-日本万国博覧会-

 

第3節 日本万国博覧会

 

1.概   況

 

(1)日本を含め77ヵ国,4国際機関及び6州,3市,香港政庁の参加を得た日本万国博覧会は,1970年9月13日183日間の会期を無事終え閉幕した。会期中の総入場者数は約6,421万人と過去の万国博覧会史上最高を記録した。

(2)会期中は,開幕当初の例年にない寒さと長かつた梅雨期を除いて,集中豪雨あるいは台風などもなく概して天候に恵まれ平穏裡に終始した。すなわち,晴の日が861日,曇り勝ちの日が30日で,雨または時々雨の日が67日であつた。したがつて,入場者の推移は開幕当初および梅雨期が比較的低かつたが,その後は月を追つて増加していつた。

(3)入場者は,日本人観客約6,251万人(97.4%),外国人観客約170万人(2.6%)であつて,大部分が日本人であつた。

 外国人観客については,1967年モントリオール博の場合,陸続きのアメリカを除いた海外からの観客が,総入場者数の3.7%であると概算されていることからみて,極東に位置する日本としてはかなりの外国人観客があつたといえる。

 次に,大部分を占める日本人観客は,年令的には子供から老人まで広い層の参加があつたが,中でも次代をになう22才以下の若い層が全体の33.8%を占めていること,また,地域的にも地元圏以外から約50%以上の入場者があつたことなどが特徴であつた。

(4)次に,出展参加については,アジア,アフリカ,中南米地域から多くの国の参加があつたことは,日本万国博覧会の成功に大きく貢献した。

 展示についても,日本万国博覧会のテーマ「人類の進歩と調和」の主旨に沿い,それぞれが独自のテーマを展開し,これに基づき特色ある展示,催し物あるいは講演会,討論会などの各種の行事がもたれ,会場を訪れた多数の観客に深い印象を与えるとともに,日本万国博の意義をより深いものとした。

(5)お祭り広場では,出展参加を記念し,73ヵ国のナショナル・デー,15のスペシャル・デーが開催され,政府賓客,貴賓を迎え,式典が滞りなく挙行され,あわせて民族色豊かな催し物が披露され,参加各国相互の理解と親善が深められた。

(6)また,お祭り広場では,開幕前の3月14日,天皇,皇后両陛下ご臨席の下,約8,000人の内外貴賓および一般観客を迎え,厳しゆくな中にも華やかに開会式が挙行されたのを初めとして,会期中連日,国内および外国の祭りあるいは各種の催しものが繰り広げられた。

 閉幕日の9月13日には,皇太子・同妃両殿下を迎え,閉会式典が挙行され,会期の幕が閉じられた。

 

2.政府賓客

 

(1)政府は日本万国博覧会に際し参加国の元首またはこれに代つて当該国の万博ナショナル・デーに出席のため来日した代表及び参加国機関の長を政府の賓客として招待し,接遇したが,来日した政府賓客は次表のとおり70組に及んだ。

     元首            8ヵ国

     元首に準ずる者及び首相  16ヵ国

     皇族            7ヵ国

     閣僚クラス        35ヵ国

     国際機関の長         4組

     計             70組

 なお,これに,万博期間中来日したがナショナル・デーを設けなかつたため公式には政府賓客としなかつたが実質的には同様に接遇したシェラ・レオーネのシェアーズ貿易産業相及び先方の都合により訪日が万博終了後となつたが,政府としては万博政府賓客並みに接遇したサイプラスのマカリオス大統領を加えると72組に達することとなる。

(2)これ等賓客はその身分に応じてそれぞれ接遇を受けた。接遇は,東京においては皇居または東宮御所でご会見ないし謁見のほか宮中午さん,及び政府午さんまたは晩さんが,また大阪においては府知事,市長,商工会議所会頭の三者共催午さんまたは晩さん及び万博日本政府代表,万博協会会長共催の万博会場内での午さんが催された。賓客は博覧会会場を訪問して,自国の万博ナショナル・デーまたはスペシャル・デー(国際機関の場合)の式典を主宰した。また,賓客は公式行事の合間を縫つてわが国政界・財界の要人との会談及び産業,文化施設の視察等をきわめて精力的に行ない,訪日を機会に日本に対する認識を深めるとともに政治,経済,文化等諸分野におけるわが国との今後の協力の強化に資することに努め,少なからぬ成果を挙げ帰国した。

(3)今回の万国博は,世界各国の首脳,閣僚その他各界の要人をして日本の現状を認識理解せしめるには絶好の機会であつたと云い得べく,上記政府賓客の訪日は日本万国博の声価を高めたばかりでなくわが国の実状の認識に役立つたほか,これら諸国との国際親善を一段と促進した点においてその意義はきわめて大きかつたと云い得る。

 

3.開閉会式およびナショナル・デー,スペシャル・デー

 

(1)開 閉 会 式

(イ)開会式典は,開幕前日の3月14日午前11時から12時までお祭り広場において,天皇・皇后両陛下および皇太子・同妃両殿下ご臨席のもと約8,000人の内外貴賓および一般観客を迎え,厳粛な中にも華やかに挙行された。

 開会式典では,さきにB.I.E.で決定をみた万国博覧会旗の日本万国博覧会への引渡しがあり,ついで天皇陛下から開会のお言葉を賜わつた。

 このあと,皇太子殿下によりお祭り広場諸装置のスイッチオンが行なわれ,広場いつぱいに国際色豊かな祝典の催しが繰り展げられた。

 午後は,開会式特別招待者のほか,万国博の開催準備に協力した一般招待者約7万人を含めた会場観覧が実施された。

 なお,翌3月15日の一般公開日には,会場中央口(北)で万博協会会長,大阪府知事,大阪市長,吹田市長および観客代表によるテープカットが行なわれた。

(ロ)閉会式は,会期最終日の9月13日午前10時から11時までお祭り広場において皇太子・同妃両殿下ご臨席のもと約5,500人の内外貴賓および抽選による1,000人の一般観客が参加し挙行された。

 佐藤総理,石坂会長のあいさつのあと,各国代表に記念メダルの贈呈が行なわれ,参加国を代表してパトリック・リード・カナダ政府代表のあいさつがあつた。

 次いで,皇太子殿下の閉会のおことばがあり,祝砲がとどろき,参加国旗,万国博覧会旗の降納と引継ぎの儀式,螢の光マーチによる各パビリオンホスト・ホステスなどのパレードが行われ会期の幕が閉じられた。

(2)ナショナル・デー,スペシャル・デー

 会期中,日本万国博覧会の参加を記念し,73のナショナル・デー(アイスランド・サイプラス・モナコ・シェラレオネは実施しなかつた),15のスペシャルデーの式典がお祭り広場で挙行された。式典およびこれに伴う催し物は,それぞれ特色ある企画で演出され,時には日本側の友情出演もあつて国際親善が深められた。

 また,これら式年には,会期中元首8人,総理大臣9人,王族7人,その他62人計86人が出席された。

 なお,このほか2人(インドネシア大統領,ガンビア大統領)の元首が来場され,それぞれ各館を表敬訪問された。

 なお,万博ナショナル・デーには当該国の艦船を派遣し,乗組員によるパレードないし,楽隊演奏を行つた国もあつた。

 

艦船派遣国

 

 

4.参加国政府代表会議運営委員会の開催

 

 萩原日本万国博政府代表,2月26日新たに政府代表顧問に任命された山津善衛大使(前アルジェリア大使)及び田村政府代表代理は3月から9月まで大阪に滞在し,日本万国博協会と協力して,政府の立場から政府賓客の接遇,博覧会の運営に当つた。

 会期中,参加国政府代表会議運営委員会は3月31日及び4月2日(第6回),5月18日(第7回)ならびに7月23日(第8回)大阪において開催され,運営上の諸問題の解決に当つた。

 さらに,11月3日及び4日,ベルギー・ブラッセルにおいて第9回(最終回)運営委員会が12ヵ国代表によつて開催され,万国博における最近の経験を回顧するとともに,将来の万国博の計画,運営をより効果的かつ有用なものにするための方途を検討した。

 

5.博覧会の事後処理と政府公式記録の作成

 

 日本万国博覧会は,昭和45年9月13日をもつて終了したが,同博覧会一般規則によれば,参加外国等出品者の施工にかかる建築物および施設は,博覧会閉会後6ヵ月以内に撤去し,かつ敷地の原状復旧を行なわなければならない。(同規則第24条第2項)

 参加各国のパビリオンは上記規則に従つて閉会後その撤去作業に入つており,これに伴う政府代表の諸残務処理が,萩原政府代表の下に行われている。

 なお,万博会場の跡地利用問題については大蔵大臣の担当となり客年10月21日その諮問機関として発足した「万国博跡地利用懇談会」(宇佐見洵前日銀総裁座長の下,25名の委員で構成)がすでに客年10月22日以降,数回にわたり会合を重ね,跡地利用についての従来の経緯や各方面の意見,諸外国の先例,跡地の現状,都市の将来と跡地利用の可能性などについて,調査検討し,12月23日中間報告(跡地利用の基本的方向について)を大蔵大臣に提出したが,更に2月25日施設利用小委員会(茅誠司委員長他四名)が報告を出し,一応の結論を得た。これと関連し政府は今次第65通常国会に「日本万国博覧会記念協会法」を提出し,同協会が跡地を公園として運営し且つ記念基金を設けてこれを管理運用することゝなる予定である。

 一方,万博主管省である通産省において,日本万国博覧会政府公式記録作成業務が着手されており,その項目中,日本万博政府代表の設置に関する臨時措置法,万博関係外国人に対し査証の発給,区別,有効期間に関する措置,海外出展,招待政府賓客,ナショナル・ディ,スペシャル・ディ,海外出展,対外広報活動の部分は当省が担当している。

 更に,萩原政府代表の報告及び外国出展勧奨を中心とした外務省報告が作成中である。

 

別表 来日万博政府賓客名

 

ナショナル・デー主宰在京大使リスト

 

参加州・都市・政庁主賓リスト

 

 

 

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