―安全保障理事会―

 

第3節 安全保障理事会

 

 1970年の安保理事国は常任理事国5ヵ国のほか,コロンビア,フィンランド,ネパール,ザンビア,スペイン,ニカラグア,シェラレオネ,シリア,ブルンディ,ポーランドの諸国であつた。この1年間に安保理事会では中東問題,ポルトガルのギニア侵略事件,南ローデシア問題が取り上げられたが,とくにギニア侵略事件に関し安保理より特別調査団が現地に派遣されたこと及び南ローデシア問題に関し米国が国連史上初めて拒否権を行使したこと等が注目を集めた。

 

1.中 東 問 題

 

 (イ)5月12日イスラエル軍がレバノン東南部に侵攻しパレスチナ・ゲリラの基地を攻撃した事件に関し,同日安保理はイスラエル軍の即時撤退を要求し(決議279)その後5月19日,イスラエルの軍事行動を非難し,かかる行為がくり返されれば憲章の関係条項にもとづく措置をとることを考慮する旨警告した(決議280)。(ロ)9月5日イスラエルのレバノン侵入事件をとり上げた保安理は,イスラエル軍の即時撤退を要求する決議285を採択した。

 

2.ギニア侵攻事件

 

 11月22日,ギニアは首都コナクリがポルトガル軍隊により侵略されたとして安保理の開催を要請し,右要請に基づき同日緊急安保理が開催された。その結果安保理は,(1)ギニアに対する武力攻撃を直ちに中止することを要求する,(2)現地事情調査のため特別調査団を派遣する,との決議を採択した(決議289)。本決議にもとづき5国からなる調査団がギニアに派遣された。同調査団は,12月3日,本事件はポルトガル軍部隊に指揮されたポルトガル領ギニア住民及び同地で訓練されたギニアの反セクトーレ分子がセクトーレ政権の転覆,ポルトガル人捕虜の解放を目的としてギニアに侵攻したものであるとの報告書を安保理に提出した。

 安保理は,12月8日調査団報告を審議し同報告書を承認し,ポルトガルのギニア侵略を非難する趣旨の決議を採択した(決議290)。

 

3.南ローデシア問題

 

 1970年3月,南ローデシアが共和国に移行するにおよび,安保理が開催され,英国より南ローデシアの不法政権を認めない趣旨の決議案が,またAA諸国より,経済制裁を南ア,ポルトガルに拡大する趣旨の決議案が提出された。しかし,英国決議案は必要多数をえられず,またAA決議案も米,英の拒否権に会い否決された。その結果両決議案の妥協案としてフィンランドが提出した,南ローデシアの不法政権を認めない,安保理決議253に基づく国内措置をさらに強化するよう各国に要請し,制裁委の権限を強化するとの趣旨の決議案が採択された(決議277)。さらに,11月17日本問題につき安保理が開催され,従来の諸決議の内容を再確認する趣旨の決議を採択した(決議288)。

 

4.わが国の活動

 

 わが国は,1971年1月1日から安全保障理事会非常任理事国に就任した。わが国は,安保理事国によつて構成されている加盟審査委員会においてブータンの国連加盟実現のために積極的な貢献を行なつたほか,ミニ・ステート専門家委,対南ローデシア制裁委等のメンバー国として活発な活動を行なつている。

 

 

目次へ