び民間投資の規制

(ハ) 生産者同盟を結成する権利

(ニ) 開発途上国の交易条件改善のために,その輸出産品価格と輸入産品価格との関係をインデクセーションなどにより調整する義務

(3) 天然資源に対する恒久主権

 アラブの国家及び国民は外国占領下にあるそのすべての天然資源に対して恒久主権をもつこと,同地域のアラブ民族資源をイスラエルが搾取していることは不法であり,イスラエルがこのような措置を直ちに停止すべきであること,イスラエルによる資源の利用・略奪につきアラブ国民は原状回復と全面的補償の権利を有すること及びかかるイスラエルの行為のアラブ国民に及ぼす経済的悪影響につき事務総長に報告を求めることを内容とする決議が12月17日,表決により採択された。わが国は,中東問題に対するその基本的立場に鑑み,アラブ側の主張を十分理解しうるので賛成投票した。

(4) ポルトガル支配地域並びにギニア・ビサオへの援助

 ポルトガルの植民地政策の転換とギニア・ビサオの独立に伴ない,ギニア・ビサオ及びポルトガル施政下の地域に対する経済,技術,金融援助を各国に呼びかける決議がそれぞれの地域につき一本ずつ表決に付すことなく,採択された。わが国は,両決議案につき共同提案国となつた。

(5) 砂漠化防止のための国際協力

 スーダン・サハラ地域をはじめ世界各地で砂漠の拡大現象を研究し,これに対策を講じるため,(i)1977年に砂漠化防止のための政府間国際会議を国連主催で開くこと及び(ii)砂漠化防止のための国際的行動を開始することを主たる内容とする決議が表決なしに採択された。わが国は,上ボルタなどアフリカ諸国などととも同決議案の共同提案国となつた。

(6) 経済特別総会の開催

 75年9月1日から9月12日までニュー・ヨークにおいて,「開発と国際経済協力のための特別総会」を開催することが決定された。主たる検討事項は,一次産品価格問題,実物資源の移転,技術協力,多国籍企業問題に重点をおいて全般的な国際経済関係の変革を考慮することとされている。また,かかる国際関係の変革のなかでの国連ファミリーの役割についても,上級専門家グループの召集が決議された。わが国は,これら決定にあたり,特別総会の準備に際して経済社会理事会の総合調整機能が活用されるべきことを主張し,これは案文に反映された。上級専門家グループは25人で構成されることになり,75年2月より作業を開始したが,わが国よりは,海外経済協力基金総裁大来佐武郎氏がメンバーとなつた。

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3. 経済社会理事会

 

 わが国は,71年秋の第26回国連総会における選挙で,74年末まで3年の任期で経済社会理事会理事国に選出され,第56回(74年4月-5月),第57回(同年7月-8月)の両会期の審議に参加した。なお,わが国は,74年秋の第29回国連総会で,77年末まで引続き理事会のメンバーに選出された。

 74年の経済社会理事会では,早秋対策,社会人権問題,経済社会理事会の強化,資源と開発の諸問題,開発の10年などの諸問題が審議された。

(1) 資源と開発の諸問題

 このうち,資源と開発の諸問題については,第6回特別総会で各国から提出された6つの決議案(注)中,わが国の提出した「天然資源探査のための国連回転基金」の事業の早期開始とこれへの各国の拠出を呼びかける決議案及びニュー・ジーランド,スリ・ランカの提案した肥料供給に関する緊急措置の決議案は,第58回会期でコンセンサスにより採択された。その他の決議案については,理事会は何ら措置しえなかつた旨を国連総会に報告し,これが総会でテーク・ノートされた。なお,肥料供給に関する緊急措置として,74年7月FAOは,上記経済社会理事会の決議に従い,緊急理事会を召集し,国際肥料供給スキームの設立を決定している。

(2) 天然資源委員会の本邦開催

 第6回国連特別総会において,わが国は,首席代表演説により,資源を持てる国も持たざる国もともに「対話と協調」の精神に基づき,資源問題解決のための国際協力を行うべきことを訴え,かかる「対話と協調」を促進する国連の活動へのわが国の協力の一環として,経済社会理事会の常設機関である天然資源委員会を本邦に招致した。同委員会は,第57回経済社会理事会の決定により75年3月24日より4月4日まで,東京にて開催される運びとなつた。

(3) 経済社会理事会の強化

 国連ファミリーの人材と資金の90~95%は経済社会関係の諸活動に投入されているが,これらが新しい時代の要請に応えうるものになるには,各機関が他との作業の重複を省き,有機的な協力関係を発展させる必要がある。そのため,わが国は,国連ファミリーの活動の総合企画調整機関としての経済社会理事会の役割の強化を第57回会期において主張し,ジャマイカとともに,経済社会理事会の作業の合理化に関する決議案を提案し,右決議案は表決なく採択された。

 同決議の趣旨は,第29回国連総会において更に発展して,経済社会理事会が国際経済社会情勢の急速な変動に適応しうるためには,(a)経済社会理事会の作業を一年を通じて均等に配分し,かつ,機動的に会合することとすること及び(b)同理事会下部機構の整理統合とその活用,国連ファミリー機関間の協力様式の改善につき第31回総会(76年秋)で検討することが決議された。わが国は,木村外務大臣の総会本会議での一般討論において,国連ファミリーの機能の強化と経済社会理事会の総合的政策策定と調整の役割の強化の必要を説き,前記決議の提案国となつた。

(4) 多国籍企業問題

 72年7月以来,経済社会理事会は,事務総長の下に設置された有識者グループを通じ多国籍企業が開発途上国の開発に与えるインパクトの検討を行なつてきたが,第57回会期(同再開会期を含む)において,有識者グループの勧告にもとづき,(a)多国籍企業問題に関する経済社会理事会の諮問機関として,48カ国より任命される上級専門家からなる政府間委員会(多国籍企業委員会)を設立し,また,(b)国連内に多国籍企業の情報の収集・普及及び研究のためのセンターを設立することを決定した。

 わが国からは,上記有識者グループには,小宮隆太郎東京大学教授がメンバーとして参加した。多国籍企業委員会には,横田弘在エクアドル大使が,75年3月の第1回会期の作業に参加した。

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4. 国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)

 

 (1) ECAFE(国連アジア極東経済委員会)は,アジア開発途上諸国における経済・社会面での総合的開発戦略の重視及び太平洋諸島の加盟等を反映して,74年9月上記のとおり,ESCAPと改称された。

 (2) ESCAP第30回総会は74年3月から4月にかけてスリ・ランカのコロンボで開催され,わが国から斎藤厚生大臣を首席代表とする代表団が参加した。

 会議においては現下の国際経済情勢を反映して石油(エネルギー)と食糧問題が各国の関心事項であつたが,スリランカのバンダラナイケ首相は開会演説において,各国の輸出額の0.5%の拠出からなる「世界肥料基金」の設立を提案,また,イランも開発途上国の国際収支及び開発のための援助を目的とする規模20-30億ドルの新しい基金(OPEC諸国及び先進国が拠出)の設立構想を提示した。前者については,世界食糧会議での審議のため,ESCAP事務局具体案を作成すべきこと,後者については,国連特別総会の注意を喚起する旨の決議がそれぞれ採択された。このように,第30回総会が,ESCAPの場にとどまらないグロ-バルな意味を持つ諸問題を提起したことは注目される。更に同総会は「コロンボ宣言」を採択,食糧,エネルギー,原材料及び外部からの援助をESCAPの優先分野と認め,これらの諸問題解決のため,各国の努力及び地域協力の強化を要請した。

 また,ESCAPの機構改革に関する決議が第30回総会で採択された結果,常設委員会は従来の3つから9つに増加したほか,常設委員会の下部機関はアド・ホック化されることとなり,全体として,ESCAPは従来よりも整理された機構となつた。また,わが国が強く主張してきた「農業開発委員会」の設立も決定された。更にわが国がその設立を推進してきた「アジア農業機械センター」についてもフィリピンに設置することが決議された。

 わが国は首席代表演説において,上記機構改革案を支持するとともに,ESCAPが今後優先的に取り組むべき分野として食糧(農業)問題,人口問題等を指摘した。

 (3) ここ1年間のESCAP活動で特に注目されることは,地域の意見をまとめ,それを世界レベルの会議で反映させようとする動きである。世界人口会議について,同会議準備及びフォローアップのための地域協議会が74年5月及び75年1月にそれぞれ開催された。また,第2回国連工業開発機関(UNIDO)総会のためのESCAP特別準備会合も開催されたが,ここで開発途上国側だけで採択したアジア工業化宣言案をESCAPとして採択するよう主張し,先進国側がこれに留保を付すなど,従来のESCAPのあり方から逸脱した動きが顕著であつた。新たに常設委員会となつた経済計画委員会の第1回会合が74年末に開かれ,主として「ESCAP地域における第2次国連開発の10年のための開発戦略」のレビューと評価を行つた。

 わが国のESCAPの協力は資金・技術面とも74年に大幅に伸びたが,主要プロジェクトに対するわが国の協力の概要次のとおり。

 メコン河下流域調査調整委員会に対しては74年には,専門家派遣,ナムグム第2期計画に対する31.8億円の円借款供与約束,ノンカイ・ヴィエンチャン架橋計画の調査等を行つた。その他,アジア沿海鉱物資源共同探査調整委員会(CCOP/EA)に関しては探査活動に対する技術協力,要員訓練,専門家派遣,資金拠出を,アジア・ハイウェー・プロジェクトに対しては専門家派遣を行い,台風委員会関係では調査団を派遣した。東京にあるアジア統計研修所第2期計画(1975-80)には,施設,職員役務等の提供のほか資金拠出を誓約し,アジア経済開発計画研修所及びアジア開発行政センターへも資金拠出を行つた。更に,農業開発を重視する観点から,ESCAP/FAO合同農業部強化のための資金援助及び農業機械センターへの拠出を行つた。

 わが国はアジアの経済社会開発におけるESCAPの役割を重視し,今後とも優良プロジェクトに対し各種の協力を続けていく方針である。

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5. 国連工業開発機関(UNIDO)

 

 UNIDOの事業計画,活動方針の決定は,45カ国で構成される工業開発理事会(IDB)が行なつており,わが国は77年末までIDBのメンバー国である。

 UNIDOの活動は,技術援助のほか,専門分野のセミナー研究会の開催,企業内集団研修,工業投資促進サービスの実施,工業情報の収集,配布等広範囲にわたつている。

 わが国は,UNIDOに協力して74年9月30日から10週間にわたり開発途上諸国からの研修生10名に対し,機械工業における生産管理に関する企業内集団研修を,また,75年1月20日から8週間にわたり開発途上諸国からの研修生7名に対し,基礎化学の生産管理に関する企業内集団研修を実施した。

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6. 国連貿易開発会議(UNCTAD)

 

(1) 一次産品総合プログラム

 73年より74年にかけて行われた米,柑橘類,タングステン等14品目についての市場アクセス及び価格政策に関する政府間集中協議のあとを受け,75年2月に開催された第8回一次産品委では,一次産品問題解決のための総合プログラムに関する討議が行われた。総合プログラムとは,穀物,亜鉛,銅,綿花等主要18品目に関し,国際在庫の設立,そのためのファイナンスを行う共通ファンドの設立,多角的コミットメント,補償融資,市場アクセス等のエレメントの実現を総合的に検討し,開発途上国の輸出収益の保全,拡大を図るというものであり,今後,76年5月-6月に予定されている第4回UNCTADにむけて検討が行われていく予定である。

(2) 製 品 関 係

 73年8月第6回製品委員会で開発途上国から提出された6つの決議案のうち,非関税障壁に関する作業予定に関する決議(本問題審議のため第6回製品委の再開及び第7回製品委に会期内委を設置する)が成立し,また制限的商慣行に関する決議(本問題に関する専門家グループを74年早期に再開する)が議長サマリーの形で合意された。

 他の4つの決議案(調整援助措置に関する決議,開発途上国の輸出奨励に関する決議,セーフガード及びスタンドスティルに関する決議,長期取極(LTA)を含む繊維貿易に関する決議)については審議が延期され,74年7月の同再開会期及び8月の第14回貿易開発理事会(TDB)における討議に持ち込まれた。しかし,いずれの決議案も合意に達せず,今後の審議にゆだねられることになつた。

(3) 特     恵

 74年6月に開催された第6回特恵特別委員会で,開発途上諸国側より5つの決議案が提出され,(1)各国特恵スキーム改善要求決議案,(2)多角的貿易交渉(MTN)との関係に関する決議案の2本が採択され,(3)米国スキームに関する決議(2本),(4)MSAC(注)に関する決議は以後の検討にゆだねられた。同年8月に開催された第14回TDBにおいて上記米国に関する決議は,1本の決議として採択されたが,MSACに関する決議は,75年3月に開催が予定されている第6回TDB特別会期の審議にゆだねられることになつた。

(4) 援 助 関 係

 73年7月に第6回貿易外融資委員会が開催された。開発資金の量的目標に関し,開発途上国側は民間資金の流れや利子支払等を除外すべきことを主張したが,本件経過についてはその後政府専門家グループ会合(第1回は73年6月,第2回は74年5月に開催)において審議された。また債務累積問題に関しても政府間専門家グループ会合が74年5月,12月,75年2月の3回にわたり開催され,開発途上国の債務累積問題の総合的検討が行われた。

(5) 国際複合運送条約

 本件条約は,複合運送(2つ以上の運送手段を利用する通し運送)において事故が起こつた場合の責任分担等を規定する条約であり,コンテナ運送の発達に伴いその採択が要請されているものである。74年11月にUNCTADの下で条約草案作成のための第2回政府間準備グループが開催された。第3回政府間準備グループは,76年2月に開催される予定である。

(6) 技 術 移 転

 74年7月に開催された第3回技術移転政府間グループ会合で本グループを常設委員会に昇格させること,コード・オブ・コンダクトの導入の可能性を検討するための専門家グループ及び特許制度の改革を検討するための専門家グループを設置することを決定した。

(7) 調 整 問 題

 IMF,GATT,UNDTADの3機関の活動をめぐる調整策を検討するとの調整問題に関しては,第12回TDB再開会期(73年5月)以来討議が行われてきている。

 74年の第14回TDBでは,適当な場合には新国際ラウンドにUNCTAD事務局長がオブザーバーとして招待されるべきことが合意された。

 75年9月に開催される国連経済特別総会においては,最近の経済変動に即応しうるよう国連機構を総合的に改革する問題が審議される予定であり,本件に関する今後の議論の高まりが予想される。

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7. 国連開発計画(UNDP)

 

 わが国は発足以来,管理理事国の地位にあり,現任期は75年年末で終る。開発途上国に対する投資前調査と技術援助を中心に援助活動を行つているUNDPは,年々その援助額を増大しているが,わが国の拠出額は74年には,1,600万ドルに拡大され(73年1,150万ドル),米,スウェーデン,デンマーク,蘭,西独,英,加に次ぎ拠出国としては第8位を占めることになつた。75年は1,900万ドルを国会の承認を条件として拠出誓約を行つた。

 72年から採用している国別計画を中心とする援助計画方式に従い,第16回管理理事会では24カ国,第17回管理理事会では22の国及び地域,第18回管理理事会では5カ国,第19回管理理事会では10カ国についての国別ないし地域別計画がそれぞれ承誌された。

 現行5カ年計画(72年~76年)におけるUNDPの支出予算総計は約19.6億ドルで,そのうち援助にあてられる額は約15.7億ドルであるが,近年の経済状勢から援助コスト上昇などのため予算を改訂しており,このため加盟国は拠出金の増加に努力している。

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(注) 第6回特別総会において,天然資源問題につき提出された決議案は次の通り

(括弧内は提案国名)。

1. 国連経済観測所設置案(フランス)

2. 天然資源探査のための国連回転基金の早期活動開始(日本,ボリヴィア,フランス,インドネシア,ケニア,フィリピン及びザイール)

3. 肥料供給に関する緊急措置(ニュー・ジーランド及びスリ・ランカ)

4. 天然資源問題の検討のための有識者グループの召集(米国)

5. 国際資源会議の召集(フランス)

6. 資源・食糧問題検討のための閣僚グループ会合の設置(サウディ・アラビア)

 

(注)石油危機等により最も深刻な打撃を受けた開発途上諸国。