―日本政府が関与した重要共同コミュニケおよび政府声明―

 

3.日本政府が関与した重要共同コミュニケおよび政府声明

 

(1)第5回ASPAC閣僚会議共同コミュニケ

 

(1970年6月19日ウェリントンにおいて)

 

 1.第5回アジア・太平洋閣僚会議は,ニュー・ジーランド政府の招待により,オーストラリア,中華民国,日本,大韓民国,マレイシア,フィリピン,タイ王国及びヴィエトナム共和国の参加の下に,1970年6月17日から19日まで,ニュー・ジーランドのウェリントンにおいて開催された。ラオス王国のオブザーバーは,会議のすべての会合に出席した。

 2.ニュー・ジーランド首相兼外相サー・キース・ホリオーク閣下は,開会演説において,会議参加代表を暖かく歓迎した。首相は,閣僚会議が,ASPAC諸国間の協力の新たな方途を探究し,また,いかにして個別にまた協同してアジア太平洋地域に平和と安定と進歩をもたらすのに寄与するかについて検討を行なうよう示唆した。首相は,地域協力の目的は,この地域のすべての国民が自由と尊厳の下に生活し,かつ,共に働くことができるような新しい共同社会を作りあげて行くことである旨を強調した。

 3.閣僚は,3日間にわたり広範囲な国際問題,特にアジア太平洋地域における現状を討議した。閣僚は,世界の平和と安定を脅かしている戦闘の激化から生じているこの地域の緊迫した情勢に対し,懸念と憂慮を表明した。閣僚は,大国の政策の変更がこの地域に及ぼす影響とこの地域の多くの国の国力の増大及びアジア太平洋諸国間の協力関係を確立するための新たな努力に対し特に注意を払つた。閣僚は,急速な変化と発展の時期にあたつて,最も広汎な基礎の上に立つ地域協力が必要であることを認識した。

 4.閣僚は,アジア太平洋地域の諸問題に対処する主たる責任は,この地域の諸国にあるとの信念を再確認した。閣僚は,また,この地域の強大でない諸国が,平和と独立と調和のうちに生きたいとの念願をより強大な諸国により十分に承認され,厳守され,完全に尊重される権利をもつているとの深い確信を再確認した。閣僚は,それぞれの政府が緊張を緩和し,安定と平和的発展を促進する方途を探究するため,進んで域内の他の政府および組織と協力する用意があることを表明した。閣僚は,このことが域内諸国間に世界観の相違を超越したコンセンサスを形成していくのに寄与し,かつ,新たな有望なイニシアティブを促進するであろうことを確信した。

 5.閣僚は,カンポディアに関んるジャカルタ会議は,域内の諸国が直接関心を有する地域に平和を回復するよう共に努力し得る有意義な先例であると認めた。閣僚は,ジャカルタ会議で用いられた協議の方法が,カンボディアに平和的解決をもたらすことに貢献し,域内の諸懸案を解決するためのイニシアティブをさらに促進するよう希望を表明した。

 6.閣僚は,本年が国際連合の25周年記念にあたることにかんがみ,国連憲章に盛られた諸目的と諸原則,特に国家間の紛争を平和的手段で解決するとの規定に対する強い支持を再確認した。

 7.閣僚は,インドシナ地域の情勢を検討し,ヴィエトナムでの戦闘が縮小したことに留意する一方,ラオスとカンボディアでの戦火の激化に対し深い懸念を表明した。閣僚は,特に,平定化,農村部の復興および土地改革等の諸分野でヴィエトナム共和国政府が引き続き達成しつつある成果に満足の意を表明した。閣僚は,また,ヴィエトナム共和国の政府と国民が国の安全を高め,自衛のために一層大きな責務を果たすことに成功しているのに勇気づけられた。閣僚は,ヴィエトナム紛争の交渉による解決の努力が今までのところ成果を収めていないことに失望の念を表明し,公正かつ永続的な解決をもたらすための実質的な交渉を進めるよう新しい努力がなされるべきことを強調した。閣僚は,ヴィエトナム共和国,ラオス王国およびカンボディアによる独立と自由を維持するための努力に対する深い同情を再確認した。閣僚は,ASPAC加盟国がれぞそれラオスおよびカンボディアに対してどのような援助を供与できるか検討してみてはどうかと示さした。閣僚は,カンボディアおよびラオスの主権,独立,領土保全および厳正中立が,これら2カ国に適用される国際協定および国連憲章の規定に従つて尊重されるべきであるとの見解を表明した。閣僚は,戦闘が終了すれば,全インドシナ地域の復興のために,外国からの実質的な援助が緊急に必要とされるであろうことに同意した。

 8.閣僚は,中国大陸の最近の情勢を関心をもつて討議した。閣僚は,これらの情勢がアジア太平洋諸国に及ぼす影響にかんがみ,今後の情勢を注意深く観察する必要があることに同意した。

 9.閣僚は,ASPACに参加している開発途上国が満足すべき経済成長率を引き続き維持していることを歓迎した。閣僚は,特に,経済援助の受け入れ国であつた中華民国が,今や世界各地の多くの開発途上国に対して相当規模の経済,技術協力を行なつていることに満足した。

 10.閣僚は,朝鮮半島の情勢を検討し,1969年12月11日の韓国航空機の乗取り及び1970年6月5日の韓国海軍放送船のだ捕を含む大韓民国に対する挑発的攻撃行為によつて引き続き緊張が作りだされていることに懸念を表明した。閣僚は,人道的見地より,抑留されているこれら航空機および船舶の乗組員と乗客が,一刻も早く送還されるよう希望を表明した。閣僚は,大韓民国の政府および国民が国家の安全を防衛し,国民経済の急速な発展を維持するため,自国の立場を強化する努力を成功裡に進めていることを称揚した。

 11.閣僚は,部分的核兵器実験禁止条約と多くのASPAC諸国の再三にわたる抗議にかかわらず,アジア太平洋地域において,核兵器の大気圏実験が引き続き行なわれていることに遺憾の意を表明した。閣僚は,大気圏実験が健康と安全に及ぼす潜在的危険に懸念を表明し,この地域においてこれ以上実験が行なわれないよう要望した。

 12.閣僚は,南太平洋における政治的発展に注目し,本年中におけるフィージーおよびトンガの両島嶼国の完全な独立を歓迎した。

 13.閣僚は,ASPAC諸国間の貿易が着実に増大しつつあることによろこびを表し,域内貿易促進の協力の重要性を強調した。閣僚は,域内の貿易に対する諸制度を検討し,現在なお存在する障害が可及的速やかに撤廃されるよう希望した。この関連において,閣僚は,開発途上国に対する一方的無差別的一般特恵の方式を確立するため国連貿易開発会議が現在払つている努力に留意した。

 14.閣僚は,常任委員会報告書に留意し,ウエリントンにおける常任委員会の議長および委員に対し,その活動を感謝するとともに,なし遂げられた進展に満足の意を表明した。

 15.閣僚は,ASPACが,この地域での充実しつつある国際協力の一つとして今や確立され受け入れられているとの見解を表明した。閣僚は,ASPACが政治的,社会的および経済的諸分野における緊密な協議と協力のための有用な場であることを認めた。閣僚は,この機構が開放的な姿勢を維持することによつて最もよくその目的を達成するものであるとの信念を改めて確認し,ASPACと他の地域機構との間の協力を一層発展せしめるよう希望した。閣僚は、ASPACのすべての事業が,協議会の承認を条件として非加盟国に対し開放されていることに留意した。

 16.閣僚は,国際機関および主要国際会議でのASPAC諸国間の非公式協議の慣行が,ASPACの最も有用な活動の一つであることに同意した。閣僚は,この慣行が維持されるべきこと,およびその他の場所においても非公式協議を随時行なうことが有用であることに意見の一致をみた。

 17.閣僚は,常任委員会が提出したアジア太平洋地域経済協力センターをバンコックに設立するための協定案を正式に承認し,この協定が会議の終了の際に署名のため開放されることに留意した。閣僚は,参加諸国政府が自発的に提供する専門家に直接関係する経費を除き,タイ政府がセンターの設立,管理および運営の経費をセンター設立後3年間支弁する旨約したことに感謝をもつて留意した。閣僚は,また,タイ政府がセンターの活動に対する他のASPAC諸国による追加的拠出を歓迎していることに留意した。センターは,加盟国間の緊密で調和のとれた経済関係を深め,かつ,経済発展を促進することを目的とするものである。

 18.閣僚は,科学技術サーヴィス登録機関,文化社会センターおよび食糧肥料技術センターの報告書に感謝をもつて留意した。閣僚は,これら三つのASPAC事業が,それぞれの活動分野において,実質的進展をみつつあることに満足の意を表明した。閣僚は,食糧肥料技術センターが1970年4月24日正式に発足し,すべての加盟政府がセンターの初年度事業費に対する財政拠出を約したことをよろこびとした。

 19.閣僚は,ASPAC海洋協力計画に関する日本の提案についての常任委員会報告に留意するとともに,詳細な検討と第6回閣僚会議への報告のため,常任委員会にこれを付託した。この提案は,海上における一層の安全を確保するための域内協力の枠組みを作り出すことを目的とするものである。

 20.閣僚は,ASPAC青年奉仕員計画に関するフィリピン政府の提案を感謝の意をもつて受理し,詳細な検討と第6回閣僚会議への報告のため常任委員会にこれを付託した。この提案は,アジアの青年を奉仕活動のため,村落開発その他類似の計画に活用することを目的とするものである。

 21.閣僚は,年1回会合するとの合意を改めて確認し,第6回閣僚会議を1971年にマニラで開催するとのフィリピン政府の申し出を感謝の意をもつて受諾した。その結果,また,確立された慣行に従い,常任委員会は今後12カ月間マニラにおいて,フィリピン外務大臣の司会の下に会合し,また,フィリピン政府は,第6回閣僚会議までの間および同会議中において取り次ぎにあたるとともに,実際上の事務局を提供する。

 22.閣僚は,会議のための行き届いた便宜と,代表団に寄せられたあたたかい歓迎ならびに事務局により提供された貴重な援助に対し,ニュー・ジーランド政府および国民に心からの感謝の意を表明した。

 

 

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