―その他の重要外交文書等―

 

5.その他の重要外交文書等

 

(1)1970年NATO閣僚理事会(於ローマ)最終コミュニケ(要旨)

 

(1970年5月27日)

 

 1. 北大西洋理事会は1970年5月26日及び27日ローマにて閣僚会議を開催し,同盟が,加盟国の安全保障に不可欠であり,より安定した東西関係促進を可能にするものであることを再確認した。

 2. 閣僚は,パートナーシップに基づき,同盟の防衛能力を維持しつつ,十分かつ時宜を得た協議を通じて交渉により問題を解決する決意を表明した。

 3. 閣僚は,欧州の安保問題が関係国間の利害に深く根ざしていることを認識した。しかし,同盟国は,欧州の安全を増進するため,現実問題につき適当ないかなる交渉にも応ずる用意がある。真の緊張緩和への努力の成否は,安全保障に対する関係国の誠意の証左となろう。

 4. 閣僚は,平和が永続するためには,欧州諸国の政治的,社会的体制の如何にかかわらず,主権平等,政治的独立,領土保全,及び外国の干渉を受けずに独自に自己の将来を決定する権利が尊重されねばならない点を確認した。

 5. 閣僚は,常設理事会の作成した地中海情勢に関する報告を承認し,この地域に対する関心を再び表明し,加盟国間の十分かつひんぱんな協議と継続的な監視の必要性を強調した。

 6. 1969年四月の閣僚会議において,欧州の緊張緩和及び協力促進のため,いかなる具体的問題につきソ連及び東欧諸国と交渉することが可能か探究すべき旨決定した。右決定に基づき,同盟国とソ連及び東欧諸国との間で行なわれている2国間または多角的接触及び交渉において進歩が認められれば,これは北アメリカの同盟国を含む将来の安全保障に関する会議の成功を保証するものとなろう。

 7. 閣僚は,1969年12月以来加盟国のイニシアチブにより,活発に展開されている話し合い及び交渉の継続に対し,満足の意を表明した。

 8. ドイツ連邦共和国は,同盟国の支持のもとにソ連,ポーランド及びドイツ民主共和国(コミュニケ文面では,単に the GDR)との話し合いを開始した。同盟国はこの話し合いは好ましいことと考え,かつ,それが受諾不可能な要求のために危機におちいらないよう希望する。ドイツの特殊事情を勘案した暫定措置(modus vivendi)を実現せんとする努力は,欧州の安全保障と協力に対する重要な貢献である。閣僚は,すべての国がドイツ の二つの部分の関係の話し合いによる解決を容易ならしめるようにとの希望を表明した。

 9. 閣僚は,ベルリンの現状と同市への自由往来を改善するため,管理4国がその権限と責任の枠内で討議を始めたことに満足の意を表し,東西関係の特に微妙なこの地域に存在する諸般の困難が,実際的措置によつて克服され,もつてベルリンが,経済,文化交流に貢献できるようになることを希望した。

 10. 戦略兵器制限のための米,ソ会談について,閣僚は,欧州の安全と人類の未来にとつて,その成果は極めて重要であるとして,これを歓迎した。

 11. 閣僚は,核拡散防止条約発効の機会に,改めて核兵器の拡散制限と更には純然たる核軍縮の持つ重要性を強調し,目下行なわれている海底からの大量破壊兵器締出しと生物化学兵器制限のための努力に関心を示すと共に,しかるべき保証条件を備えた軍縮措置の今後の進展によつて,すべての国の軍備の重荷が軽減されることを希望した。

 12. NATO諸国は欧州における軍事的対立の漸進的除去に資すべき兵器制限及び軍縮につき,長年にわたり関心を示してきた。閣僚は,1968年のReykjavik宣言及び1969年のBrussels宣言にもかかわらず,未だこれら宣言に対して,何ら意味ある回答が寄せられていないことに留意した。

 13. 同盟諸国は,1969年の閣僚会議で示された方針に従い,相互兵力削減につき徹底的検討を重ねてきた。閣僚はNATO常設理事会から提出されたその報告を検討したが,このことは,そこに含まれている複雑な諸問題を解明する上に有益であつた。よつて閣僚は,更に適切な検討を加え,もつて,この分野における政策と打診工作の指針ならしめるよう指示した。

 14. 閣僚は,ポジティヴな,あるいはネガティヴな,これらすべての事態の発展を検討し,また常設理事会から付託された交渉のための手続問題に関する報告をtake noteした上,平和に関連するすべての問題につき,すべての関係諸国との打診的会談を倍加する用意のあることを明らかにした。

 15. これらの会談の結果として,また現在進行中の会談,特にドイツ及びベルリンに関する会談において,進展が見られた場合について,同盟国政府はすべての関係国政府とmultilateralな接触に入る用意のあることを表明する。かかる接触の主目的の一つは,欧州の安全と協力に関する会議(a conference or a series of conferences)の時期的可能性を打診することであろう。常設機関の設置は,やがてはmu1tilatera1な交渉に入るための数ある手段の中の一つとして考慮することができるであろう。

 16. 欧州の安全と協力に関連して,打診すべき事案としては,特に(a)武力の放棄を含めた国家間の関係を規制する諸原則,(b)人間,思想及び情報の自由な交換と文化,経済,技術,科学及び人間環境の諸分野における協力促進に資すべき国際関係の増進がある。

 17. NATO軍事機構加盟国閣僚は相互均衡兵力削減の可能性に関し関係諸国とさらに探索を進めることを特に重視し,本件に関する宣言を行なうこととした。

 18. 閣僚は本コミュニケを,中立国および非同盟諸国政府を含む関係諸国に対し外交経路を通じ伝達することを伊外相に要請した。また閣僚は加盟国が探索と交渉に関する包括的計画を推進することに対する他国政府の反応を求めることに合意した。

 19. 閣僚はNATOの近代社会の挑戦に関する委員会第1回の報告書を検討し,過去6カ月間行なわれた進歩を歓迎した。現在進行中の研究は,空気および水質汚染のような重大関心事を含む,広範な環境問題に関する,国内的および国際的活動に貢献することになろう。

 20. 閣僚は人類の環境面における同盟諸国の利益は,このますます重要性を増加している分野における東西間の広範な協力の基礎となりえるとの見解を再確認し,またこのことは既存の国際機構ないしはその他の適当な方法によつて保証されるむね考慮した。

 21. 次回閣僚理事会は1970年12月ブラツセルにおいて開催することとする。

 

 

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