(カ) 第4次中東戦争および中東問題関係

(a) 第4次中東戦争に関する山下官房副長官発言   (昭和48年10月8日)

わが国としては戦火が一日も早く収拾されることを望む。武力紛争の根元には,永年 にわたり中東紛争が未解決のままにとどまつていることがあり,わが国としては1967年の国連安保理決議242号に基づき,公正かつ永続的な平和がこの地域に確立されることを望みたい。

(b) 中東問題に関する二階堂官房長官の発言     (昭和48年11月6日)

中東問題についての我が国の態度は先般の在京アラブ10か国大使あて口上書のとおりであるが我が国は武力による領土の獲得には絶対反対であり,この立場からかねてより安保理決議242の早急実施を主張してきているところこの際改めて今般の停戦決議にも明示されているごとく安保理決議242の完全な実施が直ちに開始されることを強く希望するとともにそのためにこの地域に大きな影響力を有する米ソ両国が,公正且早急な解決のために全ゆる努力を行うことを強く要望するものである。

なおパレスチナ問題について我が国はパレスチナ人の平等と自決を認める国連決議を支持している。

(c) 中東問題に関する官房長官談話         (昭和48年11月22日)

1 わが国政府は,安保理決議242の早急,かつ,全面的実施による中東における公正,かつ,永続的平和の確立を常に希求し,関係各国及び当事者の努力を要請し続け,また,いち早くパレスチナ人の自決権に関する国連総会決議を支持してきた。

2 わが国政府は,中東紛争解決のために下記の諸原則が守られなければならないと考える。

(1) 武力による領土の獲得及び占領の許されざること。

(2) 1967年戦争の全占領地からのイスラエル兵力の撤退が行なわれること。

(3) 域内のすべての国の領土の保全と安全が尊重されねばならず,このための保障措置がとられるべきこと。

(4) 中東における公正,かつ,永続的平和実現に当つてパレスチナ人の国連憲章に基づく正当な権利が承認され,尊重されること。

3 わが国政府は,上記の諸原則にしたがつて,公正,かつ,永続的和平達成のためにあらゆる可能な努力が傾けられるよう要望する。我が国政府としても,もとよりできる限りの寄与を行なう所存である。

わが国政府はイスラエルによるアラブ領土の占領継続を遺憾とし,イスラエルが上記の諸原則にしたがうことを強く要望する。わが国政府としては,引続き中東情勢を重大な関心をもつて見守るとともに,今後の諸情勢の推移如何によつてはイスラエルに対する政策を再検討せざるを得ないであろう。

(d) イスラエル占領地域に関する外務省情報文化局長談(昭和48年12月13日)

現在エジプト・イスラエル間の101キロ地点の軍事会談が中断され,エジプト・イスラエル戦線及びシリア・イスラエル戦線の緊張が高まり,戦争再開の可能性も排除できない状況は,きわめて憂慮に耐えない。中東に和平をもたらすために第一になすべきことは,イスラエル軍が直ちに,少なくともジュネーブ会議の初期の段階において,国連安保理決議339および340に従つて10月22日の停戦決議の効力の発生の時点において占めていた位置にもどることであると考える。われわれとしてはこの撤退をイスラエルに 強く訴える。この撤退が1967年の戦争以来イスラエルが占領しているすべてのアラブの領土からのイスラエルの撤退の第一歩となるべきであると考える。

(e) 日本政府特使三木副総理のエジプト訪問に際しての共同声明

                     (昭和48年12月18日 ニジプト)

1 三木武夫日本政府特使は,12月14日から18日までニジプト・アラブ共和国カイロを訪問した。その間サダト大統領を表敬訪問するとともに,ハテム副首相と会談を行なつた。これらの会談を通じ,日本側とエジプト側は,両国間の友好関係を更に一層促進することは,両国民にとり極めて有益であるとの合意に達した。

2 中東問題について,エジプト側は,この問題の解決の核心は,イスラエル軍が1967年戦争の占領地から撤退すること及びパレスチナ人の正当な権利を回復することの2点であるとのエジプト政府の立場を説明するとともに,アラブ側の中東問題解決への強い決意を表明した。

三木特使は,武力による領土の獲得及び占領の許されざることは日本外交の基本原則であることを説明し,特使が外務大臣時代に採択された1967年の安保理決議242が今日に至るまで実施されていないことに責任を感じていると述べた。また特使は,公正,かつ永続的平和実現のためには,1967年戦争の全占領地からのイスラエル兵士の撤退が行なわれるべきであり,中東におけるパレスチナ人の正当な権利は国連憲章及び決議に従つて承認され,そん重されるべきであると述べた。また,中東における平和なくしては世界の平和と繁栄があり得ないとの見地から日本政府としてこれの達成に少しでも貢献する決意を表明した。

3 三木特使とエジプト側とは,政治,文化,科学,技術等のあらゆる分野,就中経済協力の面で両国間の関係を一層強化することが必要であることに合意した。三木特使は,日本側がスエズ運河の拡張計画に要する資金(その外貨所要分は2億8千万米ドルにのぼると推定される。)のための協力を行なうとの意図を表明した。これに関連し,三木特使は,その第一期分に必要な資金約1億4千万米ドル相当の380億円の借款を返済期間25年(7年の支払猶予期間を含む),年率2%の利息で提供することを約束した。

更に,エジプト側はエジプトの工業化促進の強い意図を表明し,輸送,建設,有線無線通信,電子産業その他の分野において多くの計画が進められていることを説明した。三木特使は,日本政府は商品及びプロジェクトのための借款を提供する用意のある旨を述べた。これらの借款の詳細は,政府間で速やかに取極められるものとする。

エジプト側は,投資,合弁事業あるいはフリー・ゾーンの活用等を討議するために必要な日本側の使節団をかん迎する用意がある旨を述べるとともに,これには技術協力の専門家が含まれることを希望する旨を表明し,三木特使は来年の出来るだけ早い時間にこれを実現させるようにしたいと述べた。

4 双方は,今回の三木特使のエジプト訪問は日本とエジプトとの友好関係の一層の強化に大きく貢献したことを認め,かつ今後共緊密にして幅の広い接触を進めるために最善をつくすことに合意した。

  1973年12月18日 カイロにおいて

(f) 中東和平会議に関する二階堂官房長官の発言   (昭和48年12月21日)

本21日よりジュネーブにおいて,関係諸国の努力と協力によつて中東和平会議が開催の運びとなつたことを歓迎する。

わが国としては,中東紛争の未解決の結果として世界の平和一般が害されていること及び諸国民の生活が不安に陥いつていることを深く憂慮するものである。

この観点からわが国は今般の和平会議が成功し,一日も早く中東における公正且つ永 続的平和が実現することを切望して止まない。

 

目次へ