(2) 多数国間関係
(イ) ガット閣僚会議東京宣言(仮訳) (9月14日 東京)
1 閣僚は,貿易交渉準備委員会の報告書を検討し,多くの政府がガットの枠内における包括的な多角的貿易交渉に参加することを決定したこと及びその他の政府が出来るかぎり速やかに決定を行なう意図を示したことに留意して交渉の正式な開始を宣言す る。交渉することを決定した政府は,ガット事務局長にその旨の通報を行なつたが,閣僚は,交渉への参加が事務局長への通報を行なうことにより他のいかなる政府にも開放されることを合意する。閣僚は,交渉に出来る限り多くの国が積極的に参加することを希望する。閣僚は,交渉が出来る限り迅速にかつ効果的に行なわれ,この目的のために関係政府が必要な権限を有することとなることを期待する。
2 交渉は,次のことを目的とするものとする。
-世界貿易の拡大と一層の自由化及び世界の諸国民の生活水準と福祉の改善を達成すること。この諸目的は,就中,貿易障害の漸進的な撤廃及び世界貿易を律するための国際的な枠組の改善を通じて達成され得る。
-開発途上国の発展の必要性を考慮し,開発途上国が外貨収益の大幅な増大,輸出の多様化,貿易の成長率の上昇を達成できるように,また,世界貿易の拡大にこれら諸国が参加する可能性の改善並びに,この拡大から生ずる利益の分配にあたり,可能な最大限度において,開発途上国関心産品の市場進出条件の実質的改善及び,適当な場合にはいつでも,一次産品の安定的な,衡平な,かつ,採算のとれる価格を達成するための措置を通じ,先進国と開発途上国との間のより良い均衡を達成できるように開発途上国の国際貿易にとつての追加的利益を確保すること。
この目的のため,開発途上国の特定の貿易問題を考慮しつつ,すべての参加国の貿易問題を衡平な方法で解決するための協調的な努力がなされなければならない。
3 この目的のため,交渉は,就中,次のことを行なうことを目指すべきである。
(a) 出来る限り一般的に適用される適当な方式の採用により,関税に関する交渉を行なうこと。
(b) 非関税措置を軽減又は廃止し,これが適当でない場合には,これら措置の貿易制限的又は阻害的な効果を軽減又は廃止するとともに,これら措置を一層効果的な国際的規律の下におくこと。
(c) 補助的技法として,選択された分野におけるすべての貿易障害の調和的な軽減又は廃止の可能性の検討を含むこと。
(d) 貿易自由化の一層の促進及びその成果の確保を図る目的で,特に第19条の適用の態様を考慮しつつ,多角的セーフガード・システムの妥当性の検討を含むこと。
(e) 農業に関し,交渉の一般目的に則りつつ,この分野の特殊性及び特別な問題を考慮に入れた交渉のアプローチを含むこと。
(f) 熱帯産品を特別なかつ優先的分野として取り扱うこと。
4 交渉は,工業品及び農産物双方にわたり,関税,非関税障壁及び貿易を阻害するその他の措置を対象とするものとする。未加工であるといずれかの加工段階にあるとを問わず,熱帯産品及び原料が含まれ,特に開発途上国の輸出関心産品及びこれら諸国の輸出に影響を及ぼす措置が含まれる。
5 交渉は,最恵国待遇条項を遵守し,かかる交渉に関する「一般協定」の諸条項に従い,相互の利益,相互の約束及び全般的な相互主義の原則に基づいて行なわれなければならない。参加国は,交渉において,全体的な利益のバランスが適切な方法により出来る限り高い水準で達成されるように共同して努力しなければならない。先進国は,貿易交渉において行なつた関税その他開発途上国の貿易に対する障害の軽減又は廃止に関する約束について相互主義を期待しない。すなわち,先進国は,開発途上国が貿易交渉においてそれぞれの開発上,資金上及び貿易上の必要に合致しない寄与を行なうことを期待しない。閣僚は,開発途上国がその輸出収益を増大し,その経済発展を促進するために行なう努力を援助するためとられるべき特別な措置及び,適当な場合には,開発途上国の関心産品又は分野に対し与えられるべき優先的配慮の必要性を認める。閣僚は,また,一般特恵制度の維持及び改善の重要性を認める。閣僚は,さらに,可能かつ適当な交渉分野において開発途上国にとつて特別かつより有利な取扱いがなされるような方法で開発途上国に対し異つた措置(differential measures)を適用することの重要性を認める。
6 閣僚は,後発開発途上国の特殊な状況及び問題に特別な配慮が与えられなければならないことを認め,これらの諸国が交渉において開発途上国の利益のためにとられるあらゆる一般的又は個々の措置との関係において特別な取り扱いを受けることを確保する必要性を強調する。
7 世界貿易を自由化する政策は,世界経済をこれまで発生したような動揺と不均衡から保護する通貨制度を設立するための並行的な努力がなされない限り成功裡には実施され得ない。閣僚は,貿易分野において努力を行なおうとしていることは,秩序ある状態を維持し,永続的で衡平な通貨制度を確立するために努力が続けられることを意味しているという事実を見失なわないであろう。
閣僚は,同様に,彼等が行なおうと意図している貿易の自由化の新たな段階は通貨体制が秩序をもつて機能することを容易にしなければならないことを認識する。
閣僚は,交渉の開始の時点及び交渉期間を通じ,これらの点に留意すべきであるとみとめる。両分野における努力は,開発途上国の経済の特殊な性格及びこれら諸国の問題を考慮に入れつつ,国際経済関係の改善に有効に貢献しうることとなろう。
8 交渉は,一個の事業と考えられなければならず,それを構成する種々の要素は並行的に進められなければならない。
9 「一般協定」に規定される原則,規則及び規律に関して,支持を再確認する。(これは,必ずしも現在「一般協定」の締約国でない諸国の代表の見解を示すものではない。)
交渉の進展に照らして望ましいと考えられる世界貿易を律するための国際的な枠組の改善に考慮が払われなければならず,また,この努力において,結果として導入されるいかなる措置も貿易交渉の全般的目的及び原則,特に貿易自由化,に合致するものとなることを確保するよう配慮が払われなければならない。
10 貿易交渉委員会は,この宣言を考慮にいれ,就中,次の権限を持つて設立される。
(a) 詳細な貿易交渉計画を作成し,実施し,かつ,先進国と開発途上国との間の交渉のための特別手続を含む適当な交渉手続を確立する。
(b) 交渉の進展を監督する。
貿易交渉委員会は,参加政府(欧州共同体を含む。)に開放されるものとする。貿易交渉委員会は,1973年11月1日以前に最初の会合を開くものとする。
11 閣僚は,貿易交渉が1975年中に完結することを意図する。
(昭和48年10月13日 東京において)
1 第8回東南アジア開発閣僚会議は,1973年10月11日より13日まで東京で開催された。閣僚レベル会議に先立ち,会議は,先ず第1日目に,官吏レベルで会合し,地域プロジェクトにおいてみられた進展について検討を行つた。
2 従来より会議に参加してきた9カ国,即ちインドネシア共和国,日本,カンボディア,ラオス,マレイシア,フィリピン共和国,シンガポール共和国,タイおよびヴィエトナム共和国の全ての代表が列席した。
会議は,設立当初より参加を招請されていたが,今次会議において初めて参加したビルマに対し心からの歓迎の意を表した。
会議はまた,東南アジアの経済開発について特別の関心を有する国として会議に新たに参加した豪州およびニュー・ジーランドに対して心からの歓迎の意を表した。
3 会議には,豪州のドナルド・R・ウィルシー外相補佐大臣・ビルマ連邦のウ・チ・コ・コ駐日特命全権大使,インドネシア共和国のB・スマルリン行政管理担当国務大臣兼開発企画庁副長官,日本の大平正芳外務大臣,カンボディアのキイ・タン・リム計画大臣,ラオスのシスーク・ナ・チャムパサック大蔵大臣兼国防大臣,マレイシアのフセイン・オン副首相,ニュー・ジーランドのヒュー・ワット副首相,フィリピンのセサール・ビラタ大蔵大臣,シンガポールのオスマン・ウォク社会事業大臣,タイのチャートチャイ・チュウハワン外務副大臣およびヴィエトナムのハ・スアン・チュン大蔵大臣が首席代表として参加した。
4 会議にはまた,オブザーバーとしてアジア開発銀行調査部長ペリー・チャン博士,東南アジア運輸通信開発局次長S・H・シマテゥパン氏・東南アジア漁業開発センター事務局長アポン・スリブヒブハッド氏,東南アジア貿易・投資・観光促進センター事務局長吉川重蔵氏が出席した。
5 会議は,日本国内閣総理大臣田中角栄閣下により開会され。同総理大臣は,日本国政府ならびに国民を代表して各国代表およびオブザーバーに対し心からの歓迎の意を表明した。
同総理大臣は,日本と東南アジア諸国との関係は,相互の繁栄が互に切り離しては考えられないという特別のものであることに注目した。同総理大臣はまた,両者間に存在する相互依存,相互補完関係という強固な絆を一層強じんなものとしうるか否かは,関係国の意思および努力にかかつている点を強調した。
同総理大臣は,開発協力の重要な目的は,開発途上国の国造りを助けることにあるとの信念を表明した。同総理大臣は,真に相手に役に立つ援助をきめこまかく誠実に実行することが必要であることを強調するとともに,量的にも,質的にも,日本の開発援助を改善してゆく決意を表明した。なかんずく,援助条件の改善のためには,新たな努力をみのらせ,また,すでに約束した案件の実施については,常時注意を払つてゆく意向である旨明らかにした。
同総理大臣は,官民あらゆるレベルにおける各国相互間の「間断なき対話」の重要性を強調した。そのような不断の対話は,各国の相互理解と信頼をより強固なものとし,開発問題を解決する上で有用であろう。
同総理大臣は,新たに会議に参加したビルマ連邦,豪州,ニュー・ジーランドの代表を歓迎するとともに,閣僚会議が過去7カ年の経験と成果の上に,参加国のすそ野の広い協力・協調関係を打ちたてられてゆくことを心から期待する旨表明した。
6 会議は,その目的である東南アジアの経済・社会開発の促進に関連する事項について率直に,和気あいあいとかつ建設的に討議を行つた。
会議は,その発足の地に戻つた機会に,過去の業績の全般的な評価を行うことは時官に適つていると判断した。諸閣僚は,過去の業績が満足できるものと考え,会議が諸閣僚間の率直な意見交換のための有意義な場であると感じた。
会議は,時代の要求に合致した方向に沿つて会議を発展せしめるために,努力を一段と強化しようとする参加諸国の決意を再確認した。
7 会議は,東南アジアの経済開発の全般的進展および問題の評価を行なつた結果,関係国が当面する諸国難にも拘らず鋭意努力を行ない,この地域の開発のため実質的進展がみられたことを認めた。この地域の農業生産は,主として悪天候のため不振であつたことに対し,諸閣僚は懸念を表明した。若干の先進国の食糧輸出政策の変更が域内の食糧の供給および価格状態に悪影響を与えたことから深刻な困難を回避するために注意が払われなければならないという見解も述べられた。
インドシナ諸国の開発問題に関しては,会議は,戦禍を蒙つた国々が戦争による物質的および人的被害を復旧し,戦争により被害を蒙つている数百万人に対して緊急援助を供与し,経済的,社会的基盤を復興し,および戦時から平時経済へ円滑かつ迅速な移行をはかるための援助を緊急に必要としていることを認めた。
8 会議はまた,参加国が直面している問題の解決のため,諸代表によつてなされた示唆および提案に留意した。
東南アジア諸国の基本的経済問題に対する会議のアプローチは,先進加盟国から開発途上加盟国のための実物資源の移転の改善を含むべきであるとの強い要請が行なわれた。
更に,より多くの開発援助が,開発途上国に対して,これら諸国の債務負担の累積に十分考慮を払いつつ,非常に緩和された条件で供与されるよう強く要請された。また,先進諸国の援助および貿易政策は,開発途上国への開発援助の価値を高めるよう調整されるべきであるとの示唆がなされた。
農業の分野においては,域内の農業の近代化を通じ食糧生産を拡大することが要請された。輸出産品の価格が激しく変動することを防ぐ必要性を強調しつつ,この地域の主要農産品との関係において,緩衝在庫補足融資計画および輸出補償制度を設置するべきであるとの提案が行なわれた。
製造業部門における開発は,統合された農村開発計画に対して投資を同時に行なうことにより,高められるべきであるとの勧告がなされた。
特に開発途上国の製品輸出との関係において,貿易自由化の拡大を更に進めるよう強く要請された。また,合成ゴム生産国が,域内の主要天然ゴム生産国の経済に不必要に影響を与えることのないような市場条件を確保するよう,協力が要請された。
国際流動性に妥当な考慮を払いつつ,新たなS・D・Rと開発融資とのリンクを確立するよう勧告が行なわれた。更に工業開発のための設備および原材料の輸入に活用できるよう新しい通貨単位のファシリティが直接に配分されるべきであるとの勧告も行なわれた。
東南アジア諸国の開発努力を援助するため,現存の地域プロジェクトは,その活動 を有効に実施しうるよう適切な充実がはかられるべきであるとの示唆がなされた。他の既存協力措置との重視ならびに地域プロジェクトおよび機構の不必要な増殖を回避 するためにあらゆる注意が払われるべきであるとの示唆もなされた。
インドシナ諸国の戦後における安定,復興および開発の膨大な事業を進めるに当り,これら諸国の必要に応え,外部より実質的かつ時宜を得た援助を供与するようにとの呼びかけが,すべての当事者に対し行なわれた。
9 会議は,日本国政府が東南アジア諸国の開発努力に対し最大限の支持を与えるというその基本的政策目的を改めて確認したことに留意した。会議は,政府開発援助の一層の増大,援助条件の改善,約束済援助の実施の迅速化,国際機関への拠出の拡充の ために日本国政府がとりつつある幾つかの具体的措置を歓迎するとともに,援助の円滑な実施の促進のために関係国間の協力を求めたいとの呼びかけに留意した。
会議は更に,輸出拡大は開発途上国の自立的経済発展にとつて不可欠の前提条件であることを日本が十分認識していることに留意した。会議はまた,一般特恵の改善,たび重なる関税引下げ輸入自由化等の措置を通じて,開発途上国にとつての関心産品の日本による輸入増大のため特別の努力がなされてきたことに留意した。
会議は,東京宣言を基礎として貿易交渉の新ラウンドを積極的に推進して行くとの日本国政府の意向およびS・D・R・リンク問題に関する開発途上国の見解に対するその同情的態度に注目した。
会議は,日本国政府が農業開発全体の各種側面について技術および資金協力を一層活発に行う意向であることに留意した。日本国政府は,従来域内の幾つかの国に対して食糧不足緩和に資するための協力を行つてきたが,今次会議において,同国の米の過剰在庫がほとんど底をついたことを報告せざるをえなくなつた。会議は,この地域における食糧問題の長期的,総合的かつ抜本的な解決をはかるために可能な措置を共同で探究していくべきであるとの日本国政府の提案を歓迎した。
会議は,日本国政府がインドシナの全ての国の民生安定,復興および開発のための努力を助けるため,援助国および関係国際機関の協調体制の早急な確立を強く期待しつつも,そのような枠組ができる以前においても同地域の当面の必要に応じた協力を行い,その第一歩としてヴィエトナム共和国に5千万ドルの援助を供与する意向を有していることに注目した。
10 会議は,豪州およびニュー・ジーランドが,これまで東南アジア諸国との関係を強化することによつて同地域との間に確立した広汎な連携を更に深めようとの意向を謝意をもつて注目した。
会議は,同地域の平和の進展に対する豪州の強い関心に留意するとともに,より公正な国際経済秩序に貢献するために最近豪州政府がとつた各種の措置に注目した。これらの措置には国際準備増加の規制,関税の引下げ,資本および技術援助の拡大および更に開発途上国に対する豪州の特恵関税制度の実質的改善を含むものであつた。右新特恵関税制度は,旧割当制を廃し,品目を拡大し,かつ,将来における特恵マージンの一層の増大を考慮したものである。会議は更に,豪州が,1970年代の終りまでに GNPの0.7パーセントの政府援助目標に向つて努力するとともに豪州開発援助庁の設立によつて援助行政を一元化,効率化する意向であることに留意した。
会議はまた,豪州が加盟国政府の2国間の要請に応えて供与する奨学金の費用に加えて,1973~74年に東南アジア漁業開発センターに2万豪州ドルを拠出することを決定したことに注目した。
会議は更に,ニュー・ジーランド政府が政府開発援助のGNP0.7パーセント目標を達成すべく確固たる努力を払つていることに注目した。同政府の今後の計画は,この目標を1975年までに達成するために援助プログラムを3倍にすることを必要とするものである。会議は,ニュー・ジーランドが同国の本閣僚会議への参加ならびに東南アジア文部大臣機構への準加盟申請および東南アジア運輸通信調整委員会への参加の決定に見られるように東南アジアが特別の関心地域である旨表明したことを歓迎した。
会議は,援助が決して開発への挑戦に対する解答の全てではないとのニュー・ジーランドの見解に留意した。ニュー・ジーランドは,開発における貿易の役割を十分認識するものである。同国は,開発途上国の立場に関しガット東京宣言に盛られた重要性に同意し,問題解決のためにこれら諸国と協力して行く意向である旨述べた。
11 会議は,東南アジア運輸通信開発局(SEATAC)が域内の専門職員を得て,1973年1月より活動を開始したことを,満足の意をもつて注目した。開発局の事業計画は野心的なものであり,その有効な実施は,東南アジア諸国自身の確固たる努力および外部から相当額の金融的,技術的援助を必要としよう。
会議はまた,開発局がその憲章を作成していることに注目した。この憲章により,同局がこの地域の運輸,通信開発の地域協力を促進する機構としての可能性を十分に実現しうることとなろう。
会議は,日本,豪州およびニュー・ジーランド政府が,この地域プロジェクトに有意義に協力する方途を探求する意向であることに注目した。
12 会議は,東南アジア漁業開発センター(SEAFDEC)の既存の2部局により実施されている活動に支持を与えた。会議は,フィリピンにおける養殖部局の正式設立を歓迎するとともに,同部局の施設の完成にむかつてなされた進展および機材供与の実施を迅速化する必要性に大きな満足の意をもつて留意した。
会議は,一般的にセンターの既存の2部局の財源が不十分なことおよび特に,来年度予算において予想されている不足につき懸念を表明するとともに,この状態を改めるためにあらゆる可能な措置がとられるよう強く要請した。
13 会議は,インドネシア政府に対し,本年8月,ジャカルタにおいて衛生向上のための実施および企画についてのセミナーを開催したことに感謝の意を表明した。会議は,公衆衛生および殺虫剤規制に関する地域プロジェクトの作業部会が付記事項を既 に了し,更に行うべき具体任務がもはや有しないことにかんがみ,同作業部会を終了せしめるべきであるとのインドネシア政府の示唆に同意した。
14 会議は,本年5月,タイにおいて開催された第2回東南アジア家族・人口計画地域協力閣僚会議および東南アジア家族・人口計画地域協力政府間調整委員会(I・G・C・C)の第3回会議の結果として,臨時事務局が常設化されたことに満足した。また,二つの会議が家族および人口計画の両分野での委員会の今後の活動につき,以前より,更に活動を指向する詳細な事業計画を採択したことに,満足の意をもつて注目した。
会議は,調整委員会の活動が参加諸国の優先度の高い必要性に沿つてさらに強化されることを希望した。しかしながら,調整委員会の活動の拡大に伴ない,技術的,財政的援助の必要が増大している。
会議は,日本,豪州およびニュー・ジーランド政府が本地域プロジェクトに今後協力していくための方途を探究して行く意向であることに注目した。
15 会議は,開発閣僚会議参加諸国の高級官吏および極めて有能な学者が参加して本年3月に東京で開催された「1970年代の東南アジア経済」に関する開発銀行の調査に関する地域セミナーにつき日本代表による報告を受けた。会議は,域内貿易の拡大,技術協力についての地域的な共同努力および域外諸国との努力等,このセミナーで出されたいくつかの有益な構想および意見に留意し,地域協力は開発の過程での不可欠な要素を構成するとの見解を支持した。
16 会議は,日本代表より本年5月に東京で開催されたアジア租税行政および調査に関する研究グルーブ(SGATAR)の第3回会合の報告を受けた。
会議は,同研究グループがこれまで進めてきた意見の交換は,有用な目的に資するものであることを認めた。会議は,フィリピンおよびインドネシア政府により,次回の研究グループ会合における議題として,祖税負担の産業間比較ならびに納税者と税務当局との間の関係の問題継続がそれぞれ提案されたことに留意した。
会議は更に,東南アジア地域で活動している納税考としての多国籍企業の役割に関する意見交換の重要性を強調したインドネシア代表の発言に留意した。
会議は,加盟国が近い将来においてACTARを設立せよとのフィリピンの提案を再検討する必要を認識するようにとの同国の希望表明ならびに右検討を次期研究グループの議題に加えよとの同国の要請に留意した。
17 会議は,20カ月前に東京で発足した東南アジア貿易,投資,観光促進センターのこれまでの実績に注目した。会議はまた,同センターの運営の初期の段階に存在した制度的・財政的困難が加盟国間の協議を通じて漸進的に解決されてきたことを多とし た。
会議は,センターがその目的達成のため,その活動が更に強化されるべきことに同意した。
18 会議は,東南アジア医療保健機構(SEAMHO)設立に向つてこれまでにみられた 進捗ぶりにつき日本代表団より報告をうけた。これまでに確定された同機構設立のための協定案文ならびに2回にわたる同機構設立のための政府間会合の議事抄録もまた,会議に提出された。
会議は,SEAMHOが東南アジアの諸国民の健康の増進と東南アジア地域の疾病の抑制を通じ,これら諸国民の福祉に大きく貢献することに留意した。
会議は,また,SEAMHOの事業が他の国際機関の活動と重複すべきでない旨の一部の代表よりの意見表明にも留意した。
会議は,同条約案に署名する用意のある関係国にSEAMHO設立条約案を勧奨した。同条約を実際に署名する時期および場所については,協議を通じて決定されることが了解された。
この点に関し,インドネシア代表団は,同国政府が同条約案を採択することを決定できる前に,同条約案を検討するための時間が更に必要であるため,態度を留保した。
会議は,保健大臣会議が将来の適当な時期に開催されるであろうことに留意した。
19 会議は,開発援助計画に関する作業部会の設置準備の進捗につきインドネシア代表団による報告に注目した。
会議は,全般的な地域開発計画が提案されている作業部会の作業の結果として策定されれば,東南アジア地域の経済社会開発を一層促進するために有意義であろうとの見解であつた。
20 会議は,ヴィエトナム共和国政府による東南アジア工科大学の設立計画を作成する努力に敬意を表した。ヴィエトナム共和国は,このプロジェクトのため施設を提供する意向であるが,加盟国および国際的資金源より財政援助をさらに求められなければならないことが確認された。会議はさらに,このプロジェクトの実施のため,具体的行動がとられるよう強く要請した。フィージビリティ報告完成後,次回閣僚会議に提出する報告を詳細に検討するための国際委員会が設立されるであろう。
21 会議は,会議の技術的諮問機関として活動し,技術協力の促進と地域的関心のあるプロジェクトおよび計画を参加国のため作成することを目的とする投資前調査を実施するため,「協力および開発のための東南アジア技術援助基金」と称すべき地域基金 の設置提案に関するヴィエトナム共和国代表団の説明に注目した。会議は,同提案が参加国によりさらに検討されるべきことに留意した。
22 会議は,参加国からの高級官吏または専門家グループによるこの地域の食糧問題の検討を早い時期に開始すべきであるとの日本代表の提案を注目し,同提案が外交チャンネルを通じて更に検討されるよう示唆した。
23 会議は,会議が今回その二巡目に入つたのにともない,会議を東南アジアの開発をより効果的かつ有益に促進しうるものとする方途を探究するため,その役割および範団の徹底的なレヴューを共同して行なうべきであるとのタイ代表の提案を検討した。同提案は,通常第9回閣僚会議に数カ月先立つて召集される適当な地域協力の分野の適当な専門家の出席する高級経済官吏会合において一層の研究を行なうに値するとの点で意見の一致をみた。
24 会議は,第9回東南アジア開発閣僚会議を1974年10月ないし11月にマニラで開催したいとのフィリピン政府の招請に注目し,感謝をもつてこれを受諾した。
25 会議は,当地に参集した各国代表団およびオブザーバーにあたたかい歓迎とゆきとどいた接遇を与えた日本国政府および国民に深甚な感謝の意を表明した。
1973年10月13日 於東京
(2月13日,ワシントン)
要 約
1 ベルギー,カナダ,デンマーク,フランス,ドイツ連邦共和国,アイルランド,イタリア,日本,ルクセンブルグ,オランダ,ノールウェー,連合王国,アメリカ合衆国の外務大臣は,1974年2月11日から13日までワシントンにおいて会合した。ヨーロッパ共同体としては,理事会議長および委員会委員長が代表して出席した。
大蔵大臣,エネルギー問題,経済問題,科学技術問題担当大臣もまたこの会合に出席した。この会合にはOECD事務総長も出席した。閣僚は,国際エネルギー事情およびその影響につき検討し,建設的かつ包括的な解決を要するこの挑戦に対応する行動の方向づけを行つた。この目的のため閣僚は,効果的な国際協力をもたらす具体的な措置につき合意した。
閣僚は世界のエネルギー問題の解決は,産油国および他の消費国との協議のもとに探究されるべきことを確認した。
現状分析
2 閣僚は,過去約30年にわたる生産性および生活水準の向上は,かなり安定した価格におけるエネルギー供給の増大が容易に行われたことにより大いに促進されたことに留意した。閣僚は,増大する需要に対応するという問題は,現在の事態以前から存在していたことおよび世界経済のエネルギー供給増大の必要性は,積極的な長期的解決を要請することを認めた。
3 閣僚は,現在のエネルギー情勢はこれらの根本的な諸要因の激化および政治的変動の結果であるとの結論に達した。
4 閣僚は石油価格の大幅上昇によつて惹起された諸問題を検討し,世界の国際収支構造の見通しの急激かつ,重大な変更に関する最近の国際通貨基金20カ国委員会のローマ会合において証明された深刻な懸念に同感を示した。
5 閣僚は現在の石油価格は世界の貿易,金融構造に前例のない状況をもたらしたことにつき意見の一致をみた。
閣僚はいかなる消費国もこのような状況から超然としていることを望み得ないこと,また,通貨または通商上の措置のみによつては石油価格の支払の影響に対処することは期待し得ないことを認めた。閣僚は現在の情勢はもしそれが継続すれば所得お よび雇用の深刻な悪化に導き,インフレ圧力を強めすべての国民福祉を危険にさらすと考える。閣僚は金融上の措置はそれだけでは現在の情勢に対する圧迫に対処することができないと信ずる。
6 閣僚はかかる状況が開発途上国にもたらす波及効果に特別の関心を表明し,この問題を解決するための国際社会全体の努力の必要性を認めた。
現在の価格のもとでは,開発途上国にとつて追加的なエネルギー・コストはこれらの諸国の経済発展の見通しに深刻な打撃を与えることになろう。
一般的結論
7 閣僚は貿易,通貨,あるいはエネルギーのいずれの分野にせよ国家政策の推進に際しては,一方において各国の利益と他方において世界経済制度の維持との調和をはかる努力がなされるべきであることを確認した。産油国を含むすべての関係国の間の調和のとれた国際協力は需給情勢改善の促進,現状がもたらす,好ましからざる経済的波及効果の改善,およびより衡平かつ安定した国際エネルギー関係のための基盤整備に役だつであろう。
8 閣僚は,これらの諸点を総合して考慮すれば,すべての分野における国際協力を大幅に増大させなければならないと感じた。今次会議の参加国はいずれも他の消費国および産油国と緊密に協力して,この目的のため,最大限の貢献を行う強い意向を表明した。
9 閣僚は協調的措置により,世界エネルギー情勢のすべての局面に対処するための総合的行動計画の必要性につき合意した。これを行うにあたり閣僚はOECDにおける作業を基礎とすることに合意した。閣僚は,適当な場合には,これらの努力に他の諸国が参加するよう招請する場合があり得ることを認識した。
国際協力のこのような行動計画は次のような分野において国家政策を協調させつつ手段および努力を分かつことを含む。
―エネルギーの保全と需要の抑制
―緊急時および厳しい不足時における石油供給の割当の制度
―エネルギー供給源の多角化をはかるため追加的エネルギー源の開発の促進
―国際的な協調努力を通じるエネルギーの研究開発計画の促進(※9項全体)
(フランスは※印の項は受諾せず,以下同様)
10 金融および経済問題については,閣僚は協力を強化し,現在のエネルギー情勢の経済上および金融上の波及効果,特に国際収支不均衡問題の処理に関するIMF,世銀およびOECDが打つている作業を大いに促進することを決定した。
閣僚は次のとおり合意した。
―石油価格の国際収支への影響に対処するにあたり,閣僚は,競争的為替レートの切下げおよび貿易と支払制限の強化または対外借款における破壊的行動を回避することの重要性を強調した。(※)
―閣僚は,財政的協力は,国際的経済制度において最近生じた諸問題を部分的にしか緩和し得ないが,既存の公約および市場の信用制度を強化する短期的措置および可能な長期的メカニズムについて作業を進めるであろう。(※)
―閣僚は,現在のエネルギー・コスト水準の結果としての諸困難をできるだけ軽減するような国内経済政策を追求するであろう。(※)
―閣僚は,適量の資源を有するすべての国を含む国際的な連帯感にもとづき二国間および多角的機構を通じて開発援助の流れを維持,増大させるためのねばり強い努力を続けるであろう。
11 さらに閣僚は世界全体の需給事情の改善に資するごとき新エネルギー源および技術の各国自身のあらゆる実施可能な計画を促進することに合意した。
12 閣僚は国際石油会社の役割を詳細に検討することに合意した。
13 閣僚はエネルギー源開発の一環として自然環境を維持し改善することの重要性が引き続きあることを強調し,これを各国の活動の重要な目標とすることに合意した。
14 閣僚はさらにすべての関係国の長期的利益を考慮に入れた産油国および他の消費国と多角的な協調関係を発展させる必要があることにつき合意した。閣僚は数量および価格についてのエネルギー供給の安定化の問題につきこれらの諸国と技術的情報を交換する用意がある。
15 閣僚はエネルギーおよび一次産品というより広汎な問題を世界的規模でまた,特に国際連合特別総会においてとりあげるという国際連合におけるイニシアティヴを歓迎した。
フォロー・アップ機構の設置
16 閣僚はさきに言及されている行動の進展を監督し,かつ調整するため各国政府高官を代表とする調整グループを設置することに合意した。
調整グループは,最も適した自己の作業計画を決定する。調整グループは:
―既存機関に割当てられることがあり得る作業をモニターし,かつ問題の所在を解明する。
―現在とりあげるに適した機関が存在しない作業を行うため必要な場合には臨時の作業グループを設置する。
―消費国および産油国の会議の準備を監督する。この会議はできるだけ早い機会に開催することとし,また必要があればこの会議の前に消費国間の会合が開かれる。(※16項全体)
17 閣僚はそのような会合の準備にあたり開発途上国,その他消費国および産油国と協議を行うべきことに合意した。(※)