1. 中 東 問 題
73年10月25日安保理は停戦遵守の監視,戦闘行為再発の防止等を目的として国連緊急軍(United Nations Emergency Force;UNEF)を設立し(任期6カ月),同軍をエジプト,イスラエル停戦地域に派遣した。
74年1月18日両国間に兵力引離し協定が成立した結果,同軍はこの兵力引離し地帯に展開されることとなつた。同年4月8日及び10月23日安保理は同軍の任期をそれぞれ6カ月間延長した(決議346及び362)。
他方イスラエル,シリア間停戦地域については,74年5月31日両国間で兵力引離し協定が成立したのを受けて,同日安保理は国連兵力引離し監視軍(United Nations Disengagement Observer Force UNDOF)を設立し(決議350),ゴラン高原の兵力引離し地帯に派遣した(任期6カ月)。次で11月29日安保理は同軍の任期を6カ月間延長した(決議363)。
緊急軍と監視軍の財政は,両者をカバーする単一の予算が組まれて,経費は全加盟国により分担されている。わが国の分担率は7.15%である。
なお4月11日のパレスチナ・ゲリラによるイスラエル領内キリヤトシェモナ村テロ事件に関連して起きたイスラエルのレバノン南部攻撃事件に関し,4月24日安保理は,イスラエルによるレバノン主権侵害を非難し,かつ,あらゆる暴力行為をも非難する決議347を採択した。
(1) 74年7月15日サイプラスに勃発したギリシャ軍事政権の陰謀によるマカリオス政権転覆のクーデターとその後のトルコ軍の介入という一連のサイプラス紛争は,サイプラス共和国の環境を一変させた。今回の紛争により多数の住民が難民化し,その家屋と財産を失つた(全島で225,600人難民化)。
(2) かかるクーデターとその後の紛争の展開に伴い,安保理が7月16日より8月30日まで開かれ,15会合が開催され8決議を採択した(注1)。注目すべきは7月22日の安保理(1782会合)においてサイプラス国連平和維持軍(UNFICYP)の派兵国に対し兵力増強の要請が行われ,現在その兵力は約4,500人に増強されている。
(3) 更に12月15日をもつて期限の切れるUNFCYPのマンデート延長につき,12月14日開催された安保理において6カ月延長が認められた(賛成14,反対0,中国不参加)。同時に総会決議3212(注2)の当事国による関連国連決議の完全履行と事務総長に対し現況の履行状況の報告を要請した決議365をコンセンサスにて採択した。
(4) 75年2月13日,トルコ系住民側はトルコ軍が現実に占領している同島北部地域を「サイプラス連邦共和国のトルコ系住民の自治州」とする連邦化宣言を行なつたため,ギリシャ系サイプラス住民はギリシャの支持の下に2月17日本件を安保理に提訴し,これを受けて2月20日安保理が開催され,本件紛争に関する安保理決議(注3)が,3月12日コンセンサスにて採択された。
(1) 南ア追放問題
安保理は74年10月,今次総会で採択された「南アの憲章及び人権宣言の絶えざる違反に鑑み安保理が国連と南アとの関係を検討するよう要請する」との決議3207に基づき,南アをめぐる情勢及び国連が南アに対してとるべき措置等につき審議を行つた。審議の後,南アが数多くの国連決議を無視し,アパルトヘイト政策を続けていることは国連憲章の原則及び目的並びに国際人権宣言の執ような違反であり,「憲章第6条に従い南アを直ちに国連より除名することを総会に勧告する」とのケニア等4カ国による共同決議案が投票に付され,米,英,仏の拒否権行使により否決された。(この後総会によつてとられた南アの総会参加停止措置については,第1節3(4)南ア問題参照)
(2) ナミビア問題
ナミビア問題に関し今次総会により採択された決議(第1節3(3)ナミビア問題参照)がその中でナミビア問題の審議を安保理に要請していたことに基づき,安保理は74年12月に本問題を審議し,(イ)南アに対しナミビアからの撤退など国連諸決議の遵守,ナミビアの領土保全承認,ナミビアにおける政治犯の釈放及び同地域における人種差別の撤廃を要求する,(ロ)75年5月末までに南アの本決議遵守振り及び遵守していない場合とるべき措置を検討するため,安保理を招集することを決定する,との趣旨の決議366を全会一致で採択した。
(注1) 8決議とは,外国軍隊撤退,即時停戦要請,難民問題の解決等を要請した決議353,354,355,357,358,359,360,361をさす。
(注2) 総会決議3212とは第29回総会においてサイプラス問題が追加議題として10月28日より11月1日まで審議された際に,採択された決議で,その骨子は次のとおり。(イ)外国軍隊の速やかな撤退と外国による干渉の中止(ロ)ギリシャ・トルコ両系サイプラス共和国の政体を考慮する(ハ)すべて避難民を安全に帰郷せしめる。
(注3) 決議骨子次の通り:(イ)サイプラス共和国の主権,独立,領土保全及び非同盟を尊重し,これらを害する惧れのあるあらゆる行為を慎み且つサイプラス島を分割して合併に導くような全ゆる企てを慎むことを要請する。(ロ)2月13日のトルコ系住民による一方的連邦化宣言なregretし,国連の関連諸決議の履行を妨げる惧れのある当事者のすべての一方的行為に憂慮を表明する。(ハ)両系住民代表間の交渉再開のため新たな努力が払われることを考慮する。
(ニ)そのため,事務総長に対し,新たな斡旋に基づき,新たな合意手続に従つて当事者の会合を召集すること及び当事者のため行動することを要請する。これは交渉の再開,強化の下に相互理解と中庸の精神によつて容易にされるためである。
(ホ)事務総長に対し,本決議の履行の進捗につき,安保理に引き続き通報し,並びに事務総長が適当と判断する時で遅くとも75年6月15日以前に報告書を提出することを要請する。