―法律問題―

 

第8節 法 律 問 題

 

1.海洋法会議開催の決定

 

 第25回国連総会は,原則として1973年に第三次海洋法会議を開催することを決定した。

 国連はすでに1958年と1960年の二度にわたり海洋法会議を開催し,その結果領海条約,公海条約,大陸棚条約,公海漁業条約の4つの条約が成立しているが(注,わが国は前二者の当事国),今回再び海洋法会議の開催が必要とされるに至つた一つの大きな理由は,領海幅員問題にある。伝統的国際法の下で確立していた3海里という領海の幅をより広いものとすべきか否かについては前述の2回の海洋法会議において検討されたが,何ら結論をみずそのまゝになつていたところ,近時,一方的に領海を拡張したり,広大な漁業水域を設定する傾向が顕著となり,一部の諸国のごときは200海里に及ぶ管轄権の主張を行なうにいたつた。

 もう一つの大きな問題は,海洋開発技術の進歩に伴つて新たに生じてきたもので,深海海底資源の開発に関してどのような国際制度を設けるべきか,また大陸棚と深海海底との境界をどこに求めるべきかとの問題である(第4章第9節参照)。

 このような背景の下に,第25回総会において海洋法会議開催問題が審議された。本件審議は,地域グループ間の利害の対立を反映して難航したが,結局,ラ米とAAグループの推す要旨次の決議案が採択された。

(イ)開催時期―1973年(ただし,延期もありうる)。

(ロ)議題―(a)国家管轄権以遠の海底区域およびその資源に関する国際制度(国際機関を含む)の確立ならびに海底区域の定義,(b)公海,大陸棚,領海(幅員および国際海峡の問題を含む)および接続水域,漁業および公海生物資源の保存(沿岸国の優先的権利の問題を含む)の制度に関する問題を含む広範な関連事項,(c)海洋環境の保全(特に汚染防止を含む)および海洋の科学的調査,

(ハ)準備手続一準備委員会(海底平和利用委員会を拡大し,わが国を含む86ヵ国より成る)を1971年中に2回開催する。

 この決議に基づいて構成された拡大海底平和利用委員会は去る3月1日から4週間ジュネーブで第1回めの会合(第2回めは本年7月から8月にかけて6週間の予定で行なわれる)を開催した。本会期の前半は委員会の組織づくりに専ら努力が傾けられ,その結果3つの小委員会の設立とその付託事項を決定し,全体委員会及び各小委員会の役員を選定した。各小委員会の付託事項は概ね次の通り決まつた。

(イ)第1小委員会:深海々底およびその資源に関する国際制度(国際機関の設立を含む)についての条約草案の作成。

(ロ)第2小委員会:公海,大陸棚,領海(幅員及び国際海峡の問題を含む)及び接続水域,漁業および公海生物資源の保存(沿岸国の優先的権利の問題を含む)等の海洋法一般の問題のうち,海洋法会議で審議すべき問題及び事項の包括的なリストの作成および条約草案の作成。

(ハ)第3小委員会:汚染防止を含む海洋環境の保全および科学調査の問題の審議,ならびに関係条約草案の作成。

 会期後半には各国代表による一般演説が行なわれたが,特に開発途上国側は伝統的な海洋関係国際法が時代の新しい要請に応じておらず,特に先進海洋国側の利益偏重となつているので再検討される必要があるとの批判を発表した。わが国は,海洋法の漸進的発展の必要性を指摘しつも,沿岸国による公海に対する管轄権の一方的な拡張は,法の支配の否定につながり国際社会全体の利益に反すること,また海洋法問題は後進国と先進国の利害対立としてのみ捉えることによつては必ずしも公正な解決が得られるものではないこと等を強調した。こうして第3次海洋法会議の藷準備は,上記の3つの小委員会を中心として本年夏会期以降,実質的段階に入るわけであるが,問題の複雑性にかんがみ前途は険しいものと予想される。

 

2.国連憲章に基づく国家間の友好関係および協力の法原則に関する宣言

 

 本宣言は,1962年以来累次の国連総会および友好関係特別委員会における審議を経てようやく成立したもので,国連25周年記念行事の一環として他の宣言とともに採択された。本宣言は,国連憲章に掲げられている7つの原則(武力不行使,紛争の平和的解決,不干渉義務,協力義務,人民の同権および自決,主権平等並びに義務の誠実な履行の諸原則)をさらに詳細に規定し,諸国間の友好関係を発展させるためには各国がどのような行動をしなければならないかについて指針を与えんとするものである。

 

 

目次へ