(3) 核戦争防止に関するアメリカ合衆国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の協定(仮訳)

                                        (ワシントンにて 6月22日)

 アメリカ合衆国およびソヴィエト社会主義共和国連邦(以下「両当事国」と呼ぶ。)は,世界平和および国際の安全を強化するという目標を指針として,核戦争が人類に対し破壊的結果をもたらすとの認識に立つて,世界のあらゆる地域において核戦争勃発の危険が減少し,究極的には除去されるための条件を実現したいとの願望から出発して,平和の維持,武力による脅威,または武力の行使を差控えることおよび戦争を避けることに関する国際連合憲章上の両当事国の義務から出発し,かつ,いずれかの当事国が締結している諸協定に従つて,1972年5月29日モスクワで署名された米国とソ連邦の関係に関する基本原則から出発して,また,米国とソ連邦の間の関係の発展は他国(複数)および他国の利益に反対するものでないことを再確認して,次のとおり合意した。

第1条 米国およびソ連邦は,両国の政策の目標が核戦争および核兵器の使用の危険を除去することにあることを合意する。

したがつて,両当事国は,両当事国の関係の危険な悪化を招きうる情勢の発展を防止し,軍事的対決を回避し,また,両当事国間およびいずれかの当事国と他国(複数)との間の核戦争勃発の可能性を排除するように行動することに合意する。

第2条 第1条に従い,かつ,同条に掲げた目標を実現するために,両当事国は,国際の平和と安全を脅やかしうる状況において,おのおのが相手国,相手国の同盟国および他国(複数)に対して武力による威嚇または武力の行使を行なうことを控えるとの前提に基づいて行動することに合意する。両当事国は,両国の外交政策形式および国際関係における行動にあたつて,右のごとき考慮を指針とすることに合意する。

第3条 両当事国は,相互の関係および他国(複数)との関係を,本協定の諸目的と合致する態様で発展させることを約する。

第4条 いかなる時においても,両当事国間もしくはいずれかの当事国と他国(複数)との関係が核が使用される紛争の危険をはらむと思われる時,または本協定の当事国でない国々の間の関係が,米国とソ連の間の核戦争またはいずれかの当事国と他国(複数)の間の核戦争の危険をはらむと思われる時は,米国とソ連は,本協定の規定に沿つて,ただちに緊急協議に入り,右の危険を回避するためにあらゆる努力をすることとする。

第5条 当事国は,おのおの国連安保理,国連事務総長および同盟国もしくは他国(複数)の政府に対して,本協定第4条に従つて開始された協議の進捗状況および結果を通報する自由を有する。

第6条 本協定の規定は,次のいずれにも影響を与えないし,またこれをそこなうものでもない。

(A) 国連憲章51条で考えられている個別的または集団的自衛の固有の権利。

(B) 国際の平和と安全の維持もしくは回復に関する規定を含む国連憲章の規定。

(C) いずれかの当事国が,条約,協定およびその他適当な文書によつて約束している同盟国もしくは他国(複数)に対する義務。

第7条 本協定は,無期限に続くものとする。

第8条 本協定は署名と同時に発効する。

1973年6月22日にワシントン特別区で,ひとしく正文である英語およびロシア語により,2部作成した。

    米国を代表して           ソ連邦を代表して

    米国大統領             ソ連邦共産党中央委員会書記長

    リチャード・M・ニクソン       L・I・ブレジネフ

 

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